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自らを新たな次元へと押し上げるべく攻撃的姿勢で生み出された衝撃の問題作 ニューアルバム『アルファ』に迫るスペシャル・ロングインタビュー&全曲解説

一音目が鳴り始めた瞬間から、これまでとは明らかに違う“変化”を感じる。heidi.のニューアルバム『アルファ』を一言で表すれば、そんな作品だろう。前作の4thフルアルバム『閃光メロウ』から約2年もの時を経て、遂に完成した今作はある意味で“問題作”と言えるのかもしれない。これまでのセルフプロデュースから一新、海外からプロデューサーを迎えてミックスもアメリカで行ったことによって、音の質感は明らかな変化を見せた。それが冒頭の印象にもつながるわけだが、アレンジから歌や曲構成に至るまでプロデューサーの意見を取り入れたことで、一聴した印象はかなり変わったと感じられるだろう。だが、もちろんこれまで彼らが大切にしてきた“メロディ”や“歌”という軸は健在だ。いや、それどころか表面的な音の変化によって、その魅力はより確固たる存在感と強度を誇ってさえいるのだ。自分たちを新たな次元へと押し上げるための攻撃的姿勢で生み出された今作を、あえて“問題作”と言ってしまおう。ここに至るまでの葛藤、覚悟の全てをリーダーのG.ナオに洗いざらい語ってもらったスペシャル・ロングインタビュー。

「音の作り方という面では、確かに違いを感じましたね。今まで作ってきたものより大分ドライになっていて、リアルな感じにはなったと思います」

「これをライブで完全再現するのは不可能ですし、俺らはそういうことをやろうとも思わない。やっぱりライブでは4人のシンプルなバンドですし、このアルバムをシンプルに表現することもできると思っているので」

「とりあえずやったことのないことは、全部やってみようと思っているんです。簡単に言ってしまうと、何でもアリ。“それでいいんじゃない?”と思うから」

「怖がっていても仕方ないし、攻めの姿勢はずっと見せていきたいですね。守りには入りたくないし、常に勝負をしていきたいということはメンバーみんなが言っていることだから」

●まず今回のニューアルバム『アルファ』の構想は、いつ頃からあったんですか?

ナオ:前回のフルアルバムの『閃光メロウ』リリース以降でミニアルバムとベストアルバムを出しているんですけど、本当はミニアルバム『シックスセンス』のタイミングでフルアルバムを出す予定だったんですよ。それに向かって曲作りもしていたんですけど、結果的にミニアルバムという形で出すことになって。そこから次はフルアルバムを作ろうということになったところがスタートでした。でもその後もシングルを出す/出さないで話が二転三転して…、タイアップを狙ったりするところでタイミング的なものもあったりして、どんどんリリースの時期が延びてしまったんですよね。結局タイアップも決まらず、もう俺らも限界で「そんなものはどうでもいいからとにかく出したい」ということで時期を決めて、実際に曲作りを始めたんです。

●早い段階からフルアルバムの構想はあったところを、諸事情で出せなかっただけというか。

ナオ:正直、何も出さないというのもアレだったから、ベストでつなごうとした部分もあったんですよ。タイミングの問題だけで定期的に曲出しは行なっていたので、曲数自体はすごくあって。昔から作っていたものから最近作ったものまで、色々とありましたね。それで具体的に今回のアルバムを作るとなった時に、プロデューサーを立てようという話になってから一気に流れが固まっていきました。

●プロデューサーを立てるというのはheidi.にとって初めてだったわけですが、そうしようと思った理由とは?

ナオ:単純に“やったことのないことをやろう”ということで決めました。これだけ時期も空いたので、何か変わったことを1回してみないかと。今までもプロデューサーを入れることに抵抗があったわけではなくて、自分たちだけでも作れるからということで単に必要性がなかったんです。だから、今回は試しに入れてみようかとなって。自分たちが今後それを活かせればいいし、それによって自分たちや作品がどうなるのかという興味があったんですよね。

●元々、プロデューサーを入れることに抵抗があったわけではない。

ナオ:今回はたまたまそういう話があったので乗ってみたというだけで、そこはどちらでも良かったんです。俺個人としては、ただ単純により良い曲を出せればということだけであって。メンバーからも「やったことがないからやってみたい」という意見が圧倒的に多かったですし、自分たちの経験値にはなったと思う。

●初めての経験だったわけですけど、プロデューサーの意見は素直に受け入れられたんですか?

