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川嶋志乃舞 × 樫村治延(STUDIO CHAPTER H[aus]) SPECIAL TALK SESSION: 三味線とポップミュージックを融合させる川嶋志乃舞 × 樫村治延(STUDIO CHAPTER H[aus]) 伝統芸能ポップ盤・完全民謡盤の2枚を同時リリース

川嶋志乃舞 × 樫村治延(STUDIO CHAPTER H[aus]) SPECIAL TALK SESSION: 三味線とポップミュージックを融合させる川嶋志乃舞 × 樫村治延(STUDIO CHAPTER H[aus]) 伝統芸能ポップ盤・完全民謡盤の2枚を同時リリース



 
 
 
3歳の頃から伝統芸能の世界に入った川嶋志乃舞。得意とする三味線を“ドラムストリングス”と呼び、オシャレでポップな音楽を奏でる彼女は、今までの伝統芸能の固定概念を覆す。活躍の場はライブハウスだけでなく海外までに及び、様々なシーンで注目を集めている。パイオニアならではの様々な困難を乗り越えて今回リリースされるアルバムは、伝統芸能ポップ盤・完全民謡盤という類を見ない2タイトル。今まで混ざることがなかった音楽性を融合させ、彼女にしか出来ない唯一無二の作品となった。グルーヴィーな三味線と伝統芸能ポップの先駆者である彼女の過去や曲作りへの思いに迫る、エンジニア樫村治延氏とのスペシャル対談。
 
 


「もしかしたら私がやっていることは破天荒かもしれないですけど、柔軟な人がもっと増えたらいいのになって思います。自分の活動はそういう示しでもある」


 
 
 
●川嶋さんは3歳のころから三味線を習ってらっしゃったらしいですね。
 
川嶋:3歳で入門したんですが、子供用の三味線でも3歳だと重くて持てないのでやっぱり難しいんですよね。なのでまず民謡や歌、太鼓や基本の民謡を2年間なんとなく勉強して、5歳でやっと三味線を勉強し始めたんです。師匠に入門したのが3歳。
 
●自分の意志で入門したんですか?
 
川嶋:自分の意志で始めたそうです。覚えてはいないんですけど。親が色んな和楽器をやらせたいっていう意向で、和太鼓の見学やお祭りの演奏を見に行かせてもらって、その中で三味線がピンと来たんです。観に行った舞台に小さい男の子や女の子も出ていたんですよ。それで「なぜ私が舞台の下で観てるんだ?」と思ったんです。その頃から舞台人魂があったらしくて。
 
●三味線の道で生きていくという自覚が生まれたのいつなんですか?
 
川嶋:小学1〜2年生の時にはそう思ってましたね。小学1年生で全国大会に出場して入賞したんです。「小学生の部」っていう6年生までの部で最年少出場入賞してしまったので、「私はこの道でいったほうが絶対良くなる」という自覚があって。小学校の新聞とかで将来の夢とか書くじゃないですか。そこで「三味線のプロ」と書いていました。
 
●更に川嶋さんは三味線とポップミュージックを融合させるという、伝統を守るだけではない道を選んでますよね。それはどういうきっかけで?
 
川嶋:もともと好きな音楽は渋谷系なんです。ルーツがそっちだったので、自然と三味線に入れるには肌に合ってたというか。
 
●自分の中にあるルーツを体現してるだけ。
 
川嶋:誰の指図も受けずやりたいことをやっているだけなんですけど、「先人がいないことをやってる」とよく言われるんです。
 
●伝統芸能の世界からすると「何やってんだ」みたいな見られ方をされそうですが…。
 
川嶋:よくされますね。今はほとんどなくなったんですけど、学生の頃は純邦楽の歌舞伎の音楽をやってらっしゃる先生とかにだいぶ釘打ちを。
 
●5年前に初めてレコーディングをしたとのことですが、その頃から三味線とポップミュージックを融合したような音楽性だったんですか?
 
