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Jin-Machine

仙台が生んだビジュアル界の狂い花、その美しき笑撃に今、身悶エヨ…

jmc_2013winter_m仙台が生んだビジュアル界の狂い花、Jin-Machine(じんましーん)。芸人としても活動しているfeaturing16[MC]の提案で2006年頃に活動を開始するも、度重なるメンバーの女性問題(それすらも曲にしているが…)を経て現在の編成に至る。売れているものはすぐパクるをモットーに楽曲を制作し、お笑いの要素を取り入れたミサ(ライブ)を通じて、じわじわと支持を拡大してきた。ネット上にアップされているPVなどの動画を見てもらえれば、単なる“ビジュアル系”という言葉では括れないことは明白だ。新作ミニアルバム『UNCERTAIN 【DE】CISION』の発売を機に、JUNGLE☆LIFE誌上では初となるインタビューで彼らの魅力に迫った(ブッシュドノエル・水月・アリッサ[ていおん!]は本番前のメイク中のため、今回は欠席)。

 

 

「“何やってんだよ…ダメなヤツらだな(笑)”みたいな感じが表現できていると思うんですよ。“くっだらねぇな、こいつら…(笑)”と思ってもらえたら嬉しいです」

●YouTube上にアップされている“初心者の為のビジュアル系講座”という動画を拝見したんですが、ビジュアル系のファン以外も笑える内容が印象的でした。

16:ビジュアル系という文化の中では曲に合わせたフリがあったりするので、初めてライブに来る人や曲に馴染んでいない人に向けた補助として、ああいうアプローチをしているバンドは多いんですよ。でも自分たちがそれをそのままやっても面白みがないから、全然わからない人が見ても面白いと思ってもらえるような動画を作ろうと思って。あとは、単純にお笑いの要素も入れたいというところもありましたけどね。

●結果的に、より幅広い層にアプローチできる内容になっているというか。

16:もちろんビジュアル系が好きな人だけじゃなくて、色んな人に興味を持ってもらいたいと思っていて。現行の体制になるまでは、他ジャンルのイベントによく出ていたんですよ。高校生イベントからロック系のイベントまで、誘われて「色が合いそうだ」と思ったイベントには出るようにしていました。

●元からビジュアル系のシーンだけにこだわって活動していたわけではない?

16:今でもそこにこだわってはいないんですけど、やっぱりビジュアル系シーンでやったほうが反響は大きいんですよね。あと、ビジュアル系は“何でもあり”というスタンスの人が多いから、やりやすいというのもあって。今は特にゴールデンボンバーが頑張っているおかげで「色んなことをするジャンルなんだな」っていうイメージがあるので、そこが今一番訴えかけやすい場所なんじゃないかなと思います。

●他のメンバーも同じような感覚がある?

あっつ:自分は元々メタル系のシーンでずっと活動していたので、全然こだわりはなくて。元々はメタルやアニソンばかりの人間だったんですよ。このバンドに入ってから、ビジュアル系のことも勉強するようになりましたね。

ひもり:ビジュアル系という文化に魅力を感じているというか。日本独自の文化だし、何でもありというところや見た目の派手さ、バンギャの文化とかには前から興味はあって。僕は元々ギターロックのバンドをやっていたので、このシーンに入ってみて初めて魅力に気付いたという部分はありますね。

●ビジュアル系以外の出身メンバーが多いんですね。

16:そうですね。私は今も現役で芸人をやっていますし、木村(ルーベラ・木村・カエレ)はメタル界隈で…。

木村:メタル以外にポップスもやっていたし、仕事でジャズや昭和歌謡だとか色々やってきましたね。その中でも、ビジュアル系だけはやったことがなかったんです。悪い面ばかりを見てきたから「ここはダメだ」と思っていたけど、今関わっている人たちはちゃんとしている人ばかりだし、そういう人のほうがむしろ多いんだなと知って。ダメな人は一部だけなんだなとわかったので、今もこうして関われています。

●ダメな人というのは、ファンのバンギャに手を出したりとか…。

16:そういうメンバーは、ウチにも過去に何人もいましたからね…。

●ハハハ(笑)。それ、言って大丈夫なんですか?

