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LAST ALLIANCE

フロアの熱狂と興奮を限界まで高めるため 誇り高き孤高の存在は強さを求めて走り続ける

 2010年10月に5thアルバム5thアルバム『Keep on smashing blue,』、2011年6月に6thアルバム『for staying real BLUE.』という対になるアルバムをリリースし、自身のツアーはもちろん、全国各地のフェスでライブの貫通力と浸透力を見せつけた誇り高き孤高の存在、LAST ALLIANCE。美学を追求した先に彼らが求めるものは、ライブハウスで繰り広げられる熱狂と興奮。

今回リリースされる新作・コンプリートシングルコレクション『c.s.c20022011』は、それをより確固たる感触として手にするための新たなスタート。

今回はVo./Ba.MATSUMURAに、ライブに対する想いと新曲、そしてLAST ALLIANCEが追い求めるものについて訊いた。

Interview

「フロアで泣いている子とかは見ないようにしてるんですよ。もうおっさんだからホロッともらい泣きしちゃいそうで(笑)、悪いけど見ない」

●6thアルバム『for staying real BLUE.』(2011年6月)のツアーはどうでしたか?

MATSUMURA:ファイナルのLIQUIDROOMは「音がすごく良かった」っていろんな人に言われて。PAのアンドリューと僕らの音とLIQUIDROOMの相性が良かったのかな。それに5thアルバム『Keep on smashing blue,』(2010年10月)からは機材が結構変わったこともあって。

●あ、そうですね。変わったというか、変わらざるを得なかったという(※機材車が盗難に遭った)。

MATSUMURA:ピックしかなかったですからね(笑)。みんなちょいちょい買い揃えたり、人からもらったりして。それから「音がすげぇ良くなった」って言われて。足もとまわりは古い機材を使ってたりしていたので、今欲しいものを買い替えたからっていうのもあって。

●より今の音に直結したんですね。

MATSUMURA:そうですね、直結した形で良くなった。『Keep on smashing blue,』ツアー中にちょっとずつ買い揃えたから、『for staying real BLUE.』ツアーのときはだいぶ音が新しい機材で馴染んでいたんじゃないかな。

●なるほど。

MATSUMURA:だからLIQUIDROOMのワンマンはすごく良かったっていう感じでしたね。

●ここ最近のライブはすごく内面的なものが伝わってくる感じがして。特にMATSUMURAさんの場合は、ステージ上での笑顔が毎回すごく印象に残るんです。それはライブというかバンドの状態を象徴しているような気がしていて。

MATSUMURA:ライブに対しての目的も徐々に変わってきているんですよ。10年前だったらCDを作ることが最終目標、そこに自己顕示欲をどれだけ出すかっていうところが活動のメインになっていた。

●はい。

MATSUMURA:それがここ数年は、リリースしてライブに来てもらって、そこで楽しみを共有できることが僕らの目的であったり、いちばんのご褒美だったりする。だから必然的に笑顔も出るんだろうし。

●いい変化ですね。

MATSUMURA:逆に、フロアで泣いている子とかは見ないようにしてるんですよ。もうおっさんだからホロッともらい泣きしちゃいそうで(笑)、悪いけど見ない。

●完全におっさんじゃないですか(笑)。すごくいい話ですけど。

MATSUMURA:結局はそういうところですよね。みんな楽しそうにしているからっていう。みんながつまんなそうにしていたら僕も笑顔は出ないだろうし、いろんなものを共有できているという感じです。徐々にですけど、日に日にライブが楽しくなっていきますね。

●理想とするライブのイメージはあるんですか?

MATSUMURA:ライブ制作をしてくださっているマエダさんという方がいて、いつも舞台袖とかにいるんですよ。「かっこいいバンドともいっぱい対バンするし、年齢は関係なく、そういうバンドと一緒に切磋琢磨したい」みたいな話を打ち上げでしたときに、「LAST ALLIANCEの持ち味は歌詞とか歌とか"メッセージ性"みたいなものだと思う」と言ってくださって。それを聞いて"ああ~、そうか"と改めて思ったんですよね。

●ふむふむ。

MATSUMURA:そういうこともあって最近は、日本語の曲も英語の曲も同じなんだけど、もっと感情的にぶつけるというか、歌に乗せるイメージでやりたいなと個人的には思っています。もちろん曲によっては楽しむことに特化したものもあると思うんだけど。

●その発言はちょっと意外でした。そういうイメージのバンドではないと思っていたので。

MATSUMURA:メンバーそれぞれで違いはあると思いますが僕はそうですね。僕は昔より歌う場面も増えているし、増えていることを容認してくれているANZAIにも感謝しているんだけど、やっぱり歌うことが好きで楽しいんですよ。だからイメージとは違うのかもしれないけど、そういう感じでもっと追求していきたいなと。

●いや、MATSUMURAさんはエモーショナルな心情を歌詞に書くことが多いから、個人としては"感情的にぶつける"という印象は少なからずあったんですよ。でも、ことライブに関しては、バンド全体として感情をむき出しにするようなイメージがあまりなかった。だからこそ今の発言は今後のライブがすごく楽しみになったんです。

MATSUMURA:僕は最近そうですね。感情をぶつけるのは歌じゃなくてもいいと思うんです。暴れ狂っちゃってて演奏がぐっちゃぐちゃだけどかっこいいバンドっているじゃないですか。

●いますね。

MATSUMURA:逆にピシッと歌ってピシッと演奏しているけど何も感じない場合もある。

●そうですね、確かにそういうことあります。

MATSUMURA:僕は前者の方が圧倒的にかっこいいと思うんです。ツアーとかだと終わったライブの外音を聴いて、次の場所に行くんです。そのときにダメなところをチェックして。そうするとその反動で、どうしても次のライブはカチッと弾いちゃう。