ナオ:受け入れられるところと受け入れられないところは、やっぱりありましたね。でも「絶対にこのフレーズは変えたくない」とか思っても、一応やってはみたんですよ。やる前に否定するんじゃなくて、「こうしたら?」と言われたことはとりあえずやってみる。“やっぱり違うな”と思ったら「これではダメです」と伝えるし、もちろん逆に「じゃあ、これでいきましょう」ということもありました。

●全ては実際にやってみてから判断していた。

ナオ:何でもかんでもやってみて、そこからアリ/ナシの割り振りをしていましたね。“ナイな”と思うこともあったけど、意見は意見として聞いてみないとプロデューサーを入れている意味がないと思ったから。やれることは時間の許す限りやってみて、その上で選択するという感じでしたね。

●曲によってはプロデューサーの意見で大きく変わっていたりもする?

ナオ:そのまますんなり行った曲もあったんですけど、曲によってはすごく変わりましたね。一番変わったのは、M-6「青の世界」とシングルでも出したM-11「曇り空には恋模様」で。この2曲には特にプロデューサーの手が加わっています。

●この2曲は今作でも特に異色な感じがしますね。

ナオ:元々、プロデューサーを入れる話もまだ出ていなくて自分たちで作ろうとしていた時点では、もう少し深くて狭いアルバムを作ろうと思っていたんです。前作がバランス重視のアルバムだったので、今作はバランスとかをあえて考えないアルバムにしようかなという感じで。でもプロデューサーが入るということになって一緒に選曲をしている時に、「幅の広いアルバムにしたい」と言われて…。

●真逆の意見だった。

ナオ:(当初の構想とは)全く違うアルバムになっちゃったんです。もしも自分たちだけで作っていたなら、「青の世界」みたいな曲は選ばなかったと思います。そういう意味でも、気持ちを切り替えるのは大変でしたね。

●選曲の段階で、プロデューサーの意見はどのくらい入っているんですか?

ナオ:プロデューサーから「これは入れた方がいいね」と言われた曲もあったし、メンバー的に「この曲は絶対に入れたい」という曲もあったので、半々くらいですね。選曲に関しては、ある程度みんなが納得した上でできました。

●プロデューサーの意見で選ばれた曲も半分くらいはあるわけですね。

ナオ:幅の広いアルバムというのは俺らが元からやってきたものなので、それ自体には苦労しなかったんです。そもそも選曲会に出す段階ではワンコーラスだけの簡単なデモも多くて、1曲丸々できているわけじゃないんですよ。「青の世界」なんかは“この曲をどうやって形にしていくんだ?”という感じだったので、正直なところ俺は入れたくないなと思っていたんです。でもどう変わっていくかわからないし、とりあえずはやってみようかなと。特にこの曲はプロデューサー側が推していた曲だったので、そこで向こうの人のセンスというものを見てみたかったというのもあります。

●そこもとりあえずやってみようと。

ナオ:ひと通り完成したものを見て、最悪ダメなら差し替えればいいやと考えていましたね。「青の世界」に関してはあまりにも今までの自分たちがやってきた色とは違っていたので、アルバムの中の1曲としてはむしろアリなのかなと。こういう曲がアルバムのフックになれば、より幅が広がっているようにも聴こえるのかなとは思いました。

●選曲会の段階でまだ完成していなかった曲もあるわけですが、それを形にしてからレコーディングに入ったわけですか?

ナオ:正直、形になりきっていないものもあって…。そのままレコーディングに突入しちゃったから、レコーディング中に変わった曲もあったりして大変でしたね。本番中にコロコロと変わるというのが俺の中ではありえないことだったから、精神的にもきつくて。そこは俺に限らず、みんな大変だったと思います。

●「曇り空には恋模様」をシングルでリリースした際のインタビューでも話されていましたが、そもそもアレンジにシンセを入れるというアイデア自体もナオさんの中ではなかったことですよね。

ナオ:基本的に俺はシンセを入れるのが好きじゃないので…もちろんそれで良くなるのならいいんですけどね。特に「青の世界」なんかはシンセが入りすぎていて、最初に聴いた時はやりすぎなんじゃないかと思いました(笑)。でもそういう上モノが入っているだけで、「青の世界」については曲の構成自体は変わっていないんです。逆に「曇り空には恋模様」は構成まで変わっていて。

