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MoNoLith

7年間の歩みで築き上げてきた確かな“証”を胸に次なる一手を描き出す

AP_MoNoLith“クソガキ、悪ガキ、反抗期”をコンセプトに掲げて2006年に結成してから、7年目を迎えた仙台出身の5人組バンド・MoNoLith(モノリス)。ライブを主軸に置きながら数々の音源を発表してきた彼らが、過去の作品群から人気曲とライブでの定番曲を集めたアルバム『はじめてのモノリス』をリリースする。今や入手困難な音源も含むだけに、最近知ったファンにとっては入門編とも言える美味しい1枚だ。さらに10月には、ニューシングル『Reversible Days』のリリースも決定。V-ROCKシーンでは珍しいツインボーカルを武器に、キラキラしたポップな歌ものから激しくラウドな楽曲まで幅広い音楽性を備えた彼らの魅力に今こそ触れてほしい。

 

「俺らは時が止まっているんですよね。結成した時の気持ちのまま、今もやっている感じで」

●今回のセレクトアルバム『はじめてのモノリス』は、ライブでの定番曲を集めた入門編的な作品ですよね。

柳:ワンマンライブみたいな尺の長いライブはもちろん、曲数が少ないイベントでも主軸になるような曲も入っています。たとえばラストのM-14「Gravy Sauce」は、ファンの間で一番人気のある曲と言っても過言ではなくて。他にもM-11「3月2日、桜色。」でMoNoLithを知ったという人も多いんです。前作の『-mosaic-』でそれまでのMoNoLith像が一気に変わったと思うんですけど、それ以前の「MoNoLithといえば、これ」っていう曲が今作には入っていますね。

●『-mosaic-』はバンドにとっての転換点だった?

柳:『-mosaic-』は自分たちの中で「これまでの楽曲たちを超えていこう」という思いがあって作ったんですよ。だから俺らにとって、それまでの楽曲とは全く別物の作品なんです。でもどっちが上とかいう単純な話ではなく、昔の音源でも良い曲はあるわけで。

シューヘイ:ライブは新しくリリースした音源からの曲を中心に組み立てていくんですけど、僕らは活動が長い分、過去にも良い曲がいっぱいあるんですよ。それをお客さんが知れないのはもったいないから、この機会に知ってもらえたらと思いますね。

●最近好きになったファンに、過去の名曲を知ってもらうという意味合いもあると。

HAYATO:あと、今ではもう買えないCDというのもあって。そういう中にもライブでよくやっている曲があるので、そこからも選びました。

柳:たまにライブ後に物販をしていると、「〜曲目にやった曲が入っているCDはないんですか?」とか訊かれるんですよね。そんな時に昔のCDが完売しちゃっていて、せっかくの問い合わせに応えられないということが最近は目立つようになって。だから、そういう曲を網羅した1枚があったら便利かなと思ったんです。

●入手困難な過去音源からの楽曲も収録している。

ケイタ:そういう曲がライブでまた改めて戦力になるように、という意味もありますね。

HAYATO:最近やったワンマンツアーでも、今作に入っている曲を結構やったんですよ。そこで昔の曲の必要性を再認識したところで今作をリリースできるというのは、良いタイミングだなと思いますね。

柳:代表曲、人気のある曲、ライブで使いやすい曲というものを上手いバランスで入れた感じです。

●公式サイト上ではシングル『innocent【PLAY】er ≫≫Fast:Forward』(2009年)が最も古い音源のようですが、これ以前にもリリース作品はある?

柳:それ以前に出したCDもあるんですが、バンド的に心機一転して「もう一度頑張りましょう」というのがこのシングルからだったんです。

たかふみ:前の事務所を辞めて、心機一転というタイミングでしたね。

●そこがバンドにとっての転機ともなった?

柳:そうですね。前の事務所を辞めるということ自体が、バンドとしては大きな決断だったから。そこから「また5人だけで頑張っていこう!」という感じになりました。

HAYATO:バンドの形態は変わっていないんですけど、自分たちの気持ちが変わりましたね。

●メンバーチェンジは一度もないんですよね。

HAYATO:仙台のバンドはわりとメンバーチェンジや解散とかが頻繁にあるんですけど、ウチらはこのメンバーで7年やってきていて。昔のバンド仲間からは結婚して子どもができたとかいう話も聞くので、そういう人たちに比べると俺らは若いなと思いますね。

柳:俺らは時が止まっているんですよね。結成した時の気持ちのまま、今もやっている感じで。

●ライブのスタイルにも変化はないんですか?

HAYATO:そこも前の事務所を辞めたタイミングで変わりましたね。当時の事務所からは「キャラクターを作りなさい」と言われていたんですよ。ケイタしか喋っちゃダメとかいう縛りもあったんですけど、その時は本当に売れていなくて、ライブも全然ダメだった。

柳:前はもっとヴィジュアル系バンドとして個々のキャラクターを徹底していこうという時期もあったんですけど、…ボロが出るんですよね。ケイタは王子様キャラなんですけど、文法がおかしかったりとか。

ケイタ:客席から失笑が起きます。普通に喋っていると何の反応もなくて、カミまくっているくらいのほうが笑いが起こるっていう…。

●王子様なのに残念な感じだった(笑)。

柳:お客さんもクスクス笑うんですけど、ケイタは気付いていないので「何がおかしいんだよ?」みたいになって、変な空気になるっていう…。でもひたすら笑っていなきゃいけないキャラクターだったので、何が起こっても笑顔だったんです。そういうカオティックな状況だったので、これはもっと自然体でいったほうがいいんじゃないかっていうことになって。そこで王子なんだけどミスもするし、そこに俺はどんどんツッコんでいく芸人タイプっていう今のスタイルができあがってきました。