16:いや、むしろここは書いて欲しいです。そういう人には、どんどん辞めてもらったので。もしこの発言を読んで何のことを言っているんだと思った人には「アルティメットジェラシー」で検索して頂ければ、すぐにその曲の動画が出てくるのでぜひ見て頂ければと…真実です。

●そういう面でも、ちゃんとしているメンバーだけが残ったと。

16:ちゃんとやる人と、やらない人というのが決まってくるというか。ある程度の時期を過ぎると辞める人は辞めていくし、続ける人は続けていく。そういう流れの中から今のメンバーが上手く集まったなと。ずっと舞台の上でやっていきたい人だけが残った感じですね。

●覚悟のある人間だけが残るというか。

16:そうですね。…そうじゃないと、こんな貧乏生活なんてやっていられないですから。何が楽しくてこんなことをしているんだっていう(笑)。表向きはワーワー楽しそうにやっていますけど、裏側はもう…。

あっつ:カッツカツですよ(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●それでも続けたいと思えるわけですよね。

16:嫌なこともたくさんありますけど、3〜4年前のことを思えば…という感じですね。その頃は人間関係だけでウンザリというか、「なんで自分が女に手を出しておきながら、俺に文句を言うんだよ」みたいな(笑)。そういう悩みに比べたら、今の「忙しくて、しんどいな」っていうのはもっと前向きな悩みだと思うから。自分が選んだ道だから、受け入れるしかない。

あっつ:昔に比べたら今は人前に立てる機会も増えたし、ポジティブな感じがしますね。

●今はバンドとして充実している?

ひもり:充実はしていますけど、満足はしていないですね。まだまだ自分らができることを、世の中の人に伝えなければいけないという想いがあって。

16:自分たちは、陽の目を見てこなかった人たちが集まったという感じなんですよ。長く活動している割には報われない人たちが集まって、今ようやく思っていたことがやれている。今がしんどくてもやっていけているのは、不遇の時代が長かったからかなと。

木村:このバンドに関わるまでは一切、陽の目を見ることはなかったですからね。何をやっても注目されないし、自分から何かを発信するということもなかった。それに比べれば今は充実しているんでしょうけど、まだまだステップアップはできるなと思っています。

●ここはまだ過程にすぎないと。

16:今回の作品を作り終えてみても、もっとやれることはあると感じたから。今作を作ったことで「こういうことができたね」と気付いたこともあるし、みんなが引き出しをもっと持っているんじゃないかな。

●それぞれの音楽的引き出しが多いから、バラエティ豊かな作品にもなっている?

16:そうですね。そこに関しては、意識して作っている部分もあって。

ひもり:「何でもできるんだ」ということをアピールしていきたいというか。「色んなジャンルに挑戦してます」って言う人は多いんですけど、「(自分たちは)そんなレベルじゃないんだぞ」ということをどんどんアピールしていきたい。…だから、これからはボサノバとかをやっていきたいんですよ。

●ボサノバ…!?

ひもり:ボサノバとか演歌とか…フリージャズとかまで取り入れてやっていきたいですね。

16:やりたいジャンルはいっぱいあって。(ビジュアル系シーンの中で)誰も手を出していないし、今後もやらないであろうジャンルに自分たちが初めて手を付けたっていう事実が欲しいんです。ボサノバとかフリージャズなんて、絶対に誰もやらないし、「やっても誰が得するんだ?」っていう(笑)。

●試みとしては面白いですけど、お客さんもノれないでしょうからね(笑)。

16:“音楽ボケ”みたいなところって、まだまだできることが多いなと思っているんですよ。でも半端にやって何がやりたいのかよくわからないような感じになっちゃって、「結局、ビジュアル系なんでしょ?」と言われるようなものにはしたくないなと。一見メチャクチャなんだけど、中身はしっかりしているっていうバランスはちゃんと取りたいんです。ネタでもありつつ音楽としてもちゃんとしているという、その両方の面で満足できるものを作れたら理想的だなと思います。

●今回の作品はそういうものになっている?