●「曇り空には恋模様」はイントロからシンセのフレーズが全開ですからね。

ナオ:最初からシンセで上モノを入れていくという話はされていたんですけど、「曇り空には恋模様」にはちゃんとしたフレーズまで入っていたので、それがすごく嫌でしたね。“これだったらいらないな”と思ったので、「どうしても入れたいのなら自分にフレーズを考えさせてほしい」と言って。でも自分が考え直したフレーズでは強すぎるということで、プロデューサー側で最もシンプルにした形がこれだったんです。

●紆余曲折があって、今の形に収まったと。

ナオ:そもそもはギターロックがやりたかったのに、全くそういう感じではなくなってしまいましたね…。ただ、ギターロックというイメージで作っていた曲が、そんなふうにも変化できるんだという勉強にはなったと思っています。

●自分たちだけならやらない形ですよね。

ナオ:絶対にやらないです(笑)。そこは音楽に対しての見方が違ったというだけだと思うんですよ。プロデューサー側は客観的な意見として「こんなことをしたら面白いんじゃないか」と言って、俺は自分の中でイメージがあるから「それは別にいらないんじゃないか」と思うというだけで。この曲に関してはプロデューサー側の意見を取り入れて、こういう曲になったということですね。

●他人の意見が入ることで自分の頭の中に元々あった最終形のイメージとは違う形になるのは、新鮮な部分もあったのでは?

ナオ:そうですね。だから世の中にはリミックスというものが存在して、原曲と違ったアレンジでも成立しちゃうわけですよ。極端な話、それと同じことなのかなと。

●リミックスと考えれば、大胆な変化も受け入れられるというか(笑)。「青の世界」も当初のイメージとは違った?

ナオ:この曲に関してはDr.桐さんの曲なので彼がどう考えていたかはわからないんですけど、俺だったらもっと緩急を付けた曲に仕上げようと思っていました。全編を通してフワフワしている曲っていうのが今までになかったんですよね。淡々としているので、アレンジをどうしようかと一番悩んだ曲で。最終的にはシンプルな構成で、イントロが新鮮だったり、サビへ行くまでの過程でAメロのルートをキープしている感じが面白さになっているのかなと思います。もしも上モノがなかったとしたら普通の曲っぽい感じなので、これに関してはシンセが入っていて正解なのかもしれないなと。

●他にも原曲のイメージから大胆に変わった曲はあるんでしょうか?

ナオ:M-8「モノクログラデーション」はずっとライブでやっていた形から変わってしまったので、そこは抵抗を感じましたね。

●具体的にはどこが変わったんですか?

ナオ:ベースです。今まではイントロからAメロまでずっとスラップだったんですけど、プロデューサーのアイデアでAメロがルート弾きになってしまって。少し落ち着いた感じになってしまったので、ちょっと嫌だなと。

●そう思いながらも、今回はその形を受け入れたわけですよね?

ナオ:受け入れたというか…、向こうが譲らなかったんです。正直、“そのくらいなら変えなくていいんじゃない?”と俺は思ってしまったんですけど(苦笑)。そもそも俺はそのスラップありきでこの曲を作ったので、“それを抜かれたらどうすんの!?”っていう感じですよ!

●曲の根本に関わるところですからね。

ナオ:ここだけは本当に嫌でしたね。ライブでこのアレンジをやってもドラムと合わないし、ライブではスラップを弾いてほしいと思っています(笑)。そういう部分では正直なところ不満もあったんですけど、そこはもう自分の中で消化しながらやっていくしかないですから。

●時間が経ったら、“これもアリかな”って思えてくるかもしれないですし…。

ナオ:そうですね…。最悪、録り直します(笑)。

●ハハハ(笑)。そもそもプロデューサー側からは、今作の方向性について最初に何か提示されていたんですか?

ナオ:提示されていましたね。ミックスを海外ですることは決まっていたので、それによっていわゆる洋楽的な音の作り方をしたいとは言われました。

●今までとの一番の違いはそこですよね。音質がすごく洋楽っぽくなっていることによって、今までの作品とは1曲目から雰囲気がガラっと変わったという気がします。

ナオ:音の作り方という面では、確かに違いを感じましたね。それが果たして洋楽っぽいのかと言われると、俺にはちょっとわからないんですけど。ただ、単純に日本とアメリカの音作りの違いは感じました。

●洋楽っぽいというか、アメリカ的な乾いた音ですよね。

ナオ:今まで作ってきたものより大分ドライになっていて、リアルな感じにはなったと思います。

●ただ、heidi.の魅力である“和”の要素というのはどうしても日本的な湿度があると思うんですが、そこは問題なかった?

