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G-FREAK FACTORY

群馬のG-FREAK FACTORY、ここに極まれり。

昨年9月に“山人音楽祭2016”を開催し、“ダディ・ダーリン”ツアーを大盛況で終えた群馬のローカルバンド、G-FREAK FACTORY。そんな彼らが、待望のフルアルバム『FREAKY』を完成させた。シングル『Too oLD To KNow』『ダディ・ダーリン』の流れをくみつつ、まるで命を削るかのごとく“今”を刻み込んだ12曲は、どのシーンにもカテゴライズされない独自の進化を遂げたG-FREAK FACTORYの生き様そのもの。“山人音楽祭2017”の開催が発表されたこのタイミングで、Vo.茂木にアルバムのことをじっくりと訊いた。

 

SPECIAL INTERVIEW:G-FREAK FACTORY #1

「“群馬”というだけでマイナスなことが周りにあるから、“群馬なのに”とか“群馬のくせに”とか、跳ね返すにはちょうどいいハードルなんですよ」

●前作『ダディ・ダーリン』のツアーはどうでしたか?

茂木:ほんの少しだけ、前より手応えのあるツアーをまわれました。

●ほんの少しだけ?

茂木:はい、各土地に仲間が増えてきたというイメージがありますね。ローカルバンドということは拭えないし、拭うつもりもないんですけど、それを掲げてまわっているバンドが少しずつですけどしっかり様になってきたなという感じです。現時点では、そこに向けての修行みたいな感じですかね。

●G-FREAK FACTORYというバンドの個性の在り方とか、目指す先が見えてきた?

茂木:少しだけですけどね。

●かなり以前から「群馬のローカルバンド」と言ってきたじゃないですか。それが身になってきた?

茂木:そうですね。“群馬”というだけでマイナスなことが周りにあるから、“群馬なのに”とか“群馬のくせに”とか、跳ね返すにはちょうどいいハードルなんですよ。だから“拭えない既成事実をしっかり背負っていきたい”とは昔から思っていて。例えば、遠い大阪や北海道のお客さんが群馬をちゃんと知っていたりすると嬉しいなと思ったり。小さいことですけど、何もないところから考えたら大きな1歩だと思います。

●例えば10-FEETは京都、MONGOL800は沖縄というように、東京以外を拠点にしているバンドも多いですが、群馬のG-FREAK FACTORYとしては、京都や沖縄とは違うんですか?

茂木:全然違いますね。羨ましく思う時もあります。土台とか音楽の歴史とか圧倒的な人口の分母や街の規模とか…サウンドに反映している街の特色が根底にしっかりと見えているので、“羨ましいなぁ。じゃあ群馬の魅力ってどこにあるんだろう?”って、そこから後付けで考えるようになるんです。

●なるほど。

茂木:レゲエサウンドは海で響くという誤解があるけど、俺たちのDNAは山とか森なので、海で響くわけがないんですよ。だから割りきって、“森に響いていけばいい”という腹の括り方とか覚悟は、前とは全然違いますね。

●覚悟や想いが変わってきた。

茂木:前は「群馬」って言うと「ふっ」って笑うやつがいて、それを言い訳にできていた部分もあるんですよ。“群馬だからしょうがないか”と思っていたというか。

●ああ〜、なるほど。

茂木:だけど「群馬」とステージ上で発信した時に、群馬の景色が一瞬だけ見えるというか。はっきりとは覚えていないけど、それを一瞬でも感じるというか、ふわっと群馬の景色になるというのが大事で。そういう瞬間をこれからも見続けていきたいなと思っています。

●群馬といえば、昨年の“山人音楽祭”はどうでした?

