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羽深創太ソロプロジェクト GIOVANNI
ジョゼという青春を終え GIOVANNIという未来がついに始まる

羽深創太ソロプロジェクト GIOVANNI
ジョゼという青春を終え GIOVANNIという未来がついに始まる


 
 
 
バンドという青春の長さは様々で、儚く散りゆく美しさもあれば、まるで永遠のような輝きを放ち続けることもある。2018年10月にジョゼが活動終了、2019年よりソロとして動き出した羽深創太のそれは、前者であったかもしれない。だが、この1年の間にMVが公開された「メトロポリスの夜」「ディア・ユース」、弾き語りで行った三度のワンマンと幾多のライブが、羽深創太の音楽人生が途絶えることはないと高らかに告げていた。そして、自身の誕生日でもある2020年1月28日(火)東京・吉祥寺Planet Kで行われるワンマンライブより、ソロバンドプロジェクトGIOVANNI(ジョバンニ)がついに始動。当日は来場者が自由に録音できるセルフレコーディング形式で、未発表の新曲が披露されるライブがそのまま1stアルバム『GIOVANNI 1st』となる前代未聞のプレミアムライブを開催する。ジョゼという青春を終え、GIOVANNIという未来をいよいよスタートさせる、羽深創太が語る。
 
 


「ジョゼを死守しなきゃいけない強迫観念にかられながら無理やり続けていくのは、美しくないなと思ったんですよ」


 
 
 
 
●まず率直にジョゼはなぜ終わったのか。(吉田)春人(Ba.)が先に離脱しちゃったことも含めて、みんなが気になるところだと思うけど。
 
羽深:ジョゼは解散というよりは終了させた感覚なんですよね。俺とじんじん(=中神伸允・Dr.)は仲が悪くなるとか離れることは一生ない関係なので、とりあえずジョゼとして精力的に活動していくのはもう終わりにしようという意味での、活動終了というか。春人に関してはいろんな理由があって、モチベーションの問題もあったとは思うんですけど、結局、春人が抜けたことが最後の引き金になったというか。
 
●春人の脱退が活動が止まった原因ではなく、バンドがいつ壊れるかという中で、春人が参っちゃったことがトドメになった。
 
羽深:最後のトドメでしたね。今までに何度もターニングポイントはありましたけど、毎回チームで「まだいける?」って確認しながら…常に終わることと続けることは表裏一体だったんですけど、もし次のステップに進むなら結構ガラッと変わるというか、いろいろとやりたいこと/やれそうなことはやり尽くしてたので、あとは俺が真ん中に立ちたい=4人になるという。
 
●そんな案もあったんだ!?
 
羽深:『honeymoon』(2016年リリース)を出して、ワンマンツアーと企画ツアー東名阪が終わった後に、これからは同期で音を増やすというよりは、もう1人のエッセンスを足して、4人のバンドとして再出発するビジョンがあったんですよ。だからその時期は、リハにもギターやキーボードの人に入ってもらったりもしてたんですけど。
 
●意外! ジョゼ=完全に3ピース前提なのかと思ってた。
 
羽深:だけど、4人目探しの途中に春人が抜けてしまったことで、そこからまたベースを探して、さらに上モノをもう1人見つけることが、ちょっとしんどくなってしまったんですよね。俺とじんじんで何度も呑んで、メシを食って、夜通しファミレスで話し合って、朝っぱらになっても答えが出ずに始発で帰る、みたいなことも結構あったんですよ。要は、ここから起死回生するにはどう考えても時間がかかってしまうし、俺もバカじゃないので、好きなことをやる上でビジネス的にも成立するバンドじゃないと…やっぱり事務所と一緒にやってきた時間もあるから、そこは好き勝手にぶっ壊すんじゃなくて、ちゃんと全員がハッピーになるにはどうすればいいのかを2人で話し合って…ここまでかなって。ちょっと“詰んじゃった”ところはありましたよね。
 
●ジョゼを続ける情熱と、そのためにこれからやらなきゃいけない作業を秤にかけたとき、後者はちょっと果てしないというか。
 
羽深:そう(笑)。例えば4人体制になって、新たに音源を発表して、ツアーを回ってワンマンをやって、もっといろんな人を巻き込んでいくためには、また算段を立てなきゃいけないし、数も打たなきゃいけない。「また2年ぐらいは頑張らなきゃね」という状況になったとき、年齢的な問題もあるんですけど、じんじんがギブアップしてしまって。じんじんは音楽が大好きだし、ドラムの技術を活かしたいと思ってる人でしたけど、やっぱり春人と3人で、チームでここまで積み重ねてきた日々を取り戻すには、あまりにも時間がかるから。ここからまたそこに人生を費やすことが、ちょっと難しいなと。
 
