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ハイブリッド多国籍バンド・LINGUA FRANCAインタビュー

LINGUA FRANCA:感性とフィジカルから生み出す、まだ見ぬ音楽の桃源郷。

2011年結成、町田を中心に活動を続けるハイブリッド多国籍バンド、LINGUA FRANCA(リンガフランカ)。「人と違う事がしたい」という意志の下に集まった彼らは、感性とフィジカルのおもむくままに音楽を練り上げ、誰もまだ見たことが無いオルタナティヴな世界を作り上げる。1曲仕上げるのに1年近くかかってしまう場合もあると言う彼らの楽曲は、どのようにして生まれ、どのようにして育ってきたのか。結成8年目にして1stフルアルバムを完成させたIdaとNagahamaの2人に、そのアイデンティティが形成された背景と想いを訊いた。
 
 

「僕らが不器用なことを察してくれていつつ、僕らの音楽をすごく純粋に楽しんでくれている人たちが居るんですよ。その人たちを裏切れないし、がっかりさせたくないっていう気持ちもある。だから辞められないし、心は折れない」

 
 
 
 
●LINGUA FRANCAは「人と違うことがしたい」ということで2011年に結成したとのことですが、バンドマンは少なからずみんな“オリジナリティ”を追求すると思うんです。ただ、明らかにLINGUA FRANCAの場合は「世の中に無い音楽を生み出したい」「自分たちがいいと思うものを創造したい」という強い意志を音楽から感じるんですが。
 
Keigo Nagahama(以下、Keigo):もともとRed Hot Chili Peppersのコピーを初期のメンバーでやっていて、そこから「オリジナル曲を作ってみよう」という感じで作ったのが「お前らレッチリ好きでしょ?」と言われるような曲で。
 
●はい。
 
Keigo:でもすぐに「こういう音楽はRed Hot Chili Peppersが居るんだから俺たちがやらなくてもいいだろう」という発想になって、そこからどんどん「人と違うことをしよう」ということで拍を増やしてみたり減らしてみたり。
 
●ということは試行錯誤の結果?
 
Kohei Ida(以下、Ida):そうですね。僕は最初、カントリーをやりたかったんです。
 
●カントリーミュージックやってるバンド、まったく知らないです。
 
Ida:僕がカントリーをやりたい、そしてレッチリのコピバンもやって、Keigoが1回テキサスに留学で行ったんですけど、帰ってきたら「なんか違うだろう」と言ってまたバンドの音楽性を試行錯誤して。いろんなジャンルの音楽を組み合わせて採り入れてやっていったら、今のような感じになりました。
 
●どこか目指す先があったというより、自分たちがピンとくる音楽を探す作業ということですか?
 
Ida:そうかもしれないです。
 
Keigo:レッチリっぽい曲を作ったり、カントリーみたいな曲を作ったり。その辺からライブハウスに出始めてたんですけど、対バンを観て「あいつらとは違うことをしようぜ」っていうマインドがどんどん大きくなってきて。ちょうどジャンル問わずいろんな音楽を訊いているメンバーだったので、じゃあ好きな音楽から色んなアイディアを採り入れて、セッションしながら作っていこうと。
 
●現メンバーの3人はそれぞれどういうルーツなんですか?
 
Ida:僕はカントリーやR&Bをルーツに、中学〜高校の頃はHIP HOPにハマって。コテコテの洋楽ですね。
 
Keigo:僕はHi-STANDARDやGreen Dayとかのパンクロック、そこからThe ClashやSex Pistolsとかが大好きで。地元が沖縄なんですけど、上京してから色んな音楽を聴くようになって。
 
●なるほど。Nikitaさんは?
 
Keigo:NikitaはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが大好きです。
 
●ちょっと意外ですね。2011年にバンドがスタートして、音楽性が固まったのはいつくらいなんですか?
 
Ida:正直に言うと、今も音楽性は固まってないんです。
 
●え。
 
Ida:常に変わってきているので、これからも変わるだろうし。
 
Keigo:曲を作る上での僕らのコンセプトは「アップデートしていい」なんです。
 
●アップデートしていい?
 
Keigo:例えばレコーディングするために曲を作りました。レコーディングしました。でもそこからアレンジしていってもいい。
 
●なるほど。盤が最終ではない。
 
Keigo:CDはあくまでも時間軸的にその時点での最新版という感覚。
 
Ida:だから今回のアルバム『The Maze Of Spirit』に収録している楽曲も、今は全然違うドラムのフレーズを叩いていたりしてます。
 
●ドラムって重要なパートですよね。特にこのバンドにとってのリズムは。
 
Ida:ハハハ(笑)。
 
Keigo:そこに合わせて僕らのアレンジも変わる。
 
●セッションバンドに近いのかも。
 
Keigo:そうですね。常にセッションしてる感覚かもしれないです。
 
Ida:そのときによって「あ、それいいね」っていう感じで変わっていっちゃいますね。
 
●ただそうすると、曲が形になるまでめちゃくちゃ時間がかかるんじゃないですか?
 