茂木:いや〜、良かったですね。やって良かったと思うし、“山人音楽祭”をやることでまた新しい発見ができますね。群馬っていう土地の“ここがいいところだな”とか、“ここがダメなところだな”とかを知ることができたし。贅沢な時間でしたよ。

●観ている側としても、すごくいい1日でした。

茂木:仲間にも力を借りて、あんなド田舎で無理難題をすることができて。前例がないじゃないですか。前列がないっていうことはみんなが慣れていないということなので、そこからみんなで慣れていくというストーリーがあって。それが当たり前じゃなくて、来年もまたやれるかわからないというところをみんながわかった上で、MAXに開いて火の玉になれたらいいなと思います。

●今作にも繋がっていると思うんですけど、MCバトルはすごかった。

茂木:あれはヤバかったですよね。

●ラッパーの人たちが如何にすごいことをやっているのかがわかりました。バンドとは表現が全然違う。

茂木:うんうん。

●群馬のラッパーの人たちと交流があると以前からおっしゃっていましたけど、それを“山人音楽祭”のお客さんや出演者に観せたかった?

茂木:観せたかったです。観せたら絶対に広がるだろうし、“地元のバンドマンよりは絶対に持っていくだろうな”と思っていました。

●確かに。一瞬で場を持っていくことに彼らは長けていますよね。

茂木:そうですね。ポテンシャルが高いので普段やっていることをやれば、絶対に何か事件性を感じるだろうなと思いました。

●“人間力”を感じたというか。

茂木:しかもリズムがあって、考えたらすぐに言葉を出していなきゃいけないじゃないですか。脳から口までのスピード感を身をもって知りましたし、身近にいるNAIKA MCや、DJのR da Mastaとか地元にいるラッパーのポテンシャルが高いということを肌で感じたんです。そういうことがなかったら、ああいうことはできないですよ。“こいつら本当にやばいな!”と思ったので、「もっとみんなの前でやってくれよ」って言いました。

●G-FREAK FACTORYのライブでも、茂木さんのMCなのか曲なのかわからない即興的な表現は、ああいうシーンからの刺激を受けているんですか?

茂木:それはすごく昔からありますね。だからラッパーの放つ言葉とか雰囲気に、説明がいらない状態で自然に打ち解け合えるんだと思います。きっとN∀OKI(ROTTENGRAFFTY/“山人音楽祭”のMCバトルに唯一のバンドマンとして出場した)もそうだと思います。何も無理をしていない。

●確かに、N∀OKIくんは普段からあんな感じですね。ステージの上と下の境目がないというか。

茂木:ずっとあれですよね。ガソリンがなくなるまで走って、バタって倒れて寝るみたいな感じ(笑)。

SPECIAL INTERVIEW:G-FREAK FACTORY #2

「地元のやつらが感じているストレスとかコンプレックスとかを、どれだけ一緒に共有して、“なるほど”と思えるか。そうするとひとつの太いものになって、その先の大きなものと闘うことができる」

●今回のアルバム『FREAKY』は1年越しくらいで作られたんですよね?

茂木:前々作のシングル『Too oLD To KNoW』の時からアルバムを制作するというプランで進行していたんですけど、シングルを3枚分くらい作ると結果アルバムになる、という感じで贅沢にプランニングをしていただいたんです。レーベルのBADASSに感謝ですね。なかなか今はシングルを出すということが音楽業界の難しいところだと思うんですけど、それをやらせてもらえてすごくありがたいです。

●シングルを挟むことによって、常に音楽に接している数年間だったと。

茂木:そうですね。アメリカから帰ってきて音楽活動を始めて、大して背負っているものもない時代にやっていた音楽活動よりはるかに稼働してます。

●ハハハ(笑)。

茂木:だから動いていないと不安になってくるんです。キツいなと思うこともありますけど、“絶対にやってやる!”という意地でやっていました。開いていないと太刀打ちできるスケジュールではなかったので、“それを成し遂げるだけの自分のキャパを広げてやろう”という感じです。

●それは創作という意味で?