ナオ:音そのものが乾いていたり湿っていたりということよりも、重要なのはメロディや歌の聴かせ方だったんですよ。今でこそ聴き慣れましたけど、最初に上がってきた時に“これはとても聴かせられない”と思ってしまって…。そこからの直しがすごく大変でした。

●ミックスも手直しはしているんですね。

ナオ:歌だけじゃなくて、楽器のバランスとかも全部直しています。

●音の質感というよりはバランス面を調整した。

ナオ:質感は別に嫌いではなかったから、それはそれでいいと思ったんです。問題はバランスのほうで、それが向こうの人のバランス感覚なのかもしれないけど、かなり細かい修正を入れました。楽器のバランスが変われば、歌とのバランスも変わってくるので、その作業は本当に大変でしたよ。

●その修正は日本でやったんですよね?

ナオ:ミックスはアメリカでやったので現場には立ち会えないというところで、そこにも葛藤があったんですよ。最初はメールでやり取りしていたんですけど、「もう無理だ! 全部日本でやらせろ!」と言って…(苦笑)。時間もない中でこんなことをやっていたら、一生終わらないと思いましたね。

●そのくらい大幅な修正が入ったと(笑)。

ナオ:向こうの人は、アルバム全体というよりも1曲1曲のイメージで音を作っていたんだと思うんですよ。音の作り方やバランスのとり方を見る限り、“この曲はここを聴かせたいから、この部分をデカくしよう”という感じで作っている印象を受けました。

●それが1枚のアルバムになった時に、まとまってはいなかった?

ナオ:全然まとまっていなかったです。メンバーとも話していたんですけど、他の洋楽アーティストのアルバムを聴いても、そうはなっていないんですよね。だから、これは絶対に直さないとダメだと。

●海外特有のやり方というわけでもない。

ナオ:やっぱり現場で話し合いながらやらないとダメですね。いちいち直したものをメールでメンバーに確認を取ることも一苦労でしたから。一度、みんなで集まって、全てのバランスを取らないと無理だと思いました。だから、最終的な微調整は日本でやらせてもらったんです。

●相手が海外の方ということで、意思の疎通も大変だったんじゃないですか?

ナオ:通訳がいたので言葉の面では大丈夫だったんですけど、ニュアンスの部分が全然伝わらなかったですね。去年海外でライブをした時も、PAに全然ニュアンスが伝わらなくて苦労したことがあったんですよ。“ちょっと”が伝わらなくて。“ゼロか100か”みたいな感じで、“こいつ、何なんだよ…?”って思いました(苦笑)。

●微妙な調整をする感覚がないというか。

ナオ:感覚的なものが本当に違うんだなと。音作りは日本人より細かいと聞いていたんですけど、俺はそうは思えなかったですね。別の意味では細かいのかもしれないけど、“繊細さ”がないなと。“繊細さ”って、日本独特のものなのかなと思いました。

●向こうには最初からない感覚を伝えようとするのって、大変じゃないですか?

ナオ:ボーカルは一番耳に付く部分なんですけど、最初に聴いた時は“何だろうこれは…?”と思いましたね。“これで良いと本気で思っているのか?”と(苦笑)。でも、どうしてこうなっているのかがわからないから、何をどうしてくれと言えばいいのかもわからなかったんです。ただ、「良くない」としか言えなくて。ボーカルにエフェクトがかかっている部分もあったので、そこは向こうに確認しながら調整したりもして、かなり細かいところまでやりましたね。

●そこも感覚が違ったんでしょうね。

ナオ:曲によるんですよね。この曲ならエフェクトがかかっていてもいいだろうなという曲も確かにあったから。でも、歌っている本人からすると“ちょっと違う”というところもあったりして。そうなると、やっぱり実際に歌っている人の意見を優先してあげたいですからね。今回はボーカルの録り方も、今までとは全然違う録り方をしているんですよ。

●それはどんな部分で?

