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otori

絶え間ない更新が生み出した、有機的かつ無機的な国籍不明のダンスミュージック。

2010年の結成以来、2度のカナダツアーを成功させ、日本のみならずボーダレスな活動を展開している4人組バンド、otori。2016年にBa.ツダフミヒコ(オワリカラ)が加入したことを境に硬質でノイジーなポストパンクから、有機的かつ無機的な国籍不明のダンスミュージックへと進化を果たした。そんな彼らが前作の1stアルバム『I WANNA BE YOUR NOISE』から5年ぶりとなる、新作2ndアルバム『DIGITALIZED HUMAN NATURE』を遂にリリースする。これまで以上に比類なき存在へと、自らを更新し続ける4人に迫るインタビュー。

 

「自分が発明したものをずっとやり続ける人もいるんでしょうけど、僕はそういうタイプじゃないから。ずっと飽きずにいたいというか、常にワクワクした状態でいたいんですよね」

●前作から5年ぶりのリリースとなりますが、その間の2016年にツダくんが加入したんですよね。

ヒノ:前任のベースが辞めると決まってから、活動と並行しながら新メンバーを探していて。色んな人とスタジオで音を合わせたりもしたんですけど、最終的にツダさんに入ってもらうことになりました。2015年のカナダツアーでオワリカラと一緒だったので、そこでツダさんとも仲良くなって。ハダがどうしてもツダさんが良いと言うので、誘わせてもらったんです。

ハダ:一緒にカナダツアーをまわった時の印象がすごく良かったんですよ。ツアー中にも他愛もない話もしたりして、すごく話しやすい人だなと思っていて。

●人間的な魅力も大きな要因だったと。

ツダ:僕も前からotoriのライブを何度か観ていて、好きなバンドやったんです。ベースのアプローチも自分と似ている感じがして、ツボなところがあったので、関わっていない時から“羨ましいな”と思っていたんですよね。それでチャマ(※ハダ)からベーシストを探していると相談を受けた時に、せっかくやったら自分も音を合わせてみたいなと思ってスタジオに入りました。

●ツダくんも元々、気になっていたんですね。

ヒノ:ツダさんとスタジオに入った時に課題曲を持っていったんですけど、その時点から“この曲はこうしたほうが良いと思う”と助言してくれて。そういうこともあって、自然と加入した感じですね。

ツダ:スタジオに入る前から、“俺やったらこうしたい”というイメージがあって。チャマから話を聞いている中で、“こういう曲が増えたらもっと良いかもな”というアイデアが何となく浮かんでいたんです。

●その時点で既にイメージが湧いていた。

ツダ:前は結構ストイックにループさせている部分があったので、逆にもっとシンプルにしても良いかもなと僕は思っていたんです。スタジオではそういうことも正直話したんですけど、特に怒られることもなくて(笑)。

●メンバーも素直にアドバイスを受け入れられたということ?

コバラ:言葉にせずにフレーズでツダさんは示してくれるので、それがみんな腑に落ちて。そこから音を合わせていったら、自然と曲ができたんです。

ヒノ:単純に音を合わせたら、しっくりきたというのが大きいですね。だから満場一致で加入が決まりました。

●ツダくんが加入したことで、曲に変化もあったんでしょうか?

ヒノ:変わったと思います。それまでは無機質な感じでひたすらやっていたんですけど、ツダさんが入って有機感が出たというか。良いバランスが取れるようになった感じがします。それに呼応して、ボーカルにも変化があって。

コバラ:“メロディ”と“時間の経過”と“色彩”がもたらされたという感じです。

●サウンドにもボーカルにも変化があった。

ヒノ:そうですね。僕自身も今までなら曲を作っても“これはotoriでは使えないな”と思っていたものも、どんどん持ってこれるようになったのがすごく良かったです。やれることの幅がすごく広がった感じがしますね。

●ツダくん加入後に、去年2回目のカナダツアーを実施しているわけですが。

ヒノ:ツダさんが“海外に行きたい”とよく言っていたんです。前回のツアーを担当してくれたカナダ人のイベンターが東京に来ている時にも、ツダさんがその人に“カナダに行きたい”と言っていて。“その時に(合わせて)アルバムを作るから“みたいなことも言っていたんですよね。

ツダ:前から誘ってくれてはいたんですけど、新しい音源がなかったので“音源を作ってからだね”みたいな話をして断っていたんですよ。でも去年はちょうど次のリリースの話が固まってきていたから、“行っちゃおうぜ!”みたいな感じになりました。

●新作を作ってから、またカナダツアーに行こうと思っていた。

ツダ:そうですね。あと、バンドをもっとガッツリ固めてからのほうが良いんじゃないかという考えもあって。

ヒノ:その時期がちょうど重なった感じですね。

●前作から5年かかったのは、どういう理由で?

