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HIGH BEAM RECORDS座談会

『V.A.ULTRA HIGH BEAM 2018』発売記念SPECIAL TALK SESSION ライブに生命を懸ける11組がボーダーを超えて交わり合う。

PARKLIFE、PICKLES、Maxn、フラスコテーションの4組が所属するHIGH BEAM RECORDSが、全国各地のライブハウスで出会った7組を加えた全11組によるコンピレーションアルバム『V.A.ULTRA HIGH BEAM 2018』をリリースした。全組が新曲新録ということだけをコンセプトに集められた楽曲がいずれも強烈な個性を発揮した、多彩でボーダーレスな作品となっている。ライブハウスという“現場”でしか味わえないような高揚感をもたらす今作の発売を記念して、野澤太秀(PARKLIFE)とRURI(PICKLES)と秋山 琢磨(HIGH BEAM RECORDS)による特別対談が実現!

 

●まずは今回『V.A.ULTRA HIGH BEAM 2018』をリリースした経緯からお聞きしたいのですが。

秋山:レーベル(※HIGH BEAM RECORDS)を立ち上げてから約1年になるんですけど、当初からこういう構想はあって。最初に今の所属している4バンドを決めた時も、自分の頭の中で音楽的なタスク分けがあったんです。それぞれのバンドが違うタスクに分かれているんですけど、僕の頭の中ではそこからさらに枝分かれしていて。その枝分かれした先にいるようなバンドたちが世の中にはまだまだたくさんいて、ライブハウスという現場で命を削って頑張っているんです。そんな仲間たちを集めて、1枚の作品を作りたいなと思ったのがキッカケですね。

●ライブハウスで出会った仲間たちを集めたオムニバス盤というか。

秋山:そもそもこの4バンドとも、僕が自分の足で全国各地に出向いた中で出会ったんです。今の所属バンドはみんな平成生まれなんですけど、この子たちが育った音楽的な環境と、僕ら昭和生まれの世代が育った環境では全然違うんですよね。

●たとえば1990年代と今とでは、CDの売上枚数自体も全然違うわけですからね。

秋山:そういう状況の中でも、あくまで僕はライブハウスでCDを売るということにこだわっていきたくて。あえて時代に逆らうというか、バンドを集めてオムニバスCDを作るという一連の作業をする中で、未来につながる何かが生まれるんじゃないかと期待しているんです。そのためにもできれば毎年出したいなと思っていて、今回はそのキッカケの1枚でもありますね。

●今回のCDに関しても、ライブハウスで直接売ることにこだわりたい?

秋山:自分の手で直接CDをお客さんに買ってもらうことって、売れてからではなかなかできないじゃないですか。その喜びを知っているバンドと知らないバンドとでは、レコーディングの作業や1枚の作品を作るという行為に対する温度差がすごくあるなというのを自分の経験から感じていて。現場で出会ったバンドたちだからこそ、今後もっと上のステップに進むとしても、そういう喜びを噛み締めた上で進んでいって欲しいなと思うんですよ。

●実際にPICKLESは現在100本のツアーをまわっている途中ですが、平成生まれのバンドからすると未体験の部分も大きかったのでは?

RURI:私たちPICKLESは元々、ライブも結構やっているほうではあって。でも1本のツアーとして、短期間でこれだけの本数をまわるのは初めてでした。

太秀:僕らは元々あまりライブ本数が多くはなかったので、最初に(リリースツアーが)60本とか聞いた時は“嘘だろ!?”と思いましたね(笑)。

●経験がないと、そう思いますよね。

太秀:最初は“こんなにまわるの!?”っていう感じだったんですけど、実際にまわってみたら“もっと行けたんじゃない?”という感覚になって。ツアーで色んな人と出会えることが、楽しくなってきたんですよね。普通の生活をしていたら絶対に出会わないであろう人たちとも、たくさん知り合えたのはすごく良かったです。

●同じレーベル所属のPICKLESやMaxn、フラスコテーションとももしかしたら出会っていないかもしれない。

太秀:きっと出会わなかったでしょうね。まだサウンド的にMaxnとは出会っていたかもしれないですけど、フラスコテーションとPICKLESとは出会っていない気がします。

RURI:私たちは、どのバンドとも出会っていなかったかもしれない…(笑)。

秋山:イベントで偶然出会ったとしても、交わることはなかったかもしれない4バンドですよね。

●現在の所属4バンドは音楽的にもバラバラだと思いますが、あえてこうしたんですか?

