音楽メディア・フリーマガジン

FUNKIST

彼らはこれからもずっと7人で音楽を奏で続けるだろう

 音楽を通じて人間的な成長を重ね、メンバー同士がぶつかり合いながらお互いの大切さを知り、その想いを音楽として奏でてきたFUNKIST。

幅広い音楽性と強くて温かいメッセージを兼ね備えた彼らは、“生き方そのもの”と言えるその音楽でたくさんの人たちに力を与えてきた。そんな彼らが、昨年10月のフルーティスト・春日井陽子急逝という大きな壁を乗り越えて渾身のアルバムを完成させた。

たくさんの人たちとの出会いの中で7人が力を合わせ、誰にも壊すことのできないかけがえのない関係となって作り上げたアルバム『7』。FUNKISTはこれからもずっと7人で音楽を奏で続けるだろう。

INTERVIEW #1

「この7人の繋がりは誰にも壊せないと思うんですよ。"俺らは7人でいる"という想いは。7人ですごくかけがえのない時間を過ごしたんだなって」

●このタイミングなのでまず最初に触れないといけないことがあると思っているんですけど…昨年10月に陽子さんが亡くなられましたよね。僕はあのとき「なぜFUNKISTの身にそんなことが起こったんだ」と絶句したんです。FUNKISTは人にエネルギーだったり力を与えたいと思い、そういった音楽活動をし続けていたバンドじゃないですか。

染谷:はい。

●FUNKISTは結成当初から全員がガッチリひとつになってやってきたバンドではなくて、メンバー間の衝突やモチベーションの差もあったし、脱退してまた戻ってきたメンバーもいて。でもそんな男6人の中に陽子さんがいるだけでその場の空気がフワッと変わるような、まさに太陽のような人で。もちろんフルートも素晴らしいんですけど、彼女がステージにいるだけで照明が2~3個点いたくらいの明るさを持っていて。彼女がいるからこそこの男くさい6人がうまくまわってきていましたよね。

6人:うんうん。

●だから訃報を聞いて「FUNKISTは大丈夫なのか?」と勝手ながら心配していたんです。でもものすごく早い段階から活動を再開されてびっくりして。特に宮田さんは陽子さんの旦那さんだし、今現在もいろんな想いがある中で活動されていると思うし、だから今回のアルバム『7』ができたとも思うんですが…。

染谷:俺はずーーーーっと7人だと思っていて。爺ちゃん婆ちゃんになってバンドとして全然魅力がなくなっていたとしても、杖をつきながら震える手で楽器を弾いている7人がFUNKISTだと思っていたんです。今までヨシロウやオガチが辞めるとなったこともありましたけど、そのときに俺は一貫して"帰って来るのを待つ"とか"帰って来ることができる場所を守る"というのが自分の役目だと思ってきたんです。

●はい。

染谷:バンドを作ってすぐに宮田がアメリカの大学に入ったりだとか、ヨシロウがいない、オガチがいない、といういろんなことがあった中で、FUNKISTに最初から最後まで在籍しているのは自分しかいないんです。だから俺は"メンバーの帰って来ることができる場所としてのFUNKISTを守る"と思ってきたし、それがモチベーションでもあった。それは体調を崩してライブをお休みしていた陽子ちゃんに対しても同じで、「陽子ちゃん早く元気になってまた一緒にやろうぜ」って。フルートのいないFUNKISTが衰退していってすごく低いところで彼女を迎えるんじゃなくて、彼女がいない間でも成長して、陽子ちゃんが帰ってきたときに今まで立てなかったステージや観られなかった景色を用意しておいてやろうというのがモチベーションで。だから去年の10月に陽子ちゃんが天国に旅立って、僕自身もすごく揺れたんです。何のためにFUNKISTをやればいいのか。"彼女の帰りをもう待つことができない"という現実はすごく大きかった。

