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鈴木実貴子ズ

現実を見て歌い続ける、あきらめの先にある光。

女性ボーカル2ピース・ハードコアバンド・鈴木実貴子ズが、自身初となる1stフルアルバム『現実見てうたえよばか』をリリースする。moke(s)や3markets[ ]らが所属するLow-Fi Recordsに移籍した昨年は、bachoやeastern youth吉野寿のソロプロジェクト・outside yoshinoと共演を果たすなど、その独自の存在感をさらに増してきた。そんな中でリリースされる今作には既発の代表的な楽曲から、新たな側面を垣間見せる楽曲まで現時点での“ベスト”と言える全8曲を収録。今こそぜひ触れて欲しい彼女たちの魅力を伝えるべく、レーベル代表の篠塚将行(それでも世界が続くなら)と共にじっくり話を訊いた。

 

「たぶん日本人は…いや、農耕民族はみんなハードコアなんだと思います」

●最近、鈴木実貴子ズは“2ピース・ハードコアバンド”と称しているそうですが…。

鈴木:それは、しのさん(※篠塚)が決めました。

篠塚:僕が勝手に打ち出し方を切り替えたんです(笑)。

●本人的にも違和感はない?

ズ:前から(鈴木は)ずっと精神はハードコアだと言っていたんですよ。

鈴木:ハードコアについて詳しいわけではないんですけど、その呼び名が一番しっくり来るんですよね。ロックスターみたいにキラキラした感じではないし、パンクほど全てに反逆するようなヤツでもなくて。たぶん日本人は…いや、農耕民族はみんなハードコアなんだと思います。

●“農耕民族=ハードコア”なんだ(笑)。

鈴木:地に足をついて踏ん張るのが、私の中での“ハードコア”のイメージで。間違っていると思うことには“おまえ、間違っているぞ”とちゃんと言うし、カッコつけないし、ファッションっぽくないというのが私の中でのハードコアの精神なんです。パンクにはパンクスのスタイルがあるし、ロックにはロックスター的なスタイルがあるけど、ハードコアはもっとガサツでもっとフリーでもっと根本的なものという気がしていて。そういう意味で“心はハードコアだ”と言っていたのをしのさんが知って、“これで行こう”となりました。

●なるほど。もちろん、ズさんの中にもハードコア的な精神があるんですよね?

ズ:そ…そうですね。

鈴木:今、無理に話を合わせたな(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●実際のところは?

ズ:全くないです(笑)。でも名古屋はハードコアのバンドも多くて、そういう人たちが出ているライブハウスも僕らはめっちゃ好きなので、どこか近いところはあるんでしょうね。自分たちがそういうライブハウスに出演した時も、お店の人に認めてもらえることが多くて。やっぱり芯はそっちで良いんだなということを、むしろ今回のことで再確認したところはあります。

鈴木:うんうん。

篠塚:ライブを何回か観た後に、2人には確認を取らずに今回はこれで行こうと決めていたんですよ。本人たちに“2ピース・ハードコアバンド”と書いて良いか訊くのも変だし、それこそ“ファッション”っぽくなるじゃないですか。僕がハードコアだと思っているんだから、それで良いんじゃないかなという感じで決めました。

●パンクに比べると、ハードコアはもう少しアンダーグラウンドなイメージがあるというか。そういうところへのシンパシーもあるのかなと。

鈴木:たぶんアンダーグラウンドが染み付いているんでしょうね。それで良いとは思っていないですけど、染み付いたものを無理矢理剥がしてしまうのも違うから。仕方なく受け入れるしかない…という感覚かもしれない。

●M-5「アンダーグラウンドで待ってる」は過去にも自主制作でリリースしている楽曲ですが、今作に再録したのも“アンダーグラウンド”というものへのこだわりを感じるところかなと思ったんです。

鈴木:あ、でも「アンダーグラウンドで待ってる」は、また違う意味でその言葉を使っていて。この“アンダーグラウンド”は、“お墓”の意味なんです。

●あ、そうだったんですね。勝手にアンダーグラウンド・シーンのことだと思い込んでいました。

鈴木:そう思われることが多いんですけど、そのシーンとは全く関係ない曲ですね。亡くなった人は(火葬されて)煙になって、空の上にいるイメージがあって。その人を思い出す時に、つい空を見上げちゃうんです。でも春にすごくきれいな桜が咲いているのを見た時に、実は亡くなった人のパワーは地下に行って植物を咲かせているんじゃないかと思ったんですよ。

●空ではなく、地下だったと。

鈴木:その人は地面の中にいて、私たち生きている人のことを応援してくれているんだなと思ったら、すごく勇気づけられたというか。いつか誰もが“アンダーグラウンド=地下”に行くわけだから、それを“待っているよ”と死者から生きている人に言っているという歌なんです。

篠塚:そこに気付くと、全然違う聞こえ方をすると思いますよ。これは色んな人に知って欲しいですね。

●そういう歌だったんですね…。

鈴木:これは、私のお母さんが死んでから書いた曲なんですよ。“桜よりもはかないババアの笑顔でつらくなる”というのも、お母さんが老人になった姿を見られないのがつらいということなんです。自分とは関係のないおばあさんの顔を見た時に“この歳になった母親の姿をもう見ることはできないんだな”と思って、つらくなるということを書いていて。

●亡くなったお母さんへの想いを歌っている。ちなみにM-7「平成が終わる」の“会いたい人は一人だけだ”というのも、もしかして…?

