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SPOOL

深く歪みながらも甘美でドリーミーな旋律が天上へと誘う。

深く歪みながらも甘美でドリーミーな旋律を奏でるガールズ・4ピースバンド、SPOOLが初のフルアルバムを完成させた。2012年の結成以降で自主リリースやライブを重ねつつ、海外でのリリースや公演も行い、国内外で評価を高めてきた彼女たち。2018年には新メンバーを加えて4人体制となり活動をより活発化させる中で生まれた今作は、これまでの集大成とも言えるだろう。USインディーやオルタナからUKロックやシューゲイザーまで昇華した、唯一無二の名作誕生を記念して初インタビューが実現した(※Dr.あらんは事情により欠席)。

 

「射し込んでくる光を海の中から見上げているようなイメージが自分の中にあって。位置としてはすごく下のほうにいながらも、光を見上げているという意味では前向きなんです」

●2018年にショウジさんが加入して、現在の4人体制で動き始めたんですよね。

こばやし:去年4月にすみちゃん(※ショウジ)が加入して、4人体制になって。そこからライブを本格的にやるようになったり、今回のアルバムを出す準備をしたり…、去年はたくさん活動した1年でした。

●ショウジさんが入ったことで、活動が活発化した?

安倍:本当にそうだと思います。

こばやし:加入したことで、急に“パーン!”と弾けた感じがするというか。バンドが活動的になったので、(元からいる)私たち3人のモチベーションも上がりましたね。4人になってからはより能動的にイベントにも参加するようになって、活動を広げてきた感じです。

●自分たちのモチベーションにも良い影響が出たと。

こばやし:そうですね。あと、それまで音源では音を重ねていたんですけど、ライブではギター1本で表現していたので正直、表現しきれない部分があって。頭の中では常に鳴っているものを(現実では)表現できない“もどかしさ”みたいなものがすごくあったんです。

●ギター1本では限界もありますからね。

こばやし:でもすみちゃんが入ってくれたことで、頭の中にあった音を実際に鳴らせるようになったのがすごく嬉しくて。音が1つ増えることで、すごくメロディアスにもなるんですよね。そういった意味で“表現できる幅が広がったな”という実感も、楽しさにつながりました。

●そういうことができるプレイヤーだと思ったから、ショウジさんを誘ったんでしょうか?

こばやし:いや、プレイヤーというよりは、“人として”という部分が大きいですね。私の後輩なんですけど、昔からよく遊んだり、一緒にライブを観に行ったりしていたんです。3人でバンドをやっていた時に自分の中で限界も感じていたし、“別に3人にこだわらなくても良いな”と思った時にすみちゃんのことが頭に浮かんだのでお誘いしました。

ショウジ:前からよく一緒に遊んでいて、波長が合うので楽しいなとは思っていたんです。音楽の趣味もすごく合うんですけど、(こばやしは)趣味がちょっと女の子らしくないのが良いなと思っていて。

●女の子らしくないんですね…。

こばやし:逆にすみちゃんは、女の子らしい雰囲気なのが良いなと思っていて。醸し出している雰囲気が、今までの自分たちにはなかったものというか。(加入することで)何かが変わる気がしたので誘いました。

●バンド全体の空気を変えてくれる予感があった。

こばやし:3人の時は、もっとトガッている感じだったんです。特に私はあまり愛想が良い感じではないというか内向的で、ニコニコしながらライブをやるタイプではないから。そういう意味で(ショウジは)バンドの雰囲気を明るくして、変えてくれそうな存在だなという予感がしたので誘ってみました。

●ショウジさんは明るい?

安倍:明るいというより、社交的というか。

こばやし:特に私たち2人は、本当にそういうタイプではなくて。3人の時はDr.あらんが頑張って、その役割をやっている感じだったんです。だから“違うタイプの人を入れることで変わるんじゃないか”というのは、無意識に感じていたのかもしれないですね。

●音楽の趣味が合うというのも大きかったのでは?

