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In 197666

覚悟と決意で自らの運命を変える

185_197666同じ高校に通っていたメンバーで結成されたIn 197666。1stアルバム『Stars Seed』(2012年10月)の制作時に森下が正式加入して現体制になり、この4人で音を鳴らすことの喜びを実感した彼らは、その後バンドとして大きな成長を遂げる。激しく脈打つ鼓動のように4人が一体となって迫り来るステージ、幾重にも音が交錯する美しいアンサンブル、孤独の中で人の“生と死”を見つめつつ描かれる鋭い言葉。1分1秒たりとも無駄にせず、常に進化を続けるIn 197666が、今作『(NO)MY DESTINY』で運命を切り開く。

「生きていく上で“真実の愛ってなんだろう?”と考えることが多いんですけど、なぜそういうことを考えるのかというと、それは死に対するリミットを感じているから」

●昨年12月に初めてライブを観て、それでつい最近(3/10@渋谷O-Crest)もライブを観たんですけど、かなり変わっていてびっくりしたんです。以前は繊細さだったり爽やかなイメージが強かったんですけど、つい最近のライブは感情も溢れていたし、何かが振り切れている感じがして、ぐいぐいと迫るものがあった。この短期間でここまで変わるのはすごいなと。

西:ライブが変わった理由は“覚悟”と“決意”かもしれないです。

●覚悟と決意?

西:自分たちが憧れてきたものって、90年代のJ-ROCKなんです。L'Arc〜en〜CielとかGLAYとかLUNA SEAとか。俺たちはそういうアーティストたちの規模の大きいライブを観て憧れたんです。エンターテインメントのショーですよね。そういったショービズの世界に憧れて音楽を始めたんですけど、ライブハウスシーンに長く居ると、逆にそういうものがかっこわるいんじゃないかと思ってくる価値観があるというか。“純粋で武骨なロックがかっこいい”みたいな。

●そういう価値観ってありますね。

西:その2つの価値観の狭間で揺れていた数年間があったんです。“本当は自分たちが憧れた人たちのような表現をしたいけど、そうやったらかっこわるいんじゃないか”みたいな想いがあったんです。でも最近、大きな規模でライブをしているバンドをいくつか観させていただく機会があって、そこで「あれれ?」って。人々が純粋に熱狂しているのはやっぱりエンターテインメントの部分なんだという実感があったんです。そこで“音楽内の熱量は変わらないのに、なんでこんなに伝わり方が違うんだろう?”と考えたんですよ。

●ほう。

西:それはアウトプットの仕方なんじゃないかと。だから音楽性を変えるとか云々ではなくて、ライブでの立ち振舞いだとかを変えようと思ったんです。ヴォーカルに対するバンドのついて行き方だったりだとか。「俺たちメジャーデビューします! ジャジャジャジャーン!」っていう立ち振舞いを「なんだよかっこわるいな」と思っていた感覚を全部除外したとき、それが最高にかっこいいじゃないかと思えるようになったんです。そういった“覚悟”と“決意”です。

●そういう心境の変化がライブに大きく影響しているんですね。今回リリースするミニアルバム『(NO)MY DESTINY』でメジャーデビューとなるわけですが、曲はどうやって作ってるんですか?

原:今作に関しては、スタジオでみんなでセッションして作った曲ばかりです。

森下:スタジオに入って「じゃあ今日は曲を作ろう!」と言ってジャーン! みたいな。そういう感じがほとんどですね。

●そうなんですね。今作を聴いて思ったんですけど、どの曲も1曲に込めた情報量や熱量がすごく多いですよね。

森下:セッションで曲を作っているとき、「とりあえずこの曲をいちばん良くしよう」って詰め込みまくるんです。情報量が多いというのはたぶんそういうことだと思うんですけど、「他の曲とのバランスを取りつつ」とかじゃなくて、作っている曲をいちばんいい状態にしたいという想いが強くて。

●ああ〜。

森下:だからすごく試行錯誤したんですよ。最初と全然曲が変わったりもしたんですけど、そういった手応えを自分たち自身が感じた曲を6曲並べたのが今作なんです。

●ということは、1曲が完成するまですごく時間がかかる?