●当然そうなるでしょうね。

染谷:陽子ちゃんが亡くなって1週間後にメンバーみんなで集まって「バンドをどうしよう?」と話し合ったんです。"7人でFUNKISTだ"という気持ちはみんな同じだし"代わりのフルーティストを入れよう"なんていうことはまったく考えていなくて、陽子ちゃんとやりたかった。…そこはみんな一致しているだけに、やるか/やらないかというのはフィフティ・フィフティかなと俺は思っていて。ただ、もしかすると最終的にそこを決められるのは宮田だけかもしれないなと。俺らがどれだけ「痛い」とか「辛い」と言っても、宮田の痛みとは比べ物にならないし。だから宮田が「やる」と言ったら俺たちは絶対に弱音を吐いちゃだめだし、宮田が「無理だ」と言ったら俺たちは受け入れるしかないなと。

●なるほど。

染谷:それで、陽子ちゃんが天国に旅立った日の2日後がライブだったんですよ。だから俺はバンドのリーダーとして宮田に訊かなきゃいけなかったんです。本当に人としてどうかと思うし、宮田は絶対にそれどころじゃないんですけど、でも待ってくれている人たちもいることだから。"俺はなにを言ってんだろう? 最低だな"と思ったけど、宮田に「明後日のライブどうする?」って訊いたんです。そしたら宮田が「やりたい。ここで止まることを陽子は絶対に喜ばないと思う」って。

●はい。

染谷:結局、いろんな準備とかがあって2日後のライブはできなかったんですけど、でもやっぱりその言葉があったから俺たちはそっちに向かえたんです。FUNKISTが解散して俺らが別々の道を歩くことになったとしたら陽子ちゃんは絶対に喜ばないだろうし、"彼女がいちばんなにを望むか?"といったら、俺たちが和気あいあいと楽しくかつストイックに音楽をやっていくこと…そういうことを宮田の言葉を聞いて気づいたんです。

宮田:あのとき、メンバーもいろいろと気を遣ってくれて。メンバーと一緒にいる時間よりも、親戚がいっぱい集まったりしていてやんなきゃいけないことがたくさんあって。後から知ったんですけど、僕ができないことをメンバーみんながフォローしてくれていて。

●はい。

宮田:僕も真っ先にライブのことが頭をよぎったんです。それは"この先ライブどうしよう?"じゃなくて"明後日のライブどうしよう?"ということ。染谷が「リーダーだからそのことを訊かなきゃいけない」と言っていましたけど、僕も実はみんなに早く伝えなきゃいけないなと思っていて。きっと心配してるだろうし、僕ですら"ライブどうしよう?"と思っているわけだから。

●はい。

宮田:正直に言うと、自分自身は"やることが山積みだから無理かもしれないな"と思っていたんです。でも陽子は「やれ」と言うだろうなって。だからみんなに「やる」と言って。でも現実問題としてちゃんと陽子を送りたかったので2本はライブをキャンセルさせていただいて。

●そうだったんですね。

宮田:自分としては早くライブに戻りたかったんです。それが自分の日常生活だし。実際いろいろと終わって1週間後にメンバーで集まったとき、バンドを辞めるかどうかを考えていると思っていないくらい、逆に2本ライブを飛ばしてしまって申し訳ないくらいに思っていて。それくらい、自分たちはライブでしか生きていなかったんだなと気づいたんですよ。

●はい。

宮田:僕はステージの上でライブをしているときがいちばん陽子に近いところにいるというイメージがあって。それはきっと他のメンバーも同じなんだろうなって。だから今、音を鳴らすことができる6人がステージでひとつになった瞬間に7人のFUNKISTになるんじゃないかなと思っているんです。今から考えると、陽子がお休みしていたときは"気持ちは7人でやっているぜ"と思いながらも、どこか6人のFUNKISTでステージに立っていたような気がちょっとして。補おうと思っていたような部分もあって。