こばやし:私たちはシューゲイザー系のバンドではあるので、すみちゃんにそういう音楽を勧めたら“良いね”と言ってくれて。そういう音を受け入れる体制もあるんだろうなと思ったのも、誘った理由ではありますね。

ショウジ:ライブも観に行っていて、“カッコ良いな”と思っていたんです。“女の子なのに、男らしい音だな”という印象があって。そこがすごく好きだったので、“ここだったらやっていけそう”と思いました。

●自分もM-1「nightescape」を初めて聴いた時に、男らしいなと感じました。

こばやし:イカツいですよね(笑)。聴いた人に“あれっ!?”となって欲しくて、この曲を最初に持ってきました。

ショウジ:今回のジャケットを先に見てから1曲目の音を聴いたら、“えっ!?”となると思うんです。でも私が元々SPOOLを好きだった理由も女の子っぽくないからなので、そういう意味でもこの曲を最初に持ってきた意味は大きいと思いますね。

●イメージを裏切る感じというか。ちなみに自分たちがシューゲイザー系だという意識はあるんですか?

こばやし:正直、自分たちがシューゲイザーだとはあまり思っていないです。でもたとえば轟音ギターやリヴァーヴだったり、部分部分でシューゲイザーへの愛情を楽曲に取り入れたいとは思っていて。オルタナっぽい荒削りなスタイルや雰囲気が好きなのでそこの割合を一番大きくしつつ、シューゲイザーの要素もポイントで入っているようなバンドにしたいですね。

●M-2「Be My Valentine」のMVにマイブラ(※My Bloody Valentine)のレコードが出てくるのは、ルーツを垣間見せる部分かなと思ったんですが。

こばやし:私もそうなんですけど、ずっとマイブラを聴いてきた人たちに“だから「Be My Valentine」なんだ!”と気付いて欲しくて、ああいうことをしてみました。そうやって、部分部分でシューゲイザー的な要素を入れる工夫はしているんですよね。

●「Be My Valentine」の曲名は、マイブラが由来なんですね。

こばやし:マイブラが好きだから“Valentine”と入っている曲を作りたくて、タイトルから考えました。“Be My Valentine”というのは“私の恋人になって”という意味なんですけど、それが粋(いき)ですごく良いなと思ったんです。そこから曲と歌詞を作っていった感じですね。

●この曲のAメロで“才能に溺れてみたい”と繰り返す箇所がすごく耳に残ったんですが、これは何かに対する皮肉的な表現なんでしょうか?

こばやし:いや、そういうわけではなくて、本心ですね。私は劣等感の塊なので、曲を作る時にもそういうところが自然と出てしまうんですよ。だから特にメッセージ性はなくて、純粋に“才能がもっとあれば良かったのに…”という気持ちが出ています(笑)。

●劣等感から出てきた言葉だったんですね。

安倍:ボヤいている感じだと思います。私もそのフレーズがすごく耳に残るんですけど、“本当にそうだな”って思いますね。ボヤいているのを聴いていると、私もボヤキたくなるというか(笑)。

こばやし:確かに、ボヤキに近いですね。“そういうところも全部含めて曲にしちゃえ”っていう気持ちがあるので、包み隠さず出していて。私はマイナスの感情が歌になることが多くて、それをパワーにしてできたアルバムと言えるかもしれないです。

●劣等感が創作の推進力になっている。

こばやし:本当にそうなんですよね。プラスの感情よりも、“なぜ自分はこんなにできないんだろう?”みたいな感情のほうが曲作りにつながる場合が多くて。今回のアルバムにも、そういう歌詞が多い気はします。

●ある意味、“才能に溺れてみたい”というフレーズが象徴的なので、耳に残ったのかもしれないですね。

こばやし:確かにここは、メロディと言葉がめちゃくちゃ当てはまっているなと思います。ソニック・ユースやスマパン(※The Smashing Pumpkins)が好きなので、そのあたりに通じる“心地良い気持ち悪さ”みたいなものをこの曲は意識して作ったんです。そういう気持ち悪いコード感と、この部分の歌詞が特にピッタリ合っている気はしますね。

●心地よい違和感みたいなものは、どの曲にもあるように感じます。

こばやし:J-POPでよくあるAメロ〜Bメロ〜サビみたいな構成の曲があまりないんです。そういうところの常識には囚われずに、曲を作っていますね。自分の場合は“起承転結”みたいなイメージで、曲を作っていて。特にM-10「mirrors」はわかりやすいんですけど、途中で3拍子になる部分は“起承転結”でいうところの“転”なんですよ。

●なるほど。M-5「winter」のサビで“want”がディレイ的に繰り返されるところも、心地よい違和感があるなと思いました。

こばやし:「winter」のその部分は、私もすごく気に入っています。この曲はマイブラの「Feed Me With Your Kiss」のイントロの不規則な感じがめちゃくちゃ好きで、それをやりたいと思って入れたんです。この曲は特にマイブラ愛が強く出ていますね(笑)。