西:めちゃくちゃ時間かかりますね。曲の完成はトラックダウンするときというか。

●それまでずーっと曲をいじっているということ?

森下:最後の最後までやってるよね。歌を録り終わってミックスしているときに「イントロを変えようか」ということもあったし。

西:だから暫定の仮歌が乗っただけのデモで、三浦は全てを想像してドラムを叩くんです。

●ドラム大変ですね。

三浦:めっちゃ大変です。歌も歌詞もギターもベースも決まってないんです。仮ではいちおうありますけど、その後でみんな変えますから。

●ハハハ(笑)。

三浦:「こっちの方がいいね」というアイディアを思いついたら、みんな迷わずそれを採用するんです。

西:もちろん録ったドラムには合わせるんです。スケジュール的にもドラムは録り直せないので、ドラムありきでなんとか曲を良くする。

●歌詞はどういう風に書くんですか?

西:セッションしているオケから言葉が聴こえてくるんです。日本語って、単語1つにしてもセンテンスにしてもメロディがあるんです。抑揚というか。そういうニュアンスで、オーケストレーションの中から言葉が聴こえてくるんですよ。インスピレーションが湧くというか、曲の雰囲気を形容する言葉が出てくる感覚なんですよね。

●ほう。

西:その言葉を拾って歌詞にする。例えばM-1「Fly」は飛んでいるイメージがあったんですけど、加えて憤りを感じているような印象もあって。この曲の歌詞を書いているときは、ちょうど世の中的にいじめが原因の自殺の問題がクローズアップされているときで、そこに向かってはいるんです。

●なるほど。

西:もちろんその問題だけをフィーチャーしたわけではなくて、その問題をもう1度壇上に乗せて書いたというか、「どうなの?」って提示したかったというか。1人の人間が死に向き合う、現実に向き合う…そういったときの強さとか弱さとかを全部詰め込みたかったんです。“現実は上手くいかないな”って思うことは誰しもあると思うんですけど、現実は全部自分の選択の結果だと思うんですよね。そこで「これが自分の運命だ」と諦めたとしても「それは本当に運命なのか?」と俺は言いたいんです。きっと諦めるまでの過程で闘った期間だってあったわけじゃないですか。「人間の弱い部分を明確に出して、それを認めた上で強くあれ」ということが言いたかったんです。

●なるほど。

西:他の曲は、表層的なテキストは僕が独断でガーッと決めて書くんですけど、当然書けなくなることもあって。それに1人よがりになりたくなかったので、メンバーと共作で作詞した感じなんです。さっきも言ったように、俺はどうしても音が持っている言葉を引き出したいんですけど、言葉が聴こえない場合もあって。それは自分自身のメンタルやフィジカル、色んなことが影響しているんだろうけど、オケから言葉が聴こえない。何も書けない。そのときにメンバーに助けてもらったんです。

●助けてもらったというのは、具体的にはどういう作業なんですか?

西:「みんなはこの曲にどういうイメージを持ってる?」「どういう言葉が聴こえる?」って。そうやってイメージを共有して今作の歌詞が出来上がったんです。だからメンバーが居なかったら今作の歌詞は書けなかったし、ここまでわかりやすくはならなかったと思います。

●その話からすると、以前の歌詞はもっとわかりにくかったんですか?

西:そうですね。今でも「抽象的だ」と言われることもあるんですけど、きっと次はもっとわかりやすくなると思います。メンバーに楽曲の理解度を今まで以上に深めてもらってアウトプットしたものが今作なので。

●歌詞の世界観については、現状に対する満足していない感情、欠けているものや孤独感が根底にあると感じるんですが、表現に於いていちばん重要な要素は何なんですか?