ヒノ:前作を出してからツダさんが入るまでにできた曲が、1曲しかなくて…。正直、停滞していたんです。でもツダさんが入ってから、一気に8曲くらいできたんですよね。

●ツダくんの加入後に、曲も一気にできたと。

ヒノ:ツダさんが入った後、2016年11月頃にシークレットでライブをしたんですよ。その4〜5ヶ月前から一緒にスタジオに入っていたんですけど、そのライブを決めた時点で“新しい曲をたくさんやろう”みたいな話はしていて。その期間で大量の曲をまとめて作った気がしますね。

●ツダくんのアイデアが加わることで、たくさん曲ができるようになった?

ツダ:アイデアもあるんですけど、単純に僕の場合は面白いものを見捨てないというか。“面白い”と思うものがあれば、その瞬間には何かが生まれなくてもまたいつか使えるかもしれないわけで、とりあえず取っておけば良いじゃないですか。そういうものをいっぱい持っておいて、あちらこちらで色んなものを進めていけば良いと思うんですよ。

●そういう変化がもたらされたことで、バンドとして表現できる幅も広がったんでしょうね。

ツダ:前はもっとゴリゴリな印象があったけど、ヒノくんはカラフルなものを持っている人なんですよ。それを活かすというか、“もっとやっちゃって良いのにな”とはずっと思っていたんです。

●ツダくんがこれまでの形だけに囚われることなく、“もっと良くしたい”と思うタイプの人だったことが大きいのでは?

ハダ:そういう概念みたいなものをブチ壊してくれるんじゃないかなと思ったから、誘ったところはありますね。絶対に良いものになるという確信があったから。

ツダ:たとえばotoriという人造人間みたいなものがおったら、膝の部分に僕の顔が移植されているようなイメージで…。

コバラ:膝なんですか(笑)?

●ホラーみたいなイメージですが(笑)。

ツダ:膝に僕の顔があるので“一応、ツダがいるな”というのはわかるというか…。とりあえず膝にツダの顔が縫い付けられて、ガァガァ言っているイメージなんですよ。まだ移植されたばかりの状態で、縫い目も残っていて。これがだんだん馴染んでいけば、いずれは“otori”という超人みたいなものになるのかもしれないんですけどね。

●超人や人造人間というイメージに強引につなげると(笑)、ヒノくんは今作についてTwitterで“宇宙のロボット民族の宴みたいなアルバム”ができたとつぶやいていましたよね。

ヒノ:そうですね(笑)。元々は次のアルバムを作るとしたら、もう少しアジアンチックな民族音楽っぽいテイストが入りつつ、前作からの匂いもあるようなものにできたら良いなと思っていたんです。それをいったん忘れていたんですけど、メンバーと一緒にアルバムの曲を作っている時に自分が“こういうものが良い”と言っている内容が全て“宇宙のロボットの民族みたいな感じ”という言葉に集約されるなと気付いて。そう考えたら、自分が元々思っていたものを作ったということなんでしょうね。

●ロボット的な無機質な感じと、民族的な有機質の感じが混ざってできたのが今作なのかなと。

ヒノ:僕もそう思っているんですけど、結果的にこうなったというか。そういえば今回は、ツダさんと僕がちょうど半々ずつ曲を作っているんです。

コバラ:無機質と有機質みたいなこの2人(※ヒノとツダ)が合わさった結果、こうなったんだと思います。

●ボーカルがメロディアスになったのも、その融合に導かれている?

コバラ:メロディアスになったのは、ツダさんの音使いがわりと歌を乗せやすい感じだったからですね。拍子とかは変なんですけど、自然と歌えるような感じになっていたから。意図的にメロディを付けようとしていたわけではなくて、音に合わせていたら自然と前よりも歌っていたという感じです。

●M-9「ニューロマンサー」は、特に“歌”の印象が強いですよね。

コバラ:あれはヒノさんが曲を持ってきたんですけど、私がパッと思いついて歌を付けたら“そういう曲じゃないつもりだったのに…”みたいな感じで不機嫌になって(笑)。

●イメージと違っていた?