川嶋:もともとは民謡アレンジや、オリジナル曲でも三味線メインのインスト曲オンリーだったんです。1枚目のアルバムは私が19歳の時に出したものなんですが、当時自分で歌うっていう発想がなかったのでインストだったんですよ。それを樫村さんのCHAPTER H[aus]でレコーディングさせていただいて、それから樫村さんにはずっとお世話になってます。
 

 
●経験豊富な樫村さんから見た川嶋さんはどういうアーティストですか?
 
樫村:やっぱり日本の音楽業界の枠にハマらないなっていう。僕は逆にそういうミュージシャンのほうが好きなんです。最初は「海外ではウケそうだな」っていう印象を受けたかな。
 
●それまでCHAPTER H[aus]で三味線を録った経験はあったんですか?
 
樫村:ウチの親父が尺八の師範だったんですが、なのでその周りのおばさんたちが弾く三味線を2〜3回やったくらいですね。
 
●ということは、機材とか録り方とかもほぼ初めて?
 
樫村:初めてに近いですね。でも民族楽器を録るような感覚ですよね。胡弓とか。僕はワールドミュージックが好きで、世界中の色んな楽器をやってる人をチェックするのが好きなんです。聴きながら“これを録る時はどうするのかな?”って考えてる。
 
●あまり苦労はなかった?
 
樫村:いや、でもそんなことないですよ。難しいし、今も試行錯誤中。
 
●どういうところが難しいんですか?
 
樫村:正解がわからないというか。
 
●あ、なるほど。川嶋さんと同じですね。
 
樫村:やっぱりあまりお手本が無いんです。
 
川嶋:だから「この音を目指したい」という参考となる音源を聴いてもらって、試行錯誤するんです。例えばギタリストとかベーシストとかドラマーとかだったらこの音がいいって。でも三味線奏者にとって、参考のために既発のCDを聴こうと思ったらボロボロのレコードの音源しかなかったりするんです。一方で、最近の人の音源を聴いたら、なんか目の前で生で鳴ってる音じゃないなっていう印象もあって。
 
●樫村さんも一緒に音作りをするんですか?
 
樫村:そうです。マイクも6本くらい使うんです。三味線は、弦が鳴ってるけど意外と全部が録れてないと感じる時があるんですよね。その場で鳴っている半分の音しか録れてないのかなって。
 
●それは現在のレコーディング環境が三味線に合ってないということですか?
 
樫村:いや、違いますね。多分そこまで追求してないと思います(笑)。そこまで追求してないけど、プロでもそのままやっちゃってんのかなって。
 
●直接聴く音とレコーディングした音を極力近づける作業だと。
 
樫村:単純に目の前で鳴ってる音をいかにダイレクトに録るかですね。でも模範になるような、目の前で鳴っている三味線の音を録れている音源が今まで殆ど無かったに等しい。確かにテレビで流れるものや、有線で流れている音を聴くと、“中低音域以下が本当はこういう音じゃないんだろうな”って思うことがあるんです。
 
●薄っぺらくなるんですか?
 
川嶋:そうですね。仰るとおりペラッペラです。
 
樫村:まあそれがバンドに馴染んでればいいんだけどそれでもね。
 
川嶋:でもずっとリピートで聴くとなると、耳が肥えてらっしゃったりプロミュージシャンからしたら「うーん」となるのかな。私たちのような三味線奏者をはじめ、一般の方やレコーディングの専門家も、三味線の本当の音を知らない方が多いので、結局比較対象がないんですよね。樫村さんと私とサウンドプロデュースも担うマネージャーの3人が、5年かけてそれぞれの発見やこだわりを見つけてきた結果、今回はいい音で録れたというところまできたんです。
 
●しかしながら、なぜ誰もやっていないことをやろうと思ったんでしょうか。
 
川嶋:日頃聴いてる曲が三味線に合うっていうことを証明したいんですよね。グルーヴィーな三味線の音を出せる人って日本に5人いるかなってくらいで。みんながギターを弾いてるのと同じ感覚で、私はたまたま三味線がいちばん得意だったっていう。
 
●ただの楽器の1つ、という感覚。
 
川嶋:そうですね。だから三味線となにかの音楽を融合させることは、奇をてらっているわけじゃなくて、たまたま好きで得意なことをやろうとしたら、誰もやっていなかった。
 
●それと今おっしゃっていた「グルーヴィーな三味線」って、川嶋さんがよく使われている“ドラムストリングス”という言葉と同じ意味と捉えていいんでしょうか?
 
