音楽メディア・フリーマガジン

back number

彼らは音楽を通じて 1人1人に寄り添ってくれた

“恋は盲目ツアー2012”
2012/4/27@SHIBUYA-AX

#Text

「始まるぞAXー!」と、Vo./G. 清水の元気な声に沸き立つ場内。前回、Sibuya O-EASTでのワンマンも成功させ、勢いよく階段を駆け上がるback numberに今ツアーのファイナルとして用意された舞台は、ソールドアウトのSHIBUYA-AX。サポートメンバー2人を加えた5つのサウンドが織り成すハーモニーがするりと胸の隙間へ入り込む。

正直、驚いた。私は未練を拭えず切なさで埋め尽くされた楽曲の印象から、演奏も細く女々しいんじゃないかと考えていたのだ。しかし、掻き鳴らされた音は、放たれた声は、あまりの迫力で「わ!」と声を上げてしまうくらいだった。それは雄々しいというわけではなく、きっと込められた思いの強さの表れで、繊細さは健在。圧倒的な熱量とともに痛いほど伝わってくるライブへ一心に耳を傾ける。

中学生の頃、片想いしていた女の子へ「好き」を伝えたくて作られた「恋」は、メロディアスなサウンドが余計に胸を打つ。清水はMCで自嘲するように「好きって言えなかったから、その先の歌が書けない」と言った。その言葉があまりにも痛くて辛くて。誰しも伝えられなかった想いがあるだろう。その後悔は、時とともに過ぎてはくれないのだと思う。その後、「ちゃんと伝えないと、10年もバンドをやるはめになるぜ!」と笑ってみせたが、私は込み上げる何かに呑まれて、ぼーっと見つめることしかできなかった。

一体自分は何者になりたいのか。そんなことをよく考えるのだという清水。
「仲間を作って、大切な人を作って、あわよくばback numberで繋がる1人1人の人生に関わりたい」そう口にし、心を込めて「あとのうた」や「スーパースターになったら」を聴かせてくれた。
Ba./Cho. 小島は、ぴょんぴょんと飛び跳ねては積極的に前へ出て煽る。Dr.栗原は大きく振りかぶって力強いドラムを叩いた。
音楽を通じて寄り添ってくれる姿勢が嬉しくて、ふと幸福感が込み上げる。その頃にはもう、すっかり彼らの音楽に惹かれていた。

TEXT:Hirase.M

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