茂木:創作もそうだし、レコーディングやツアーとかもそうだし、いわゆる日常もそうですね。日常を“全部バンドで返したろう!”と思っています。

●そういう“生きる姿勢”も変わってきたんですね。

茂木:意識出来ているのかはわからないですけど、意識しないとアンテナが立たないから、人に会う時も“こいつはどんなことを考えているんだろう?”とか、“実のある話を絶対ひとつは持っているはずだ”みたいに接していますね。

●へぇ〜。

茂木:特に地元のやつらが感じているストレスとかコンプレックスとかを、どれだけ一緒に共有して、“なるほど”と思えるか。そうするとひとつの太いものになって、その先の大きなものと闘うことができるんです。年齢かもしれないんですけど、そういうことは今まで考えたこともなかった。

●ということは、この1〜2年はとても充実していたと。

茂木:めちゃくちゃ濃かったです。これを何でもっと早くできなかったんだろうっていう感じです。

●ハハハ(笑)。後付けかもしれないけど、必要な年月だったと考えることもできますよね。

茂木:そう思うしかないっていうか、「そうだったな」とちゃんと言えるようにしていかなければなと思いました。

●アルバムの全体像は当初から見えていたんですか?

茂木:『Too oLD To KNoW』の時はストックが4曲くらいしかなくて、その時は全体像を意識している余裕もなく、“これいいな”というのを出していたんです。それで『ダディ・ダーリン』を出した頃から、少しずつ見えてきました。最後のバースで残りの曲たちを録音した時に、“こういう曲がないとダメだな”と逆算して完成させていった感じです。

●作品として考えた時、どういうものが必要かと。

茂木:だけどアルバムを引っ張っていく曲がなかなかできなくて。いわゆるリード曲ですよね。結局「Too oLD To KNoW」と「ダディ・ダーリン」が引っ張っていくようなアルバムではダメだと思ったし、アルバムならではの曲がないとふわっとしてしまうというのもあって、「もう1回録らせて下さい」って、3回お願いしました(笑)。

●えっ? 3回?

茂木:もともとのスケジュールに追加して。

●ええっ!

茂木:もちろんその時点でもいい曲が揃っていたんですよ。ただ、1曲だけフィーチャーされた時に「これが今のG-FREAK FACTORYです」と言えていないと思ったんです。あくまでもメンバーとBADASSの主観なんですけど。

●それで3回…要するに3曲分追加でレコーディングしたと?

茂木:そうです。泣きの1回というか泣きの3回(笑)。

●ハハハ(笑)。そのリード曲「ONE DAY」ですが、この曲めちゃくちゃヤバいですね。

茂木:ヤバいですか! 嬉しいなぁ。

●“この人達はなんて曲を作るんだ!”とびっくりしました。想像のはるか上を超えてきた。

茂木:意表も突いていると思うんですけど、この曲に至るまでに泣きが2回ありましたからね。今から考えると、結局は自分的に悩み切れていなかったんだろうなと思いました。

●悩み切れていない?

茂木:あと、歯がゆい感じがメンバーの中に残っていたんだと思います。

●悩み抜いて悩み抜いて、その先に出てきたものじゃないとダメだという想いがあったと。

茂木:うん、“もうちょっといけるな”という感覚があったから、泣きが3回もあったんだと思います。

●「ONE DAY」はどのようにしてできたんですか?

茂木:だいたいギターで弾き語りをしながら作るんですけど、「ダディ・ダーリン」は悲しいMVからもわかるようにちょっと切ない曲で終わりにしてしまっているので、次は未来に向けて小さくてもいいから希望を歌いたいなと思ったんです。

●この曲の元となる燃料というか、源泉はどこにあったんですか?

茂木:暮らしですね。絶対的に暮らしです。事実を徹底的に受け止めて、1人称に対して2人称で、2人称に対して3人称で歌っていくこともたまにはいいんじゃないかと思ったんです。不特定多数の誰かに向けた応援ソングも大事だとは思うんですけど、思ったことを自然に“私 対 あなた”という視点で歌ったことは今までなかったんです。

●あ、そうなんですか。

茂木:例えば“俺 対 お前たち”とか“俺たち 対 お前”という視点の曲はありましたけど“俺 対 お前”は今までなかったです。

●「ONE DAY」は、歌い出しの“声が枯れ落ちる前に伝えておこう”という歌詞がいきなりすごくて、圧倒されて。まるで遺書のような。

茂木:でも本当にそういうつもりですよ。“死んじゃってもこれが残っていればいい”くらいの気持ちです。ある意味「ダディ・ダーリン」のMVがああいう感じになって、“いつ死んでもおかしくねぇな”と思った時に、「ONE DAY」があればこの先も繋がっていくと思うし。MVも監督に「「ダディ・ダーリン」の続編を描いてほしい」とお願いをして。