鈴木:それも母のことですね。

●実は「アンダーグラウンドで待ってる」ともつながっているんですね。

鈴木:結局、自分の中で“寂しさ”は全部そこにつながっていて。ちょっとした“呪縛”ですよね…。

ズ:「平成が終わる」に“守るべきものを守るためなら〜”というくだりがあるんですけど、もし自分の大切な人が誰かに傷付けられたとしたら、その相手を憎んでしまうのは当然だと思うんです。でもその一方で、実貴子さん自身は“平和が一番良いじゃん”とも思っているわけで。それって、人間なら誰もが抱える矛盾だと思うんですよ。そこで(鈴木が)自分にとって大切な人を思い浮かべたら、母親だったということですね。

●「平成が終わる」では、そういうことを歌っている。

鈴木:“平成が終わって、時代はどんどん変わっていくけれど、いつまでも終わらない負のループみたいなものはずっとあるな”っていう歌ですね。

●歌詞で言うと、M-6「新宿駅」の“自分勝手な僕と 死ぬまで生きてやる”という部分は実貴子さんの決意表明なのかなと思いました。

鈴木:そうかもしれない。私は自分のことが本当に信用できなくて。昨日言っていたことと今日言っていることが本当に全然違うんですよ。

●正反対のことを言ったりもする?

ズ:ちょっと怖いくらいですね…。たとえば前日に“これは〜だ!”みたいな感じでめちゃくちゃキレられて、そのことを翌日に僕が冷静になって“やっぱりこうだと思うよ”みたいなことを言うと、“え?”みたいな反応をされることがあって。

鈴木:色んな心を持ちすぎているんです。だから、もう“そういう自分と生きるしかないですね”ということを歌っていて。

●性格や人格は簡単には変えられないから、それと上手に付き合いながら生きていくことも大事ですよね。

ズ:そういうことへの“あきらめ”っぽいところもあると思います。

鈴木:あきらめの曲は多いですね。それが今回の『現実みてうたえよばか』というタイトルにもつながっていて。現実を見たら、もうあきらめるしかないというか。

篠塚:“あきらめ”って、別に悪いことじゃないですからね。1つの“受け入れ”の仕方というか。

●後ろ向きな発想ではない。

鈴木:ポジティブに“(現実を)受け入れていこう”みたいな感じかもしれない。今回はそういう“ポジティブなあきらめ”のイメージが全体的にあって。M-3「あきらめていこうぜ」は、まさにそういう感じですね。

篠塚:この曲も決意表明ですよね。たぶん本人たちは、これをリード曲にするくらいの気持ちで作ってきたと思うんです。ウチのレーベルに入って“行くぞ!”と思ってから、最初に作った曲なんじゃないかなっていう。だから、このアルバムの中でもすごく重要な曲というか。

●実際にそういう位置付けにある?

鈴木:そうですね。「あきらめていこうぜ」とM-4「見たことない花」は、アルバムの中でも特に大事な曲です。

●他の曲はだいたい歌詞の中にある言葉がタイトルになっていますが、「見たことない花」だけは違いますよね。

鈴木:えっ…、小癪かなぁ?

●いや、そういうわけでは…(笑)。

篠塚:本人もタイトルで悩んでいたんですよ。

鈴木:最初は「スーパー帰り」と(仮で)呼んでいたんです。

●あ、最初は歌詞の一節をタイトルにしていたんですね。

鈴木:いつもどおりの感じでした。

篠塚:でもそれだと誤解されやすい気がしたので、“何か別のタイトルはないの?”と言って。そしたら4つくらい候補を出してくれて、その一番上に「見たことない花」と書いてあったんです。下に下がるほどに折り合いを付けようとしているタイトルになっている気がしたので“「見たことない花」が良いんじゃない?”と言おうとしたら、本人もそれが一番気に入っているという話だったのでこのタイトルに決めました。

●実は本人も気に入っていたと。

鈴木:収まりが美しい気がしていたので、自分でも気に入っていたんです。

ズ:最初は“小癪だな!”と思いましたけどね。でもたとえば「スーパー帰り」というタイトルにしていたら、今まで通りの“ちょっとアングラな感じなのかな”というイメージになっていたと思うんです。そう考えたら、「見たことない花」が一番しっくりくるタイトルだなと思って。

篠塚:“小癪だな”と思う2人の反応って、すごくリアルで。今までは、そういうものをちょっと避けている感じがしたんです。自分の中にあるものなんだけど、“小癪だと思われたくない”という気持ちがそうさせていたんだと思っていて。別に何かを狙っているわけじゃないし、素直に自分がつけたいタイトルにすれば良いんですよ。それで“イメージじゃない”と思う人もいるかもしれないけど、“どう見られても知ったこっちゃない”という感じでこのタイトルをつけられたのはすごく良かったんじゃないかな。

●自分たちとしても吹っ切れた?