Ida:揉めますし、すごく時間がかかりますね。曲によっては1年くらいかかります。
 
●え? 1年?
 
Ida:みんなが「それ!」とならないと、始まりもしない。最初はギターリフとか単体のフレーズを持ってきて、他のメンバーが「それいいね」となったらドラムを乗せたりベースを乗せたり。
 
Keigo:リハの前にコードを作ってて、弾いたフレーズが「今のかっこいいね」となったら、リハ中に「あのフレーズから作ってみよう」って急に曲作りのセッションが始まるようなことが多いです。
 
Ida:その繰り返しでアイディアを貯めて、曲によっては1回完成したけど「もうちょっとやってみよう」という感じで結果的に1年くらいかかったりするんです。
 
●Idaさんはピンヴォーカルじゃないですか。楽器陣がスタジオであーだこーだ演り始めたら、待ってるんですか?
 
Ida:いや、そこにアドリブで歌を乗せたりとかします。メロディと歌詞は最後なんですが。
 
Keigo:ハミングだったりラップだったり。ヴォーカルも1つの楽器という捉え方で、その場でセッションして「ヴォーカルがそういう感じでくるんだったらこっちはこういうアプローチをしてみよう」みたいな。反応し合いながら作っていくんです。当初から僕たちはこういう作り方をしていて。
 
●だから偶然の産物のようなこういう楽曲が出来るのか。…でもそういう作り方だと、メンバーの感覚が合わないと全然気持ちよくないですよね? よく続いてますね(笑)。
 
Ida:ハハハ(笑)。だから新しく入ってくるメンバーとかサポートは、動揺しますよね。
 
●メンバーに共通してあるのは“自分たちのアイデンティは何だ?”という強い気持ちだと思うんですが、なぜ人と同じことはやりたくないんですか?
 
Ida:ライブをしていろんなバンドと出会ったり、いろんなシーンを知って、やっぱり自分たちだけのシーンというか光るものを創りたいっていう気持ちが、3人とも出てきちゃうんですよね。
 
●迎合したくない?
 
Ida:うん、迎合したくない。その気持ちは常にあるかな。
 
Keigo:このメンバーでしかできない何かを創っていきたいというのが根底にあるんです。
 
●なるほど。そして結成8年目にして今回記念すべき1stフルアルバムをリリースされたわけですが、どういうテーマで作った作品なんですか?
 
Ida:もともと“アルバムを作りたい”という気持ちはずっとあったんですけど、さっき言ったように納得がいく曲が揃うまで時間がかかったし、ライブをやっていくうちに曲も変わっていくし、メンバーチェンジも何度かあって。そういう中で「今作らないと一生作れない」という覚悟で、結成から今まで作ってきた楽曲を全部詰め込もうと。
 
●え、全部? ちょっと待ってください。今作『The Maze Of Spirit』は9曲収録されていますが、これで全部?
 
Keigo:まだありますよ。
 
Ida:2〜3曲くらいかな。
 
●え、ちょ、ちょっと待ってください。8年間で11〜12曲ってやばくないですか?
 
Ida:アハハハ(笑)。
 
●ワンマン出来ないですね(笑)。
 
Keigo:メンバーが抜けた期間が多かったというのも大きいですね。加入しても半年程度活動してまた抜けちゃったり、1年に満たずにまた抜けちゃったり。だから曲も作っている途中の段階でそのままになっていたり、3人で下地だけ作っておいて、みたいな活動が4〜5年続いたり。
 
●よく心が折れずにバンド続けてこれましたね。
 
Ida:折れないです。やっぱり…ムカつくんですよね。出来ないことが。
 
●お、いいですね。
 
Ida:僕らと同じ時期に結成して出会ったり、ライブをやっていく中で出会ったりした仲間のバンド、そいつらがのし上がっていくとやっぱりムカつきますし、仲間だからすごく嬉しい反面、同じステージに立ちたいという気持ちもあるし。
 
●うんうん。
 
Ida:あと、お客さんの熱意がすごいんです。僕らに対して「がんばってほしい」と思ってくれる人たちが居る。たぶん僕らが不器用なことを察してくれていつつ、僕らの音楽をすごく純粋に楽しんでくれている人たちが居るんですよ。その人たちを裏切れないし、がっかりさせたくないっていう気持ちもある。だから辞められないし、心は折れないです。あとは単純に、やっぱり音楽は楽しいです。
 