●うんうん。

MATSUMURA:それを間近で観ているスタッフが、僕がダメだと思ったライブの方が全然良かったって言うんですよ。そこで僕が「そんなことねぇよ」と言うんじゃなくて「あ、そっか」って。いちばん身近で見ている人間が「より人間っぽくて良かった」と言うんです。それは僕個人じゃなくても、バンドとしてすごく良かったっていう意見を結構聞いたりして。"やっぱりそういうことなのかな"と思って、より感情を出したいと思うようになったんです。

●LAST ALLIANCEのライブの変遷としても、"作品でどれだけの自己顕示欲を出せるか"という価値観から、"どれだけライブで一体になれるか"にシフトしてきたと思うんです。それはきっとそういう現場から培った感覚なんでしょうね。

MATSUMURA:急に変わったわけじゃないし、もうかなり前からですね。5thシングル『DAZE&HOPE』(2006年5月)を出したくらいからそんなことを言っていたし、それがよりリアルに現実味を帯びて形になってきたかなと思います。思っているだけとか口で言うだけとかではなく体現できてきているんじゃないかなと。

●うんうん。

MATSUMURA:細かい話をすると、メンバーそれぞれでやりたいイメージが違うと思うんですよね。ANZAIとかの本音はMCも少なめで音で勝負みたいな男気ライブを理想としていると思うし。でも僕ら4人でやると違うなっていうのはあいつも分かっているし、その辺で少しずつ変わってきた。

●なるほど。

MATSUMURA:MCもバラバラだったけど、最近は一応僕なりANZAIが言うようにしているんです。歌うやつが話す方が説得力があると思うんですよね。

●そうですね。最近のMCは"バンドとしてのメッセージ"が伝わってくる度合いが強いです。

MATSUMURA:今もそうなんですけど、昔は口下手でMCとかも下手だったんです。でもお客さんは、特にワンマンとかだったらメンバーにしゃべって欲しいのかなって思ってしまうんですよね。本当は僕らはしゃべんない方がいいんだけど(笑)。だから常に"どうしたら喜んでくれるかな"っていうのを考えている感じ。

●いいですね。

MATSUMURA:次にワンマンをするときにも来て欲しいし、良かったら友達を誘って来て欲しい。エンターテインメントに特化するという話ではないけど、特にワンマンはそういう風にできたらなっていうのを考え始めています。

●前回のインタビューでANZAIさんが「自分ひとりがずっと頑固だった」とおっしゃっていて。

MATSUMURA:めっちゃ頑固でした(笑)。でもその頑固だった部分を、あいつの中で一枚一枚脱いでいった感じがありますね。歌詞を読んでも、すごく伝わってくるんですけど、自分を含めたメンバー4人に対してのメッセージなんですよね。

●ああ~、そうですね。

MATSUMURA:あいつが書く歌詞を僕はいちいち口出ししないし、レコーディングが終わった時点で初めて読みますからね。

●そういうもんなんですね。

MATSUMURA:逆に僕もそういう歌詞が多くて、それは彼にも伝わっていると思うし。4人のコミュニティで僕たちは少しずつ大人になってきたから、頑固だった彼も今ではいちばん寛容になっていると僕は思います。

●なるほど。

MATSUMURA:いきなりワガママな部分が出てくるときもあるので、何とも言えないけど(笑)。

●ハハハ(笑)。でもANZAIさんの変化はすごく感じます。

MATSUMURA:サノゴ(sanoshingo ELse)はサノゴで、曲を書くことによって自己顕示欲がすごく強くなってるから、5枚目6枚目(5thアルバム『Keep on smashing blue,』と6thアルバム『for staying real BLUE.』)はサノゴの自己アピールによって生まれた新しいLAST ALLIANCEの一面だと思うんです。

●ああ~。

MATSUMURA:今まで通り僕とANZAIがやっていたらあの一面は出てこなかったと思うし、いわゆるラウドな激しさのあるものですよね。おのおの4人のコミュニティの中で自分の立ち位置なりしたいことを、今でもまだ常に考えているし、変化しているって感じです。

INTERVIEW #2

「もっと精度を上げて研ぎ澄ませていけば立派な武器になっていくかなと思います。メロウな曲も歌うし、2ビートでグッチャグチャにもする」

●今年で結成10年ですが、10年経ったという実感はあります?

MATSUMURA:まったくないんですよね。逆にスタッフに言われて初めてそういう話になったし、今回コンプリートシングルコレクションを出すのも僕らの発案じゃない。でもスタッフの言葉に乗っかって、自分らがやれることで"お客さんは何を喜んでくれるか?"というところをチョイスして出したんです。でも別に、僕らはこれを「ベスト盤だ」と言っていないですからね。

●それ気付きました。資料を見ても"ベスト盤"という表現がないなと。

MATSUMURA:そこが美学なんです。ANZAIは最初から反対だったんですよ。

●前回のインタビューで「アニバーサリー的なことはイヤだ」と言ってました(笑)。

MATSUMURA:HIROSHIもそうだったし全員通しての意見ですけどね。美学が一緒という。ベスト盤を出している人もいるからあまり言えないですけど、本当に捉え方の差というか。"僕らごときがベスト盤って…"って思っちゃうんですよ。

●なるほど。確かにそれは美学ですね。

MATSUMURA:もっと功績を残したりとか、自分らが思う大きなことを成し遂げたやつが出すのはアリかなと思うんです。でも僕らは10年前にやりたいと思ったことをまだ成し遂げていないですから。だからそういうのが嫌だったというか、バンドとしてはかっこよくないなって。

●うんうん。

MATSUMURA:今回の話を頂いたときに、5・6枚目のアルバムやYouTubeで「片膝の汚れ」(シングル『Always in My Heart』収録)から知ってくれた人の入門編として必要なのかな? と思ったんです。最初は「美学に反するからイヤだ」と言っていたんですけど、そこから歩み寄って。"じゃあどうしたらいいんだろう"となったときに、出すからには喜んで欲しいものをと。たぶんその頃にちょうどaikoのベスト盤が出たんですけど、超欲しいと思って。