●うんうん。

宮田:でも今は"補う"というレベルの話ではなくて、ひょっとしたら今のほうが"7人のFUNKIST"なんじゃないかなと思うんです。

染谷:それはすごく思うよね。"陽子ちゃんの帰りを待つ"というところで、どこかで"これは未完成のFUNKISTなんだ"という意識があった。"彼女がいなければFUNKISTが成立しない"という想いがあって。今のライブでは「さあ陽子ちゃんに会いに行こうか」と言ってみんなでステージに出ているんですけど、それは俺らの中では抽象的な話では全然ないんです。やっぱり1曲奏でると、その曲に7人で作った想い出もいっぱいあるし、ライブでその曲を7人で奏でてきた日々とか景色とか時間とかがすごく凝縮されているんです。だから7人で一緒に作った曲をライブで奏でた瞬間に、僕らにはフルートが聴こえてくる。そこに陽子ちゃんがいなくても、僕らの音のひとつひとつから絶対に出てくる。だからライブは7人でいるという実感がすごくあります。そこは強くなれたところかもしれない。

●強くなれた?

染谷:うん。極端な話をすれば、僕らが年を取って順番に死んでいっても、最後に誰かひとりが音を鳴らしたらそれが"7人のFUNKIST"だと思うんです。そこはなんか"俺たちは本当に一生7人バンドでいいんだな"っていうのが、特に最近はより実感してきているというか。

●だから今回リリースとなるアルバムのタイトルが『7』になったんですね。

染谷:そうですね。タイトルはアルバムリリースが決まってすぐ、制作が始まる前から決めていて。2月にリリースしたシングル『SHINE』はもうできていて、それが昨年9月に7人で最後にレコーディングした音源としてあったんです。だからその後にもしアルバムをリリースすることができるとしたら絶対に『7』というタイトルにしたかった。みんなに話したら「絶対にそれだね」と言ってくれて。

●なるほど。

染谷:だから「FUNKISTは7人でした」ではなくて「FUNKISTはこれからもずっと7人です」という決意でもあります。結成してから12年、メンバーが抜けたりお休みしたり、メンバー同士で喧嘩したり…そういうことがひとつひとつあったから、このアルバムで「7人だ」と言い切れたんだと思うんです。極論ですけど、この7人の繋がりは誰にも壊せないと思うんですよ。"俺らは7人でいる"という想いは。7人ですごくかけがえのない時間を過ごしたんだなって。

オガチ:僕は陽子ちゃんにいろんなことを教わったんですよ。ヨシロウとか「宮ちゃん(宮田)落ち込んでないかな?」と言っていつも話しかけたりして。

ヨシロウ:陽子ちゃんのことがあった後、ライブで2ヶ月間くらい出ずっぱりだったんです。毎日みんなで話したり個別で話したりしてて。そこで毎晩宮ちゃんとあーだこーだって。

オガチ:そういうヨシロウの姿を見てて、陽子ちゃんが天国に旅立ってしまう前には見えなかったメンバーの温かさや愛だったりというものが自分的にはすごく見えてきてハッとすることも多いんですよ。「俺はトガってるな」とか「俺は今イヤな奴だったな」って。

●ああ~。

オガチ:それに、ライブで行く先々に陽子ちゃんの面影があるんです。「ここですごく緊張してたけど"がんばろうね!"と言って励まし合ったな」とか「ここでみんなでご飯食べたな」とか。そういう何気ない日々の幸せは、以前の俺だったら気づかずにスルーしていたんです。そういうことをすごく陽子ちゃんにもらったという感覚があって。それに想い出を探すことで陽子ちゃんの人柄が自分にも影響を与えたりして。陽子ちゃんはツアーから帰ってきて3時間しか寝てないのに個人練でカラオケボックスにひとりで入ったりしていたこととか思い出して、"俺もがんばらなきゃな"って。

ヨシロウ:みんな素直になったよね。優しくなった。以前からそういうことがなかったわけじゃないんですけど、人のことを思いやる気持ちとか。

宮田:うん。支え合ってるよね。

ヨシロウ:自分よりもまず人のことを考えたりとか。みんな優しいなって思うんですよ、特に最近は。

染谷:陽子ちゃんがライブをお休みしていたとき、彼女の笑顔とか笑い声がないことでバンドの空気が殺伐として、メンバーのすれ違いが生まれてどんどんその溝にハマっていくという時期があって。正直に言うと、陽子ちゃんのことがある前のこの6人の空気はすごく悪かったんです。"これどうなるんだろう?"と思うくらいに。

