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KAMIJO

音楽と物語の美しき結合が、未知なる感動をもたらした。

“KAMIJO Japan Tour 2018 -Sang- Final”
2018/7/15@Zepp DiverCity Tokyo

待望の新作オリジナル・フルアルバム『Sang』を3月にリリースし、圧倒的なスケールと完成度を誇る傑作でリスナーを魅了したKAMIJO。音だけではなく映像や様々な意匠を凝らすことでその世界観をより具現化して見せる“KAMIJO Japan Tour 2018 -Sang- Final”公演が、7/15にZepp DiverCity Tokyoで開催された。

 

 

来場者たちの目を真っ先に引いたのは、ステージ中央後方に設置された大きな額縁だ。当初その中に飾られていたのは絵画「伯爵の首」だったが、開演と同時に額縁の中に登場したサンジェルマン伯爵(※四千年を生きていると言われるヨーロッパ最大の謎の人物)が“諸君!”と呼びかけ、観る者たちを物語の世界へと引き込む。続いて額縁内に現れたマリー・アントワネットがプロローグ的な内容を語っている最中に、メンバーがステージへ登壇。荘厳なストリングスとスピード感溢れるバンドサウンドが絡み合う「Theme of Sang」のイントロから、フロアのヴォルテージが加速度的に上昇していく。

 

 

熱気と勢いに満ちた冒頭から、続けざまに「Nosferatu」へ突入。“さぁ、一緒に歌って”と呼びかけたKAMIJOに応えて、オーディエンスによるサビの合唱が一体感を生み出した。蘇らせた人間の血を発電させて新エネルギーに変えるという“エミグレ制度”を題材にした「Emigre」では、観客たちと共に“Vive le Roi(国王万歳)”と大きな声で唱える。ステージ上だけではなく、会場全体を巻き込んで非日常の仮想空間が生み出されていくのだ。次に流されたニュース仕立ての映像ではデーブ・スペクターがコメンテーターとして登場して、場内に笑いが起こる一幕も。

 

 

一瞬ゆるんだ空気を引き締めるように、「Vampire Rock Star」から荒々しくアグレッシヴに攻め立てていく。「Bastille」では“Destroy the Bastille”の掛け声に合わせて、高くジャンプする観客たち。“美しい旋律は血の代わりとなる”というセリフから額縁内にはベートーヴェンが現れ、ステージ上では「Symphony of The Vampire 第五楽章『Sonata』」がまさに美しく、ドラマチックに奏でられた。

 

 

サンジェルマン伯爵が番組に生出演するというニュース映像に続いて、額縁内に登場したのはナポレオン。カリスマ性のある口調で兵へと力強く呼び掛け、アッパーな「闇夜のライオン」で場内の士気を高める。その後も映像や声によるエピソードを挟み込みながら「Delta -Interlude-」からの「Castrato」、そして「Ambition -Interlude-」からの「Sang I」「Sang II」と物語はいよいよクライマックスに迫っていく。

 

 

ルイ16世とマリー・アントワネットの処刑という悲劇的シーンの後に演奏されたのは、「Louis 〜艶血のラヴィアンローズ〜」。ストーリーの展開とKAMIJOの深みある歌声に、心が揺さぶられずにはいられない。感動の渦の中、「Sang 〜君に贈る名前〜」が奏でられる。“ルイ17世をはじめとして、望まずにこの世を去った少年少女に捧げます”との言葉と共にKAMIJOが客席に深く一礼をしてから退場し、いったん本編の幕が降ろされた。

再び額縁内に映しだされたサンジェルマン伯爵の“この少女はいったい…、私にも知らない未来があるとは!”というセリフに続けて登場したのは、初音ミクだ。コラボレーションシングルに収録の「私たちは戦う、昨日までの自分と」で盛り上げた後、「Sang-Another Story-」をKAMIJOと2人でデュエット。シリアスな場面が多かった本編とは打って変わり、明るく楽しい空気がフロアを包む。

 

 

「薔薇は美しく散る」(※テレビアニメ『ベルサイユのばら』オープニングテーマのカバー)から始まったアンコールでも、その空気は変わらない。イントロから手拍子が湧き起こった「Mystery」、“ここからは打ち上げだ!”と宣言してからの「Moulin Rouge」と、ハッピーな空気が充満していく。そして「Symphony of The Vampire第四楽章『Dying-Table』」でまたダークな世界観に戻るも、“声も血も空っぽにしようぜ!”と呼びかけてから本日2度目の「Vampire Rock Star」でフロアの興奮を最高潮へと至らしめた。

“音楽と物語を共存させる、このツアーは本当に挑戦でした”とKAMIJOは語ったが、その試みは間違いなく成功したと言えるだろう。単なる“ライヴ”という概念には収まりきらない、まるで壮大な映画を1本見たような感覚に終演後は満たされていた。10月には“Halloween Tour「Vampire Rock Star」”、来年3月にはオーケストラを伴った“Dream Live「Symphony of The Vampire」”の開催をこの日に発表するなど、KAMIJOの創造的な挑戦は決して終わることがない。次はどんな驚きと感動、そして新たな“謎”を我々にもたらしてくれるのか、本当に楽しみだ。

Text:IMAI
Photo:上溝恭香

 

 
 
 
 

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