●アハハハハ(笑)。

MATSUMURA:aikoは好きだけど、他のアルバムも網羅していないし、ちょこちょこ抜けているのもあるから、ちょっと欲しいなと思ったんです。で、僕らの今回の作品も、カップリングも含めて全シングルの曲を1枚にしちゃったら、アルバム以外の曲も網羅できるなと。

●そういうアイディアが出てきたんですね。

MATSUMURA:そうですね。それに、ライブでどこに行っても、ヤジみたいに「あの曲やってくれー!」とか言われるんですけど、申し訳ないけど練習しないとできないぐらい古い曲だったりするし(笑)。一方で、僕らが良かれと思ってやっても、シングルのカップリングとかだとポカンとされるときもある。そのジレンマがあって、どうすればヤジを飛ばす人にも喜んでもらえて、ポカンとした子にも知ってもらえるか…それってすごく骨の折れる作業で、流通に乗っていない買いにくい作品もあるから、よほど僕らのことを好きじゃないとコンプリートできないんですよ。でも、そういうライブでみんなに喜んで欲しいので、今回のコンプリートシングルコレクションの企画に辿り着いたんです。

●シングルコレクションと聞いてまず最初に思ったのは、"LAST ALLIANCEってそんなにシングル出してたかな?"ということ。実際は出しているんですけど、シングルのタイトルは全部曲タイトルではないじゃないですか。それがすごく功を奏しているというか。僕の中ではLAST ALLIANCEに関して、アルバムとシングルの隔たりが印象としてなかったんです。全部作品として捉えていた。

MATSUMURA:嬉しいですね。それが狙いというか、希望でした。やっぱり自分の曲が可愛いっていうところから始まっているし、メインの曲が表題のシングルだと「僕の曲がサブなのか?」というのももちろんあったし…これも美学ね。

●ややこしいバンドだ(笑)。

MATSUMURA:「それじゃかっこよくないし、何かタイトル付けようよ」というところから始まって、シングルは必ず作品としてのタイトルを付けるようになったんです。おっしゃるとおり、アルバムがスペシャルじゃないんですよね。赤坂BLITZが僕らの経験したワンマンの中でいちばん大きなハコだったんですけど、"何のツアーだっけ?"と考えるとシングル『new dawn』(2009年3月)なんですよね。「シングルじゃあお客さんが入んないよ」と言われても、結果がどうであれやりたかった。そういう意味ではシングルもアルバムも同じ"作品"と考えてやっているので、そういう捉え方をしてもらえるとすごく良かったなと思います。

●でもこうやって振り返ると、LAST ALLIANCEは武器をいっぱい持っていますね。

MATSUMURA:いやぁ、そんなにないですよ。

●今作を順番に聴いていくと、ライブの情景が記憶から呼び起こされる感覚があって。それってライブのときに聴いた曲や観た光景が自分の中に残っているということじゃないですか。そういうシーンがいっぱい目に浮かんだので、LAST ALLIANCEがたくさん武器を持っていると改めて認識できたんですよね。

MATSUMURA:嬉しいですね。最初からそうだったわけじゃなくて、徐々にそうなっていったんだと思います。でもそれをもっと強力な武器にしたいんです。僕らは最初から雑食だったから「何でメロコアなのに日本語なんだよ」とか「そもそも何で解散したの?」って感じで風当たりが強いところからのスタートなんですよ。

●ああ~、そうだったんですね。

MATSUMURA:でも"関係ないや"って感じでやってきたことを、やっと認めてくれる方も増えてきた。もっと精度を上げて研ぎ澄ませていけば立派な武器になっていくかなと思います。メロウな曲も歌うし、2ビートでグッチャグチャにもするし。例えば曲単位でライブの情景が浮かぶって、曲のキャラがめっちゃ強いってことじゃないですか。メロディックだったらビートが一緒でどの曲かわかりにくかったりするかもしれない。そういう意味では強い武器なのかなと思いますね。まだ全然果物ナイフくらいですけどね。

●致命傷はまだ負わせられないと(笑)。

MATSUMURA:殺せないです(笑)。もっと力が要りますね。それには最初に言ったエモーショナルな、より深いところに突き刺す要素が必要だと思っていて。

●その要素があったらもっと強くなるでしょうね。

MATSUMURA:アンサンブルもそうですし。

INTERVIEW #3

「泥臭いっていうのも最近はその通りだと思うし、だったら隠さずに出そうと。ライブのMCも全部そうですね」

●今作はコンプリートシングルコレクションでありつつ、[DISC3]『It's a emotional world』には新曲が収録されていますね。新曲2曲と、既発曲のアコースティックバージョンが3曲。

MATSUMURA:ニューシングルとは謳ってないけど、どうしても新曲をただの特典みたいにしたくなかったんです。今まで通り、新しい曲は"新譜"という扱いをしてほしいから[DISC3]に分けて、タイトルも付けてシングル的な意味合いを持たせたかったんです。

●なるほど。

MATSUMURA:それとさっき言っていた、"どうしたら喜んでくれるかな?"というところですね。シングルコレクションだけだったら持ってるヤツもいっぱいいるし、「でもデジタル・リマスタリングだから…」では通用しないと思うんです。新曲2曲を入れることと、前作や前々作ではボーナストラック的な曲を入れていたので、"短時間でできて違いを持たせられることって何だろう?"と考えて、アコースティックバージョンを入れたんです。そういう1枚のニューシングルを入れたかったということですね。

●MATSUMURAさん作詞/作曲のM-1「a burning bullet」ですが、アレンジはすごくダイナミックというか、立体的だと思って。画期的なアレンジをやっているというわけではないんですけど、ベーシックでの強弱のアレンジがすごく肉体的で、緩急があって。細やかなアレンジだとは思うんですけど、そういう意味でダイナミックに聴こえてくるんです。

MATSUMURA:次第に音源に近いライブを再現したいという気持ちが強くなってきていて。歌もそうだし、プレイもそうだし。それは今までも考えていたんですけど、ツアーをまわれば"これはダメだな"とか、より細かいことに気付くこともあって。例えばライブで合わせにくいリズムってあるんですよ。食いっ食いで行くというか(と手を叩く)。

