音楽メディア・フリーマガジン

嘘とカメレオン

中毒性のある多彩な楽曲に誘われて、宝物が待つヲトシアナに真っ逆さま。

嘘とカメレオンが、遂にメジャーデビューを果たす。2016年12月にYouTubeにアップロードした初制作のミュージックビデオ「されど奇術師は賽を振る」がインターネット上で大爆発し、公開から半年あまりでYouTube再生回数が180万回を突破(2018年9月現在では360万回超)。2017年9月にリリースした初の全国流通盤ミニアルバム『「予想は嘘よ」』はタワーレコードバイヤーのプッシュアイテム「タワレコメン」に選出され、2017年タワレコメンランキング第2位を獲得した。さらに2018年2月に渋谷WWWXで行われたワンマンもSOLD OUTさせるなど、まさに凄まじい上昇気流に乗っていた彼ら。そんな中で3月に交通事故でメンバーが負傷し、一時的に活動を休止するというアクシデントもあったが、不測の事態も乗り越えて強さを増した5人が今ここに辿り着いた。“待望”という言葉がまさにふさわしい1stフルアルバム『ヲトシアナ』は、彼らに向けられた大きな期待を全く裏切らないものだ。カメレオンのように多彩な変化を見せるバラエティ豊かな楽曲群は、“ジャンルレス”を標榜するバンドの真骨頂と言えるだろう。中毒性の高いサウンドの虜になってしまえば、もう彼らの仕掛けた“落とし穴”に真っ逆さま。その先には、未だ見たことのない宝物との出会いが待っているに違いない…。

 

Interview #1

「“カッコ良い/悪い”ではなく、もっと曲の本質的な部分に自分たちが寄り添えるようなものを作れたという感覚があって。“ずっとそばにいて欲しい”曲が作れたというか、そういう達成感はあります」

●本来は今年6月にメジャーデビューの予定だったわけですが、3月に交通事故でメンバー4人が怪我をした関係で9月まで延期になったんですよね。

渋江:自分たちでも、さすがに期間が空いてしまったなと思います。

渡辺:活動休止している期間も自分たちは何もできないのに、周りのバンドはゴリゴリ活動しているのを見ながら、怪我した左手を固く握りしめていましたね。怪我してから2〜3ヶ月くらいは、ギターも弾けなかったんですよ。

●今年2/3には渋谷WWW XでのワンマンもSOLD OUTさせて、さらに勢いに乗っていくところだったのでは?

渡辺:だから、本当に“出鼻をくじかれたな”という感覚が強かったです。

●それによって落ち込んだりもした?

渡辺:だいぶ落ち込みましたね。

青山:“マジか…!?”っていう感じでした。特に自分は病院で身体を固定された状態で、“ショックだわ〜”となっていましたね。

●青山くんが一番、重傷だったんですよね。

渡辺:事故直後は(青山は)集中治療室に入っていたので、親族にしか安否が伝えられないんですよ。生きているのか死んでいるのかも(親族ではない)僕らには教えてもらえない決まりになっていて。それが精神的にキツすぎて、初めて面会できた時は本当にメンバー全員が泣き散らしたんです。

●それくらいのことだった。

渡辺:でもそこを乗り越えたからには、なるべく良い方向にしか考えないようにしようと思って。ネガティブなことも全部、前に進むための糧にしなきゃいけないし、もっとポジティブな考えを持って前に進んでいかなきゃいけないと思ったんです。だから、あえて楽しそうに振る舞ったりもしていましたね。

●意識的にポジティブな方向に持っていこうとしたわけですね。

渡辺:活動休止の間は、僕もフラストレーションを溜めに溜めていたんです。ギターも弾けないし、ライブもできないし、まるで自分が音楽に関わっていない人みたいな生活をずっとしていたから。そんなフラストレーションがすごく溜まった状態で、既に作っている途中だった新曲を聴いてみたらダサすぎて“フザけんな!”と思って。

●自分の作った曲に腹が立ったと。

渡辺:そのあたりの曲を作っていた時期が本当に忙しすぎて、ちょっと妥協してしまっていたんですよね。それが自分で許せなくなって、3曲くらいボツにしちゃって。レコーディングも迫っていたんですけど、1から書き直したんです。その結果、めちゃくちゃカッコ良い曲が作れたので、そういうところも全部プラスに持っていけたなという自負はあります。

●忙しすぎる環境で余裕がなくなっていたところもあるんでしょうね。ある意味、活動休止期間を経たことで、冷静になれたというか。

渡辺:本当に余裕がなくなっていましたね。もちろん事故はなかったほうが良いに決まっているんですけど、起こってしまったからには全部をプラスにしてやろうと思って。休止期間中にも色んなことを考えて、それを楽曲の制作にもつなげていったという感覚があります。

●チャムさんはどうでしたか?

