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SPECIAL TALK SESSION:石田スイ × People In The Box

SPECIAL TALK SESSION:石田スイ×People In The Box

2018年7月に完結を迎え、全世界シリーズ累計3,700万部(2018年12月現在)を超える超人気コミックス『東京喰種トーキョーグール』。TVアニメ化もされた同作品の原作者である石田スイ完全監修による、コンピレーションアルバム『東京喰種トーキョーグール AUTHENTIC SOUND CHRONICLE Compiled by Sui Ishida』が3/27にリリースされる。石田スイ自身のセレクトによってアニメに起用された楽曲たちはエッジィかつコンセプチュアルで、作品の世界観にさらなる深みを与えるものばかりだ。その発売を記念して、TVアニメの第1期エンディングテーマに「聖者たち」を提供したPeople In The Boxと石田スイによる特別対談が実現した。

 

「どこまで勉強して、どこまで筋肉を付けるべきなのか…。音楽もそういうところがあると思うんですよ。楽器を弾くということに関しては“筋肉”的なところもありつつ、“魔法”的なところもあると思うから」

●石田さんとPeople In The Boxのメンバーは、以前から面識があるそうですね。

石田:福岡にライブでいらっしゃった時に、お会いしたのが最初でした。博多百年蔵という酒蔵を利用した会場だったんですけど、すごく良い場所で(※2013年8月11日 People In The Box「空から降ってくるvol.5 〜劇場編〜」)。本当にお酒の匂いが漂ってくるような中で、演奏されていたんですよ。

山口:もう6年くらい前ですよね。

●最初に観たライブから、すごく特殊なシチュエーションだった。

石田:そもそも僕はバンドのライブに行ったことがあまりなくて、あれが2回目だったんです。人生2回目のライブが酒蔵っていう(笑)。

山口:だいぶイレギュラーですね(笑)。

●石田さんは元々あまりライブに行く人ではなかったんですね。

石田:“ライブに行く”という発想がなかったですね。チケットの買い方も知らなかったくらい、そういう文化が自分の中にはなくて。でもPeople In The Boxは好きだったので、福岡に来るタイミングでライブに行ったんです。実際に行ってみたら“あの曲を(目の前で)演奏している…!”みたいな感じで、すごく感動しました。

福井:その時に、僕ら3人の似顔絵を描いてきて下さったんですよ。

●似顔絵?

石田:ライブ後にご挨拶もさせて頂けるという話だったんですけど、どうしたら良いのかわからなくて…。自分が持っていけるものは絵くらいしかなかったので、3人の似顔絵を描いて持っていったんです。

福井:すごく良かったです。ありがとうございました。

●そもそもPeople In The Boxを知ったキッカケは何だったんでしょうか?

石田:その当時、世の中で流行っていた音楽に対して、あまり興味が持てなくて。自分の中では、聴く音楽があまりないという感覚だったんです。そんな時にPeople In The Boxの「完璧な庭」のMVをYouTubeで偶然見て“何だ、これ…!?”みたいな感じで感動して、そこからすごくハマりました。

●それまで聴いてきた音楽とは違っていた?

石田:全く違いましたね。“こんなものがあるんだ!”っていう感じで、本当に衝撃を受けました。

波多野:ありがとうございます。嬉しい…。

●そういう体験が『東京喰種』のエンディングテーマ(※「聖者たち」)を依頼することにもつながったんでしょうか?

石田:そうですね。“この衝撃を皆さまにも…”みたいな感じでした。逆にPeople In The Boxの皆さんはアニメのタイアップ曲をやるということに対して、当時はどんな心境だったんですか?

