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HiEND

リアルな想いをグッドメロディに乗せ、高みへと駆け出していく。

グッドメロディを軸に懐かしくも新しいサウンドを奏でる3ピースバンド、HiENDが1stミニアルバムを完成させた。西海岸系のメロディックパンクやポップパンクを中心に、様々なジャンルの音楽から受けた影響を昇華した楽曲は彼ら独自のものだ。洋楽的なエッセンスを漂わせつつも、日本語詞も巧みに取り入れることでリアルな心情と世界観を描くことに成功している。3/1に下北沢CLUB251で行うレコ発イベントから販売開始する今作を手に、高みを目指して駆け出していく3人への初インタビュー(※Ba.達也はインフルエンザのため欠席)。

 

「色んな人が愛でてくれた過程を経て、作品が世の中に出ていくんだなと感じて。だからこそ、しっかりと愛のある作品ができたのかなと思います」

●2017年8月に結成したそうですが、メンバー同士はどうやって出会ったんですか?

誠也:最初に自分と達也がバンドを組もうということで2人で動き始めて、そこからメンバーを探すために近くのスタジオをまわってデモ音源を店長さんに渡していたんです。そういう中で、達也が個人練習でスタジオに入っていた時に亮と出会って。

亮:たまたま俺も同じタイミングで個人練習に入っていたんですけど、スタジオの喫煙所で達也にめちゃくちゃ話しかけられて。最初は“何だ、こいつ?”と思っていたんですけど(笑)、そこから仲良くなった感じですね。

●近くのスタジオをまわってデモ音源を配るという方法を取ったのは、どういう理由から?

誠也:前のバンドをやっていた時から、メンバーを探す時はなるべく自分の足を使うっていう方針があって。あと、僕と達也の中でまず“家が近い”というのがメンバーを選ぶ第1条件だったんですよ。そのほうがバンドとして、活動しやすいから。それで地元の人がよく使っているようなスタジオをまわって、店長さんに良い人がいないか訊いていたんです。

●なるほど。家が近い以外で、何か求める条件はあったんでしょうか?

誠也:ある程度ドラムが叩けて、自分たちが持っていったデモ音源の曲が嫌いじゃない人なら…という感じでした。

亮:最初の段階では、サポートメンバーとして参加して欲しいという話だったんですよ。当時は俺もまだ前のバンドをやっていたというのもあって。

●そこから正式加入するキッカケとは?

亮:デモ音源を聴いているうちに、“歌が良いな”と思うようになってきたんですよね。歌が良いし、変なヤツ(=達也)もいるから(笑)。打ち上げに出ても、強いだろうなと思って。

●達也くんのキャラクターも良かったと。

誠也:達也は、酒呑みなんですよ。

亮:それもあるけど、営業担当としても強いんです。どこに行っても、一発で顔を覚えられるから。たまにやらかすこともあるんですけど、そういうところは良いなと思って。歌と曲は良いから、他のダメな部分は俺が全部教育していこうと思いました(笑)。

●メンバーの教育係なんですね(笑)。最初からどういうサウンドがやりたいというイメージはあったんですか?

誠也:メロディックなバンドをやりたいというのは、自分の中で決まっていました。今作『HiEND』の中でもM-1「ROCK STAR」とM-2「Good bye」は、初期からある曲ですね。

●他のメンバーもメロディックパンクが好き?

亮:メロディック系も好きなんですけど、俺はエモ〜スクリーモやメタルコアとかが元々好きなんですよね。速い曲が好きなんです。達也は…よくわからないです(笑)。

誠也:達也は音楽を知ったばかりの赤ちゃんみたいな感じなんですよ。楽器を始めたのも18歳くらいからで、ベースをちゃんと弾くようになったのもこのバンドを始めてからだと思います。だから逆に何を聴かせても、“これ良い!”っていう感じで受け入れられるんですよね。

●素直に吸収できると。「ROCK STAR」には“13歳でギターを初めて弾いた”という内容の歌詞がありますが、これは誠也くん自身のこと?

誠也:そうですね。まさに歌詞どおりの流れで、成長していった感じです。

●ということは歌詞のとおり、お父さんにFコードを習った?

誠也:最初にそれだけ教えてくれて、“ちゃんと音が鳴るようになったら他のコードも教えてやる”と言われたんです。

●誠也くんのお父さんは音楽が好きなんですね。

誠也:父親は元々バンドマンで、家にスタジオがあるくらいドラムが好きなんです。色んな音楽を聴く人なんですけど、車の中でTHE OFFSPRINGを流していたのがこういう音楽を好きになるキッカケの1つかもしれないですね。

●なるほど。13歳でギターを弾くようになって、すぐにバンドを始めたんでしょうか?