ナオ:(過去にシングルでリリースしていた)M-2「月光ショータイム」以外は、サビを全部重ねているんですよ。プロデューサーからすれば広がりを持たせるという狙いらしいんですけど、俺は歌を重ねる手法が好きじゃないので今までずっとやってこなかったんです。確かに広がりは出るけど、それによって今までとは聴こえ方も全然違ってしまうから。

●今作を聴いていて、ボーカルの重なりはすごく印象的でした。

ナオ:プロデューサー側はそこでの広がりが欲しいということで、必ずサビは重ねてあるんです。聴こえ方としては広がりが出ているのかもしれないですけど、ストレート感はないなと。コーラスはコーラスで別にあるので、ストレートにガツンとくる感覚がなくなっちゃうと思うんですよね。今まではそういうものだったところから、今作は歌の広がり方を重視するという方向にシフトされている1枚ということなのかな。

●確かにコーラスパートだけでもインパクトのあるものにはなっていますよね。

ナオ:コーラスに関してはheidi.の武器になっている部分だし、俺はコーラスだけでも十分に広がりを持たせられるんじゃないかと思っていたんですけどね。でも今回は主旋律のほうで聴こえ方の違いがかなり如実に出ているので、今までの作品を聴いてきてくれた人にはすぐにわかるような違いになっているんじゃないかな。良いか悪いかは置いておいて、大きな違いになっていると思います。

●以前から作品とライブは別物だと話されていましたが、今回は特に“作品感”の強いものに仕上がっているんじゃないですか?

ナオ:特に「曇り空には恋模様」と「青の世界」に関してはCDで聴いていて気持ちいい曲の作りになっているので、1枚を通して聴いてみてもそういうふうに聴こえるかもしれないですね。これをライブで完全再現するのは不可能ですし、俺らはそういうことをやろうとも思わない。だから、ライブではいつも通りに曲をやっていくだけしかないんです。そろそろライブのことも考えなきゃいけない時期になってきましたけど、別に心配はしていないんですよ。やっぱりライブでは4人のシンプルなバンドですし、このアルバムをシンプルに表現することもできると思っているので。ただ、CDで聴いた時との差は大きいでしょうね。

●それもライブを観る楽しみにつながるというか。

ナオ:それはそれ、これはこれという感じですよね。

●楽曲によってはライブですごく盛り上がれそうなものもありましたが、意識して作ったわけではない?

ナオ:もちろんライブを想定して作っている曲もありますけど、実はかなり少ないんです。そういう計算をしてしまうといかにもそれっぽい曲になってしまうので、できるだけそういうことは考えないようにしています。今作だとM-1「衝動」とM-10「哀れ廃人」くらいしか、ライブは意識していないですね。

●この2曲は激しい感じなので、かなり盛り上がれそうだと思います。M-9「ランドスケープ」のコーラス部分も、ライブでお客さんとの掛け合いをイメージしたのかなと思ったんですが。

ナオ:これは単純にこういうシャッフル曲がなかったので、作ってみようかなというだけでしたね。まずそこがあってから、掛け合いがあったらライブで伝わりやすいのかなということで入れてみた感じです。掛け合いの部分ありきで作ったわけではなくて。でも最終的には、ライブで何とでもなる曲ばかりになったなと思います。

●そうやって完成したアルバムのタイトルを『アルファ』にした理由とは?

ナオ:最初にツアーのタイトルを“+α”と決めたんです。自分たちとお客さんという意味で、“+α”のイメージがあって。今作でも自分たちに“+α”としてプロデューサーがいるので、『アルファ』でいいんじゃないかと。新しい試みもしているし、“アルファ”には“物事の始まり”という意味もありますからね。

●ここから新たに始まっていくイメージ?

ナオ:今作には初めて外部の人の手が加わったことで自分たちも色々な経験をして、メンバーそれぞれに思うところもあったと思うんです。それをこういう形にして出せるのは、良いことですよね。これから始まるツアーを見据えて改めて考えることもあるだろうし、ある意味で初心に戻れた1枚じゃないかと思います。

●今回初めてプロデューサーを入れてみて、今後も使ってみたいと思いましたか?

ナオ:俺らはバンドサウンドでずっとやってきたので、それ以外のものを使う曲を作ってレコーディングをすることになったらまた起用するかもしれないですね。でもバンドサウンドだけの作品なら、別にいいんじゃないかって(笑)。

●それもやってみないとわからなかったわけですからね(笑)。プロデューサーというものに対するイメージも変わったりした?