●そうだったんですね。

染谷:陽子ちゃんがいたら、やっぱり女の子だしその場にいるだけで僕らの使う言葉も変わってくるんですよ。「おまえやっとけよ!」と言うのが、陽子ちゃんがいると「これやっといて」に変わるというか。それは直接陽子ちゃんに言うことじゃなくても、空気としてそう変わる。だから、陽子ちゃんのことがあってみんなが「陽子ちゃんだったら」とか「陽子ちゃんがいたら」ということを考えるようになったと思うんです。

●なるほど。

染谷:"前の俺だったらこういう言葉を使っていたけど今はダメだな"みたいなことを1人1人が考えるようになったと思います。だから今も"陽子ちゃんがいる"ということなんだと思います。それは彼女が教えてくれたことで。

オガチ:うん。そうだね。

染谷:以前は小さいことでぶつかったとき、仲が良いが故に謝れないこととか多々あったんですよ。でも今は、ツアーとかで疲れていて宮田とかと些細なことでぶつかって喧嘩したとしても、宮田から「今は俺が悪かった」って。そんなこと言うの初めて聞いた! くらいのレベルのことなんですけど。

●あの"鬼の宮田"が? (※結成当初、バークリー音楽大学出身の宮田は他のメンバーに超スパルタだった)

オガチ:だいたいそういう場合はいつも宮ちゃんが悪いんですけどね(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

染谷:陽子ちゃんの想いを持ってステージに上がって真剣にやろうと考えようとするんだったら、喧嘩なんかしてたら絶対に無理だと気づいたんです。優先順位として"意地を張る"とか"自分の我を張る"ことよりも、"陽子ちゃんの想いと一緒にバンドが最高の状態で奏でる"ということがすべてなんです。だからいろんなことが変わってきていると思いますね。

●いろんなことに気づいたんですね。

宮田:ライブのとき、ステージの上でありのままが出るようなバンドだからこそそうなったのかなと思うんです。何かキャラを演じてステージに上がるのであれば、どんな関係性だろうと別にいいわけで。

●純粋というか、人間くさいというか。

染谷:割り切れないんですよ(笑)。

ヨシロウ:少しでもわだかまりがあったら100%いいライブができないバンドで。

JOTARO:ツアーとかだと基本的にみんなとずーっと一緒に行動して、ツアーがなくて東京にいるときもリハーサルや取材とかでほとんど毎日一緒にいて。そんな中で、僕はあまり気を使えないタイプだから変に"この人はどう考えてるのかな?"とか考え過ぎちゃうと裏目に出たりしたことも多かったんです。でも今は、みんなも僕のことを前よりもわかろうとしてくれて、"JOTAROはこう思ってるんだろうな"という優しさの度合いが今まで以上に広がっていて、受け止めてもらえることがものすごく増えて。

●なるほど。

JOTARO:誰でもそうだと思うんですけど、優しくされると"自分ももっとこうしよう"とか"次はああしよう"と思うことがすごく増えたんです。そういう日常生活がステージに上がったときにいいグルーヴになるというか。すごく変わったと思います。

INTERVIEW #2

「せっかく集まって、7人がいて、生きてて、音を奏でてるんだったらわかり合っていた方が絶対に楽しいし、そっちの方がいい」

●昨年2月に2.5thアルバム『Pieceful』をリリースされたとき、西郷さんと陽子さんの2人でインタビューさせていただきましたよね。そのときに西郷さんが「2010年6月にアルバム『FUNKIST CUP』をリリースしたあと、それまで全力で走ってきたからこそ抜け殻みたいになって曲ができなくなった」とおっしゃっていたじゃないですか。

染谷:そうですね。

●そういうことがありつつ、娘さんが生まれたり対バンのバンドから刺激を受けたりして新たな刺激が生まれて『Pieceful』を作ったという経緯がありましたよね。『Pieceful』をリリースしてすぐに東日本大震災があり、その後シングル2枚(2011年8月シングル『ALL TOGETHER』、2012年2月シングル『SHINE』)をリリースされましたが、今回リリースするアルバム『7』まではどういう流れだったんでしょうか?