誠也:中学の時にはもうバンドをやろうと決めていたんですけど、同級生に楽器をやりたいという人が少なくて。当時はベースと自分の2人だけで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBEAT CRUSADERSのコピーをしていました。あと、友だちに教えてもらって、『BECK』(ハロルド作石/講談社)のアニメを見たこともキッカケかもしれない。1番の歌詞にある“I was made to hit in America”というのは、『BECK』のオープニングテーマだったBEAT CRUSADERSの「HIT IN THE USA」からの引用なんですよ。

●そこも実体験に基づいているんですね。2番の歌詞は高校時代のこと?

誠也:そうですね。高校で軽音楽部に入って、新しい友だちもできて。同じクラスにかわいい子がいたんですけど、その子も音楽好きだったんです。文化祭の後夜祭でその子と一緒にバンドを組んで、ライブもやりましたね。

●他の曲も含めて、恋愛を匂わせるような歌詞が多いように思ったのですが。

誠也:実は…これは誰にも言っていなかったことなんですけど、どの曲も全て同じ子について書いているんです。

●だからM-3「モノクロ」でも“気がつけばあなたに僕は何度も恋をして”と歌っているんですね。

誠也:そうなんです。「ROCK STAR」も「Good bye」も「モノクロ」もM-6「Friends」も全部、同じ子について歌っていて。角度が違ったり、時期が違ったりはするんですけどね。

亮:そうなんだ…!

●メンバーも知らなかったんですね。

誠也:恥ずかしくて言えないですよ(笑)。

亮:今後、新曲を書きづらくならない? “今、こんなことになっているんだ…”っていうのが俺らにバレちゃうから(笑)。

●確かに(笑)。その子とは結局、付き合ったんですか?

誠也:高校で出会った時点では、まだ付き合っていなくて。専門学校の途中でちょっとだけ付き合うんですけど、2ヶ月くらいでフラれちゃったんです。それが「モノクロ」の歌詞になっていますね。

●色んな曲で歌うくらい、その子への想いが強いということですよね?

誠也:そうですね。自分の中で、一番の思い出みたいなところはあります。

●「モノクロ」は全て日本語詞ですが、英詞との使い分けは何か基準があるんでしょうか?

誠也:自分はメロディが先にできるタイプで、歌詞は後から書いていて。“この曲は全部、英語のほうがカッコ良いな”とか、そういうニュアンスで決めていますね。語呂が悪いと、何度も書き直すんですよ。書いては消してを繰り返して、自分が一番気に入ったワードが揃った時にやっと完成するんです。自分が気に入らないと、2番以降を歌いたくなくなっちゃうから。

●M-5「the Summer song」や「Friends」は英詞の途中に日本語詞が差し込まれていますよね。これはどういった狙いで?

誠也:自分は2番のサビに日本語を使うことが多くて。日本語が急に入ってくることによって、ちゃんと伝えたいことを届けられるんじゃないかと思うんですよ。2番の歌詞って忘れられがちなんですけど、日本語にすることで覚えてもらえる気がするから。

●「Friends」はMVにもなっていますが、自分たちの中でも特に自信のある曲なんでしょうか?

誠也:そうですね。「Friends」は亮くんが入ってから、アレンジもガッツリ変えたんですよ。

●元々はどんな感じだったんですか?

亮:速いメロコアっていう感じでしたね。そこからは結構変わったと思います。

誠也:“ザ・メロコア”っていう感じの曲だったんですけど、“もっと歌を聴かせても良いかな”と思ったのでそういう方向でアレンジを変えて。聴きやすくしつつも、サビはちょっと重い感じにしたのは亮くんから出たアイデアですね。

亮:せっかく良いメロディなのに、ただのメロコアで終わらせるのはもったいないなと思ったんですよね。

●亮くんからアレンジのアイデアが出ることもあると

誠也:「the Summer song」も元々は速いメロコアの曲として作る予定だったんですけど、メロディを聴いた瞬間に亮くんが“ちょっと待って。もったいない!”って言い出して。“この曲はスロウビートで叩いたほうがカッコ良い”と言ってくれたので、そういうアレンジにしたんです。今までにないタイプの曲になったし、ちょっと懐かしい感じも出ましたね。

●結果的に、亮くんのアドバイスがキーになったんですね。

誠也:そうですね。

亮:達也は基本的に、役に立たないから(笑)。

誠也:あいつが聞いたら、怒るぞ(笑)。

●ハハハ(笑)。達也くんからはアイデアが出てこない?