ズ:そうですね。そして見事にこの2曲が、自分たちの中で新しいものなんですよ。

鈴木:今まであまりなかったタイプの曲だと思います。曲調が暗いので一見暗そうに見えるけど、歌っていることも実はめちゃくちゃポジティブなんです。

●「見たことない花」は、どんなことを歌っているんですか?

鈴木:繰り返しばかりで飽きてしまうような生活の中ではいつだって誰かを裏切れるし、誰かを見捨てられるけど、自分だって見捨てられるかもしれない。そういう窮屈なものが、自分の身体にいつもまとわりついているんです。でも“喜びはいつだって足元で あなたを見上げてる”と書いているように、誰でもその足元には絶対に幸せがあるんだと思っていて。自分でもそのことに気付くのが遅かったなと思ったんですけど…。

ズ:“幸せは自分の足元にあるんだよ”って、めちゃくちゃチープな感じがするじゃないですか。そういう“大衆的”で、昔からよく言われているようなことに初めて気付けたんです。

鈴木:“遅いやろ!”っていう(笑)。

●ハハハ(笑)。「あきらめていこうぜ」と「見たことない花」は新たに作った曲ということですが、他の曲は元からあったもの?

ズ:そうですね。M-8「ばいばい」も過去に出したデモ音源に入っていたんですよ。「新宿駅」も、それと同じくらい古くからあって。今回のアルバムには新しい曲と、今でも歌える曲を入れているというか。毎回そうなんですけど、音源を作る時にどの曲を入れたいかという基準は“その時に歌いたいか、歌いたくないか”で決まってくるんです。時が経っても残っていった曲が、今作には入っているという感じですね。

鈴木:だから本当に“アルバム”っていう感じなんです。自分の心が認めている曲たちのアルバムという感じかもしれない。

篠塚:流通盤としては初のアルバムなので、それこそ“人生の総集編”みたいなところがあると思います。たぶん一生歌うであろう曲が入っていて。

●M-2「アホはくりかえす」を再録しているのも、そういう曲だから?

ズ:この曲は、アルバムタイトルにもつながっているところがあって。『現実みてうたえよばか』っていうのは自分に対して言っている部分もあるけど、人に対しても言っていると思うんですよ。色んなライブを観ていて、たとえばコール&レスポンスやアンコールが形式的なものになっている気がしていて。

●確かに、お決まりになっているところはありますよね。

鈴木:ああいうのって、お客さんが演者をヨイショしているだけだと思うんですよ。普通は逆のはずだから。あの違和感がヤバいなと思って。そういうのを見て、『現実みてうたえよばか』って付けたんです。自分だけじゃなくて、人に対してもやっぱり思っちゃうから。

ズ:人に対しても歌っているし、自分に対しても歌っているという意味では、「アホはくりかえす」が今作のタイトルと一番つながっている気がしますね。

●ある意味、鈴木実貴子ズを象徴する曲でもあるのかなと。

篠塚:僕もすごく好きな曲だし、“入り口”としてすごく重要な曲だと思うんですよね。音楽をファッションではない感覚でやっている人間じゃないと、歌えない曲だと思うから。逆にファッションでやっているような人間が聴くと、きついと思うんです。“音楽って、もっと本気で自分の心を投影するものじゃねぇのか?”みたいな感じで、いきなり殴りかかってくる感じがするというか。

●ハードコアもそうやって、聴く人に問いかけてくる音楽だと思うんです。だから軽い気持ちでは聴けないし、真剣に向き合わないといけなくて。

鈴木:やっぱり私はそういう音楽が好きだな。そういうものだけじゃなくて、最近は楽しいだけの音楽も好きなんですけど、自分にはこれしかできないというのはもう思い知っているから。

●そういう音楽を死ぬまで一生やり続けてやるという覚悟を表明しているアルバムなのでは?

篠塚:今回は特にそうだと思います。他人の目を意識したり、需要を気にしたりして選んだわけじゃなく、本人たちが純粋にこれからずっと歌っていきたい曲を集めたアルバムだから。本当に良い作品だなと思いますね。

Interview:IMAI

 

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