●はいはい。

MATSUMURA:逆にすごく合わせやすいリズムもあって。この曲はリズムのチョイスもそういうところから始まったんです。あとは最初からライブを意識して作っているので、歌詞の詰め込み方も"ここはライブハウスのスピーカーでも一聴で伝わってほしい"とか考えて。キーもスタジオのブースでは出るけど、ツアーで何十本もまわったときに歌えないギリギリのラインよりは下を取ってみたりとか。僕の声は特にそうなんですけど、音源で聴いたら半音高い方が絶対にキラキラして派手なんです。でも散々迷って"ライブでバラつきがあるのは嫌だな"と。ライブを上手く、余裕を持ってできるかどうかということを意識して作った曲なんです。

●叩き上げのライブチューンというか。

MATSUMURA:だからさっき「ダイナミックで緩急がある」と言われましたけど…もちろん今までもそういうつもりだったんですけど…。

●はい、今までも緩急の大きいバンドだと思っていました(笑)。

MATSUMURA:…今までも常にストップ&ゴーでしたけど(笑)、よりそうなりましたね。だからさっき「肉体的」と言われたのがすごく嬉しかった。要するに、ブースとか卓でイジるんじゃなくて、ライブハウスで4人で作る緩急というか。肉体的に出せる緩急を感じてもらったらすごく嬉しいです。まだライブでやっていないから、そういうのがライブでも出せればないいなと思う。

●それと、MATSUMURAさんの歌詞は心情を出した曲が多いと思っていますけど、この曲で書いていることは、さっきの"エモーショナルな"というライブの話にも通ずるのかなと。"醜さも 優しさも 憎しみも 愛情も 執着も"という歌詞がありますけど、むき出しにしているというか、そういう意味でのリアリティがあるというか。

MATSUMURA:この曲の歌詞は今の心情でもあるし、今までにないくらい裸一貫かもしれないですね。

●でも、今までも隠していたわけではないですよね。

MATSUMURA:そうですね。でもだんだん変わってきたという実感もあって。昔は言いたいことを日本語で伝えたいクセに、ストレートに伝わるのが恥ずかしいから言葉を詰め込んで、歌詞カードを読めばわかる程度にして。根本的なところで矛盾しているというか、まあそれも好みの問題なんですけど。

●はい。

MATSUMURA:ストーリー性のある歌詞も好きなんですけど、よりリアルな自分の心情だったり想いを丸裸で出したものはすごくリアリティがあって好きなんです。だから果物ナイフが立派な刀になるんじゃないかなと思うんですよね。もちろん"かっこいい歌詞がいい"という人もたくさんいますけどね。ただ、この曲ではそういうことを歌いたかった。

●なるほど。

MATSUMURA:LAST ALLIANCEって昔から「男臭くて泥臭いですよね」と言われるんですけど、それが嫌だったんですよ。スタイリッシュがいいと思っていて(笑)。オシャレな感じが良かったんですよね。

●"スタイリッシュがいい"というのはバンドのイメージとして感じていました。前の取材でANZAIさんにも言ったんですけど、"スカしてるな"って(笑)。

MATSUMURA:出ちゃってたんですね(笑)。でも泥臭いっていうのも最近はその通りだと思うし、だったら隠さずに出そうと。ライブのMCも全部そうですね。気のいいお兄さんみたいなMCになっちゃってるし、それが普段通りの僕らだしっていう。

●M-2「Last Word」はsanoshingo ELseさんによる作曲で、歌詞はANZAIさん。今回は2曲ともライブ仕様だと思ったんですけど、「Last Word」はプロレスの入場曲でも使えるくらいの一体感と爆発力があるというか…パワフル過ぎますね(笑)。

MATSUMURA:パワフルですね。ANZAIの表現のいちばんいかつい部分を出してますよね。サノゴの曲は彼のポシリーがあって、今好きなものを詰め込んでいる。それをLAST ALLIANCEのフィルターを通したときに生まれた化学反応的な曲だと思います。この曲をサラッとした泥臭くないヴォーカリストが歌えばまた全然違う感じになると思うんですよ。でもANZAIが歌うことでプロレス感というか(笑)、いかつさの塊が出ている。

●この曲もライブがものすごく楽しみです。それとM-3「HEKIREKI」、M-4「WORLD IS MINE」、M-5「NE(W)ROTIC WORLD」のアコースティックバージョンが収録されていますが、アコースティックでやるのは難しさもあったと思うんです。

MATSUMURA:初めての経験が多かったですね。ギター1本にも拘りを持っていたのはサノゴだったし。ギター1本でアレンジすることがかっこいいというのが彼なりの美学。…僕はちょっとわかんないですけど。「重ねた方が良くない?」みたいな。

●アハハハ(笑)。

MATSUMURA:ANZAIはANZAIで、コーラスを入れない歌1本の美学。僕はそこで「コーラスを入れても良くない?」と思うんだけど(笑)。

●アハハハハハハハ(笑)。

MATSUMURA:共通して言えるのは、歌とか歌詞とか曲のメロディ…裸にしたものの良さを聴いて欲しかったんです。だから「WORLD IS MINE」は僕がチョイスして、「NE(W)ROTIC WORLD」はANZAIが想い入れがあって歌いたかった曲で。「HEKIREKI」は万人に届くキラーチューンとして。「片膝の汚れ」か「HEKIREKI」かで迷ったんですけど、「片膝の汚れ」をアコースティックでやったらアリスの「チャンピオン」になっちゃったので…。

●あ、そっか。なるほど。ハハハ(笑)。

MATSUMURA:だから「HEKIREKI」の方がいいなと。

●さっきおっしゃっていましたけど、こういうバージョンで聴くと新鮮だし曲の良さが浮き彫りになりますね。

MATSUMURA:それはコアな人ほど気付くはずなんですよね。例えば「WORLD IS MINE」は2ビートの曲をやりたかったんですけど、ガチャガチャしているけどメロディを大事にしているということが伝われば嬉しいです。

