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それでも世界が続くなら

それでも世界が続くなら #1 永遠に未完のバンドが辿り着いた新たな出発地点。

それでも世界が続くならが、“活動中止”するという衝撃的な発表をしたのは今年2月のこと。Dr.栗原則雄から脱退の申し出を受け、他メンバーが“4人でやれる可能性が少しでもあるなら、活動を中止して栗原を待つ”という想いの下でこの選択に至ったという。そこから6月にベストアルバムをリリースしたのに続き、活動中止前最後の作品となる3rdミニアルバム『それでも世界が続くなら』を完成させた。Vo./G.篠塚将行が“遅刻し続けた僕のファーストアルバム”と称するように、追い求めてきた音楽を遂に具現化したと言える今作。9/2のワンマン公演「休戦協定」を経て、彼らはこれから先にどんな道を辿るのだろうか? 篠塚への単独インタビューとCIVILIANのVo./G.コヤマ ヒデカズとの対談という2本立てで、バンドの現在と未来に迫る表紙&巻頭特集。

 

「だから…このバンドが続いたらいいなと今は思っています」

●6月にベストアルバム、8月にオリジナル・ミニアルバムという流れは、“活動中止”を決める前から考えていたことなんでしょうか?

篠塚:リリース自体は、“活動中止”を発表する前から決まっていましたね。最初はベストアルバムを出した後に、2枚組でオリジナルアルバムを作ろうという話があったんですよ。でも“活動中止”の話が出てきたので、それだったら曲数を減らそうとなって。本当に自分たちが納得する曲だけを入れる方向にしようということになりました。

●曲数を減らそうと思ったのはなぜ?

篠塚:曲が増えると、メンバーの負担も増えるじゃないですか。1曲1曲のアレンジを考えたりもしないといけないから。正直な話、“燃え尽きたから辞めたい”と言っている(Dr.栗原)則雄にそれをやらせたら、本当に辞めたくなっちゃうような気がして…。だから人としてやれる範疇を見極めつつ、でももしかしたら本当に最後の作品になるかもしれないので“自分たちの納得のいくものを”というところとの折り合いをつけた結果、2枚組にするのはやめたんです。

●現在のバンドの状態でやれることを考えて、この形を選択した。

篠塚:それ(※2枚組)を今焦ってやる必要もないというか。則雄以外の3人の総意としては、やっぱり“辞めないで欲しい”という想いがあって。辞めないで欲しいから、“活動中止”するんですよね。

●則雄くんが辞めたいと言い出すまでに、何か兆候を感じてはいたんですか?

篠塚:変な話なんですけど、則雄はこのバンドを組んだ時点で“もうドラムを辞めたい”というところから始まっているんですよ。“サポートメンバーだったらやっても良いよ”という感じだったので、最初はそういう形で入ってもらっていて。

●元々、サポートメンバーという形で参加していたんですね。

篠塚:もちろん僕ら3人は“(正式)メンバー”だと思っているし、本人もそう思っているはずなんですけど、かといって“ここからメンバーで”という話をするタイミングも特になかったんですよ。だから時々、則雄が“辞めたそうだな”という気がしなくはなかったんです。性格上、そうすることで他人に迷惑が掛かりそうだから言わなかったところもあるんでしょうけど、僕らもそこをナアナアにしたまま来ちゃった部分はあったかもしれない。

●そもそもの始まりからして、こんなに長く続くとは思っていなかったのでは?

篠塚:このバンド自体、こんなに長く続くつもりじゃなかったですからね。当時の僕はライブハウスでアルバイトをしていたんですけど、“もう音楽とか別にいいかな”と思っていて。“バンドを辞めたら好きなことをやろう”と考えていたら、結局やりたいことがバンドだったというだけで。でもそれで大成しようとか誰かに届けたいとは元々思っていなくて、趣味としてライフワーク的に始めたバンドだったんです。そういうふうに始まったバンドだから、他のバンドよりもナアナアなところはあったと思うんですよ。

●バンドとしての成り立ちも、メンバー同士の関係性につながっている。

篠塚:僕らはやっぱり“友だちだから一緒にいる”という想いが強くて。逆に友だちだから(則雄は)言いにくかったんだろうし、友だちだからこのタイミングで“燃え尽きた”という話をしてきたんだろうなと思うんですよね。