●なるほど。

茂木:だから書きにくかったけど書きやすかったです。“これをどうやったら形に出来るのかな?”と思っていたんですけど、進めたらあっという間に進みました。

●この曲ができたことによって、アルバムが締まったんですね。

茂木:引き立て合うというか。

●今作のまさに1曲目という感じですね。

茂木:そうですね。みんなで曲順を決めるんですけど、全員がこの曲を1曲目にしていました。

●あと、M-2「KTKZ TO TAIYO」はNAIKA MCさんとの共作ですが、これはもともとそういうアイデアがあったんですか?

茂木:いつかはやりたいなと思っていて、今回やってみてアルバムのラインナップ的にふさわしくなければこの先でもいいし、NAIKA MCのタイトルでこういう遊びをやってもいいし。でもとにかく1回はやってみようと。地元で意地を張っているNAIKA MCと共作するのはすごく重要なことだと思っていたので、“ボツになってもいいじゃないか”というノリもありましたね。

●歌詞を一緒に作ったんですか?

茂木:そうです。曲はシンプルで1コードなんですよ。だからトピックだけを決めて、電話で「KTKZ TO TAIYO」はどっちを先に膨らますかと話をして、ライブも想定しながらお互い書いてみたという感じでした。

●めちゃくちゃかっこいいんですけど、歌とラップの掛け合いがすごく多いですよね。これはその場でやり取りをしながら作ったのかなと思ったんですけど。

茂木:1回だけNAIKA MCとスタジオに入りました。

●え? 1回だけ?

茂木:はい。その後、一旦持ち帰ってお互い2方向で歌詞を書いて、辻褄が合わないところを揃えたというか。

●すごいな。その1回でイメージを共有できたんですね。

茂木:できましたね。ギターのおかずみたいなところも、NAIKA MCが「こういうのどうですか?」って言ってトラックを送ってくれたりして。

●本当にどこにもないような曲ですよね。

茂木:距離感が少し遠い人とのフィーチャリングをした作品とかもよくあるじゃないですか。戦略的にというか、企画的な感じで。

●ありますね。

茂木:でも俺たちはNAIKA MCとコラボをしたところで、「地元の仲間」という意味では太いものにはなりますけど、「これがビジネスに発展するか?」となったら誰もわからないと思うんですよ。でもNAIKA MCと自然に阿吽の呼吸で吹き込んで、その時の距離感を感じながらできたのは、お互いにたまたま地元にいたからなんですね。僕はバンドマンよりもNAIKA MCとの時間を共有してきたので、そこがかなり良かったんだと思います。

●だからこそできたコラボなんですね。

茂木:お互いに遠慮もしないので。「そこはダサい」とか全然言い合える間柄なので。

●今作は音楽的な幅も広いと思うんですけど、例えばM-5「HALF-DONE」とか…。

茂木:これは泣きの2回目です(笑)。今回のアルバムにこの質感の曲がないなと思ったので、追加で作ったんです。G-FREAK FACTORYの真骨頂みたいな曲ですよね。

●そうですよね。

茂木:きっかけは“G-FREAK FACTORYは、今はまだ中途半端で坂の途中にいるな”と思ったことなんです。

●ほう。

茂木:そういうことを歌おうと。で、この曲を作っているとき、TAKUMA(10-FEET)がレコーディングに遊びにきてくれて。

●色々とアイディアをもらったらしいですが、TAKUMAくんはどこで関わっているんですか?

茂木:彼はコーラスとかサビのメロディのテンションとか、今まで意識していなかったことを結構アドバイスしてくれたんです。

●たまたまスタジオに来たんですか?