チャム:私も色んなことを考えていたんですけど、それを経て今の自分じゃないと書けない歌詞や、それを乗り越えてからの5人じゃないと作れないアルバムができたなと思っていて。結果的には良かったですね。

渡辺:語弊はあるかもしれないけど、(そういうこともあって)“良かった”と言い切れる作品ができました。

●その期間があったからこそ、楽曲や作品のクオリティも上がったところもあるわけですね。

渡辺:上りましたね。僕が新たに曲を書き直した関係で、事故後に書かれた歌詞というのもいくつかあるんですよ。事故の際、向かっていたライブ会場が広島で、実はちょうどチャムさんは地元が広島ということで先に現地に入っていて、(事故に遭った時)1人だけ車に乗っていなかったんです。でも1人だけ違う立場からメンバーが怪我した姿を見なければいけなかったことで、僕ら以上に考えることも多かったと思うんですよね。

●1人だけ立場が違っていた。

渡辺:僕らはやっぱり休止期間中は怪我を治すことで精一杯だったので、彼女のほうがもっとすごい量の考えを頭の中で巡らせていたと思うんです。そういうものが事故後に書かれた歌詞の中にも出ていると、僕はめちゃくちゃ感じていて。それが結果として、今回のアルバムの切れ味につながっているなと思うんですよ。特に言葉の面でつながっているなと強く感じています。

●事故後に歌詞を書いた曲はどれなんですか?

渡辺:M-1「百鬼夜行」、M-4「手記A」、M-5「青玉レンズ」、M-9「テトラポットニューウラシマ」の4曲は、事故後に書いたものですね。その中でも特に「百鬼夜行」に強く出ていると、僕は思っています。

チャム:「百鬼夜行」に関しては、今までになかったような“嘘カメ5人としての決意”が入った歌詞になったかなと思っています。

●MVも制作されたM-2「フェイトンに告ぐ」は一見どういう意味なのか想像できないタイトルですが、ここにもバンドへの想いが込められている?

チャム:この曲を作っていた時期に“やっぱりこの5人だな”という気持ちがあったから、“5”という数字にリンクしたタイトルを付けたいなと思っていたんですよ。“フェイトン”は“第5の惑星”みたいな意味があるんですけど、それと自分の中での世界観がリンクしたのでタイトルに使って。あからさまに“5”という数字は出てこないけど、“この5人の曲だな”ということを強く感じながら書きました。

●“フェイトン”は仮説上の天体を指す言葉でもあるわけですが、それも嘘カメのイメージに通じるなと思って。現実離れしたもののような存在感があるというか。

チャム:ちょっと浮世離れしているんですよね(笑)。“フェイトン”っていうのも、あるかないかわからない惑星の名前じゃないですか。それもすごく良いなと思って。その言葉自体は前から知っていたんですけど、この曲のタイトルを考えている時に「フェイトンに告ぐ」というタイトルが頭に浮かんで“もう、これしかない!”という感じで決めました。

●ちなみに菅野くんは「フェイトンに告ぐ」について“いつも感極まって泣きそうになりながら演奏している曲です”とツイートしていましたが、思い入れが強い?

菅野:すごくバンドのことを歌っている歌詞だから…。サビの後半部分は、特に泣きそうになりますね。

渡辺:歌詞の感情のピークとメロディのピークが上手くリンクしているから、そこの波長がピッタリと合った瞬間にグッとくるんですよ。菅野はそういうところをちゃんと汲み取っているんだと思います。