●違和感といえば、M-6「_ _ _ _ _ _」の曲名も…。

こばやし:この曲名は、“切り取り線”みたいなイメージなんですよ。そこからまたグッと雰囲気が変わるから。後半の曲のほうがより外に向けて発信している感があって。前半はもう少しダークな曲調が多いので、その間に記号みたいな感じで入れてみたんです。

●そういう意味だったんですね。

こばやし:“これは何?”ってなるのが面白いかなと思って。曲名も前半から全部英語で来ているのに、急にM-11「モ ル ヒ ネ」という日本語が入ってきたら“ん?”ってなるじゃないですか。色んなところに違和感を盛り込んで、“何だろう、これ?”という感じで興味を持ってもらえるような工夫はしました。

●M-7「sway, fadeaway(angel ver.)」は1stミニアルバム『sink you』からの再録ですが、“angel ver.”にはどういう意味が…?

こばやし:この曲は今作に入れるにあたって歌のキーやギターのアレンジを変えたので、原曲とはまた違う雰囲気にはなっていて。キーを変えて歌っている時に、コーラスが浮かんできたんですよ。そのコーラスを試しに入れてみたら、“なんか天使みたいだな”と思って…。

ショウジ:『フランダースの犬』(アニメ)で、最後に主人公が死ぬ時のシーンみたいな…。

●天使がお迎えに来て、天に召されるようなイメージなんですね(笑)。

こばやし:どちらかというと、そういうイメージです(笑)。天使がお迎えに来るような、神聖なる雰囲気の曲になったなと思ったので、“angel ver.”にしました。

ショウジ:私の中で「モ ル ヒ ネ」が、まさにお迎えが来そうな時なんですよ。それでお迎えが来た後の状態が、「sway, fadeaway(angel ver.)」というイメージですね。

●そんな流れになっているんだ(笑)。劣等感から生まれていると言いつつ、最終的にはポジティブに向かう歌詞が多いような気がします。

こばやし:抽象的なんですけど、射し込んでくる光を海の中から見上げているようなイメージが自分の中にあって。位置としてはすごく下のほうにいながらも、光を見上げているという意味では前向きなんです。

●そういう心境になったということ?

こばやし:前に比べると、そうなったと思います。ちょっとは成長したのかな。前は本当に体育座りで、“どうせ私なんて…”みたいな感じだったから。

●膝を抱えて、シューゲイズ(※靴を見つめる)していたんですね(笑)。

こばやし:音楽的にというよりも、心がシューゲイズしていたんです(笑)。今も同じ場所にはいるんですけど、もうちょっと上を見るようにはなったかなと思います。今回はジャケットの雰囲気も明るくなって、今までとは違う感じが出ているから。

●過去の作品とはジャケットのイメージから違う。

安倍:最初に作った1st demo(『since 1991』)のジャケットは、砂漠の絵だったんですよ(笑)。

こばやし:その次に出した2枚目のCD(『sink you』)は海底で、3枚目(シングル『私は泳ぐ、メロンソーダ』)はメロンソーダの中で泳ぐ女の子で、今回でやっと陸上に出た感じなんです。

ショウジ:(今回のジャケットは水の中を)見下ろしている感じなんですよ。

●先ほどは海の中から“光を見上げている”という話だったような…?

こばやし:本当だ…! さっきの話とは変わっちゃうんですけど(笑)、地上に出られたのかもしれないです。今回のジャケットは、昔の自分を上から見ているようなイメージがあって。昔の自分を見て、“ちょっとは変われたんだな”という感覚はありますね。

●それを自覚できるくらい、大きな変化があったんでしょうね。

こばやし:“気付けた”というのは、すごく大きいですね。4人になったからこそ、こういうふうに思えるようになったのかなと思います。

安倍:昔は3人で“結界”を張っていたというか。3人の世界を作って、固まってしまっていたんです。でも4人になったことで、そこからようやく外を向くようになったという感覚が私にもあって。

●ショウジさんが入ったことで、開けたというか。

安倍:まさに、開けた感じがします。

ショウジ:前がどうだったのか私にはわからないので実感はないんですけど、周りの人からそう言ってもらえることは多いですね。

こばやし:以前は自分たちの世界だけで成立しちゃっていて、本当の意味で“発信しよう”という姿勢になれていなかったのかもしれないです。でも今作は色んな人に聴いてもらいたいと純粋に思うし、ようやく外に向けて発信できたなと思える作品になりましたね。

Interview:IMAI

 

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