HAYATO:素になったことで、お客さんとも近い距離にいられるようになったのかな。

●自然体でライブをやるようになったんですね。

柳:俺もその当時、極悪系のキャラクターということでカッコつけていたんですよ(笑)。でもその頃は、逆に自分の顔や体型にコンプレックスを持っていて。前の事務所を離れた2009年頃から徐々にシフトチェンジして、お客さんにイジられる前に自分で自分のことをイジろうと思うようになったんです。ステージに登場していきなり「どーも。エラちゃんです」とか言うと、場が一気にくだけて雰囲気が良くなったりするのも知った。そこから逆にコンプレックスを武器にしようと思いましたね。

●自分をネタにできるようになったと。

柳:そこで、キメキメのV系の枠からはちょっと外れたというか。自然体も出しつつ、普通のロックバンドとかに近いスタンスになったのかなと。

●そういった自分たちの進化や歩みを、今作を聴くことで辿れる面もあるのでは?

柳:基本的にリリース順に曲順をまとめているので、自分たちの思い出を辿る感じはありますね。

HAYATO:最初にM-1「ドレス -Vocal Re-REC.-」が入っていることで、余計にそう思うのかもしれない。前の事務所時代に出した最後の音源に入っていた曲がこれで、そこから自分たちだけでやるようになった1発目の音源用に作ったのがM-2「Sherry」だったりもして。

●改めて聴き直して、気付いたこともあった?

シューヘイ:まあ…下手くそだなと(笑)。でもあえてそれをパッケージングする意味もあるのかなって。

HAYATO:その時も下手なりにエネルギーがあったし、若い時だからできた曲もあったから。録り直せば音質も格段に良くなるんだろうけど、どうしても大人っぽさが出てしまうし、その時その時の思い出もあるのであえて録り直さなかったんです。「あの時はこういうことをやっていたんだな」とか「なぜこんなに難しいアレンジにしたんだろう」とか、自分で聴いていても面白いですね。

●そんなアルバムを経て10月にはニューシングル『Reversible Days』をリリースするわけですが、こちらはどういうイメージで作ったんですか?

シューヘイ:前作の『-mosaic-』も俺らの引き出しを存分に詰め込んだ作品だったんですけど、「ここはまだ出していなかったね」という部分を出した感じですね。ライブ感を重視した前作とは違って、今回は音源としてMoNoLithのポップな歌ものという面を提示したいなと。それで作ったのがM-1「Reversible Days」です。

●この曲の歌詞は恋愛的な内容ですよね?

柳:頭の中に1人の女の子を想像して、その子をいかに痛々しい描写にしてやろうかっていう感じで書きました。“耳裏、オソロイ刻んだ”というのはタトゥーのことで、そのへんもちょっと痛々しい描写になっていて。ピアスの穴だったら外せば塞がるんですけど、お揃いでタトゥーを刻んじゃうあたりの取り返しがつかない感じというか。女の子が聴いた時に「この描写、痛いな」という感じにしたかったんです。

●痛々しさを追求したと。歌い出しの“いつも通りの朝6時”って、どんなシチュエーションなんですか?

たかふみ:「その時間からって何なんだろう?」って、僕も考えちゃいました(笑)。

柳:そういうふうに色々と考えを巡らせてもらいたくて、あえて具体的な時間を書いてみたんです。『-mosaic-』からの流れなんですけど、“もっと中身を知りたくなるもの”というテーマがあって。聴いた時に「どんな内容の歌なんだろう?」と考えさせるような歌詞を書きたかった。あえてヒントとなるような単語を散りばめることによって明確にわかるところもあると思いますし、人それぞれで出す答えも変わってくるのかなと。

●M-2「デキソコナイ」の歌詞は重い感じがします。

柳:『-mosaic-』で自分の書きたいことが明確になって。今はコンプレックスだったり、自分という人間の弱さを表現したいんです。「“伝わる歌”って何なんだろう?」と考えた時に、説得力のある歌だなと思って。根暗でウジウジしているタイプの自分が説得力を出すには、弱さを歌うことが一番近いのかなと。だから今回は全曲を通して、“弱さ”が表現されていると思います。

●M-3「気まぐれな神様」は、どんなイメージで?

たかふみ:ウチのバンドって、“王道”があるようでなかったんですよ。『-mosaic-』の中身も全部、変化球ばっかりで。今回の制作にあたっては明るくてシングルっぽい曲というテーマがあったので、ここで王道を出しておくべきかなと思って書いてきた曲ですね。

柳:「Reversible Days」はこれまでMoNoLithを知らなかった人たちでも入りやすいものをということで作ったんですけど、「気まぐれな神様」は今までのファンに自信を持って届けられる曲という感じにしてみました。

●今までのファンからの期待にも応えつつ、新しい人たちにも聴いてもらえるような作品というか。

柳:それが今回のテーマでしたね。

●今後の方向性も見えているんでしょうか?

シューヘイ:そればっかりは、次を作ってみないとわからないのかなと。

柳:もしかしたら次はまた違うものになるかもしれないし、延長線上にあるものになるかもしれない。僕ら自身も次はどうなるのか楽しみなところではありますね。

Interview:IMAI

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