チャム:さっきも話したんですけど、今回の1〜2曲目は特にバンドとしての決意を書いたような歌詞になっているから。

●「百鬼夜行」もタイトルからして、見た目も含めて個性的なメンバーが揃った嘘カメを表している曲かなと。

渋江:それは自分たちでも、目指しているところではあると思います。やっぱり個人個人が好き勝手にやって欲しいという想いはあるから。

渡辺:それぞれの持っているものがすごく強いと思うんです。僕だけが持っているものもあれば、チャムさんだけが持っているものもあって。僕が持っているけれどチャムさんは持っていないものがあるし、その逆ももちろんある。そういうところがバンドにとって、すごく大きいと思うんですよ。

●お互いにないものを持ち寄って、1人だけでは作れないものを生み出している。

渡辺:特に僕が曲を書いて、チャムさんが歌詞を書いているので、そこのぶつかり合いから生まれる化学反応みたいなものがめちゃくちゃ大きくて。それは演奏にも言えることで、この5人が起こす化学反応という部分はすごく大きいなと思っています。僕らは予定調和じゃないものが欲しいから。

●同じギタリストでありながら、渡辺くんと菅野くんは見た目からして真逆ですよね。

渡辺:同じパートなのに、真逆っていう。でも2人が似たようなギターを弾いても、意味がないから。

●菅野くんも自分の個性を出せている?

菅野:僕の場合は“無”が個性なので、それは出せています。これだけ(渡辺の)キャラが立っていると、本当にありがたいくらいですね。

青山:対比がすごいからね。(渡辺)壮亮の個性が強すぎて、(菅野が)“無個性”なことが逆に強い個性になっているっていう(笑)。

渋江:美味しいよな〜。

●間逆なことで、菅野くんのキャラクターも引き立てられているんですね。

菅野:そうですね。本当に美味しいなって思います(笑)。

渡辺:結果論すぎますけど、マジでそうなっているんですよ。

 

 

●とはいえ菅野くんがTwitterを始めたのは、“自分も発信していかないといけない”という意識の変化があったからじゃないかと思うんです。

渡辺:それは僕らも訊いてみたいところですね。

渋江:今年の6月から急に始めたんですよ。

●Twitterを始めた理由とは?

菅野:まぁ…、“やらねばならぬな”と思っただけです。嘘とカメレオンをもうちょっと色んな人に知ってもらいたいなというところで自分に何ができるのか考えた時に、やっぱりTwitterは早い段階でやっておいたほうが良いなと今さら思ったというか…。

渋江:今さらだな〜(笑)。

渡辺:“早い段階”と思った時点が、遅いっていう(笑)。でも僕は嬉しいんですよ。今まで菅野はカメラを向けると、絶対に顔を隠すような男だったんです。でも今や誰に言われるでもなく、Twitterに自撮り写真をアップしているくらいで。“人って変われるんだな”と本当に思いました。

●渋江くんにも何か変化はあった?

渋江:さっき壮亮も話していましたけど、活動休止中は本当にフラストレーションがただ溜まっていく期間だったんです。ちょうど勢いに乗っていた時期に、いったん活動が止まっちゃって…。その間にも周りのバンドはアルバムリリースやタイアップだったり、フェス出演が決まったりしていたから、“あちゃ〜”という感じだったんですよ。でもそのぶん、“爆発力”みたいなものは活動休止前より増したんじゃないかということは、ここ何本かのライブをやっていて感じていますね。

●溜まりに溜まったものを今吐き出しているというか。

渋江:そうですね。

渡辺:(青山)拓心なんて、事故に遭う前よりもシンバルの音が大きくなっているんですよ。久しぶりにスタジオへ一緒に入った時も、シンバルの音がうるさく感じたくらいで(笑)。“やっぱり我慢していたんだな。ドラムが叩きたかったんだな〜”とは思いましたね。

青山:活動が止まっていたぶんの決意は、それなりにありますからね。人生観が変わったというか。事故って、そうあることではないじゃないですか。腰を怪我して歩けなくなったんですけど、そもそも“歩けなくなる”ということが今までなかったから。

●普通はなかなかない経験ですよね。

青山:壮亮も言っていたように、事故前は自分自身も妥協している面があって。それは意図的に妥協していたわけではなくて、自分では本気でやっているつもりなのにそうなってしまっていたんですよ。

渡辺:見えなくなっていたんです。

●無意識的にそうなっていた。

青山:でもそこで活動が1回ストップしたことによって自分の視野が広がったし、考えられることも増えたんです。それによって、“前よりももっとこだわらなきゃいけない”という意識が自分の中でも強くなって。そういうところが特に新曲の音にも出ているのかなと思いますね。

●バンドや音楽がやりたいという気持ちも強くなったのでは?