16:そういう意味では、まだ飛び抜けてはいないかなと思います。

ひもり:まだ聴ける、っていうか。

●“まだ聴ける”…というのはどういう意味?

ひもり:買った人が「何だ、これ!?」ってなるようなものを本当は作りたいんです。そういう意味では、今作はまだ聴けちゃいますね(笑)。

16:ビジュアル系好き以外の、普通のリスナーにも笑ってもらえるようなところにもっと挑戦したいんですよ。そういう点で今作に関しては、ちょっとビジュアル系的な色が強いんですよね。

●意識的に、ビジュアル系の色を強くした?

ひもり:強くしたつもりはなかったんですけど、結果的に特にM-1「suffer」はそういう感じになって。自分では意識して作ったわけじゃないのに周りの人がみんな「ビジュアル系っぽいね」とか言いやがるから、自分の中でもビジュアル系っぽくなってしまった。

●言いやがるって(笑)。

ひもり:音楽的にもすごく細かいアプローチをたくさん入れたにもかかわらず「ビジュアル系だね」と言われると、もう心の底では「何を言っているんだ?」っていう気持ちにはなります(笑)。それによって、PVもすごくビジュアル系っぽい感じになってしまって…。それはそれですごくカッコ良い仕上がりなので満足しているんですけど、心のどこかで「う〜ん…」と思う部分はありますね。

●作曲者としては、納得いかない部分もある。

ひもり:これも正解の1つだなとは思いますけどね。「まだまだ甘いな、俺は…」っていうことですよ。「ビジュアル系ではなくて、Jin-Machine系だ!」と言いたいです。

●M-2「お野菜天国」はお笑いの要素も取り入れた、Jin-Machineならではの曲ですよね。

16:表向きのリード曲は「suffer」なんですけど、「お野菜天国」は裏リード曲みたいな感じですね。自分たちのカラーが出ているのは、こういう曲なんです。

●野菜のダジャレも取り入れた、良い意味でくだらない歌詞というか…。

16:「野菜、野菜、野菜…」というコーラスのところが最初に浮かんだんですけど、語感的にも良いし、「野菜を食べようね」というメッセージも伝えられるなと。子どもたちにも伝わるようなテーマということで考えた時に、野菜かなと思ったんです。

●子どもたちにまで伝えようとしているんですね…。今回のCDは豪華盤の他に“安いヤツ”というのを発売するわけですが、これも裾野を広げるため?

16:クリアケースに盤が入っていて、帯だけが付いているという仕様になっていて。「安っぽすぎる!」と言われないか心配なんですけど、「“安いヤツ”って言ってるんだから、しょうがないじゃん!」っていう感じですね(笑)。安いほうがやっぱり手を出しやすいだろうし、裾野を広げる1つのやり方なのかなと思います。

●それにしても“安いヤツ”って、直球すぎる気が…。

16:“廉価盤”という呼び名にするにも安すぎる作りだと思うので、もう“安いヤツ”でいいだろうと(笑)。豪華盤にちょっとお金をかけすぎたというのもあって…。豪華盤にはブックレットが付いているんですけど、そのページの作りがまたムダしかない感じなんですよ。「何でこんなことするの? そのページがあったら、もっと色んなことができるじゃん?」みたいなことをしているんです。

●ムダに豪華(笑)。

16:安いヤツのほうだと曲のくだらなさしか伝わらないかもしれないけど、豪華盤のほうは総じて「何やってんだよ…ダメなヤツらだな(笑)」みたいな感じが表現できていると思うんですよ。理想を言えばそっちを買って、見て欲しいですね。「くっだらねぇな、こいつら…(笑)」と思ってもらえたら嬉しいです。

Interview:IMAI

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