茂木:写真を撮りにきました。

●あっ、最近インスタグラムとかにアップしてますね。「カメラマン・タクマ」とか言って(笑)。

茂木:カメラマンのふりをしているやつが(笑)、俺たちのレコーディング風景を撮りに来て、最後はレコーディングまで手伝ってもらったという。ほっとけなくなったんでしょうね(笑)。「違う! このラインじゃない! このラインや!」って。

●ハハハ(笑)。めちゃくちゃ積極的に参加してる(笑)。

茂木:コーラスの引き出しとかハンパじゃないし、百戦錬磨じゃないですか。気づいたらTAKUMA1人がレコーディングを引っ張っていましたね。“もういいんじゃないか”ってみんな思っているのに(笑)。

●ハハハ(笑)。偶然のコラボというか。

茂木:コラボっていうほどではないですけど、そうやって完成しました。すごく好きな曲ですね。

SPECIAL INTERVIEW:G-FREAK FACTORY #3

「20代の時は、“日本のバンドを全員ぶっ殺してやろう!”ってくらいの気持ちでいたんですけど、今は“全員連れていけるようなバンドになりてぇな”と思うようになりました」

●歌詞の全体的なイメージとして、その根底には“愛”があるような印象を受けたんです。“押しつける愛”ではなく、“生きていく中で滲み出てくるような愛”が根底に流れているというか。エグい曲調の曲もあってびっくりしましたけど、それでも「強くて愛がある曲」というか。

茂木:もしそう感じていただけたのならすごく嬉しいんですけど、“愛”というものを意識して書いたことはないですね。

●あ、頭には浮かばなかった?

茂木:一切浮かばなかったですね。今作の歌詞を書いているときに意識していたことといえば…喜怒哀楽のどこが足りない? と考えたとき、自分たちのモチベーションを上げるような題材って結構“怒”から生まれるじゃないですか。

●そうですね。わかります。

茂木:その“怒”をもっと感じていかないといけないし、“怒”を感じずに自然に丸くなっている部分があって。

●そうなんですか。

茂木:昔だったら平気で腹を立てていたことに、「しょうがねぇかな」って、相手の立場とかを考えるというか。“怒り”自体は人間に対して覚えるんですけど、“相手の立場を考えるとあながち怒れないな”というのを知ってしまったんですよね。

●悪い意味で、大人になったというか。

茂木:でもこれからのレベル・ミュージックは、それでも譲れない部分を探して、理不尽なことに対してしっかり怒っていかなければいけないと思うんです。

●レベル・ミュージックには必要だと。

茂木:昔は何に対しても怒っていましたけど、説得力には遠く及ばなかったと思うんですよ。要は「若造が何を言っているんだ!」と言われるだけなので。当時も確かにピュアに感じていたことなんですけど、それを漠然と表現しているだけでは全然レベル・ミュージックじゃないと思うんです。

●なるほど。

茂木:“レベル(反抗/反逆)”という部分を背負って、“こんなにレベルだけどさぁどうする?”っていうところまで意識して書かないといけないなと思って。「これが気に入らねぇ!」と言っているだけのロックだったら、それはただのワガママだと思うんです。“じゃあどうする?”と思わなきゃいけなくて。“これをひっくり返しにいくか!”みたいな。それがレベル・ミュージックの在り方かなと思うんですよね。

●なるほど。

茂木:過去のレベル・ミュージシャンはそれを打破しようとして、結果そういう事実を作ってきたから、その事実をが出来ないとただの「ぼやき」とか「やっかみ」になると思うんです。そういうことってこれまでにいっぱいあったと思うんですよ。「これはこういう事実表明が必要なんだ!」と主張してきた人たちは、最終的には“愛”になっていると思うんです。

●なるほど。逆に言えば、“愛”があるから“怒”が生まれる。

茂木:例えばビジネスのためだったら、“愛”だけでいいと思うんですよ。その方が売りやすいし聴きやすい。だけど事件性はないんですよね。僕が好きな過去のミュージシャンたちは、説得力を帯びて何かをほんの少しだけ変えていったんです。“革命”を起こしていったバンドマンやミュージシャンが本当に好きなんです。

