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JANGA69

福島発、 積み上げて来た日々が崩れても ただあなたに届けたかった

 2003年9月、NEW FOUNDGLORYやSIMPLE PLANなどの爽やかなPOP PUNKに憧れ、福島県いわきで結成されたギターロックバンドJANGA69(ジャンガロック)。

レコーディングを間近に控えた3月11日、東日本大震災が彼らの住む福島に多大な被害を与えレコーディングはおろか、すべてのバンド活動が困難になり、一時はバンド活動の停止をせざるを得ない程メンバーを追い詰めた。当たり前だった日常を失うとともに彼らの大きな希望は絶望に変わわる。そんな空白の数カ月を経て、最後の希望を込めまさに命を賭けて制作した『NEXT』がリリースされる。

Interview

●福島在住のJANGA69ですが、3月の震災からいろいろ大変だったと思うんです。

馬目:ようやくレコーディングも終わり、アルバムをリリースすることができます。もともとの予定ではリリースは5、6月にリリースしたいから、4月には録っちゃおうって話をしてたんです。そこで震災があって、ライブはおろかメンバーそれぞれの活動もできなくなってしまい"どうしようか"という空白の3ヶ月がありました。どうしても年内にリリースしたくて無理矢理スケジュールを立てて、なんとか10月のリリースに漕ぎ着けました。

●皆さんが無事で本当によかったです。

馬目:家の中はグジャグジャだし、外壁も崩れ落ちて悲惨な状況でした。僕の家は山に近かったので、津波の被害は逃れたんです。でも仕事先のビルがもう入れない状況で…。もともとメンバーとは"東京に行こう"って相談をしていたんですが、地元で仕事ができなくなってしまい僕だけ先に東京に来ているんです。

●M-11「My home town」は、震災後にできた曲ですか?

馬目:震災の後に作った曲で、本来は収録予定の無かった曲です。いろんなアーティストの方が復興ソングを歌ってくれている中、僕らも福島県民として何か力になれたらいいなと思って。僕が住んでいたいわき市でも仮設住宅がたくさん建っていて、"頑張ろう!"とかじゃなく、"何から頑張っていきゃいいの?"って話をよく聞くんです。原発の近くの友達も家に帰れないって言ってるし、そういう人達のために"自分達の家に帰りたい"という願いを込めてこの曲を作りました。

●4月にレコーディング予定だった段階では無かった曲なんですね。当初は10曲入りの予定だった?

馬目:そうですね。曲作りも並行している中で震災に遭ってしまい、空白の3ヶ月の間で感情的にいろいろと思う事があって、どうしても「My home town」は収録しないといけないと思って。

●なるほど。前々回のミニアルバム『Various elements-filled donuts』をリリースするタイミングで、キーボードの阿部さんが新加入されていますよね。作品を通してピアノと電子音が上手に使い分けられていて絶妙だし、バンドの状態も凄くいいんだなと感じました。

馬目:楽曲制作の段階で阿部がいろいろと関わってくれるようになって、曲として馴染ませるのが早くなりました。以前はほとんど僕1人で作業をしていたので、そこが大きく変わりましたね。

●曲を作る段階でいろんな可能性を持てるようになった?

馬目:客観的に聴けるようになったので、アルバムの全体図が見れるようになりました。その結果、以前より振り幅が増えたと思います。

●『NEXT』という作品を客観的に見て"JANGA69ってこう変化したな"と実感する部分はありますか?

馬目:以前は割と聴かせる曲が多くて"歌モノ系"って言われることが多かったんですが、JANGA69がもともとやりたい事ってロックだったので、今回は自分達のやりたかったロックテイストなアプローチができたと思います。

●"もっとロックテイストな曲がしたい"という願望があった?

馬目:ありましたね。阿部が入った時に、メンバーと詰めていろいろ話してから徐々に思うようになって、今回やっとイメージが形になったと感じています。

●『NEXT』では聴きやすくて耳に残るメロディは健在ですが、ライブで盛り上がっている姿が容易に想像できる楽曲が多いなと感じました。

馬目:制作の段階でもライブを想定して曲を作っていたので、そう言ってもらえると嬉しいです! M-2「Again&Again」は特にメロディが気に入っている曲で、出だしのギターリフもロックしてるし、歌詞も"突き進んでいく姿勢が大事だ"ということを歌っています。ライブでも人気がある曲でバランスもいいし、今回改めて音源にできたので細部までしっかり聴いてもらえたら嬉しいですね。

●ギターリフというとM-5「You can never understand」もガッツリ攻める曲。

馬目:これも一緒で、どうしてもロックなアプローチをしたくてしょうがなかったんです(笑)。僕が勢いでリフを作って、G.高橋と合わせてアレンジしたり。実際は彼に投げてるだけなんですけど(笑)。

●なるほど。M-1「ピンクモンスター」って何のことなんですか?

馬目:これはX JAPANのHIDEさんの事を歌った曲なんです。自分がヘッドホンを付けて聴こえてくるモンスターというのがHIDEの事で、それが自分の人生を変えてしまったという曲。ずっと昔から好きで、ギターを弾くきっかけをくれた人だし、いつかHIDEさんの曲を書きたいなと思っていました。

●今作は英詩の曲も耳に残りますね。

馬目:2006年にインディーズデビューをしたんですけど、それまでは全て英詩で活動していて、リリースしてから全部日本語に変わったんです。英語の方がリズムやノリ的にカッコいいフレーズってあると思うし、最近になってやってみたいなと思って。

●改めて音の響きも重視してみたかったと。話が戻りますが、ラストに収録されている「My home town」がある事によって『NEXT』がまた違った側面を持っているような気がするんです。これだけ勇気を与えてくれるCDは中々ないなと。

馬目:被災者に一番近い目線で世の中に少しでも訴えかけられたらなと思って。被災地は被災地であって、それ以外のところは現状が分からないじゃないですか。それは当たり前であって、被災地を知らないから気を使って自粛ムードになっちゃって…。それが一番良くないと僕らは思っていて、うまく言えないけど自粛するよりみんなが普通に生活して、普通に被災地に遊びに来てくれる感覚が復興に繋がると僕は思います。皆さんも現地の酷い状態を自分の目で見た方が良いと思うし、そんな中でも頑張ってるやつがいるっていうのを見て欲しいです。

Interview:上田雄一朗

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