音楽メディア・フリーマガジン

HITOMI TSURUKAWA & PIRATE LOVE

JOHNNY THUNDERSに導かれて。荒ぶる魂、そしてロックン・ロール。

Th eROCKERSのギタリストにして、今も一貫してタイトなロックンロールを追求する鶴川仁美。

彼がTHE WILLARDやジライヤなどの伝説的バンドで活躍してきた大島治彦、THE RUDEBOYSの玉井政司と共に、新バンド・PIRATE LOVEを結成した。

ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズの名作『L.A.M.F.』収録曲をバンド名に冠した彼らが、そのハートブレイカーズのオリジナルメンバーにして伝説のNYパンクス、ウォルター・ルーと夢の共演を果たす。

Interview

●今回、この3人が集まったキッカケとは?

鶴川:ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズのギタリストだったウォルター・ルー氏が今年9月に初来日するんですけど、そのサポートメンバーを僕らがやるというのが、キッカケですね。僕は5年くらい前からジョニー・サンダースの曲を演奏していて、そういう僕を見て、大島くんが声をかけてくれたんです。彼もジョニー・サンダースが好きで。

大島:子供の時から、ずっと好きなんですよ。バンドを始める以前から聴いていましたね。

●ジョニー・サンダースが好きという共通点があった。

鶴川:そういう意味では、ジョニー・サンダースが導いてくれたようなところはあるのかなと思う。大島くんは東京在住で僕は福岡、玉井くんは大阪なわけですけど、その3人が集まって。そして1つのバンドという形で、それぞれの中にあったロックンロールをここで1つの音に出来たという流れがありましたね。

●3人とも元々、知り合いだったんですか?

玉井:大島くんはジライヤの絡みもあったので前から知っていたけど、鶴川さんと一緒にやらせてもらうようになったのはここ最近で。昔は、ただのファンでしたね。去年の12月にTHE RUDEBOYSの30周年記念ライブにゲストで出てもらったのが、キッカケかな。

鶴川:不思議なことなんですけど、流れができていたんですよ。ウォルター・ルーが来日する前にまず3人でツアー(SOLID GOLD TOUR:7/4~7/8、福岡、広島、京都、岐阜、東京)をやっちゃおうという話になって、そこから今作(1stマキシシングル『SOLID GOLD』)のレコーディングまでの流れが、決まった。レコーディングに使った楽器もそうだし、導かれたようにこうなった気がします。

●そもそもウォルター・ルー氏のサポートをやることになった経緯は何だったんですか?

大島:ウォルターと僕はニューヨークで何度か会ったことがあって、ある時に「日本で演りたい」と…。話を聞いてみると、実はハートブレイカーズ時代に来日が決まっていて準備までしていたのに、ジョニー・サンダースが1人だけで行っちゃったらしくて(笑)。

鶴川:アハハハ(笑)。ヤンチャな人ですよね。

●ジョニー・サンダースらしいといえば、らしいエピソードですけど(笑)。

大島:そういうこともあって来日が実現していないので、「日本で演りたいからバックをやってくれないか」と言われたのが2年くらい前なんです。いざバックバンドを務めるとなったら、本人に満足して欲しいじゃないですか。だからスペシャルなメンバーを集めたいなということで、誰がいいか、いろいろと考えたんですよ。

●そこで他の御二人に思い当たった?

大島:そういえば、鶴川くんはずっとライブでジョニー・サンダースの曲をやっているんだから、ジョニー・サンダースをやらせたら日本で一番だろうと。玉井くんはジライヤで対バンした時に聴いたベースの音がすごく好きだったので、声をかけてみたら気持よく「やる」と承諾してくれて。そこからは全てが、早かったですね。

●大島さんは、来日を招聘するところから関わっているんですね。

鶴川:招聘は大島くんが中心だったね。そのおかげで夢のような話が実現したわけですよ。

大島:ウォルター・ルーと一緒にやれるなんて、本当に夢の夢じゃないですか。ニューヨーク・パンクのアーティストたちの中で、今も現役で残っている人なんて少ないわけですから。