ナオ:そこは元々思っていたとおりでしたね。プロデューサーといっても、1つの目線でしかないわけで。聴かせ方や好みや考え方みたいなものはみんなが持っているもので、俺たちも当然持っている。そこがもし全く違う相手だったら、一緒にやっている意味がないと思うんです。そういう点で考えると、今回一緒にやった方は基本の目線は俺たちと同じだったというところでは良かったんでしょうね。

●基本の目線は一緒だったんですね。

ナオ:プロデューサーには、最終の形がある程度見えていたんだと思うんですよ。ずっとこの仕事をされているわけだからそこはわかると思うんですけど、俺らには全然わからないわけで。でも出来上がってきた音そのものは質感とかも含めて基本的にみんなが良いと思えるものだったから、そこに着地できたことは良かったんじゃないかな。

●自分たちの魅力はちゃんと活かされている。

ナオ:自分たちの基本的な良さはわかってくれていたので、そこは心配なかったんですよ。その人もheidi.をいかに自分の理想とする音にするかを考えてやってくれていたと思うから。ベストアルバムも出して次のステップへ進むという段階でこれだけ音の違いがはっきりとわかる作品ができたことは、やっぱりプロデューサーが入ったからこそなんですよね。そういう意味でのアピールはできたと思うので、そこは良かったと思います。

●heidi.の根本的な魅力は残したままで、次のステップへと進む道筋も見える作品になっていますよね。

ナオ:今までどおり自分たちだけでやっていたら、絶対にこうはならなかったと思います。

●そういう作品だからこそ、リリース前に全曲フル視聴を行うという大胆な挑戦もできたのかなと。

ナオ:そうですね。今だったらいいかなという気持ちがあって。

●「今だったら」というのは?

ナオ:ある意味、勝負作だから。今までやったことのないプロデューサー起用をして、やったことのない先行視聴をして、やったことのない本数のツアーをやって、やったことのないニコ動での配信もする。とりあえずやったことのないことは、全部やってみようと思っているんです。簡単に言ってしまうと、何でもアリ。“それでいいんじゃない?”と思うから。

●バンドとして、すごく攻めている感じが伝わってくる動きをしていますよね。

ナオ:怖がっていても仕方ないし、攻めの姿勢はずっと見せていきたいですね。守りには入りたくないし、常に勝負をしていきたいということはメンバーみんなが言っていることだから。そういう意味でも、良い作品になったと思います。今回のツアーも含めて、どうなっていくのか非常に楽しみですね。

Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M

G.ナオによるニューアルバム『アルファ』全曲解説

M-1「衝動」
今作の中で一番新しい曲ですね。今までのアルバムでは1曲目にSE(インスト)がある場合が多かったんですけど、今回はそういうものはなしにしようということは決まっていたんです。何か遊び心がほしいというところで、コーラスパートを入れてみたりもして。1曲目からお客さんをピークに持っていけるものにしたいと思って、この曲を作りました。今までのSEにあったようなワクワク感も出せている曲じゃないかな。熱くストレートな歌詞も、すごく曲とリンクしていると思います。

M-2「月光ショータイム」
映画の主題歌にも起用して頂いた曲なんですが、監督さんからは「とにかくheidi.らしい曲を!」ということだったのでそのリクエスト通りに作りました。この曲に関しては先にシングルでリリースしていたので、ライブではお馴染みの曲になっていて。初めて聴く人も、ライブをイメージしながら聴いてもらったら面白いんじゃないかな。アルバムの中では新しい曲に挟まれることで聴こえ方も変わってくるかなと思うので、そういう流れも楽しんで聴いてもらえたらいいですね。

M-3「アナザーフィッシュ」
俺らは割と4つ打ちの曲が多いんですけど、これはギターのリフレインで押し通したいなと。最初から最後までゴリ押しでいく感じで作った曲ですね。今までで一番、4つ打ち感が強い楽曲だと思います。イメージとしては、heidi.流のクラブミュージックという感じかな。やっていることはずっと一緒なので、ちょっとしたループ曲になっているというか。でも切れ味が良いので聴いていて飽きないんじゃないかと思いますし、飽きさせないことを大前提として作った曲です。

M-4「リトルガーデン」
これこそ“ザ・heidi.”というか、この曲が好きな人はheidi.が好きだと思いますね。従来のheidi.らしい曲だし、みんなが一番得意としている曲なのでレコーディングもすごく速かったんです。プロデューサーからも「これは入れなきゃ」と言われたし、本当に全員一致で収録が決まりました。哀愁感のある曲調と少し切ない雰囲気の歌詞というタイプの曲が好きな人には、すごく評判の良い曲になるんじゃないかな。このアルバムの中で一番、heidi.っぽい楽曲だと思います。