●ナアナアだったと言いながら、則雄くんも“燃え尽きた”ということはそれだけ真剣にバンドと向き合っていた証拠だと思うのですが。

篠塚:それは全員に共通していると思います。“自分たちが思っていた以上のバンドになってしまった”という感覚があるんですよね。このバンドをやっていくうちに“精一杯やらなかったら、聴いてくれている人たちに対して不誠実だよな”と思うようになったというか。自分たちの音楽を聴いて“自殺するのをやめた”とか“生きようと思った”と言ってくれる人もいて、ただの娯楽としての音楽の範疇はもう超えてしまっているという自覚はあったから。

●だからこそ、このバンドに対する情熱を燃やさざるを得なかった。

篠塚:“情熱”というよりは、“悲壮感”にも似た燃やし方をしていたんですよね。僕らの音楽を聴いてくれた人のおかげで、ここまで音楽に対して本気になろうと思えたんです。僕らの音楽を好きな人たちと僕らって、メチャクチャ似ていると思うんですよ。言ってしまえば、僕らもリスナー側というか。“おまえたちを救ってやるぜ”とか“おまえたちにこういうものを与えてやるぜ”みたいなバンドではなかったから。

●“似ている”というのはよくわかります。お客さんがライブで泣いてしまうのも、それだけ本気で音楽に向き合っているからだと思うんですよ。

篠塚:僕らも、聴いてくれている人たちもきっと不器用なんですよね。真剣にしか生きられないというか。逆に言うと、生きることってもうちょっと気楽なくらいのほうが良いと思うんです。僕は雑談が苦手なんですけど、それって気を抜いて喋る方法がわからないからで。

●気軽な感じで他人と話せない。

篠塚:そういうのが苦手なんですよね。だいぶ前から僕は“休憩したい”っていう感覚があるんですよ。社会において“喋る”という行為にはモラルや常識も必要になるし、相手の気持ちを考えて傷付けないために気を遣う部分も当然あるじゃないですか。でも僕はそういうことが下手だから、労力をすごく使っているんです。“真剣”と言えば言葉はきれいだけど、実際はただ燃費が悪い車みたいな感じで…。

●今作のM-5「春と呪い」で“「いい奴でなきゃいけない」っていう呪いを解いて”と歌っていたり、Twitterでも“また手柄だけ他人にひきわたすのかよ、また失敗だけ自分の所為にすんのかよ”とつぶやいていたりしますが、そういうことを思ってしまうのも“不器用”だからだと思うんですよね。

篠塚:歌詞でもTwitterでも、僕が書いているものは全部同じなんですよね。一貫性があることって、リアルだと思うから。歌詞に書いてあることと実際に言っていることが分離しているというのは、どちらかを“作品”として作っているということじゃないですか。“嘘”とは言わないですけど、僕はあんまりそういうことはしたくないんです。歌おうが話そうが、自分でいたいというか。

●自分が思っていないことは歌いたくない。

篠塚:本当の自分が話したことで嫌われたり炎上したりするのは、しょうがないと思うんですよ。それが本当の自分なんだから、甘んじてその現実を受け入れるしかない。逆に“いい人”ぶった虚像で人に好かれることに対しては、“それに疲れているんだよな”って思うんです。

●だから“休憩したい”んですね。M-6「ハピネス」でも“死んだら私の負けなの”や“死んだら負けのゲームなの”と問いかけているように、しのくん(※篠塚)の歌詞は“こうだ!”という明確な答えを示さないのも特徴なのかなと思います。

篠塚:答えを出したほうがわかりやすいし、断言したほうが説得力は増すんですよ。でも僕が誰かに対して歌うという時に、たとえそれで説得力が下がるとしても、断言して説得力を増すような人間にはなりたくないんです。そういう意味では“いい曲を書きたくない”という感覚もあるんですよね。ある意味では“いい曲”じゃないかもしれないし、伝わらないかもしれないけど、“誠実でいたい”っていう想いがあって。それは僕がずっとリスナー側にいて、“ミュージシャン=上から何かを与える人間”みたいなものにはなりたくないという気持ちがあるからだと思います。

●自分自身が好きだった音楽も、そういう上から目線のメッセージを押し付けるものではなかったのでは?