染谷:大きくは2つあって。まず音楽的な部分で言うと、アルバム『Pieceful』からシングル『SHINE』まではすごく手探りで進んでいた感じがあって。

●手探り?

染谷:『Pieceful』もそれまでやっていなかった取り組み…プロデューサーにお願いをしたり、乙武洋匡さんに作詞で入ってもらったり…をして作った作品で。僕自身が今までやってきたものをアルバム『FUNKIST CUP』で出し尽くして、並行していろんなものをインプットしてはいるけど、アウトプットは手持ちの方法を全部使い切った感じがあったんです。だから"どうやってアウトプットすればいいんだろう?"みたいな感覚があって。

●そうだったんですね。

染谷:『FUNKIST CUP』で出し尽くしたと思ったとき、実感として"これからは自分が成長して持ち得てないものを手に入れるしかないんだろうな"と感じてはいたんです。それは他のメンバーも同じだったと思うんですけど、"このままじゃあこの壁は超えられない"と思ってそれぞれが真剣に新たなものをインプットし始めたんです。

●ふむふむ。

染谷:それが本当の意味で溢れてきたのが今回の『7』だと思うんです。『Pieceful』のときは"娘が生まれた"みたいなことをどうやって音楽に出していけばいいのかすごく模索したんですけど、今回は逆に「あれやりたい」とか「これやりたい」みたいにやりたいことだらけで。音楽を始めたころって24時間曲のことを考えていても飽きなかったんですよ。"あそこはああしたらどうだろう?"と考えてみんなでスタジオに入ったら想像とは違うものも出てきて、また家に帰って"今度はこうしたらどうだろう?"って、想像するだけでワクワクしていたんですけど、それと同じ感覚が今回はすごくあったんです。やりたいことが溢れた結果としての作品になったので、すごく満足度が高いですね。

●へぇ~。

染谷:10年以上もやっていると、壁にぶつかったときにその壁をどれくらいで超えられるかっていうのは正直もうわかんないんですよ。もしかするとその壁は、実は壁じゃなくて自分の限界かもしれないし(笑)。その恐怖もすごくあるんですよ。"ここが俺の才能の終わりなんじゃないか?"っていう。

●"才能が枯渇した"みたいなことですね。

染谷:そうそう。その恐怖を今回やっと克服することができた感じがあるんです。『Pieceful』は必死でその壁を叩きながら作り出したという感覚があるんですけど、今回は"これがFUNKISTの音楽だ"という感じで溢れた。ただ、やっぱりターニングポイントになったのは陽子ちゃんのことが大きかったのかもしれないですね。さっき言いましたけど、そこまではメンバー間の関係もうまくいってなくて、割とひとりで闘っている感覚が僕自身あったんです。でもみんなが同じ方向を向いたときに、それまでそれぞれがひとりで闘っていたからこそ、スタジオで「俺こういうのやりたいんだ」と出したアイディアが「え? お前そんなのできるの?」とか「お前がそれやるんだったら俺はこうやりたい」みたいな感じで積み重なっていって。

宮田:『7』の収録曲は、1年くらい前からいろんなテイクを録ってきたからフルートの音は乗っている状態だったんですよ。それでいざレコーディングするときに、みんなそれぞれ温めていたものが一気に出て完成した感じがあって。アルバム完成直前にできた曲ももちろんあるんですけど、大半は1年くらい前からバンドの中ではあった曲なんです。でもみんながそれぞれ考えつつもなんかまとまらなくて、なかなか曲作りが進まない時期があって。

染谷:そうだね。今回、今までといちばん違うのは、レコーディング直前になっても「まだまだこの曲良くなるのに」っていう焦りがあったことなんです。だから朝までスタジオに入ってメンバーで詰めたりしたことも多くて。

●ほう。

染谷:やればやっただけその曲を活かすことができるという自信もあったし。音楽に対するすごくポジティブな欲求があった中でできたアルバムですね。M-4「ROOTS」とかM-7「7」もそうだし、M-3「Dance in the world」もそういう経緯があった。