M-5「追憶」
重めな感じでどっしりとした、いわゆる世界観を出しやすい曲が欲しいということで、桐さんが作ってきたんです。今までもこういう曲はあったし、今回のアルバムにも入っていていいかなと。「リトルガーデン」からガラッと切り替わる感じが、幅の広さを演出できているんじゃないかなと思います。プロデューサーもこの曲は入れたいということだったんですけど、海外の人ってこういうインダストリアルな雰囲気の曲が好きだからイメージしやすかったんでしょうね。

M-6「青の世界」
今作の中で一番異色な感じになっていると思いますね。でも、義彦が歌うことでheidi.の歌になっているし、俺もずっと聴いているのでもう違和感は薄れて馴染んできています。シングル候補にもなっていた曲なので、それくらいの間口の広さは持っているのかもしれない。普通に“良い歌”として、聴いてもらえるんじゃないかな。この曲と「追憶」はどちらもスローテンポですけど、雰囲気は全然違っていて。この2曲を並べることで次へのフックにしようという狙いもありました。

M-7「メルト」
アルバムに入れるかどうかは別として、最初に歌で入ってから展開していくような曲を作りたかったんです。「曇り空には恋模様」とはまた違ったベクトルの爽やかさのあるギターロックというイメージで作って、そのイメージ通りにできた曲じゃないかな。プロデューサーも気に入っていたし、かなり潔い曲なので俺も好きですよ。「青の世界」からの流れがすごく良いと思います。これは新しめの曲なんですけど、ぜひ新しい感じのheidi.も楽しんでほしいですね。

M-8「モノクログラデーション」
シングルを出すかどうかで二転三転していた時期に、「これもシングルでいけるんじゃないか?」と候補に挙がっていた曲なんです。これもまたheidi.の得意とするタイプの曲なんですよ。「月光ショータイム」と同じくライブではやっていない時がないくらいの曲なので、満を持しての音源化という感じですね。ライブですごく評判が良いし、すごく盛り上がるので、“これを使わない手はないでしょう”みたいな感じでした。ライブと音源との違いを楽しんでほしいです。

M-9「ランドスケープ」
このテンポ感のシャッフル曲がうちらにはなかったんですよね。ウチのメンバーはみんな、シャッフルが好きなんですよ。掛け合いもあってライブでも盛り上がるだろうし、単純に楽曲としてもすごく良いと思います。この曲が今作のリード曲になっていて、PVも撮ったのでそれもぜひ見てほしいです。俺はどの曲がリード曲になってもいいと思っていたくらいなんですけど、メンバーから「これがいい」と意見が出て。それくらい、このアルバムを象徴している曲なんじゃないかな。

M-10「哀レ廃人」
ライブをイメージして、いわゆる飛び道具みたいな曲を1曲作ろうかと。俺らのアルバムには毎回こういう曲が入っているんですけど、今までよりも歌モノっぽいかなと思います。ちょっと哀愁感があって、ヴィジュアル系のシーンならではのわかりやすさもあったりして。これもライブを想定してもらいながら聴いてもらうと面白いんじゃないかな。今回はピークを「曇り空には恋模様」の前に持ってこようかということで、この曲をここに持ってきました。

M-11「曇り空には恋模様」
「哀レ廃人」の後にこの曲がくるというギャップも、また面白いと思うんですよ。シングルにもなっているんですけど、今作ではラスト前でこそ一番映えるだろうということで、ここしかないなとすんなりと決まりました。自分たちの楽曲の中でも特殊な位置付けの楽曲なんだということがリスナーにもわかりやすく伝わるだろうし、良い位置にあると思いますね。

M-12「彼方」
これは「衝動」の次くらいに新しい楽曲なんですけど、最後の曲ということを想定して作ったんですよ。アルバムの全体像が見えかかっていた分、イメージしやすかったですね。“エモーショナルなラストが映えるんじゃないか”と思って作ったんですけど、これこそライブで聴いてほしい1曲です。今作の締めとしても相応しいと思うし、これぞheidi.の真骨頂と呼べる曲なんじゃないかな。すごく緊張感があるので終わった後も余韻に浸れて、そしてまた「衝動」から聴きたくなるという…(笑)。

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