波多野:単純にすごく嬉しかったですね。なんといっても作者の方が好きで依頼して下さったということが、僕らの中で一番重要だったんです。もちろんマンガも読んでとても面白かったので、本当に嬉しかったです。

石田:良かったです…。本当は嫌だったら、どうしようと思ったりもしていて(笑)。

●実は不安だった(笑)。

波多野:大丈夫です、僕らは良くも悪くも“嫌なら、やらない”というタイプのバンドだから(笑)。でも確かにこういう話って、今までしたことがなかったですね。そういえば、ちゃんと“ありがとう”と言えていなかったのは申し訳なかったです。

石田:いやいや(笑)。

波多野:あれは本当にバンドにとって、すごく良い経験で。People In The Boxは“外から何らかの血が入って、何かを作る”ということを半分意識して、半分意識せずにやってきたバンドというか。アルバムに関しても何か(外的な)キッカケがあって出すということは一切なくて、ちゃんと自分たちで決めたタイミングで出すということをずっとやってきたんです。だから、あれは初めて外からのキッカケで曲を作るということをやった唯一の作品なんですよね。

石田:それはすごい…! もっと早く聞きたかった…(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

 

 

●タイアップということで、いつもと違う作り方をした部分もあったんでしょうか?

波多野:そこは一緒でしたね。“僕らのことが好きで頼んでくれたということは、むしろ自分たちを曲げずに作らなきゃダメなんだろう”と思っていたから。せっかく頼んでもらったからには、すごく濃度の高いものにしたかったんです。

石田:“これぞPeople In The Box!”という感じでしたね。確かに“濃度が高いな〜”と思いました(笑)。

●自分たちらしいものを作ろうとした。

波多野:そこは意識しましたね。あと、“(アニメの世界観に)寄せすぎない”ということは考えました。それはなぜかというと、音楽がアニメの世界の中にただ乗っかるのではなく、“合わさって何かになる”というものじゃないと、想像力の余白みたいなものが(アニメを)見る側にとって失われるんじゃないかという想いがあったからで。

石田:ある程度、距離感があったほうが良い?

波多野:ぼんやりと受け取った『東京喰種』の世界観みたいなものが念頭にあるだけで、ちゃんとそういう感じになるというか。あと、石田さんが描かれたコミックスの表紙の色味はすごくイメージしていました。

●色味?

山口:フィルターが1枚ある、磨りガラスみたいなイメージですね。

波多野:そういうタッチを自分の中でトレースした上で、好きに作ったという感じでした。自分でもすごくバッチリだったなと思っていて。だから、僕ら自身もすごく気に入っている曲なんですよ。

石田:自分たちの世界で(作ったものを)ちゃんと持ってきて下さったということがすごく伝わったし、“僕が好きなPeople In The Boxだな”という感じでしたね。

●期待どおりの楽曲だったと。作品の世界観に寄せすぎないことを意識したという話でしたが、曲を作った時点では『東京喰種』をじっくり読んだわけではない?

波多野:すごくリアルタイムな話になるんですけど、『東京喰種』は去年完結したじゃないですか。僕は完結していない漫画を読むのがすごく苦手なので、これから読むんですよ。(完結していないものを途中で読むと)ずっとそのことを考えちゃうから。

山口:あ〜、それはすごくわかる。一気にまとめて読むことで、理解度が増すというか。逆に期間を空けて読むと、ニュアンスが微妙に変わってしまうところもあるんですよね。勝手な解釈が広がっていくというか。

石田:なるほど。だから完結していないと、読めないんですね。

波多野:どちらかと言えば僕はマンガが好きなほうなんですけど、そういう事情もあってタイムラグがすごくあるんです。

●『東京喰種』は、2011年から長期にわたる連載でしたからね。

波多野:たとえば、今になって描き直したい部分もあったりするんですか?

石田:今になって描き直したい部分は…もう無限にありますね(笑)。でもマンガって、そういうものだから良いという部分もちょっとあるというか。もちろん完璧にやる人もいるんですけど、僕の場合は未熟なところや粗っぽいところもそのまま出していたりして。でもこの作品に関しては“ここは下手だな”と感じるところも含めて、“これはこれで良いのかな”と思っています。

波多野:確かにそういうところはありますよね。あと、(マンガの場合は)途中で絵が変わっていくのも良いなと思っていて。

●確かに長期連載だと、初期とは絵柄が徐々に変わっていったりしますよね(笑)。

波多野:そこも音楽とすごく似ているというか。

石田:People In The Boxも、声が結構変わりましたよね?