川嶋:そうですね。ドラムの音って、ゴーストノートがあることによってゆっくりでも踊れたり、速くてもしつこくない。そういう演奏が出来る人は、三味線奏者では少ないんですよ。バチを叩く、太鼓を叩くっていう意味で“ドラムストリングス”という言葉がいちばん合ってるかなと。私が作った造語なんですが。
 
●自分で探し当てた1つの境地というか。
 
川嶋:“叩く弦楽器”という意味の“ドラムストリングス”という言葉は、今後世界に発信してもおかしくないんじゃないかなと思って。
 
●ドラムストリングスは、三味線を打楽器ととらえた上で音をどう表現するか? という理論みたいなことなんですか?
 
川嶋:そうですね。なぜ打楽器をフィーチャーしたかというと、バイオリン・ギター・ベースはサスティーンが効くんですよ。
 
●サスティーン?
 
川嶋:伸びる音。でも三味線は「ダンッ」しか鳴らないんですね。弦楽器なのにちょっと足りない部分があるんです。スライドするしか方法がなくて、でもスライドすると音が変わるじゃないですか。そういう意味では、ドラムのほうが近いなって。
 
●そこの発想に気づいたのはいつくらいなんですか?
 
川嶋:ここ最近です。1年前くらいかな。
 

 
●今回の2作、『SUKEROKU GIRL』は三味線とポップミュージックを融合したオリジナル楽曲で、『光櫻~MITSUSAKURA~』は伝統芸能を演奏されていますよね。そこで気になったんですが、『SUKEROKU GIRL』に収録されている川嶋さんの楽曲は色々な音が入っていますが、こういうアレンジは作曲の段階から頭の中にあるんですか?
 
川嶋:あります。M-2「パンダトニック」やM-4「Not575」はエレクトロの要素が入っていますが、これも自分で打ち込んで信頼している編曲家(アレンジャー)に投げてブラッシュアップをしてもらって形にしたんです。
 
●いつから作曲が出来るようになったんですか?
 
川嶋:19歳の時に初めてポップスを書き始めたんです。それで作品を重ねることにだんだん出来ることも増えてきて、2年前くらいからアレンジも見よう見まねでやってみて。
 
●自分が聴きたい音楽を作る、みたいな感覚?
 
川嶋:そうですね。今まではなんとなく音楽を聴いていたんですけど、わかってくると1つ1つ音の素材まで分解して聴こえるんですよね。「ここにストリングスが入ってる」とか。そうすると自分の楽曲にも“ここにこれ入れたらあの曲みたいになるんじゃないか”みたいなヒントを会得していくというか。好きな音楽を勉強して、より聴きたい音楽にしていく。日々勉強しつつオマージュもありつつですね。
 
●曲を作る時はどういう感じなんですか?
 
川嶋:ピアノから作ります。だいたい歌は歌詞先行でピアノを乗っける。三味線のインストの場合はやりたいビートやBPMに合わせて三味線で自由に乗っけていく。やりたい方向性とかコンセプトがあって、そこにだんだん乗っけていくんですけど、わりとコード重視なので「ロックにしたいな」と思った時は最初にドラムを作って、歌詞の世界観を大切にしたいので、物語に色をつける感覚でピアノでコードを乗せていきます。
 
●三味線が特別なものというより、三味線はあくまでも得意な楽器の1つ。
 
川嶋:まさにそうなんです。三味線をフィーチャーすると、それまで三味線奏者の方がやってきようにじょんがら節風なものに限定されがちなんです。じょんがら節、かっこいいいですしね。もうそれは色んな人がやってきてるし、たぶん私よりも得意な人がいるだろうから。
 
●うんうん。
 
川嶋:私はそうじゃなくて、三味線が少し下がっても唯一無二な存在感を保っていられるくらいでいいなと思っていて。バンドセッションの時も、他の楽器の呼吸も聴いてバランスを常に考えながらやってるので、自分の楽曲の時も作ってる段階ではそうなりました。だから三味線は最後に入れるんですよ。
 
●ということは、最初には三味線のアレンジは考えない?
 