渡辺:そうですね。1周まわって、初期衝動を取り戻した感じがします。

渋江:ああ〜、それはわかる。

●それって、デビューして何枚もアルバムを出してから言うことのような気もしますが(笑)。

渡辺:確かに(笑)。でもそういう意味では、初期衝動すらも忘れてしまいそうな状況だったんですよ。本当に目まぐるしすぎて…。今になって、それを思い出せたのは良かったですね。

●そういう意味で事故からの活動休止期間を経たことで、地に足が着いた部分はあるのかなと。

渡辺:自分としてはずっと地に足を着けていたつもりだったんですけど、実際は数ミリ浮いていたのかなって今では思いますね。

渋江:そこでいったん冷静になれた部分は絶対にあると思います。

●冷静な目で見られたからこそ既に作っていた曲をボツにして、新たにもっと良い曲も作れたわけですよね。

渡辺:そうだと思います。たぶんあのまま作ってアルバムが完成していたとしたら、自分の中で腑に落ちるものにはなっていないというか。たぶん納得はいっていなかっただろうなと思って。“良い/悪い”よりも、納得が一番大事だなということに気付いたんです。“作り直して良かった”ということは、アルバムが完成して絶対にみんな思っていると思いますね。

●全員の納得するものができた。

チャム:単純に“前よりもカッコ良い楽曲になったから良かった”ということじゃなくて、“純度の高いものになった”という感じなんですよね。そこが一番納得できたところじゃないかな。

渡辺:確かに“カッコ良い/悪い”ではなく、もっと曲の本質的な部分に自分たちが寄り添えるようなものを作れたという感覚があって。“ずっとそばにいて欲しい”曲が作れたというか、そういう達成感はあります。

●“純度の高さ”という意味では、より自分たちらしいものができたのかなと。

渡辺:そうですね。より幅が広くなったけれど、より嘘カメっぽくなったと思います。そういう“矛盾”にも近い、良い現象が起きているんです。

チャム:確かに。

青山:本当にそう! よくわからないけど、そういうことだと思います。明らかにこれまでの曲とは違うんですよね。もちろん前の曲も嘘カメとしてカッコ良いものだったと思うんですけど、曲の“深み”が変わったなと思いますね。

 

 

 

Interview #2

「私たちは落とし穴を仕掛ける側なんですよね。これから“予期せぬことが起こりますよ”ということを、人に示していくためのアルバムというか」

●曲数も前作のミニアルバムから倍くらいの量ですが、今回はバラエティもさらに増した作品になっていると感じました。

渡辺:それができなかったら“カメレオン”という名を冠している意味がないと思っていて。“嘘とカメレオン”という名前はチャムが付けたんですけど、元々の由来は“多彩でジャンルレス”というところだったんです。そういうものをメジャーに行って、改めて提示したいという想いは強かったですね。

●“メジャーデビュー作”というところも多少は意識したんでしょうか?

渡辺:そこは考えました。それこそ自分としてはジャンルレスでずっとやってきたつもりだったんですけど、逆に“ジャンルが定まっていないね”と初期の頃からよく言われていたんですよ。そう言われることにすごく違和感があって。“俺はジャンルレスを(1つの)ジャンルだと思ってやっているんだけどな…”っていうところがあまり伝わっていなかったんです。

●“ジャンルレス”にこだわりがあった。

渡辺:そこを曲げたくなかったんですよね。“そのまま絶対に売れてやる”っていう気持ちが、そう言われれば言われるほど強くなっていて。“ジャンルレス”という自分たちのジャンルをメジャーデビューして一発目の作品でどこまで濃く出せるかっていうのは意識して作ったと思います。それが今回のアルバムを作る上で、自分の中では一番大きな目標でした。“何をやっても結局、我々になる。だから何をやっても良い”と言ってしまえるようなカッコ良さが欲しかったんですよ。

●だからタイアップに選ばれた曲も、嘘カメらしいものになっているのかなと。

チャム:ただ私たちがカッコ良いと思って作ったものを、(タイアップ作品の制作側も)同じようにカッコ良いと思って下さったという感じです。“共鳴した”というか、“同じ周波数で話せているな”というのを感じられる人ばかりでした。

渡辺:候補に出した曲を聴いて頂いたら、“何だ、これ? すごい曲だね!”という反応があって。“この曲が好きだから使いたい”という感じで言って下さったのが、嬉しかったですね。

●タイアップ曲のM-3「JOHN DOE」とM-10「モームはアトリエにて」は元々あった曲なんでしょうか?