●究極に目指したいところはそこだと。

茂木:そうですね。自分が先に書いたことで「ほら見ろ!」という瞬間をたくさん感じたいんです。だから俺は先代のミュージシャンから得たものを、自分のフィルターを通してまた色んな人に返すっていうのが、自分の役目だと思っていて。

●なるほど。

茂木:例えば政治批判とか、すごくシンプルに誰もが考え得ることを雲にパンチするようなレベル・ミュージックではなく、もっと1歩入り込んだメンタルなレベル・ミュージックが書きたいなと思っていたんです。それが出せなかったら、リリースしちゃダメだなと。反抗するものがないのに無理矢理に出してもろくなことにならないですし。

●それって単純に歌詞の話だけではないですよね。

茂木:そうですね。

●今作は、レゲエとロックをキーワードにしてG-FREAK FACTORYにしかできないこととか、どこにもないものという感じの曲だらけだと感じたんです。群馬で生活しているからこそ生まれる音楽だし、“山人音楽祭”からの影響もいっぱいあるだろうし、今までの20年近くの経験がないとできないような曲たちで、G-FREAK FACTORYのアイデンティティが形になったというか。言葉はもちろん、音もグサグサと胸に刺さってきて。

茂木:まだまだ途中ですけどね。今まではG-FREAK FACTORYをすごく狭いところでカテゴライズしようとしていて。

●狭いところ?

茂木:“何っぽい”っていうより“G-FREAK FACTORYっぽい”っていうところに自分たちがいかないといけないなと。だからそこにチャレンジしていくことが今のモチベーションなんです。20代の時は、“日本のバンドを全員ぶっ殺してやろう!”ってくらいの気持ちでいたんですけど、今は“全員連れていけるようなバンドになりてぇな”と思うようになりました。ましてや全員田舎者のアラフォーで、プラス要素が1個もないバンドがそれを成し遂げたら、結構なニュースになるんじゃないかなと思っています。無理難題を1個1個越えていく感じですよね。ハードルは高いほうがおもしろい。

●それがバンドのモチベーションになっている。

茂木:それがたまに“見栄”に繋がってしまうこともあるんですけど、やっぱり“見栄”じゃなくて“プライド”とかプラスの方向に転じていかないといけないと思うんです。だけど僕らがいい景色を作れたら、日本全国で苦しんでいるローカルバンドとか、別にバンドに限らずそういう人たちに勇気を与えられるんじゃないのかなって。それは歌詞っていうより、立ち振る舞いでしょうね。

●それが、最初におっしゃっていた“ローカルバンドとしての在り方”ということ?

茂木:“在り方”というよりは、“過去に誰もできなかったこと”だと思います。だからやりたいんですよね。

●以前から、G-FREAK FACTORYはひとつの生き方を提示し続けているような気がするんですけど、それが形になってきている実感はありますか?

茂木:少しだけですけどね。でもそのスタンスはこれからも変えないだろうし、もっと説得力をつけていきたいです。手が届かないと思っていた淡い夢が、ほんの少しだけ近づいているというか。地方だとそういうドラマがあるんですよ。過去にも、地方から出てきた一発屋のバンドをたくさん見てきましたけど、俺たちはまだ0発屋だから(笑)。ネクストバッターズサークルで、いつ呼ばれてもいいように素振りをしているバッターみたいに待っていただけだから、今は“例え三振をしてもいいからバットを振っていかないとな”というモードに入っています。“振っていかなきゃダメだよ!”って(笑)。

SPECIAL INTERVIEW:G-FREAK FACTORY #4

「“山人音楽祭”は当然いちばん大事な場所なので、群馬のやつらが震えて、群馬のやつらが勇気を持ってもらえればいちばん嬉しいと思っています」

●『FREAKY』というアルバムのタイトルは、“著しく型破りな、普通ではない”という意味ですが、このタイトルに決まったのはどういう経緯だったんですか?