Keigo:それに、現時点でメンバーはオリジナルの3人ですけど、この3人が居れば大丈夫っていう自信があって。そこでギタリストが変われば色は変わると思うんですけど、土台となる音楽はしっかりと出来ているから、あとはそこの化学反応で音楽を作っていけば、変わろうとも絶対におもしろいものは作っていける。そういう確信があってこれまでやってきたので。
 
●音楽性は変わってきたけれど、LINGUA FRANCAというバンドのシステムというか、背骨は確固としていると。
 
Ida:そうですね。
 
●今作『The Maze Of Spirit』は、トリッキーに展開も変わっていく楽曲もあれば、どこから作り始めたのか想像がつかない楽曲もあるんですけど、絶対的にキャッチーな要素は必ず入っているような気がしたんです。LINGUA FRANCAの中で、“キャッチー”かどうかというのはどういう基準があるんでしょうか?
 
Ida:質問の答えになっているかどうかわからないんですけど、ライブで演ったらどうなるか? っていうのはすごく考えてますね。このフレーズで始まったらライブで盛り上がるだろうな、とか、このメロディだったらライブで耳に残るだろうな、とか。
 
●ふむふむ。
 
Keigo:僕とNikitaのリズム隊は同じ考え方だと思うんですが、Idaがメロディをキャッチーに作ってくれているから、その裏でいくらでも好きなことをしていいと思っていて。もちろんその中でメロディにぶつからないようにとかは意識してますけど。
 
●好きなことをしていいとは言え、リズムは聴くと自然にノレるものというか、気持ちよく陶酔できるようなグルーヴを選んでいるような気がするんですが。
 
Keigo:そこは意識的ではないんですが、ファンクとかR&Bとか、ルーツ系のレベルミュージックがみんな好きなんですよ。民族音楽っぽいようなものとか。たぶんそのニュアンスが無意識に曲として出ているのかもしれないです。
 
●無意識だったんですか(笑)。最近の感覚で「踊れる音楽」と言えば四つ打ちのダンスミュージックになっていくと思うんですが、LINGUA FRANCAの場合はそっちではなくて、民族音楽とか昔から人類の中で流れている土着的なリズムにベクトルが向いているような気がして。それは自覚的にやっていることなのかと思ったんです。
 
Keigo:そう言われて考えてみると、僕ら結成当初に「絶対に四つ打ちの音楽はやらない」って決めたんですよ。2010年台初頭って四つ打ちのバンドがすごく多かったじゃないですか。だから僕らは「四つ打ちはやらない」と決めて。それで「じゃあどういうリズムが踊れるんだろう?」と試行錯誤していったんですが、だからと言って「土着的なリズムで」と話したこともなくて。
 
Ida:Nikitaは感性のままにドラムを叩くし、Keigoも感性のままにベースを乗せるし。
 
●感性に従った結果、こういうリズムが生まれたと。一方でメロディについてなんですが、今作の中でM-6「Green Salt」はいちばんメロディが際立っている楽曲だと思うんです。どういう経緯でこのメロディが生まれたんですか?
 
Ida:メロディが出来上がるときは、必ずギターのリフに身体的に反応して出てくるだけなので、作っていないんですよ。
 
●え? 作ってない?
 
Ida:自分で音符を組み立てていないというか。リフに対して出てた流れるメロディ。メロディに関してはギターとドラムが重要で、ギターとドラムの兼ね合いの中でサビにいく盛り上がりを作ってもらえばパッと出てくる。
 
●いま「身体的」とおっしゃいましたが、LINGUA FRANCAにとって結構重要なキーワードかもしれないですね。
 
Ida:そうですね。自分たちが色々と観て聴いてきたものが脳内に蓄積されて、色んなバイアスが加わって、いまこのときに身体から出るものに対して良いか悪いか。ほぼ感性だし、フィジカルに作っている感じです。
 
●音の中で泳ぐようにメロディを作っている。
 
Ida:まさにそういう感覚ですね。だからその感性に惹かれる人は本当にグーッとのめり込んでくれるんです。そこは多分、人間対人間の“会話”ならぬ、“音”で通じ合うというか。得てして僕たちはそこを追求し続けているのかもしれないです。
 
●話を訊いていると、LINGUA FRANCAの音楽は精神的なセックスみたいな感じですね。
 
2人:そうですね。
 
●うわ、ハモッた。
 
 
Interview:Takeshi.Yamanaka
 
 
 
 

1st Full Album
『The Maze Of Spirit』

LONG ISLAND RECORDS
LIR-1004
¥2,300+税
2019/6/12 Release


 
L-R
Ba.Keigo Nagahama
Vo.Kohei Ida
Dr.Nikita Uehara

https://www.linguafranca-band.com/

 
 
 
 

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