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GHEEE

圧巻のツアーファイナルが彼らへのさらなる期待感を呼び起こした

GHEEE:SPECIAL LIVE REPORT
“GHEEE III”RELEASE TOUR 2011
6/25@渋谷Milkyway [ONE-MAN]

Review

開演時間近くに会場へと着きドアを開いたら、フロアを埋め尽くす人、人、人…。これは下手をしたら、ライブが始まってもステージ上にいるメンバーが見えないのではないかと危惧するくらいの大入り具合だ。07年9月に行われた新宿Motionでの初ワンマンを少し思い出すような満員の観衆を前に、“GHEEE III”RELEASE TOUR 2011のファイナル公演が始まろうとしていた。3年ぶりのニューアルバム『III』と、それに伴う3年ぶりのツアー。とはいえメンバー個々の活動で多忙な中、その間もコンスタントにライブは続けていたGHEEEだけに素晴らしいものを見せてくれることは間違いない。そして3年間のリリース的沈黙の間も彼らに対する期待値は下がることなく、逆に待望感として上がり続けていたのだと開演前の光景にまず気付かされたのだった。
「The brilliant mexican blues」でライブが始まると、会場全体が身体を揺らし始める。開演前の予想通り、フロアの中盤付近では人波の隙間からメンバーがちらりと見える程度だ。しかし4人が絡み合いながら紡ぎ出す強烈なアンサンブルが、ステージ上で展開されているプレイの凄まじさをハッキリと伝えてくれる。それと呼応するように観る側のテンションも上昇し、入り口近くまで埋め尽くしたオーディエンスの中にただ立ち尽くしている者などいない。そう思わされるほど、周りのどこを見渡しても同じような光景が広がっていた。しかもライブが進む間にも続々と人は増え続け、密集率はさらに高まっていく。暑さも増していくにもかかわらず不快さなど微塵も感じないのは、彼らの鳴らすサウンドに没入していたからだろう。それは逆に心地よさすら覚えるほどだから。
新作の1曲目を飾る「Silver tongue」ではBa.Hisayoのボーカルパートなどの見せ場もあり、会場はさらに盛り上がっていく。次々と楽曲が演奏される中で感じるのは、本当に全てがキラーチューンだということだ。過去3枚のアルバムを聴いている人間であればどの曲が始まっても“来た!”という感覚が沸き起こり、逆に初めて観る人でも思わずメロディを口ずさみ、グルーヴに体幹を揺さぶられてしまう。それぞれがキャリアのあるアーティストであるのはもちろんだが、それだけではなしえない4人が有機的に結びついて生み出されるバンドマジックを感じずにはいられない。新作リリース時のインタビューでもメンバーが語ったように4人でリハーサルに入る本数も相当に限られているなどとは、到底信じられない息の合い方なのだ。
こんなことができるバンドはそうそう滅多にいるものではない。観る者の目と耳を奪って離さないライブは緊張感も漂わせているのだが、ステージ上の4人はそれすらも楽しんでいるかのように圧巻の演奏へと昇華していく。本編ラストの「The last chord」ではVo./G.近藤が満員の客席へと飛び込んでいき、予測不能な動きでカオスと狂乱を巻き起こす中で一旦、ライブの幕を閉じた。全20曲をあっという間に感じさせる濃密な時間に、まだまだ終わりなど来るはずがない。そうとでも言いたげな観客のアンコールは止むことなく、メンバーが再びステージに登場する。ダブルアンコールでも満足できないオーディエンスの熱狂に応えるように、ファイナルならではのトリプルアンコール! 本当にこの日最後となる曲は、何と一番最初に演奏した「The brilliant mexican blues」の再演だ。ここからもう一度ライブが始まってもいいと思ってしまうくらい、求心力のあるライブ。次のリリースとそのツアーがいつになるかはわからないが、いつまででも待っていようじゃないかという想いが沸き上がった。

TEXT:IMAI

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