波多野:声がヤバいんですよ…(笑)! ベストアルバム(『Things Discovered』/2017年)のマスタリングで改めて聴いている時に、みんなで引っ繰り返っちゃって(笑)。曲順を時系列で逆に並べたので最新の曲からどんどんさかのぼっていくという流れになっているんですけど、ある時期を境に声がいきなり若返るっていう…。

●それくらい違いがある。

波多野:声も違うし、歌い方や歌への意識も違っていて。自分から見れば“未熟さ”なんだけれども、逆にそれが良いと言ってくれる人もいるんですよね。

石田:あれって、どういう感情なんでしょうね? “未熟だけど、何か良いんだよな”っていう…。

波多野:“その時にしかできない”という感じが良いのかもしれない。自分が他のアーティストの音楽を聴いた時にも、“未熟で何もわからず突っ走っているけれど、こういうものも良いね”という感覚には心当たりがあるから。

●今では再現できないものというか。

山口:今は当時よりも鍛錬されているけど、その時の音は出せないんですよね。ドラムもやっぱり変わるんですよ。それが良い悪いという話ではなくて、“この音は出せないな”という感じで。やっぱり、あの時の声はもう出せないよね?

波多野:出せないね(笑)。出せるとしてもたぶん気恥ずかしくて、できないっていう。

石田:意味がちょっと変わってきているというか。

波多野:そういうところも含めて、“一回性”の良さというのもあるんだろうなと思います。

●だから未熟な部分も含めて受け入れられる。

石田:でも技術の素晴らしさというものもあるじゃないですか?

波多野:ありますね。

石田:そこがモノを作る人にとっては大事な、1つの“テーマ”だなという気がするんですよね。

波多野:確かに。“技術とは?”ということを考えるだけでも、かなりヤバいところまで行っちゃうというか。

●ヤバいところまで行っちゃうんだ(笑)。

石田:絵も勉強し始めると、どこまででも行けるところがあって。人間を描く上で、顔の筋肉はどういうふうに付いているのかといったところまで勉強しようと思えばできるんです。でも技術に偏りすぎるのも何か違うなと思うんですよ。“リアルだったら良いか”と言えば、たぶん違うと思うし…。

●それだけが全てではない。

石田:そこのせめぎ合いみたいなものはあって。どこまで勉強して、どこまで筋肉を付けるべきなのか…。音楽もそういうところがあると思うんですよ。楽器を弾くということに関しては“筋肉”的なところもありつつ、“魔法”的なところもあると思うから。

波多野:その“魔法”をコントロールするところも含めて、“技術”なんだろうなと最近は思っているんです。そういう意味で僕らは、技術はあればあるほど良いと思っている節はあるかもしれない。ただ、僕らの言っている“技術”というのは、譜面をそのまま再現するということではなくて、譜面に書かれていないものをどれだけ想像できるかということで。それって今、石田さんが言った“魔法”の部分だと思うんですよ。そういう意味では、言っている意味はすごくわかります。

●正確に演奏する技術だけでは、良い作品にはならないわけですよね。

波多野:“むちゃくちゃ上手いけど、センスがない”という場合もたまにありますからね(笑)。あれは僕らが思う“技術”という意味では、まだまだなんだと思うんですよ。そういう意味で、その“魔法”というものも“技術”に含めてしまうと、さらに際限がなくなるっていう…。

石田:そうなんですよね。“どこまでやれば良いんだ?”っていう(笑)。

山口:身体の動きとかも勉強し始めると、キリがなくて。座った時の骨盤の動かし方とかも考えたりしますからね。

●そんなところまで考えているんですね!

波多野:どの骨にどの筋肉が付いていて、どう収縮して動いてるのかみたいなことが気になって筋肉の専門書を読んだりもして。それを知ることによって意識化できるから、動きも変わってくるんですよね。…って、何の話をしているんでしょうね(笑)。

石田:“アスリートなのかな…?”っていう(笑)。

●アスリートレベルの会話になっている(笑)。

波多野:でも僕らはちょっと異常なくらい、そういう話をしますね。それをいざ音楽を作るとなった時に、感覚的なものに転化するっていう。

石田:People In The Boxは今、そんなことになっているんだ…面白い(笑)! 今日は本当に良い話が聴けました。ありがとうございます。

波多野:こちらもすごく楽しかったです。ありがとうございました!

Interview:IMAI

 

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