篠塚:そうですね。僕は小学校の時からイジメられていたというのもあって。“こうやって生きればいいんだよ”と言っているような音楽を聴いたところで、現実として明日また学校に行けばイジメられるわけじゃないですか。学校ってコミュニティなので、そこでイジメられたり疎外されたりしたら、死んでしまいたくもなるんですよ。

●特に小学生くらいだと、学校が唯一のコミュニティだったりもしますからね。

篠塚:“学校”という社会の中で、自分には生きる価値がないんじゃないかと思ってしまうんですよね。でもそこからはみ出してしまう人もいるわけじゃないですか。たとえば僕自身やウチのバンドもそうだと思うんですけど、そういう存在を認めなければ“はみ出さない人だけが生きていける社会”になってしまうわけで。“十人十色”と言われるようにみんなに個性があって、趣味も違えば考え方も違うはずなのに、はみ出したら笑われたりするんですよ。

●“色んな考え方があって、色んな人がいる”ということもインターネットの発展によって、より広がった気がします。それでも世界が続くならの音楽も今の時代じゃなければ、ここまで知られていないかもしれないわけで。

篠塚:絶対にそうだと思います。僕らって、本当に口コミだけで広がったバンドだと思うんですよ。全然有名じゃないし、流行りじゃないし、気持ちのいい音楽じゃないけど、“でも私は好きなんだ”っていう人が1人1人に話してくれたことで今の僕らがいるというのは確実だから。顔も見たことのない人がほとんどですけど、SNSとかを通じて僕らの音楽を知ってくれた全ての人には本当に感謝しています。

●SNSがあったから、ここまで広がることもできた。

篠塚:言ってしまえば、僕らなんてマイノリティですからね。むしろ他人にそういう話もできない人たちが、僕らのことを好きでいてくれることが嬉しいんです。僕らって結成した当初から、友だちのバンドマンや知り合いとかをライブにほとんど呼ばないバンドだったんですよ。音楽に出会って僕はギターをやろうと思ったので、音楽自体の力を信じたいというか。だから誰かに頭を下げてライブに来てもらうのではなく、音楽だけでちゃんと人に届くものにしようということは結成当時から思っていたんですよね。今となっては、燃え尽きた人もメンバーの中にはいますけど…。

●そう思ってしまった以上は仕方がないというか。

篠塚:でもやっぱり、彼にもバンドを続けて欲しいんですよね。それぞれに考えていることはあると思うんですけど、メンバー4人で話し合ってはいないんですよ。あえて話さないようにしていて。話し合いをすれば“則雄が辞めても続けていくなら、メンバーをどうするか?”みたいな話になってしまうだろうし、それは友だちとして“不純”になってしまうから。

●話し合うことで、本当は辞めたいと思っていてもそう言いづらい空気にしてしまうのも嫌なのかなと。

篠塚:嫌ですね。バンドは会社でも仕事でもないから。特に僕らはずっと友だちとしてやってきたバンドなので、そこは崩したくないという想いがあるんです。でも覚悟を決めて、もし来年2月に則雄が“続けない”と言うのなら、その時はその時で考えようかなと思っています。

●たとえばそこで則雄くんが本当に辞めるという決断をした時に、バンドを解散するか続けるという結論を既に決めているわけではない?

篠塚:決めていないですね。ここで言っちゃっていいのかわからないですけど、続けたいとは思っています。僕自身は50代になっても続けていられるバンドになりたい気持ちがあって。eastern youthやフラワーカンパニーズ、エレファントカシマシみたいなバンドでいたいと思っているんです。逆にそうじゃなかったら、僕が今まで歌ってきたことは嘘になってしまうから。“結局、数年で辞める程度の音楽だったんじゃないか“と思いたくはないんですよ。

●今回のアルバムに寄せたコメントでしのくん自身が“このアルバムは、遅刻し続けた僕のファーストアルバム”と書いているのも、ここから先を見据えているからだと思うんです。

篠塚:僕らって、始まった時からずっと“未完成”なバンドなんですよね。最初のアルバムを作った時なんて、(Ba.琢磨)章悟はまだベースを始めて3ヶ月くらいだったし、いつも失敗しているというか。下北沢CLUB Queの二位(徳裕)さんにも“君たちはずっと失敗し続けていて、いつまでもゴールしないというところがブレていないよね”と言われるんですけど、本当にそうだなって思うんですよ。でもこのアルバムで初めて“僕らがやりたいことって、こういうことだったんだ”というのがわかったんです。

●ある意味、バンドとして目指すべきところがやっと見えた。

篠塚:“このアルバムでやっと僕らは始まれるんだな”と思いましたね。でもそれがもしかしたらなくなっちゃうかもしれないということに、僕は寂しさを感じていて。だから…このバンドが続いたらいいなと今は思っています。

Interview:IMAI

 
 
 
 

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