西:俺は、芸術は孤独の上にしか成り立たないと思っていて。かつ、アーティストという生き物は世界で唯一、自分が自分であることを他人に許された存在であると。それは俺が芸術系の大学に行って学んだことなんですけど。

●自分が自分であることを他人に許された存在。

西:自分が自分であることを他人に許されるってすごいことだと思うんです。日本の戦後教育では基本的に中庸を求められて、アイデンティティを無くして平均化しようとしていて、俺は子供の頃からずっと違和感を感じていたんです。

●「みんなが一緒なのが正しい」みたいな風潮が。

西:“絶対にみんな思ってること違うじゃん”と思っていて。それはバラバラにすることが良いという話でもなくて、俺が大切にしたいと思っているのは、個と個の触れ合いというか、そこで生じる“愛”というもの。生きていく上で“真実の愛ってなんだろう?”と考えることが多いんですけど、なぜそういうことを考えるのかというと、それは死に対するリミットを感じているからだと思うんですよ。生まれながらにして死は決定付けられているじゃないですか。俺がずっと描き続けたいのはそこなんですよね。なぜか子供の頃から“次の瞬間が当たり前に来る”とは思えなかったんです。1秒1秒をカット割りしていって、更に細かく切っていっても“今”という現象は認識できないじゃないですか。「これが“今”だ」とは誰も言えない。だから更にその次の“未来”なんてものが確実に来るとは絶対に思えなくて。

●はい。

西:だからいつ死ぬかわからない。その儚さが人間の美しさだと思うんですよね。だったら俺は“今”を大切にしたいと思うし、大切にしてほしいと思う。“今”を後悔することほど愚かなことはないんじゃないかなって。

●それが西くんの、そしてこのバンドの表現の核になっているんですね。

西:俺がそういう表現をしたいということを、このメンバーは認めてくれているんですよね。だから感謝しながらやってます。

●最後に全員に訊きたいんですが、In 197666というバンドをやっていて、いちばん喜びを感じるのはどういった瞬間ですか?

西:このバンドは一度休止というか、なあなあになった時期があったんです。マキシシングル『IQ:64/from Snow…』(2011年12月リリース)を出す前の話なんですけど。その後『Stars Seed』の制作段階から森下が入って、そこで4人で音を出す喜びを改めて感じたんです。それまで散々このバンドで音を出してきたのに、そこで初めて音を出すことが“嬉しい”と心から思えた。それってすごいことだなと思うんですよね。そこからずっと、ライブもそうだし制作についても「早くこの4人で音を出したいな」と思えるんです。それがこのバンドをやっていて感じる喜びですね。

森下:僕はこのバンドに後から入りましたけど、初めてスタジオに入ったとき、僕も同じことを感じたんです。色んな人と一緒にやってきましたけど、初めて一緒に演奏する人ってやっぱりぎこちなくなるんですよね。でもこのメンバーではそういったものが全然なかったんです。いちおう曲を覚えていって、スタジオに入ってバーッと鳴らしたら“あれ? なんか自然だね”って。初めて合わせたのに違和感がないというのはすごいなと。そこから4人で音を鳴らす喜びはずっと感じてるし「あ、それわかる?」というポイントがどんどん増えてきていて、そういうのが噛み合った瞬間っていうのがいちばんの喜びですね。

●なるほど。原くんはどうですか?

原:森下が入ってこの4人でイチから作ったのは『(NO)MY DESTINY』が初めてだったんですよね。で、今も次に向けてどんどん制作をやっているんですけど、森下は「俺、実はB'zが好きなんだよね」とか言っていきなりハードロックなことやり出したりして(笑)。そういうのが引き出せていることも嬉しいし、それで俺らも新しい一面が出せていることが嬉しいです。現在進行形で新しいことがどんどんできているんですよね。

●バンドがすごくいい状態なんですね。三浦くんは?

三浦:みんなが言ったように音楽的なことはもちろんなんですが、最近思うのは、ずっと今まで試行錯誤したという経緯があって、ようやくライブでお客さんが反応してくれたり、CDを出して反響があることが単純に嬉しいですね。そういった喜びを、これからひとつひとつ増やしていければいいなと思っています。

interview:Takeshi.Yamanaka