秋山:あえてこうしました。さっきも話した自分なりのタスクが4つあって、それぞれの枠に当てはまる4バンドでスタートしたんです。でも実は最初から、この4バンドにしか声をかけていないんですよ。

●あ、そうなんですね。

秋山:この中で2組くらいは“やる”と言ってくれるかなと思っていたら、みんな“やる”となったので4バンドになったんです。あえてジャンルを外しているところはありますね。たとえばライブハウスの人や他のレーベルの人からバンドを紹介してもらうこともあるんですけど、“この枠はPARKLIFEがいるから別に良いや”とか“この枠はPICKLESがいるから良いや”という感じで考えていて。

●あえて違う色のバンドを揃えている中でも、どこか共通するところはあるんでしょうか?

秋山:“ライブに命を懸けている人”というのは絶対条件としてあって。すごく良い音源を作って、たまにライブをやればお客さんもたくさん入るようなバンドというのも、それはそれで利口な活動の仕方だと思うんですよ。でもそういう器用な人と、自分との間に化学反応が生まれる気がしないから。もっと汗臭く泥臭くやっているヤツらのほうが、自分の性(しょう)にも合うなと思うんですよね。

●PARKLIFEは元々ライブの本数は少なかったという話ですが、どこに惹かれたんでしょうか?

秋山:PARKLIFEに関しては、“歌”ですね。古さも新しさも感じるし、カッコ良いところもあればダサいところもあるっていうところで、“人間味がすごく深いな”と感じたんです。そういうメンバー3人と自分との化学反応で、面白い結果が生まれるんじゃないかと思いました。

●PICKLESは、どういうところが?

秋山:PICKLESは…本人を目の前にして言うのも何なんですけど、RURIという人間がステージに立つ姿にすごく未来を感じたんですよ。“いそうでいない”というか。“この子がこういう歌を歌えるようになれば、どういう景色が見えるのかな?”とか色んなパターンを想像した時に、自分が追いかけたいと思う景色とリンクする景色がいっぱいあったので“この子たちと一緒に音楽をしてみたいな”と思ったんです。

●RURIさんはステージ上のアッパーな姿と、普段の大人しい姿とのギャップがすごいですよね。

RURI:そうなんです…(笑)。

 

 

秋山:この4組の中で、そこはRURIが一番違いますね。

●ステージ上では何かスイッチが入っている?

RURI:完全にそうですね。ステージに立っていない時にもそういう人格が出れば良いのになと思うこともあるし、逆にステージでもっと冷静にできれば良いのになと思う時もあって…。やっぱりステージだから、ああいう感じになるんだと思います。

秋山:レコーディングで初めて長い時間一緒にいたんですけど、“こんなにフニャフニャしたヤツだっけ?”と思って、ちょっとビックリしましたね(笑)。

●太秀くんもステージ上ではすごく熱いことを言ったりするのに、普段はわりとフニャフニャしていますよね(笑)。

秋山:フニャフニャしていますね。ギャップ萌えなんじゃないですか(笑)。

太秀:自分ではよくわからないんですけど…、ステージに上がったら“自由”というか。ステージの上では“自分の素を出して良い”とライブハウスで先輩たちに教わってきたので、自由にしているんです。

●今回のオムニバスの中で、PARKLIFEに近いものを感じるバンドもいるんでしょうか?

秋山:僕の中では、obiは何となくPARKLIFEと対(つい)にしたいなと思っていたバンドですね。

太秀:まだ対バンしたことはないんですけどね。

●PICKLESに近いものがあるのは?

秋山:SLINGSHOT MILLION2のライブ感とかは、PICKLESと通ずるものがあるなと思います。ライブの見せ方はちょっと違うんですけど、パーティー感みたいな部分では近しいところにいるんじゃないかな。あと、Boiler陸亀に関してはMaxnの要素もあるし、PICKLESの要素もあるように感じますね。

●逆にレーベル所属バンドとは全く違う色を持ったバンドもいる?