●そして3~4月とワンマンツアーがありますね。

MATSUMURA:さっき言いましたけど今作は「あの曲やってくれー!」というヤジに応えたかったし、ポカンとしている子にも新しい感動を与えたかったし、"どうしたらみんなに喜んでもらえるツアーができるんだろう"というところからのリリースだったりもするので、その人たちを喜ばせるようなセットリストや演出にしたいですね。これから考えていきます。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子

INTERVIEW #1
「フロアで泣いている子とかは見ないようにしてるんですよ。もうおっさんだからホロッともらい泣きしちゃいそうで(笑)、悪いけど見ない」

●6thアルバム『for staying real BLUE.』(2011年6月)のツアーはどうでしたか?
MATSUMURA:ファイナルのLIQUIDROOMは「音がすごく良かった」っていろんな人に言われて。PAのアンドリューと僕らの音と LIQUIDROOMの相性が良かったのかな。それに5thアルバム『Keep on smashing blue,』(2010年10月)からは機材が結構変わったこともあって。
●あ、そうですね。変わったというか、変わらざるを得なかったという(※機材車が盗難に遭った)。
MATSUMURA:ピックしかなかったですからね(笑)。みんなちょいちょい買い揃えたり、人からもらったりして。それから「音がすげぇ良くなった」って言われて。足もとまわりは古い機材を使ってたりしていたので、今欲しいものを買い替えたからっていうのもあって。
●より今の音に直結したんですね。
MATSUMURA:そうですね、直結した形で良くなった。『Keep on smashing blue,』ツアー中にちょっとずつ買い揃えたから、『for staying real BLUE.』ツアーのときはだいぶ音が新しい機材で馴染んでいたんじゃないかな。
●なるほど。
MATSUMURA:だからLIQUIDROOMのワンマンはすごく良かったっていう感じでしたね。
●ここ最近のライブはすごく内面的なものが伝わってくる感じがして。特にMATSUMURAさんの場合は、ステージ上での笑顔が毎回すごく印象に残るんです。それはライブというかバンドの状態を象徴しているような気がしていて。
MATSUMURA:ライブに対しての目的も徐々に変わってきているんですよ。10年前だったらCDを作ることが最終目標、そこに自己顕示欲をどれだけ出すかっていうところが活動のメインになっていた。
●はい。
MATSUMURA:それがここ数年は、リリースしてライブに来てもらって、そこで楽しみを共有できることが僕らの目的であったり、いちばんのご褒美だったりする。だから必然的に笑顔も出るんだろうし。
●いい変化ですね。
MATSUMURA:逆に、フロアで泣いている子とかは見ないようにしてるんですよ。もうおっさんだからホロッともらい泣きしちゃいそうで(笑)、悪いけど見ない。
●完全におっさんじゃないですか(笑)。すごくいい話ですけど。
MATSUMURA:結局はそういうところですよね。みんな楽しそうにしているからっていう。みんながつまんなそうにしていたら僕も笑顔は出ないだろうし、いろんなものを共有できているという感じです。徐々にですけど、日に日にライブが楽しくなっていきますね。
●理想とするライブのイメージはあるんですか?
MATSUMURA:ライブ制作をしてくださっているマエダさんという方がいて、いつも舞台袖とかにいるんですよ。「かっこいいバンドともいっぱい対バン するし、年齢は関係なく、そういうバンドと一緒に切磋琢磨したい」みたいな話を打ち上げでしたときに、「LAST ALLIANCEの持ち味は歌詞とか歌とか“メッセージ性”みたいなものだと思う」と言ってくださって。それを聞いて“ああ~、そうか”と改めて思ったん ですよね。
●ふむふむ。
MATSUMURA:そういうこともあって最近は、日本語の曲も英語の曲も同じなんだけど、もっと感情的にぶつけるというか、歌に乗せるイメージでやりたいなと個人的には思っています。もちろん曲によっては楽しむことに特化したものもあると思うんだけど。
●その発言はちょっと意外でした。そういうイメージのバンドではないと思っていたので。
MATSUMURA:メンバーそれぞれで違いはあると思いますが僕はそうですね。僕は昔より歌う場面も増えているし、増えていることを容認してくれている ANZAIにも感謝しているんだけど、やっぱり歌うことが好きで楽しいんですよ。だからイメージとは違うのかもしれないけど、そういう感じでもっと追求し ていきたいなと。
●いや、MATSUMURAさんはエモーショナルな心情を歌詞に書くことが多いから、個人としては“感情的にぶつける”という印象は少な からずあったんですよ。でも、ことライブに関しては、バンド全体として感情をむき出しにするようなイメージがあまりなかった。だからこそ今の発言は今後の ライブがすごく楽しみになったんです。