●ジョニー・サンダースも今は亡き人ですからね。

鶴川:何といっても、ウォルター・ルーは『L.A.M.F.』をジョニー・サンダースと一緒に作った人ですからね。しかも3分の1くらいは彼自身が曲を作っていて、ボーカルも取っているわけで。そういう人と一緒にできるということは、やっぱり特別な想いがあって。ローリング・ストーンズ以降の1つの形としての本物のロックンロールを、CDだけじゃなく、生の音でやれるっていうのは最高なんじゃないかな。ライブにこそ、意味があるから。

●生きる伝説みたいな人と一緒に音を出せる機会はそうそうない。

鶴川:ギターも今回、タイミング良くジュニアのヴィンテージものが手に入って、今回のレコーディングを力強いものにしてくれた。ウォルターの来日公演に臨む僕に取ってその意味は、大きい。いろんな意味で最高のものを届けたいと思っています。

●しかも、それを本人に見てもらえる。

鶴川:言葉ではなく、ガツン !! と音を出せば、それで伝わると思ってる。

大島:逆に言葉が邪魔をすることも結構ありますからね。海外のバンドと対バンする機会はたまにあっても、こうやって一緒にやれる事が嬉しいですね。

●本番前のリハーサル等で、本人と合わせる時間は十分にあるんですか?

大島:いや、「リハーサルは1回でいい!」って、本人が言っていて…。

玉井:本人はね(笑)。

鶴川:そういうものらしいんですよ。でも僕たちとしては最高のものをやりたいので、そのためにこのバンドでCDをリリースしてツアーもやるわけで。実際にやらないとライブの感覚はわからないから、そこでポテンシャルを上げていこうかなと思っています。かといってダラダラとやる必要はないし、短くコンパクトに、鮮烈にやっていこうかなと。ロックンロールは、鮮度が命なので。

●7月の"SOLID GOLD TOUR"には、そういう狙いがあった。

大島:5日間連チャンという…(笑)。

玉井:無謀やねぇ…(笑)。

鶴川:でも楽曲が良いものばかりなので、それが後押ししてくれるというか。僕たちがジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズの曲をやっているというのは、やっぱり楽曲の良さがあるからなんですよね。自分自身の気持ちもそこに引っ張られるので、それが全てかなと思います。

●名曲揃いの中で、今作『SOLID GOLD』に収録する3曲を選んだ基準とは?

鶴川:単純に好きで、自分の気持ちを駆り立てられる曲というか。まず自分がやっていて気持ちいい曲じゃないと。それで、最初にまずM-1「I Wanna Be Loved」とM-2「Personality Crisis」を選んで。

大島:M-3「Pirate Love」はバンドの名前だから、やった方が良いんじゃないかということで(笑)。

●バンド名ありきだったんですね(笑)。

鶴川:バンド名や曲目を決めるミーティングをしている時に、大島くんからこのアイデアが出て。響きも良いし、ジョニー・サンダースに導かれて巡り会ったメンバーでもあるから、わかりやすくて良いんじゃないかと。

大島:しかも、すごくポップなんですよね。

●字面的にも響き的にもポップだと思います。

鶴川:単純に伝わりやすいし、音楽って、閃きみたいなものだから。パッと聞いて耳に入ってくる。そういう意味でも良いんじゃないかな。

●そして実際に、今回の3曲を演奏してみての感覚はどうだったんですか?

鶴川:聴いた時に良いと思うのはもちろんだけど、実際にやってみてわかる良さもあって。テクニック的な部分で"ジョニーは、ギタリストとしてはどうなのか?"と言われるけど、テクニックなんて言葉が、無意味なぐらいのその特別な個性にロックンロールの華を見る。ジョニーやウォルターにしか弾けないギターがあるんです。ジェリー・ノーラン(Dr.)じゃないと出せないビートがあるし、ビリー・ラス(Ba.)もそう。ハートブレイカーズには、その4人じゃないと出せない音がある。ストーンズとかもそうだけど、替えのきかないメンバーで成立してるサウンドこそが、最高だと思う。それこそがロックンロールの美学じゃないかと思いますね。

●そのメンバーでしか出せない音にこそ意味がある。

鶴川:だから日によって良かったり悪かったりするのも逆に良いかなって思うし、ライブ中の瞬間瞬間で違っても良い。計算外のことが起きることだってあるし、こうやろうと思っていたのと違う方向に行くことも良いんですよね。同じメンバーで同じ曲をやっても、やる日や場所が変われば全然違うものになることがあるんです。やっぱり、その日のライブ、その瞬間が大事だなと思いますね。

●そういう意味で、この3人というのも特別なのでは?