誠也:“良いっすね!”と言うのが、基本的に彼の仕事なんです(笑)。ムードメーカー的な役割もありますね。

亮:誠也を褒めるのが仕事です。

●それによって、モチベーションも上がるのでは?

誠也:それもありますね。メンバーからは自分にないアイデアが出てくるので、そこは大事にしたいと思っています。

●なるほど。先ほど“ちょっと懐かしい感じ”という話もありましたが、HiENDのサウンドはどこか80〜90年代的な匂いがします。

誠也:母親も音楽好きだったので、小さい頃から家の中ではレッチリ(Red Hot Chili Peppers)やヴァン・ヘイレンが流れていたんですよ。自分が好きで聴いていたわけではないんですけど、自然にそういうものが耳に入ってきていたんだと思います。

●無意識に吸収していた音楽が、身体に染み付いているんでしょうね。

亮:アレンジ面でも、西海岸系サウンドやハードロックっぽい感じにあえてしているところもあって。“日本のロック”的な聞こえ方があまりしないように意識している結果が、もしかしたら懐かしい感じにもつながっているのかもしれないです。

誠也:“アメリカっぽいものがカッコ良い”という感覚が、僕らにはあるんですよね。

●英詞メインでやっているのも、そういう理由から?

誠也:アメリカへの憧れが一番の理由ですね。メロディの流れ方も、英語のほうがきれいだなって思う瞬間が多いから。日本語が上手くハマる場合もあるんですけど、最初から日本語詞を書こうとするとなぜか上手くいかないことが多いんですよ。「モノクロ」が初めて“日本語詞で上手く書けたかな”と思えた曲ですね。

●M-4「moment」も全て日本語詞ですが、これは他とはまたタイプの違う歌詞ですよね。

誠也:この曲は前にやっていたバンドの時に書いていたんですけど、ニュアンスがちょっと違ったのでやらずに取っておいたものなんですよ。その当時にライブを観に来てくれていたお客さんの中に大学受験や就職といった、人生の岐路に立たされている人たちがいて。そういう人たちの背中を押せるような曲になったら良いなと思って書いた歌詞なので、自分の中では応援歌的なイメージもありますね。

●自分自身に向けて歌っている部分もあるように感じたのですが。

誠也:そういうところもありますね。1番の歌詞は前のバンド時代に書いたんですけど、2番の歌詞は今のバンドになってから書き足したんですよ。前のバンドが解散して“これからどうしようか…”と悩んでいる時のことを書いたので、こういう歌詞になったのかなって思います。

●恋愛のことも含めて、本当にリアルな想いを歌にしている。

誠也:そうですね。今後も自分の身に起きたことや近しい人に起きたことも取り入れながら、“リアル”を描いていけたらなと思っています。

●今回、初のミニアルバムを制作した中で見えたこともあるのでは?

誠也:色んな方と出会って一緒に今回のミニアルバムを作り上げていく中で、作り手の自分たちだけがその作品を愛しているわけではないことに気付いたんです。初めてマスタリングもして頂いたんですけど、エンジニアさんやデザイナーさん、スタッフさんも含めた色んな人が愛でてくれた過程を経て、作品が世の中に出ていくんだなと感じて。だからこそ、しっかりと愛のある作品ができたのかなと思います。これがみんなにも届いて、もっと愛してもらえたら嬉しいですね。

●3/1には下北沢CLUB251でレコ発イベントも予定していますが。

亮:結成から積み重ねてきたことを詰め込んだミニアルバムのレコ発なので、気合いを入れて臨みたいと思っています。対バンも錚々たるメンツなので、色んな人に見て欲しい1日ですね。

誠也:昔からつながりのある方々と肩を並べて一緒にライブできるのは、感慨深いものがありますね。ちゃんとした3マンをするのが、実は人生で初めてなんですよ。CLUB251の仁侠さん(ブッキング)が僕らの尻を叩くようにこういう機会を与えて下さったので、それを無駄にしたくないっていう気持ちが強いです。アーティストの命とも言えるCDができたので、その誕生日を盛大に祝えたらなと思っています!

Interview:IMAI
Assistant:Shunya Hirai

 

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