MATSUMURA:僕は最近そうですね。感情をぶつけるのは歌じゃなくてもいいと思うんです。暴れ狂っちゃってて演奏がぐっちゃぐちゃだけどかっこいいバンドっているじゃないですか。
●いますね。
MATSUMURA:逆にピシッと歌ってピシッと演奏しているけど何も感じない場合もある。
●そうですね、確かにそういうことあります。
MATSUMURA:僕は前者の方が圧倒的にかっこいいと思うんです。ツアーとかだと終わったライブの外音を聴いて、次の場所に行くんです。そのときにダメなところをチェックして。そうするとその反動で、どうしても次のライブはカチッと弾いちゃう。
●うんうん。
MATSUMURA:それを間近で観ているスタッフが、僕がダメだと思ったライブの方が全然良かったって言うんですよ。そこで僕が「そんなことねぇよ」と 言うんじゃなくて「あ、そっか」って。いちばん身近で見ている人間が「より人間っぽくて良かった」と言うんです。それは僕個人じゃなくても、バンドとして すごく良かったっていう意見を結構聞いたりして。“やっぱりそういうことなのかな”と思って、より感情を出したいと思うようになったんです。
●LAST ALLIANCEのライブの変遷としても、“作品でどれだけの自己顕示欲を出せるか”という価値観から、“どれだけライブで一体になれるか”にシフトしてきたと思うんです。それはきっとそういう現場から培った感覚なんでしょうね。
MATSUMURA:急に変わったわけじゃないし、もうかなり前からですね。5thシングル『DAZE&HOPE』(2006年5月)を出したくらいから そんなことを言っていたし、それがよりリアルに現実味を帯びて形になってきたかなと思います。思っているだけとか口で言うだけとかではなく体現できてきて いるんじゃないかなと。
●うんうん。
MATSUMURA:細かい話をすると、メンバーそれぞれでやりたいイメージが違うと思うんですよね。ANZAIとかの本音はMCも少なめで音で勝負みた いな男気ライブを理想としていると思うし。でも僕ら4人でやると違うなっていうのはあいつも分かっているし、その辺で少しずつ変わってきた。
●なるほど。
MATSUMURA:MCもバラバラだったけど、最近は一応僕なりANZAIが言うようにしているんです。歌うやつが話す方が説得力があると思うんですよね。
●そうですね。最近のMCは“バンドとしてのメッセージ”が伝わってくる度合いが強いです。
MATSUMURA:今もそうなんですけど、昔は口下手でMCとかも下手だったんです。でもお客さんは、特にワンマンとかだったらメンバーにしゃべって欲 しいのかなって思ってしまうんですよね。本当は僕らはしゃべんない方がいいんだけど(笑)。だから常に“どうしたら喜んでくれるかな”っていうのを考えて いる感じ。
●いいですね。
MATSUMURA:次にワンマンをするときにも来て欲しいし、良かったら友達を誘って来て欲しい。エンターテインメントに特化するという話ではないけど、特にワンマンはそういう風にできたらなっていうのを考え始めています。
●前回のインタビューでANZAIさんが「自分ひとりがずっと頑固だった」とおっしゃっていて。
MATSUMURA:めっちゃ頑固でした(笑)。でもその頑固だった部分を、あいつの中で一枚一枚脱いでいった感じがありますね。歌詞を読んでも、すごく伝わってくるんですけど、自分を含めたメンバー4人に対してのメッセージなんですよね。
●ああ~、そうですね。
MATSUMURA:あいつが書く歌詞を僕はいちいち口出ししないし、レコーディングが終わった時点で初めて読みますからね。
●そういうもんなんですね。
MATSUMURA:逆に僕もそういう歌詞が多くて、それは彼にも伝わっていると思うし。4人のコミュニティで僕たちは少しずつ大人になってきたから、頑固だった彼も今ではいちばん寛容になっていると僕は思います。
●なるほど。
MATSUMURA:いきなりワガママな部分が出てくるときもあるので、何とも言えないけど(笑)。
●ハハハ(笑)。でもANZAIさんの変化はすごく感じます。
MATSUMURA:サノゴ(sanoshingo ELse)はサノゴで、曲を書くことによって自己顕示欲がすごく強くなってるから、5枚目6枚目(5thアルバム『Keep on smashing blue,』と6thアルバム『for staying real BLUE.』)はサノゴの自己アピールによって生まれた新しいLAST ALLIANCEの一面だと思うんです。
●ああ~。
MATSUMURA:今まで通り僕とANZAIがやっていたらあの一面は出てこなかったと思うし、いわゆるラウドな激しさのあるものですよね。おのおの4人のコミュニティの中で自分の立ち位置なりしたいことを、今でもまだ常に考えているし、変化しているって感じです。

