音楽メディア・フリーマガジン

Hello Sleepwalkers

センチメンタル症候群…これは始まりにすぎない

 オフィシャルHPでメンバー構成のみが公開されており、その経歴もバックボーンも謎に包まれながら、10/5にリリースしたタワーレコード限定シングルがバイヤーや音楽関係者だけではなく耳早い音楽ファンの間で口コミを呼び、急速に注目を集めつつあるニューカマー・Hello Sleepwalkers。我が編集部にもそのライブを観たことがある者はおらず、彼らを理解する術は同作に収録された楽曲「センチメンタル症候群」と「惑星Qのランドマーク」の2曲のみ。

今月号では、既にリリースされている限定シングル『センチメンタル症候群』について、編集部スタッフ4名によるクロスレビューを敢行。彼らが作り出した音楽の感触を手がかりに、Hello Sleepwalkersというバンドが持つ魅力と可能性に迫ってみる。

 

Hello Sleepwalkers CROSS REVIEW by JUNGLE LIFE

そこは、限られた時間にしかたどり着く事のできない場所

Hello Sleepwalkers。「名は体を表す」と言うが、これほど彼らにぴったりと当てはまる名前はない。眠りにつくかつかないかという頃に、夢と現の狭間を漂うほんの限られた時間にしかたどり着く事のできない場所。浮遊間のある宇宙的なサウンドは、一聴した瞬間、近未来ファンタジー小説に出てくるような別世界へと連れて行ってくれる。
決して激しく主張している訳ではないが、洗練された音がそれぞれが確かな存在感を放ち、思わぬ方向から鳴り響くギターサウンド。幼さを残しつつも、時空を超え未来まで突き抜けていきそうな勢いと力強さを持った声。つかみ所がないというより、常人の想像を超えたセンスのためつかみきれない独特なメロディ。そのすべてが融合すると浮世離れした不思議なサウンドが出来上がるのだが、Vo./G.シュンタロウの紡ぐ歌詞は、私たち若者が現実に対して抱く不安や苛立ちと見事にリンクしていてドキッとする。こんな世界を作り出す彼の目には、いったいどんな景色が広がっているのだろう。そのすべてを理解する事はできないが…いや、理解できないからこそ、その世界にもっと触れてみたいと思う。
これほどの才能を持っているというのに、平均年齢20歳と聞いた時は驚いた。同世代の人間としては、時代を駆け抜けていく彼らの存在が妬ましくも誇らしい。この超新星は、この先どんな変化を遂げ成長していくのか…気が早いのかもしれないが、5年後、10年後の姿が楽しみでならない。
森下恭子(20歳女性)

白と黒があるとして、このHello Sleepwalkersは完全な“黒”だ。

白と黒がある。これは良い悪いということではなく、イメージの話だ。
Hello Sleepwalkersは完全なる“黒”であると私は感じた。複雑に絡み合うギター。タイトなドラムと重く沈むベース。男女ツインヴォーカルで歌い上げるサビ。絶妙なタイミングで入り込むコーラス。独特な歌詞が彩る歌の世界。歯車が上手くハマって回りだす様に、全ての個性が邪魔をすることなく、奇麗に混じり合い出来上がった“黒”。彼らは疾走感のあるメロディで駆け抜け、ダークな世界観を作り出している。
「センチメンタル症候群」は、まるで幼い頃に見た夢の様だ。「あれは幻か? それとも現実か?」 どちらとも区別がつかない出来事を、夢だったと思い込ませていたあの頃。気がつけば過去を思い出しながら歩き、時々意味も無く立ち止まって振り返る。そんなセンチメンタルな感情を、いつまでも持ち続けてしまっている自分にハッとするのだ。
「惑星Qのランドマーク」は、真夜中に迷い込んだ遊園地みたいだ。真っ暗な夜いっせいに明かりが灯り、暗闇に浮かび上がるメリーゴーランドに観覧車。そこは現実とかけ離れた世界。笑顔のまま涙を一粒たらすピエロが手招きをする。そんなミステリアスな雰囲気に、興味を惹かれて覗いたら、一気に引きずり込まれていく。
曲が終わり気がつけば、いつもの日常。目に入ったのは“Hello Sleepwalkers”。「そういうことか…」と口元が緩んだ。
HiGUMA(30歳女性)

巧みに構築されていることを意識させない心地好い快楽

イントロから何かが始まる予感を喚起する、スペイシーな電子音が響く。続いて耳に入ってくるのは、淡々と覚めたような男性ヴォーカルだ。気付いたら、傍らに寄り添っているかのような女性ヴォーカル。刻むリズムが激しさを増すにつれてメインの歌声も熱を帯びてきたところで、厚みのあるコーラスが重なる。そしてサビでは男女ツインヴォーカルが、フックのあるメロディと共にクライマックスを描き出した。その後も最後まで、様々な歌声のトーンが入れ替わり立ち替わり現れるタイトル曲「センチメンタル症候群」。わずか4分半ほどの時間に起こったこととは信じられないくらい、小宇宙的に濃厚な聴取体験を味わわせてくれる1曲だ。
絡み合うギター2本の織り成すイントロが印象的な、カップリング曲「惑星Qのランドマーク」。近未来的な歌詞は、眼前に幻想的な宇宙空間の情景を浮かび上がらせるようだ。男女ヴォーカルはこの曲でも次々とめまぐるしく入れ替わりながら登場し、様々なメロディラインを紡ぎ出していく。これは2曲ともに言えることだが、声も楽器も時には重なり合いながらも互いを殺すことなく絶妙なバランスで鳴り響いている。ウェルメイドなポップソングに象徴的な、巧みに構築されていることを意識させないままに心地好い快楽をもたらすサウンドメイキング。まるで自分が夢の中にいることを忘れて歩き出してしまいそう…、それがHello Sleepwalkersの音楽だ。
IMAI(31歳男性)

微妙な距離感は聴き手を彼らの音楽にどっぷりと浸からせる

シーンには毎年キラ星のごとく新しいバンドが現れ、個性を発揮しては人々の注目を集め、ある者は更に才能を開花させて飛躍し、ある者はいつの間にか忘れ去られていく。職業として考えた場合にはあまりにも割に合わないのに、なぜ次から次へと新しいアーティストが生まれるのだろうか。
それはきっと、音楽には答えがないからだ。答えがないということは、無責任な言い方かもしれないが、可能性しかないということだ。
幻想的なイントロで幕を開ける「センチメンタル症候群」。苦悩を乗り越えて進もうとする力強い歌詞と、ソリッドなバンドサウンドは聴き手にエネルギーを注ぎ込む。中毒性の高いリフと軽快なリズム、エモーショナルなサビが印象的な「惑星Qのランドマーク」。聞き慣れない単語を羅列した記号的な歌詞は、非現実的な世界を想起させる。
楽曲の中心にあるのはVo./G.シュンタロウの歌であることに間違いはない。しかし、彼の歌はキラキラとしたアレンジとは対照的に、なぜかとても哀しくて、感情を爆発させるサビであっても常に平熱感を帯びている。その微妙な距離感が、聴き手を彼らの音楽にどっぷりと浸からせるのだ。もちろん筆者もその1人。
今後、この距離を彼らはどうしていくつもりなのだろうか? 永遠に答えが出ない“音楽”というフィールドで、彼らはどのような答えを出そうとしているのだろうか? …Hello Sleepwalkers、彼らの可能性は計り知れない。
Takeshi.Yamanaka(39歳男性)

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