渡辺:「モームはアトリエにて」に関しては、初期からずっとライブでやっている曲で。今回メジャーデビューにあたって再録したものを偶然、タイアップに選んで頂いたという感じですね。「JOHN DOE」は今回のアルバムのために書いた曲を気に入ってもらって、採用して頂きました。

●どちらもタイアップに向けて書いた曲ではないと。

渡辺:そうですね。「JOHN DOE」に至っては初めてドラマのタイアップに選ばれた曲なのに、Aメロからいきなり僕が歌い出すっていう(笑)。そういうふうにやりたい放題やっている楽曲を受け入れてくれる人たちが増えてきたというのが、今の自信につながっているなと思います。

●他の収録曲で言うと、M-8「うみねこの鳴く街で」だけは作詞・作曲共にチャムさんというのが気になりました。

チャム:今回の12曲の中で一番古くから嘘カメでやっているのが、「うみねこの鳴く街で」なんです。

渡辺:僕は後から加入したのもあって、入ったばかりの頃はまだそんなに曲を作っていなかったんです。当時は菅野が作った曲に、チャムさんが歌詞を付けたりもしていて。でもある時にチャムさんが“これを曲にしたい”と鼻歌でメロディを録ってきたものに僕がコード進行を付けたことがあって、それがこの曲なんですよ。

●作り方も今とは違っていると。

渡辺:コード進行を付けた関係で、この曲だけは僕がバッキングを弾いていて。それ以外のパートは“それぞれが思うようにやってみて”ということで、全員でアレンジした曲なんです。だからアレンジは“嘘とカメレオン”名義で、メロディを作ってきたチャムが作詞・作曲でクレジットされているんですよね。

 

 

●そんな初期からある曲を、今回のタイミングで収録しようと思った理由とは?

渡辺:色んなタイプの曲をやりたいという気持ちがあって。当時はまだあまり激しい曲調はなかったんですけど、その頃にやっていた楽曲も嘘とカメレオンとしての幅の一部かなと思ったんです。実際にこれまでもライブでやってきた曲ではあるので、“今”の嘘とカメレオンとして出すのは全然アリだなと思って収録しましたね。

●新旧問わず色んなタイプの曲が入っていることで、今の嘘カメが持つ幅の広さを見せられている。

渋江:今回の音源が完成して最初にまず聴いた時、自分自身も中にいる人間なのに“あ、嘘カメってここまで色々できるんだな”というのが第一印象としてあったんです。本当にジャンルレスだなと思って。

渡辺:(作品ができる度に)毎度そう思うよね。

渋江:毎度そう思うんですけど、今作が今までで一番、それを体現できている音源になったなと感じています。“1曲目の「百鬼夜行」はすごくゴリゴリなのに、最後のM-12「キンイロノ」はあんなにも歌モノなんだ…”っていう。アルバムを全部聴いてからループすると、またそこに戻るみたいな流れもあって。本当にすごいものができたなって自分たちでも思えているので、早く色んな人に聴いて欲しいですね。

●自分たちでもすごいものが作れたという実感があるんですね。

チャム:現時点で“嘘とカメレオン”が持っている色んな面を全て表せているというか。本当に1曲1曲が1つ1つの色を表しているなと思っていて。前作の『「予想は嘘よ」』は7曲入りだったのもあって、私は“虹みたいだな”と思っていたんです。7つの色があるというか。でもこのアルバムはもっと“カメレオン”に近くて、グラデーションみたいな部分もちゃんと曲に入ってるし、7色だけではない色が入っているなと思います。

●発売延期もあったけれど、ちゃんとファンの期待を裏切らないものになっているのかなと。

渡辺:一番裏切らなくて済む方法は、俺たちが一番楽しくやることだろうなと思っていて。そこは“メジャーだから”と変に意識することなく、自主制作盤も含めて今までの制作の中で一番やりたい放題やっているかもしれない。後半なんかは特にもう楽しくて仕方がなかったんですよ。そういう恵まれた環境でやらせてもらえたから、絶対に裏切るようなものにはなっていないと思います。事故で1回コケてしまいましたけど、今回の作品はものすごく爆発的なスタートダッシュが切れるものになりましたね。

●そんなアルバムに『ヲトシアナ』というタイトルを付けたのはどういう理由から?