秋山:隔たりと、吐露。は今作で唯一の弾き語りなんですけど、独自の世界観を持っていて。“バンドじゃない”というところに面白さがあったりもしますね。pressureはメンバーの内2人が外国人というのもあって、表現する世界観も他とは全然違う気がします。個人的には、Maxnとpressureは近いところがあるとは思いますけどね。あと、DATE ME GANEも他にあまりいないタイプかもしれない。

●ハイファイコーヒーズはどうですか?

秋山:ハイファイコーヒーズは自分の中で、インディーズという世界における“鑑(かがみ)”のような存在で。インディーズバンドとしての“ソウル”的な部分や在り方が、本当にすごいなと思います。ツアーでもないのに、年間100本くらいライブをやっている人たちなんですよ。

●まさしくライブに命を懸けている。

秋山:“バンドしかできない3人”という感じがしますね。そういう意味でも、今回のコンピを一緒に作る上で協力してくれた大事な仲間だと思っています。

●今回の収録曲はどのバンドも個性が出ていて、パンチのある曲ばかりだなと感じました。

秋山:みんな、本気の曲を持ってきてくれましたね。所属の4バンドに関しては、“こういうところを狙おうか”といったことを僕と話し合った上で候補曲の中から選びました。

●PICKLESは今年5月にリリースした1stミニアルバム『ADVANCE STEP』とも、また違う印象の曲かなと思ったんですが。

秋山:そうですね。歌詞の世界観について“こういう景色を描いてみようよ”と相談した上で、色々と試行錯誤しながら書いてもらいました。

RURI:今回の曲はツアー中に書いたんですよ。だから、ツアー中じゃないとできないような曲になったなと思います。

●ツアー中の感覚を曲に投影していると。

RURI:今だからこそ作れた曲という感じがします。

秋山:ちょうどツアーが20本くらい終わったところでレコーディングしたんですよ。PARKLIFEもそういう曲かもしれないですね。

太秀:…はい?

●えっ、本人的には違うんですか…?

太秀:僕らは普通に“とりあえず楽しんで作ろうか”という感覚で作った曲なので…。楽しい曲にはなっているんじゃないかなと思います(笑)。

秋山:彼はそのあたりが面白い人で、曲で表現することと普段話していることが頭の中でリンクしていないんですよ。たとえば“こういうことを歌っているんだから、こういうことを思っているんじゃないか”と僕らが解釈するじゃないですか。でも本人に訊いてみると、全然とんちんかんなことを言うんですよね(笑)。

●ハハハ(笑)。本人に自覚はないと。

秋山:たぶん今の気持ちやバンドの状態が出ている曲だと、僕は思っていますけどね。

太秀:僕が歌っていることは結局、“憧れ”でしかなくて。理想や憧れについて歌っているので、別に自分のことを歌っているわけじゃないんです。“こう在りたかった”とか“こういう人間になりたかった”ということしか歌っていないから。

秋山:要するに“等身大”なんですよ。

●何かを狙って書いているわけではないし、嘘のない表現になっている。では最後に今作全体を振り返って、どんな作品になったと思いますか?

太秀:この1枚を聴いて“音楽は本当に自由なんだな”と思ったんです。“何をして良いんだな”と思ったし、それを象徴するようなオムニバスというか。まだ会ったことがないバンドもいるんですけど、“音楽をやっていればそれだけで幸せ”っていう人たちなんだろうなって簡単に想像できるんですよね。

RURI:ハイファイコーヒーズとか関西勢は特にそうなんですけど、“持っていかれるな〜!”感がすごかったですね。隔たりと、吐露。も唯一の弾き語りだからこそのトガッた感じが出ているのがすごく良くて。やっぱりこの4バンドのジャンルがバラバラだったからこそ、こういうバンドが集まったんだろうなというのはすごく感じました。本当に飽きさせない作品になっていると思います。

秋山:こういうバンドの集め方をする人は、きっと他にいないだろうなって思うんですよ。他のどのレーベルにも作れないオムニバスだろうし、この1枚は僕らにしか作れないものだと思いますね。

Interview:IMAI
Assistant:Shunya Hirai

 

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