茂木:タイトルをどうしようかというのは悩んでいて、『fact』でG-FREAK FACTORYの“FACT”を使ったので、候補に“FREAK”にちなんだ言葉があったんです。あとは“FREAKY”に関して“ぶっ飛んだビジュアル”という意味がパンクシーンの中にあるので、これに決めました。

●確かにこういう音楽はぶっ飛んでないとできない。普通ではない。

茂木:その分、イバラの道でしょうけどね。シーンとか流行りに依存しないじゃないですか。だからレーベルはすごい売りにくいと思います(笑)。

●新人バンドがこういう作品を作ったら売り出しにくいでしょうけど、20年近くキャリアがあるじゃないですか。

茂木:でもそのうち10年くらいは休眠バンドでしたよ(笑)。

●ハハハ(笑)。

茂木:僕が好きな過去のミュージシャンってみんなイバラの道を歩んでいますもん。例えばサウンドのジャンルができる前に、後々ジャンルとされる音楽をしていたり。それを作った人が死んでから称されている人もいるから、パイオニアの人たちってキツいんだろうなと思っています。

●そうでしょうね。

茂木:“生きているうちに花が咲くかわからねぇ”っていう感じで。マラソンでもトップを走っている人は2番手に抜かれるじゃないですか。本当は2番手の方が楽なんですよ。だから破天荒なことや過去に前例がないことをやろうとする人たちは、相当イバラだと思います。

●そういう生き方をしたい?

茂木:“したい”というより、“自然とそうなっている”という感じですね。どこにいても浮いていたいし、“俺はあいつらとは違うよ”って言い訳じゃなく思っていたい。

●それは昔からですか?

茂木:そうです。いつも違いをつけたいんです。みんなと一緒が落ち着くんじゃなくて、“俺は違うよ!”と思っていたいんです。

●そういう性格なんですかね?

茂木:性格というより環境だと思いますね。“あれと同じだからダメでしょ?”みたいな。中学〜高校の時がそういう環境で。制服なんて着て行かなくてもいいような学校だったから。“あいつがハードロック好きだから俺は絶対に好きにならねぇ”とか思ったりして、みんな違いをつけたがっていました。

●おもしろいな。

茂木:欧米とかもそうじゃないですか。“I always try to be different.”という感じでいつも違うことを考えたいし、違いをつけることで自分のアイデンティティを育てて主張していく。負けず嫌いだし、みんなそういう人たちばっかりだったので。

●それで自然とそういう考えになった。

茂木:自然と偏屈な人になりました(笑)。もう少し依存していけば良かったんですけど…。

●ハハハ(笑)。リリース後はツアーがありますが、その後は秋に“山人音楽祭”が控えていますね。

茂木:楽しみですね。

●“山人音楽祭”は、群馬で生きる人間としてのアイデンティティになっていますよね?

茂木:いや〜、まだまだ足りないですけどね。“山人音楽祭”は当然いちばん大事な場所なので、群馬のやつらが震えて、群馬のやつらが勇気を持ってもらえればいちばん嬉しいと思っています。

●昨年の“山人音楽祭”を観に行って思ったんですけど、あのイベント全部で“G-FREAK FACTORYというバンドを表しているな”と思ったんです。

茂木:例えば?

●全然ジャンルの違う人との繋がりとか、イベント全体の雰囲気がバンドの個性を表しているような。例えば“京都大作戦”は、雰囲気も含めて10-FEETの個性をすごく出していると思うんですね。どこにでもあるイベントではないじゃないですか。

茂木:“I always try to be different.”ですね(笑)。

●“山人音楽祭”にもそれをすごく感じたんです。

茂木:当然そのバンドマンのセレクトで出演してもらったアーティストの放つエネルギーもそうですけど、来場者と一緒に作っている感じが出てくるというのはいいことだと思います。

●お客さんに伝わりますよね。

茂木:ここから向こうは客で、ここからこっちがアーティスト、とかを分けすぎていないところとかいいですよね。“お前らも俺も一緒に作っているぜ”っていうところに持っていけたらいいと思っているんです。ローカルフェスは特にそうですね。出番が終わったら帰ってしまうアーティストがたくさんいるフェスとは違って、そこは大事なことだと思います。

interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:室井健吾

 

 

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