●なるほどね。じんじんは思ったよりもちゃんとしてる、と言ったらアレだけど(笑)。
 
羽深:アハハ!(笑) ジョゼとしての屋号を残して、また好きなときに出せばいいじゃないという話にもなったんですけど、それも何かちょっと気持ち悪くて。そこは俺とじんじんも合致したんですけど、無期限活動休止とか希望を持たせるような言葉はいくらでもありますけど、春人をはじめ歴代のベーシストがいてくれたこと、ジョゼのチームや事務所とやれたことって、振り返るとやっぱり欠けがえのないものだったんですよ。ジョゼを死守しなきゃいけない強迫観念にかられながら無理やり続けていくのは、美しくないなと思ったんですよね。ジョゼという世界はずっときれいなものであってほしかったので、這いつくばってでもやる気にはならなかったんですよ。これはTwitterでも言いましたけど、宝物として閉じ込めておきたい美学を取ったに過ぎないですね。
 
●逆にこれ以上続けたら、自分の大事なバンドがそうじゃなくなっていくのが目に見えてしまった。
 
羽深:そうです。うちらって割とレアで、一番最初にブッキングライブに出たとき、初めてメール予約をしてくれた人が、最後のライブにも来てくれたぐらいなので。音楽性はちょっと寄り道したかもしれないけど、節目節目を観てくれてたその人は、「ずっとジョゼが好きだった」と言ってくれた。その言葉が全てだったんじゃないかな。
 
●大事だからこそ、ジョゼを止める。
 
羽深:今でも大事にしてますから! 俺は『honeymoon』を作ってるぐらいから、もしかしたら音楽が嫌いになっちゃうんじゃないかと思うぐらい自分を擦り減らして、プレッシャーをかけまくってましたから…やっぱり音楽が好きでいたかったんですよね。これ以上、数字を気にしながら、ビクビクしながらやりたくはなかった。大学生のときにバンドを組んだあの気持ち、最初にオリジナル曲を作ったあの感じ、誰にも負けないんじゃないかと思ったあの頃…周りなんかは関係なくやってたのに、いつしか見られてるからきれいにしなきゃとか思うようになって…そういう気持ちに毒されていっちゃうと、もう音楽じゃなくなっちゃうから。それがちょっと怖くなったのはありますね。俺は器用じゃないので、うまくできないなって途中で気付いちゃったんだと思います。例えば、デモをチームに渡すときも、どこかで褒められたいという気持ちにシフトしちゃってて…それもおかしいですよね。
 
●周りの人たちを喜ばせたいとも言えるけど、“そもそも自分が書きたい曲ってそうだっけ?”という。
 
羽深:そうなんですよ。方法論に侵されてたというか、苦し紛れにいろんなギターロックから派生した曲を作ってたんですけど…(とiPhoneで当時のデモ音源を再生)。
 
●売れそうやん!(笑) 確かに『honeymoon』の後に進化するならこの方向な感じはする。
 
羽深:これは全部自分で打ち込んで作ったんですけど、『Sekirara』(2015)が俺の中のランドマークなので、あれを原点として『YOUNGSTER』(2016)と『honeymoon』を作って次となると、こういうエレクトロな音が増えてないと今の時代じゃ戦えないなと思って。でも、それは自分のやりたいことではなかったという(苦笑)。
 
●音楽人生における大きな決断をした、ジョゼの最後のライブはどうでした?
 
羽深:バンドサウンドでちゃんと鳴らして終わらせる宿命というか、ライブもせずによく分からないまま終わるのだけはイヤだったので、当日はベーシスト4人を迎えてやったんですけど…結構ブランクが空いた状態で迎えたラストライブだったので、“ちゃんと最後まで遂行できるのか?”という感じで、感傷に浸る暇もなく(笑)。結果的に完成度の高いライブができたし、お客さんも喜んでたし、泣いてる人もいっぱいいたけど、MCでも「2019年の自分の誕生日に弾き語りでワンマンをやるので、これからもよろしくお願いします!」と言って終われたので。ちゃんと次が決まってる環境を、お客さんにも、自分にも作りたかったんですよね。
 