INTERVIEW #2
「もっと精度を上げて研ぎ澄ませていけば立派な武器になっていくかなと思います。メロウな曲も歌うし、2ビートでグッチャグチャにもする」

●今年で結成10年ですが、10年経ったという実感はあります?
MATSUMURA:まったくないんですよね。逆にスタッフに言われて初めてそういう話になったし、今回コンプリートシングルコレクションを出すのも僕ら の発案じゃない。でもスタッフの言葉に乗っかって、自分らがやれることで“お客さんは何を喜んでくれるか?”というところをチョイスして出したんです。で も別に、僕らはこれを「ベスト盤だ」と言っていないですからね。
●それ気付きました。資料を見ても“ベスト盤”という表現がないなと。
MATSUMURA:そこが美学なんです。ANZAIは最初から反対だったんですよ。
●前回のインタビューで「アニバーサリー的なことはイヤだ」と言ってました(笑)。
MATSUMURA:HIROSHIもそうだったし全員通しての意見ですけどね。美学が一緒という。ベスト盤を出している人もいるからあまり言えないですけど、本当に捉え方の差というか。“僕らごときがベスト盤って…”って思っちゃうんですよ。
●なるほど。確かにそれは美学ですね。
MATSUMURA:もっと功績を残したりとか、自分らが思う大きなことを成し遂げたやつが出すのはアリかなと思うんです。でも僕らは10年前にやりたい と思ったことをまだ成し遂げていないですから。だからそういうのが嫌だったというか、バンドとしてはかっこよくないなって。
●うんうん。
MATSUMURA:今回の話を頂いたときに、5・6枚目のアルバムやYouTubeで「片膝の汚れ」(シングル『Always in My Heart』収録)から知ってくれた人の入門編として必要なのかな? と思ったんです。最初は「美学に反するからイヤだ」と言っていたんですけど、そこから歩み寄って。“じゃあどうしたらいいんだろう”となったときに、出す からには喜んで欲しいものをと。たぶんその頃にちょうどaikoのベスト盤が出たんですけど、超欲しいと思って。
●アハハハハ(笑)。
MATSUMURA:aikoは好きだけど、他のアルバムも網羅していないし、ちょこちょこ抜けているのもあるから、ちょっと欲しいなと思ったんです。で、僕らの今回の作品も、カップリングも含めて全シングルの曲を1枚にしちゃったら、アルバム以外の曲も網羅できるなと。
●そういうアイディアが出てきたんですね。
MATSUMURA:そうですね。それに、ライブでどこに行っても、ヤジみたいに「あの曲やってくれー!」とか言われるんですけど、申し訳ないけど練習し ないとできないぐらい古い曲だったりするし(笑)。一方で、僕らが良かれと思ってやっても、シングルのカップリングとかだとポカンとされるときもある。そ のジレンマがあって、どうすればヤジを飛ばす人にも喜んでもらえて、ポカンとした子にも知ってもらえるか…それってすごく骨の折れる作業で、流通に乗って いない買いにくい作品もあるから、よほど僕らのことを好きじゃないとコンプリートできないんですよ。でも、そういうライブでみんなに喜んで欲しいので、今 回のコンプリートシングルコレクションの企画に辿り着いたんです。
●シングルコレクションと聞いてまず最初に思ったのは、“LAST ALLIANCEってそんなにシングル出してたかな?”ということ。実際は出しているんですけど、シングルのタイトルは全部曲タイトルではないじゃないで すか。それがすごく功を奏しているというか。僕の中ではLAST ALLIANCEに関して、アルバムとシングルの隔たりが印象としてなかったんです。全部作品として捉えていた。
MATSUMURA:嬉しいですね。それが狙いというか、希望でした。やっぱり自分の曲が可愛いっていうところから始まっているし、メインの曲が表題のシングルだと「僕の曲がサブなのか?」というのももちろんあったし…これも美学ね。
●ややこしいバンドだ(笑)。
MATSUMURA:「それじゃかっこよくないし、何かタイトル付けようよ」というところから始まって、シングルは必ず作品としてのタイトルを付けるよう になったんです。おっしゃるとおり、アルバムがスペシャルじゃないんですよね。赤坂BLITZが僕らの経験したワンマンの中でいちばん大きなハコだったん ですけど、“何のツアーだっけ?”と考えるとシングル『new dawn』(2009年3月)なんですよね。「シングルじゃあお客さんが入んないよ」と言われても、結果がどうであれやりたかった。そういう意味ではシン グルもアルバムも同じ“作品”と考えてやっているので、そういう捉え方をしてもらえるとすごく良かったなと思います。
●でもこうやって振り返ると、LAST ALLIANCEは武器をいっぱい持っていますね。
MATSUMURA:いやぁ、そんなにないですよ。
●今作を順番に聴いていくと、ライブの情景が記憶から呼び起こされる感覚があって。それってライブのときに聴いた曲や観た光景が自分の中 に残っているということじゃないですか。そういうシーンがいっぱい目に浮かんだので、LAST ALLIANCEがたくさん武器を持っていると改めて認識できたんですよね。
MATSUMURA:嬉しいですね。最初からそうだったわけじゃなくて、徐々にそうなっていったんだと思います。でもそれをもっと強力な武器にしたいんで す。僕らは最初から雑食だったから「何でメロコアなのに日本語なんだよ」とか「そもそも何で解散したの?」って感じで風当たりが強いところからのスタート なんですよ。
●ああ~、そうだったんですね。
MATSUMURA:でも“関係ないや”って感じでやってきたことを、やっと認めてくれる方も増えてきた。もっと精度を上げて研ぎ澄ませていけば立派な武 器になっていくかなと思います。メロウな曲も歌うし、2ビートでグッチャグチャにもするし。例えば曲単位でライブの情景が浮かぶって、曲のキャラがめっ ちゃ強いってことじゃないですか。メロディックだったらビートが一緒でどの曲かわかりにくかったりするかもしれない。そういう意味では強い武器なのかなと 思いますね。まだ全然果物ナイフくらいですけどね。
●致命傷はまだ負わせられないと(笑)。
MATSUMURA:殺せないです(笑)。もっと力が要りますね。それには最初に言ったエモーショナルな、より深いところに突き刺す要素が必要だと思っていて。
●その要素があったらもっと強くなるでしょうね。
MATSUMURA:アンサンブルもそうですし。
INTERVIEW #3
「泥臭いっていうのも最近はその通りだと思うし、だったら隠さずに出そうと。ライブのMCも全部そうですね」