ヒノ:今はすごく好きですけど、自分としてはもっと土着感のある踊れる感じの曲になると思っていたんです。そしたらElectric Sheep感みたいなものをコバラが出してきたので、“そうくるんだな…”と思って。基本的には最初に伝えたイメージから逸れないようにしたいんですけど、良い逸れ方をしたので“まあ良いか”と思いました。

コバラ:結果的に、民族はいない感じになっています(笑)。

●この曲には民族はいないと(笑)。

ツダ:でも色んな曲を作っている中でも、大体は“宇宙”か“民族”が全部に登場しているんですよ。曲は違っていても、結局言っていることは同じなんです。

ヒノ:M-6「アティチュード」だけは昔からあった曲なので違うんですけど、このアルバムは大体そういうイメージが一貫してありますね。

●「アティチュード」で“オルタナティヴは進行形”と歌っていますが、常に進んでいきたいという気持ちも一貫しているのでは?

コバラ:アップデートしていきたいという気持ちは常にありますね。M-2「超現実」でも歌っていることなんですけど、人は色んな他者に出会うことで色んな気付きを得ながら進んでいくというイメージがあって。その時に“これだ!”と思ったものがあっても、どんどん自分自身が更新されていくので、それによってまたさらに新しいものを得られるというか。

●自分が更新されることでまた新しいものに出会える。

コバラ:通常の状態から何かがあって、また別の状態になるという流れが私は好きなんですよね。ツダさんのフレーズが入ったことによって、otoriのサウンドに時間の経過がもたらされた感覚が私にはあって。だから歌詞も、ループではなく、ちゃんと時間の経過を経ているようなものになったんだと思います。

●歌詞で言うと、今作はタイトルにも入っている“デジタル”というワードもよく出てくる気がします。

コバラ:前作でも「学習」の歌詞なんかはAIチックでコンピューターっぽいところがあったんですけど、今回はそれをさらに進めた感じになっていて。“デジタル化”の中で色々と言っているような内容になっているんです。自分が思春期の頃からインターネットの時代が一気に来たんと思うんですけど、たぶんそこから始まって今のこういう感じにつながっているんだと思います。

●急速にデジタル化が進んだ時代を生きてきた世代ですよね。それが『DIGITALIZED HUMAN NATURE』というタイトルの意味にもつながっている?

コバラ:私はSFが好きなんですけど、SFってデジタルな現状を描きつつ“そもそも人間とは何か?”という根源的なテーマに帰るパターンが多くて。そういう一見相反するイメージのものが混ざり合って1つになっているものが、私はすごく好きなんです。今作の曲を作っている時にヒノさんの無機質感とツダさんの有機質感が合わさっているのを感じて、それがSFっぽいなと思ったんですよね。

●そこでイメージが湧いたと。

コバラ:そこから私も人間について普段“なぜだろう?”と思っていても言いにくいことをあえて書いたりして、形にしてみたいと思ったんですよね。だから今回は音から得たものを自分の中で昇華して、歌詞を付けたという感じになっています。

●ヒノくんが無機質でツダくんが有機質だとしたら、ハダくんは…?

コバラ:どっちの性質もある気がしますね。メンバーそれぞれがメロディみたいな感じで(自分のパートを)付けているので、それだけ聴いても面白い形には一応なっているんです。それぞれに我が強くて、それが合わさって今こうなっているという感じがあって。

●ハダくんも我が強いんですか?

ハダ:そうならざるを得ない感じはありますね。

コバラ:要求されるんだよね?

ハダ:要求もされますね。でも自分の中にも“面白くしたい”という気持ちはあるから、つい行きすぎちゃうみたいで…。ツダさんからは“もうちょっと普通に”と言われたりもします(笑)。でも自分が普通にしたら、絶対にこういう音にはならないと思うんですよ。

●だから、あえて普通ではないことを意識的にやっていると。

ツダ:俺は1回、“普通”を味わいたいんですけどね。それによって、そこからまた離れていく面白さが生まれるというか。

ハダ:確かにそれはあっても良いかもしれない。このアルバムがあって、その後で普通になったら、それはもう“普通”ではない気がするから。

コバラ:ある種の進化ですよね。

●otoriが普通のことをやっているという“違和感”が生まれそうですよね。

ツダ:逆に次作が全曲ハードロックでも、僕は面白いと思うんですよ。今回これを出したから、もう“何でもあり”な気がしていて。

ヒノ:僕としては、決まった方向には行かないようにしたいなと思っています。“これ!”という感じにはなりたくないし、今回のアルバムもそうはなっていないから。だから、自然と次も見えてくるのかなと思いますね。

●どんどん変わっていくことで、さらなる進化が生まれてくる。

ヒノ:自分が発明したものをずっとやり続ける人もいるんでしょうけど、僕はそういうタイプじゃないから。ずっと飽きずにいたいというか、常にワクワクした状態でいたいんですよね。

Interview:IMAI