ヨシロウ:なにかひとつ決め手が入ることによって「あっ!」っていう光が見えることが多かったよね。

染谷:それがさっき「今作が完成したきっかけは大きく2つある」と言ったひとつの音楽的な部分ですね。そのもうひとつ、メッセージ的な部分で言うと…震災前に作った曲のM-2「SHINE」とかがあって、震災が起きて作った曲があって、陽子ちゃんのことがあってから作った曲があって。作った時期やきっかけはバラバラだったんですけど、収録候補曲のデモが全部できたときに「どの曲を入れてどの曲を削るか決めなきゃいけないから聴こう」と言ってみんなで聴いたんですよ。そのとき、全部の曲が今の自分たちに対して歌っているような気がして。大事な仲間を失って、それでも前を向いて行かなきゃいけないという。

●うんうん。

染谷:今作に至るまでにはいろんなことがあったし、模索したり苦しみながら作ったこともあったけど、俺たちはずっと一貫して同じことを歌ってきたんだなと改めて気づけたんです。"あ、ちゃんとFUNKISTだった"って。だから1曲も削ることなく、そのときの候補曲を全部入れたんです。

●だから15曲というボリュームなんですね。

ヨシロウ:当初は12~13曲にしようと思っていたんですけどね。

染谷:僕らがいちばん励まされたんですよ。M-9「ALL TOGETHER」とかは東日本復興支援プロレス大会ALL TOGETHERのテーマ曲として"震災で被災した人たちが元気になれる曲を"という想いで作ったんですけど、"もう一回もう一回"と何度も繰り返し歌っていたり、プロレスラーの人たちが"今が踏ん張りどころだ! 立ち上がろう!"と叫んでいたりしていたり。そういう普遍的な部分のメッセージというか、言葉にすると軽くなってしまいますけど"繋がり"とか"絆"とか"仲間"とか、そういうことを俺らはずーっと変わらず歌い続けていたんだなって。

●今作『7』に込められたメッセージはFUNKISTがずっと前から歌い続けてきたことですもんね。さっきおっしゃっていましたけど、今作は音楽的にもすごくバラエティに富んでいて、でもそれぞれがすごく人間味に溢れていて、表情が見える楽曲で。バンド外の音…ピアノやストリングスの音も入っていますけど、どの曲もFUNKISTのライブの体温を感じるというか、ライブの情景が見える作品だと感じたんです。

染谷:『Pieceful』以降はプロデューサーの方の力を借りたりアイディアをもらったりして作品を作ってきたんですけど、今回はすごくセルフプロデュースに近い形で制作したからそう感じるのかもしれないですね。"7人で作るんだ"という意識がすごく強かったからこそ、アルバム曲は僕らのことを昔から知ってくれている松岡モトキさんにプロデュースをお願いして。

●ふむふむ。

染谷:松岡さんも僕らの出したアイディアを汲んでくださったんです。僕らが「ストリングスを入れたいんです」と言えばストリングスのアプローチを考えてくれたり。基本的に松岡さんから「ああしろ」「こうしろ」というのは一切なかったんです。

ヨシロウ:だからさ、俺はイメージとしてはインディーズでいちばん最初に出したアルバム『THANKIST』に近いというか、あれの現在版っていうか、狙っているところはあの作品と同じだと思ってるんだよね。でもあの頃では到達できなかった表現力とか演奏力が、今はメンバーそれぞれが成長したからより理想に近づいた感じがしていて。込めたい空気感とか、出したい世界観とか。

宮田:そうだね。最初からやりたかったことっていうか。みんなでいろんなことを乗り越えたからこそにじみ出るものもあるし。テクニックとかアイディアとかもどんどん湧いてきた結果、結成した当初にやりたかったことが形になっている。『THANKIST』と『7』では全然違うんですけど、でもやりたかったことをやっと形にすることができたんじゃないかな。

●なんかもうジャンルとか関係ないアルバムですよね。

オガチ:うん。それは本当に思う。

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