●自分で線路を引いたというか。
 
羽深:虚無感に襲われたくなかったので、ちゃんと地続きになるように自分に十字架をぶっ刺しました。ラストライブでも「ジョゼの曲は死なないから。これからもジョゼとしてのカルマを背負って生きていく」って大層なことを言ったので(笑)。ていうか、もう呪いにかかっちゃってる。中学3年生からずっとギターを弾いてきて…音楽からはちょっとやそっとじゃ離れられないし、これがなくなったらマジで空っぽになるなと思ったので(笑)。
 
●イヤだなぁ〜ビシッとスーツを着て働く羽深くん(笑)。
 
羽深:アハハ!(笑) 何かそういう自分があんまり想像できなくて。まだちょっと自分に期待しちゃってるなと思ったんですよね。
 
 
 

 
 
 


「お金じゃなくて、新しいことをしたいんですよ」


 
 
 
●ちなみに、バンドでもユニットでもなくソロでやろうと思ったのは?
 
羽深:マジで雑に言うと、“とりあえず”(笑)。弾き語りでやった最初のワンマンのときは、「音楽家としての俺は死んでないからな!」っていう意地を見せたかっただけかもしれないですね。あと、「誕生日に1人は寂しいから!」って言ったら、みんなライブに来てくれるかなと思って(笑)。その日はまだジョゼの余韻もありましたけど、ちょっと自信にはなりました。1人になっても応援してくれる人がいることを知れたし、「新しい曲もいいですね」と言ってくれた人もいたから。俺は1人でも聴いてくれる人がいたら歌えるなって、その日に確信しました。音楽をやって喜んでくれる人がいるという最初の衝動というか。
 
●ジョゼの活動終了を発表した頃から最近までの羽深くんのTwitterを追ってみたけど、この1年の羽深くんはギターを弾いてて楽しい、俺の歌は大丈夫だって、そういうプリミティヴな感覚を身体に染み渡らせていった感じがするね。
 
羽深:その作業だったかもしれないですね。1回ゼロになりたかったから、ちょっと普通の生活を送るじゃないですけど、音楽がどこまで自分に必要か距離を置いてみたというか。三食ちゃんと食べて、働いて金を稼いで、友達と呑みに行って、休みができたら1日ただ寝てみたり。そんな中でも聴きたい音楽が、鳴らしたいメロディが、浮かんでくる歌詞があるのか。
 
●それがあったから、今ここにいるわけだよね。
 
羽深:そうです! 久しぶりに会った友達には「やっぱり羽深は音楽をやってなきゃダメだよ」みたいに言われたりもして…音楽があってよかったな、作れる自分で、歌える自分でよかったなと思える場面にも結構出くわして。フラれたら曲を作りたくなるのがミュージシャンだけど(笑)、遠くに行ってしまった友達とか、気持ちが変わってしまったあの人とか…そういうことを体験しちゃうと伝えたい言葉が出てくるので、やっぱり俺の感情のはけ口は音楽だなって。
 
●そんな中でもキーパーソンの1人が、それでも世界が続くならの篠塚将行(Vo./G.)くんで。言わばGIOVANNIというプロジェクトの相談役でもあり、羽深くんのリトマス試験紙みたいな存在でもあるもんね。
 
羽深:それはありますね。フラフラしてる間もそれせかのライブを観て、またバンドがやりたい気持ちが沸々と(笑)。ドラムもベースもギターも鍵盤も打ち込んで、MVだって自分で編集したのにやっぱり…俺は1人じゃダメだなと思ったんですよ。全部が自己責任なのは楽なんですけど、バンドの頃にあーだこーだ言い合ってたのが、何より好きだったんだなって気付いたんですよね。だから、ソロの頭脳を広げてくれる仲間を、ちょっとずつ集めていこうかなって。
 
●ただ、バンド形態ではやりたいけど、パーマネントなものとはまた違ったんだ。
 
羽深:そうなるとめっちゃ依存しちゃうから。俺がもし女だったら多分メンヘラ彼女になるんで(笑)。
 
●アハハ!(笑) キーボード兼ギターのヲクヤマ(TRY TRY NIICHE/Day on Umbrella/chelovek.)くんは、羽深くんが音楽を続ける1つの原動力になった人物で。
 
羽深:彼がいなかったら続けてなかったかもしれないですね。ヲクヤマは作家でもあるんですけど、「羽深さんはいつもいい曲を書いてるので」と言ってくれて、あるグループのコンペに誘ってくれたり、音楽を作る楽しさが継続できたのは彼のおかげで。GIOVANNIの制作にもガッツリ携わってくれているし、Day on Umbrellaはジョゼと対バンするために結成したとまで言われてるらしいんですけど(笑)、俺のことをある意味、全面的に肯定してくれるような存在で。しかもそこにはちゃんと知識の裏付けもある。彼に曲を持っていったらもっとよくなるし、空っぽになりかけのときに、俺にも生きる価値が少なからずあるんだなと思わせてくれたので。
 