渡辺:かなり幸先の悪いタイトルですよね(笑)。

青山:実際このタイトルを決めたのは、事故に遭う前なんですよ。だから、“おまえら、フザけてんのか?”って対バンにも言われました(笑)。

●まさに落とし穴があったと…。それでも変えようとは思わなかった?

チャム:思わなかったですね。この12曲を表すのにピッタリなタイトルだと思ったから。落とし穴に自分が落ちる側だと考えたら縁起が悪いけど、私たちは落とし穴を仕掛ける側なんですよね。これから“予期せぬことが起こりますよ”ということを、人に示していくためのアルバムというか。今回の『ヲトシアナ』というタイトルは、そういう意味かなと思っています。

●ここに仕掛けられた落とし穴に落ちても、その先に悪いことが待っているとも限らないわけですよね。

チャム:もしかしたら落ちた先に、宝物があるかもしれないから。このタイトルを決めた時も、そういう落とし穴を思い浮かべていました。

●“オトシアナ”ではなく、“ヲトシアナ”にしているのも嘘カメらしさかなと思いました。

渡辺:ちょっと奇妙な感じというか、違和感を出したいなと思ったんです。

●違和感を狙っていたと。

チャム:違和感と、私たちの反骨精神みたいなところも出ていると思います。普通の落とし穴だったら“オ”だけど、あえて“ヲ”にしているのは“私たちの作る落とし穴はそういうものじゃないよ”という反骨精神が出ているのかなって。

青山:“ただの落とし穴じゃないよ”というか。

渡辺:“嘘カメ流の落とし穴”というところで、“何が起こるかわからない”という意味もあるかもしれない。

●自分たちでも“これから何が起こるかわからない”というところで、ワクワクしている部分もあるのでは?

チャム:初期からずっと、そういうことは感じていて。これからも大変なことはあるだろうけど、どんなことがあっても全てをこのバンドで楽しんでいけたら良いなと思っています。

菅野:今はもうワクワクしかしていないですね。事故に遭って(青山の)生死もわからない状態になった時に、“バンドメンバーってすごく大事なんだな”と改めて感じて。何なら家族よりも長い時間を一緒に過ごしているわけですからね。これからも一緒にやっていけると考えただけでも嬉しいし、楽しみだなって思います。

●もしかしたら危険な落とし穴も待ち受けているかもしれないけど、そこを避けながら一緒に進んでいく楽しさもあるのかなと。

渡辺:そうですね。そこを一緒に行けるのは、この5人だからこそなのかなと思っています。

青山:落とし穴に1人だけ落ちるのは怖いけど、5人一緒だったら落ちていくのも面白いかもしれないなって。

渋江:逆の視点から言うと、今回のアルバムで初めて嘘カメを知ってくれた人たちが、良い意味で落とし穴に落ちてくれたら良いなと思っていて。僕らの“中毒性”みたいなものにハマってくれたら良いなという意味合いもこのタイトルには含まれているんじゃないかなと、個人的には思っています。

●「ここHOLEヲトシアナTOUR」というツアータイトルも、“ヲトシアナ”にポジティブな意味合いを持たせているように感じました。

渋江:そうですよね。どこまで行ってもちょっとしたニヒルさや小生意気な感じがあって欲しいなと思うし、それがこのバンドの色でもある気がするから。そういう意味合いでも、すごくハマっているタイトルなんじゃないかなと思います。

●では最後に青山くんからツアーに向けての意気込みを頂けますか?

青山:自分の中で、ツアーは“宴(うたげ)”みたいなイメージがあるんですよね。僕自身も嘘とカメレオンのメンバーでありつつ、ファンの1人でもあって。CDは作品として世に残すものであって、ライブはそれを同志と肩を組んで“嘘とカメレオンってカッコ良いだろ?”っていう感じで一緒に楽しめる場だと思うんです。ツアーに向けては“こんなに良いものができたんだから、みんなで一緒に楽しもうよ”っていう気持ちでいますね。

Interview:IMAI
Live Photo:寒川大輔

 

 

 

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