●今作はコンプリートシングルコレクションでありつつ、[DISC3]『It's a emotional world』には新曲が収録されていますね。新曲2曲と、既発曲のアコースティックバージョンが3曲。
MATSUMURA:ニューシングルとは謳ってないけど、どうしても新曲をただの特典みたいにしたくなかったんです。今まで通り、新しい曲は“新譜”という扱いをしてほしいから[DISC3]に分けて、タイトルも付けてシングル的な意味合いを持たせたかったんです。
●なるほど。
MATSUMURA:それとさっき言っていた、“どうしたら喜んでくれるかな?”というところですね。シングルコレクションだけだったら持ってるヤツも いっぱいいるし、「でもデジタル・リマスタリングだから…」では通用しないと思うんです。新曲2曲を入れることと、前作や前々作ではボーナストラック的な 曲を入れていたので、“短時間でできて違いを持たせられることって何だろう?”と考えて、アコースティックバージョンを入れたんです。そういう1枚の ニューシングルを入れたかったということですね。
●MATSUMURAさん作詞/作曲のM-1「a burning bullet」ですが、アレンジはすごくダイナミックというか、立体的だと思って。画期的なアレンジをやっているというわけではないんですけど、ベーシッ クでの強弱のアレンジがすごく肉体的で、緩急があって。細やかなアレンジだとは思うんですけど、そういう意味でダイナミックに聴こえてくるんです。
MATSUMURA:次第に音源に近いライブを再現したいという気持ちが強くなってきていて。歌もそうだし、プレイもそうだし。それは今までも考えていた んですけど、ツアーをまわれば“これはダメだな”とか、より細かいことに気付くこともあって。例えばライブで合わせにくいリズムってあるんですよ。食いっ 食いで行くというか(と手を叩く)。
●はいはい。
MATSUMURA:逆にすごく合わせやすいリズムもあって。この曲はリズムのチョイスもそういうところから始まったんです。あとは最初からライブを意識 して作っているので、歌詞の詰め込み方も“ここはライブハウスのスピーカーでも一聴で伝わってほしい”とか考えて。キーもスタジオのブースでは出るけど、 ツアーで何十本もまわったときに歌えないギリギリのラインよりは下を取ってみたりとか。僕の声は特にそうなんですけど、音源で聴いたら半音高い方が絶対に キラキラして派手なんです。でも散々迷って“ライブでバラつきがあるのは嫌だな”と。ライブを上手く、余裕を持ってできるかどうかということを意識して 作った曲なんです。
●叩き上げのライブチューンというか。
MATSUMURA:だからさっき「ダイナミックで緩急がある」と言われましたけど…もちろん今までもそういうつもりだったんですけど…。
●はい、今までも緩急の大きいバンドだと思っていました(笑)。
MATSUMURA:…今までも常にストップ&ゴーでしたけど(笑)、よりそうなりましたね。だからさっき「肉体的」と言われたのがすごく嬉しかった。要 するに、ブースとか卓でイジるんじゃなくて、ライブハウスで4人で作る緩急というか。肉体的に出せる緩急を感じてもらったらすごく嬉しいです。まだライブ でやっていないから、そういうのがライブでも出せればないいなと思う。
●それと、MATSUMURAさんの歌詞は心情を出した曲が多いと思っていますけど、この曲で書いていることは、さっきの“エモーショナ ルな”というライブの話にも通ずるのかなと。“醜さも 優しさも 憎しみも 愛情も 執着も”という歌詞がありますけど、むき出しにしているというか、そういう意味でのリアリティがあるというか。
MATSUMURA:この曲の歌詞は今の心情でもあるし、今までにないくらい裸一貫かもしれないですね。
●でも、今までも隠していたわけではないですよね。
MATSUMURA:そうですね。でもだんだん変わってきたという実感もあって。昔は言いたいことを日本語で伝えたいクセに、ストレートに伝わるのが恥ず かしいから言葉を詰め込んで、歌詞カードを読めばわかる程度にして。根本的なところで矛盾しているというか、まあそれも好みの問題なんですけど。
●はい。
MATSUMURA:ストーリー性のある歌詞も好きなんですけど、よりリアルな自分の心情だったり想いを丸裸で出したものはすごくリアリティがあって好き なんです。だから果物ナイフが立派な刀になるんじゃないかなと思うんですよね。もちろん“かっこいい歌詞がいい”という人もたくさんいますけどね。ただ、 この曲ではそういうことを歌いたかった。
●なるほど。
MATSUMURA:LAST ALLIANCEって昔から「男臭くて泥臭いですよね」と言われるんですけど、それが嫌だったんですよ。スタイリッシュがいいと思っていて(笑)。オシャレな感じが良かったんですよね。
●“スタイリッシュがいい”というのはバンドのイメージとして感じていました。前の取材でANZAIさんにも言ったんですけど、“スカしてるな”って(笑)。
MATSUMURA:出ちゃってたんですね(笑)。でも泥臭いっていうのも最近はその通りだと思うし、だったら隠さずに出そうと。ライブのMCも全部そうですね。気のいいお兄さんみたいなMCになっちゃってるし、それが普段通りの僕らだしっていう。
●M-2「Last Word」はsanoshingo ELseさんによる作曲で、歌詞はANZAIさん。今回は2曲ともライブ仕様だと思ったんですけど、「Last Word」はプロレスの入場曲でも使えるくらいの一体感と爆発力があるというか…パワフル過ぎますね(笑)。
MATSUMURA:パワフルですね。ANZAIの表現のいちばんいかつい部分を出してますよね。サノゴの曲は彼のポシリーがあって、今好きなものを詰め 込んでいる。それをLAST ALLIANCEのフィルターを通したときに生まれた化学反応的な曲だと思います。この曲をサラッとした泥臭くないヴォーカリストが歌えばまた全然違う感 じになると思うんですよ。でもANZAIが歌うことでプロレス感というか(笑)、いかつさの塊が出ている。
●この曲もライブがものすごく楽しみです。それとM-3「HEKIREKI」、M-4「WORLD IS MINE」、M-5「NE(W)ROTIC WORLD」のアコースティックバージョンが収録されていますが、アコースティックでやるのは難しさもあったと思うんです。
MATSUMURA:初めての経験が多かったですね。ギター1本にも拘りを持っていたのはサノゴだったし。ギター1本でアレンジすることがかっこいいというのが彼なりの美学。…僕はちょっとわかんないですけど。「重ねた方が良くない?」みたいな。
●アハハハ(笑)。
MATSUMURA:ANZAIはANZAIで、コーラスを入れない歌1本の美学。僕はそこで「コーラスを入れても良くない?」と思うんだけど(笑)。
●アハハハハハハハ(笑)。
MATSUMURA:共通して言えるのは、歌とか歌詞とか曲のメロディ…裸にしたものの良さを聴いて欲しかったんです。だから「WORLD IS MINE」は僕がチョイスして、「NE(W)ROTIC WORLD」はANZAIが想い入れがあって歌いたかった曲で。「HEKIREKI」は万人に届くキラーチューンとして。「片膝の汚れ」か 「HEKIREKI」かで迷ったんですけど、「片膝の汚れ」をアコースティックでやったらアリスの「チャンピオン」になっちゃったので…。
●あ、そっか。なるほど。ハハハ(笑)。
MATSUMURA:だから「HEKIREKI」の方がいいなと。
●さっきおっしゃっていましたけど、こういうバージョンで聴くと新鮮だし曲の良さが浮き彫りになりますね。
MATSUMURA:それはコアな人ほど気付くはずなんですよね。例えば「WORLD IS MINE」は2ビートの曲をやりたかったんですけど、ガチャガチャしているけどメロディを大事にしているということが伝われば嬉しいです。
●そして3~4月とワンマンツアーがありますね。
MATSUMURA:さっき言いましたけど今作は「あの曲やってくれー!」というヤジに応えたかったし、ポカンとしている子にも新しい感動を与えたかった し、“どうしたらみんなに喜んでもらえるツアーができるんだろう”というところからのリリースだったりもするので、その人たちを喜ばせるようなセットリス トや演出にしたいですね。これから考えていきます。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子

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