川嶋:考えないですね。歌モノに入れる三味線は乗っかるタイプでさり気なく入れます。
 
●三味線はソロでバキバキに演奏するというイメージが勝手にありました。
 
川嶋:そういうパブリックイメージが三味線の可能性の幅を狭める大きな理由なんじゃないかなって思います。だから敢えて最後に入れることにしました。
 
●他の人が経験していない苦労もあるんでしょうね。
 
川嶋:そうですね。でも他の人が気付けない部分を先に引っ張って、採り入れて、形にする作業は最初にやっていかないとなって思ってます。
 
●自分で道を切り拓く。
 
川嶋:「三味線だから」とか「邦楽だから」で頭を固めず、とにかく色んな事を勉強するともっと色んな事が出来るんじゃないかな。こういうことをやっていると“頑固”と思われるかもしれないですけど、私の中で頑固っていうのは「邦楽しかやりません」とか「小鼓でポップスってどういうことですか?」みたいなことを言ってる人なんですよ。
 
●柔軟じゃないこと。
 
川嶋:そうですね。だから軸さえブレなければ色々やりたい。私は頑固に「伝統芸能ポップをやる」と決めたので頑固者なのかもしれないですが(笑)、「五線譜で書かれた楽譜を渡されても三味線で弾けるわけない」と言う頑固者もいるんです。もしかしたら私がやっていることは破天荒かもしれないですけど、柔軟な人がもっと増えたらいいのになって思います。自分の活動はそういう示しでもあるというか。
 
●純粋に音楽を楽しんでるだけだと。
 
川嶋:いつもそれは思いますね。おかげさまで、私のライブには三味線を忘れて単純に音楽を楽しみに来てくださる方も多いですし、でも三味線ということを気付いて「三味線をやってみたい」という若い女の子もいて。良い意味で、伝統芸能ポップはちゃんと身近に寄り添ってきてるのかなっていう実感は最近ありますね。
 
●「伝統」と言われるものは、三味線や音楽に限らず、いわゆる改革もしていかないと若い人にも受け入れられないし、守るだけでは残っていかない。
 
川嶋:そうですね。だから可愛い服もたくさん着たいんです。
 
樫村:川嶋さんは欧米やどこか海外に移住すれば、もっと自由に出来ると思うんだよね。向こうからすれば、三味線は海外の楽器になるし、新鮮さが生まれる。
 
●先入観も無いし。
 
樫村:そう。日本で生まれた伝統芸能だから、好きなことすると良くも悪くも目立つじゃないですか。欧米に移住しちゃえばそういうプレッシャーもなくなるのかなって。
 
●川嶋さんは海外でも活動されていますもんね。
 
川嶋:はい。ただ、今はどうしても日本のライブハウスシーンでなんとかしてやりたいっていう想いがあるんです。同世代のミュージシャンたちと一緒に切磋琢磨して、シーンを震撼させていきたいというか。ライブハウスでやっていきたいという気持ちと、海外で経験を積みたいという気持ちが同時にあって。だから海外公演は定期的にしてます。
 
●ライブハウスシーンにこだわる理由は何なんですか?
 
川嶋:自分の好きな音楽がライブハウスに多いし、日本の若い層が聴くのはライブハウス出身の人の音楽なのかなって。私的には“伝統芸能ポップ”を通して三味線を若い人に届けたいので、ライブハウスが私のいるべきところなのかなと。樫村さんのように、色んな方が「海外に行っても絶対ウケるよ」と言ってくださるので、日々見つめて試行錯誤を続けていきたいなって思ってます。
 
 
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant/edit:Yuina.Hiramoto
 
 
 
 

リリース情報

『SUKEROKU GIRL』
Harelu-Arts
HART-1008
¥1,852+税
 
 

『光櫻~MITSUSAKURA~』
Harelu-Arts
HART-1009
¥2,728+税
 
2019/10/9 Release
more info→
https://www.shinobu-kawashima.com/