鶴川:普段は全然一緒にやっていないわけだし、レコーディングまではまともに絡んでもいないんですよ。半日だけ一緒にリハーサルをして、次の日からはもうリズム録りをして。ほとんど2テイクくらいで録っちゃったので、リズム録りは1日で終りましたね。翌日に僕が歌録りとギターを重ねて、結局2日で録っちゃったんです。

●そんな短期間のレコーディングだったんですね!

鶴川:でも、それで良いと思うんです。ダラダラやるものじゃないし、鮮度のある内にスパッと切り取って"これだ!"という感じで良い。

●納得のいくものが録れたと。

鶴川:それぞれが今までにやってきたことも今回の音源にも反映されてるし、それが出来るメンバーだったんですよ。

大島:いざやってみると、あまり違和感がなかったんですよね。前から一緒にやっているんじゃないかというくらいに(笑)。

●お互いに違和感なく、一緒にやれた。

玉井:レコーディングするっていうことが、バンドにとっては大事やと思うんです。バンドを固める上では一番手っ取り早い方法やと思うし、今回の話が出た時にも俺は絶対にレコーディングしたほうが良いなと思っていて。なんとなくバーッと流れで進んでいったので、考えている暇は全然なかったけどね。

鶴川:良い意味で、自分自身を追い込まないといけないな、と。そこで予想もしない力が出ることもあるので、レコーディングは本当に良いキッカケなんですよね。作り始めるまでは正直、いったいどうなるのかという気持ちもなくはなかったけど(笑)。でも普段のライブをやる時にしても、自分の使い慣れた楽器があって、自分の望む音が出せるアンプがあって、それをフルテンで鳴らせば気持ちにスイッチが入る。日常からポンと飛び出るというか。ある意味、スリルがないと面白くない。

●そのスリルがロックンロールの面白さですよね。

3人:そう!

大島:爆発力というか。

鶴川:それしかないと思うし、常に何かお客さんをドキッとさせるものが必要だと思いますね。最初のお客さんは、自分自身だと思うんです。自分の弾いているギターを自分自身の耳で聴いて頭が飛んで、また弾くっていうサイクルが在ると思うんですよ。その次のお客さんはバンドのメンバーで、その次に来るのが本当の聴衆。ドキドキする何かを常に持っていると、バンドは死なないと思う。

●そういう感じだから、ウォルターも「1回リハーサルすれば大丈夫だ」と…(笑)。

鶴川:それこそスリルがあると思う。この3人の中にもう1人加わるわけだから、また違ったことになると思うんですよ。良い化学反応がそこで起きるだろうなということに関しては、疑いがないですね。良い意味で僕たちも引っ張られたいし、逆にウォルターを引っ張りたいとも思っていて。ステージに上がってしまえば先輩後輩は関係なくガツンガツンいきたいなと。

玉井:今は本番に向けて3人それぞれが気持ちを昂めていく感じで、プレッシャーと共にワクワク感が日に日に増してきていますね。

●お互いに刺激し合う部分もあるんじゃないですか?

玉井:やっぱりステージ上で他のメンバーがガーッと上げていっているのを見ると、自分も自然とテンションが上がるもんやからね。それはお互いにあると思う。

鶴川:音が飛んでくるんですよ。人間関係でもそうですけど、お互いが鏡じゃないですか。それを凝縮した形が、音楽の演奏なんじゃないかなと思うんですよね。個人で絵を描くんじゃなくて、4人で集まって絵を描く。そこで良い化学反応が起こると最高だと思います。

●そういうライブだからこそ、毎回違うものを期待できるというか。

鶴川:曲目も入れ替えていくだろうし、衣装も変えるだろうからね。色々と手を変え品を変え、面白いものを作りたいなと思っています。毎回同じライブじゃなくて、1回見損ねると損した気持ちになっちゃう。そういう感じを出せるようにしたいと思うんですよ。

玉井:毎回観に来ないと損しますよ。本当に初期衝動的というか、どんどん突き進んでいる感じがあるのでホンマに今見ておかんとアカンと思う!

Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M

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