●となると、GIOVANNIを始めるときに顔が浮かぶのは当然だね。
 
羽深:西田(裕作・The Cheserasera)さんは以前から一緒にやってみたかった人で、何かもう…長いので、付き合いが(笑)。20代で培ったネットワークをフルに活かしたかったし、その伏線をどんどん回収していきたい気持ちがあったので最適かなと。あと、一番のきっかけは、今度バンドワンマンをやる吉祥寺のPlanet Kに話をしに行ったときに、たまたまいた(笑)。「西田さん、ちなみにこの日、空けられます?」みたいな。
 
●まさに長年培った関係性とタイミング(笑)。
 
羽深:そのときに会えたのも因果だったので、これはもう誘うしかないなって。佐藤ユウスケ(juJoe/Marmaladebutcher/RubberJohnny/キタニタツヤetc)さんは、ジョゼが終わった後にたまたま出会って。オープンハンド奏法がうまいドラマーで、人間性がすごく好きで、品がよくて、バカなこともできる人(笑)。Instagramに上げてるドラムの動画も超カッコいいから、絶対に頼もうと思って。
 
●ただ、ここまではいいとして、今度のワンマンがイカれてるのは(笑)、披露した新曲をお客さんに自由に録音してもらって、その日限りのライブがGIOVANNIの1stアルバムになっちゃうと。
 
羽深:“俺は持ってるぞ!”っていう優越感じゃないですけど、何だか海賊盤みたいな感じでゾクゾクするんですよね。幻と言われた音源だってYouTubeで聴けちゃうような時代だからこそ、みんなが思う以上に貴重なものを出したかったし、まずはパッケージの概念を変えたかったんですよね。CDだのストリーミングだのという枠を壊したかった。今ならそれができると思ったし、iPhoneとかで録音してもらったら、ライブの帰り道でもすぐに聴けるから。
 
●観る位置でも音が変わるから、お客さん1人1人のアルバムが微妙に違うのも面白いね。
 
羽深:何なら友達にあげてもいいし、ヘンな話YouTubeに上げちゃってもいいぐらい(笑)、全てを委ねるライブをやりたいなって。お金じゃなくて、新しいことをしたいんですよ。今はリハをやっててもめちゃくちゃ楽しいし、やっぱり自分が集めたメンバーだけあるなと思うぐらい(笑)、曲がすぐに理想の形になる。どれだけDTMで作り込んだとしても、やっぱり生の音には敵わないなって、スタジオに入っててすごく感じますね。自分でも当日が楽しみです。
 
●この日がGIOVANNI名義でのスタート地点でもあるしね。
 
羽深:GIOVANNIという名前はヲクヤマくんといろいろ案を出し合って…主人公みたいな名前がいいなって、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』から付けたんですよ。ちょっと影があって、文学的要素も入ってて、「ファンタジーの中でリアルな気持ちを持って旅を進めていく世界観って、羽深さんにピッタリじゃないですか?」ってヲクヤマくんに言われて。
 
●ヲクヤマくん、めちゃくちゃいいブレーンだな(笑)。
 
羽深:ホントそう(笑)。俺にないアイデアをたくさん持ってる人なんですよ。そういう素敵なメンバーたちと、早くワンマンをやってみたいですね。ライブハウスで自分の曲がバンドサウンドで鳴る、しかも理想の形で鳴らせる喜びを早く感じたいです。
 
●そこでみんなが初めてGIOVANNIの音楽を聴くわけでしょ? しかも会場限定販売だって簡単には買えないのに、今回のアルバムはその日その場にいないと手に入らない。
 
羽深:それを価値のあるものだと思ってほしいし、ただのライブじゃないんだぞって知ってほしいです。あと、気が早いですけど、2020年にもう1枚アルバムを作りたいです!
 
●1stアルバムを出す前に、もう2ndアルバムを作りたいって言うヤツいる!?(笑)
 
羽深:それって面白くないですか?(笑) 20代のときに出会った人たちを巻き込んで、ちゃんとリベンジしたいから。その炎はまだ消えてないので!
 
 
Interview:奥“ボウイ”昌史
 
 
 

GIOVANNI ONE-MAN LIVE “GIOVANNI 1st”
1/28(火)東京・吉祥寺Planet K
 
https://soutahabukaofficia.wixsite.com

 
 
 
 
 
 

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