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nano.RIPE

過去を超え、未来を予感させる3人の今。その最高到達点は上昇し続けている

2011年10月に発表した1stフルアルバム『星の夜の脈の音の』からちょうど1年、nano.RIPEが2枚目のフルアルバム『プラスとマイナスのしくみ』をリリースする。前作リリース後にはメンバーチェンジも経て現在の3人体制となったが、そこでも全く失速することなく彼らは走り続けてきた。それどころか、この1年で進化の速度はさらに増しているような感覚さえある。新たなファンが大量に加わったことで爆発的な盛り上がりを見せるようになったライブも、その契機となったことは間違いない。自分自身を制約していた枠を取り払い、新たな挑戦にも取り組んだ今回のニューアルバム。充実した現在の状況を映し出しながら、未来を予感させるような作品の芯に見えるのは揺るぎない“nano.RIPE”の姿だ。

 

「今のnano.RIPEでありつつ、ここから先のnano.RIPEを予感させるような新しいことも取り入れている。1年前では絶対に作れなかったものだし、今だから作れるアルバムになったなと思います」

●前作の1stフルアルバム『星の夜の脈の音の』からちょうど1年での2ndフルアルバムリリースとなりますが、ブログを見ていると常に曲作りやレコーディングをしている感じで忙しそうでしたね。

きみコ:ずっとレコーディングしたり曲作りしていたので、振り返ってみると“あっという間だったな”という気がしますね。

●アルバムに向けてという感じじゃなく、常に曲作りはしているんでしょうか?

きみコ:そうですね。だから今回の収録曲も、このアルバムのために作ったというものはほとんどなくて。M-6「ナンバーゼロ」だけはアルバムのために最後に作ったんですけど、あとは常に作り貯めているストックの中から選んだ感じでした。最近はノブ(Ba.アベノブユキ)も曲を作り始めたので、今もまだストックは貯まり続けています(笑)。

●それだけストックがある中で、今回の収録曲を選んだ基準は何だったんですか?

きみコ:ストックの中から、純粋に良いと思う曲を選んでいった感じですね。その後で“こういう曲が足りないかな”ということで「ナンバーゼロ」を作ったり、“こういう感じがあってもいいかな”ということでM-12「かえりみち」を入れたりして。基本的には、ただただ良い曲を選ぶという感じでした。

●基本的にはその段階で一番良いと思うものを選びつつ、最後に全体のバランスで調整しているというか。

きみコ:M-7「よすが」はインディーズ時代の曲の再録なんですけど、他にもいくつか候補があった中から今作に足りない曲調という部分で選んだんです。季節的にも、ちょうど秋の曲というのもあって。そういう全体のバランスを考えて選んだ曲もあるけど、あとは本当に“今録りたい曲”という感じでした。

●最初から全体のコンセプトを考えて、作っているわけではない。

きみコ:そうなんですよね。でも全曲が揃ってから振り返ってみると、“いつも同じことを言っているな”と思うんです。自分の中ではいつも同じテーマを掲げてやってきているので、アルバムごとに違うコンセプトで作るという感じにnano.RIPEはならないんだろうなと。

●全体的なコンセプトがない中で、今作に『プラスとマイナスのしくみ』というタイトルを付けた意味とは?

きみコ:これは「ナンバーゼロ」が元になっているんです。この曲がリード曲として今作の中心にあるということで、アルバムタイトルも“ゼロ”に関係するものにしようとなって。そこから“プラスとマイナス”という言葉が出てきて、それに“しくみ”という言葉を付け加えることで色んな意味にも取ってもらえるようにしたんです。

●確かに『プラスとマイナスのしくみ』というタイトルだけ聴くと、どんな意味なのかと想像力を掻き立てられますよね。

きみコ:あたしがこのタイトルから一番伝えたいことというのは、実は「ナンバーゼロ」で歌っていることでもあって。よく言われる“3歩進んで2歩下がる”は結局“+ 1”になるわけだけど、あたしはたとえ3歩進んで3歩下がったとしてもその“0(ゼロ)”と最初から進まずにただそこで立ち止まっているだけの“0”は違うものだと思うんですよ。あと、進んでも戻ってもどこにいたとしても自分というものが軸になるゼロ地点としてあって、“0”のまま死ぬまで進んでいくというのがすごくカッコ良いなと思ったんです。

●それは先ほどの、nano.RIPEがいつも同じことを歌っているというのにも通じる気がします。

きみコ:そうなんです。nano.RIPEがいつも同じことを歌っているというのも、ずっと“0”のままという感じがして。進んでも戻っても、確固たる自分があればそれでいいんじゃないかということですね。

●かと言って、意識的に同じテーマを書いているわけではないんですよね?

きみコ:歌詞を書いている時は、“そこからブレちゃいけない”とか意識しているわけではないですね。M-4「アドバルーン」もインディーズ時代の曲なんですけど、改めて歌詞を読み返してみたら“やっぱり今と同じことを言っているな”と思って。そうやって客観的に見たことで、変わっていないんだなということをすごく感じました。

●でもそうやって今も変わらない気持ちで歌える歌詞だから再録しているというか。

きみコ:“今書いた歌詞”と言っても納得するくらい、今の自分が思っていることが書かれているんですよね。録り直したいと思っている候補曲がいくつかあった中でも、違和感がないものだったから。「よすが」に関しては今でもライブで結構やっている曲なので、より違和感はなかったですね。

●アレンジ面で少し変えたりもしているんですか?

きみコ:メンバーも当時とは変わっているので、今作ではアベが弾いているというだけでも印象は変わったんじゃないかな。「よすが」に関してはジュンがすごくこだわって、アレンジを結構変えていました。パッと聴いた印象は変わらないかもしれないけど、細かいところで色々と変えたりしています。録り直すからには昔の音源を持っている人たちが聴いても楽しんでもらえるような、今のnano.RIPEだからできるものにしようということはいつも心がけていますね。

●インディーズ時代の再録曲は除いて、先ほどの話だと今作に向けて新たに作ったのは「ナンバーゼロ」だけということ?

きみコ:そうですね。アルバムの収録曲を選んでいった時にどの曲も良いんですけど、今のnano.RIPEがアルバムの中心として打ち出したいと思うものをリード曲として入れたいなと思って。今回は今までで一番ロック寄りなnano.RIPEを見せたいということを話し合って、ジュンが書いてきた曲が「ナンバーゼロ」でした。

●アルバムのリード曲になるものを意識していた。

きみコ:もう、そこだけを狙って作ってきました(笑)。あたしも作ろうとはしたんですけど、ジュンが「自信がある」というので任せたらこの曲を持ってきたんです。実は今回のアルバムではシングル収録曲を除くと、あたしが新たに作った曲はM-2「ぼくなりのおとぎ話」と「かえりみち」だけで、あとは全部ジュンの曲なんですよね。

●それだけジュンくんの作曲クオリティが上がっているという証明でしょうね。きみコさんが作ったという「かえりみち」は、弾き語り的な楽曲ですが。

きみコ:この曲は元々、メンバーに弾き語りで軽く聴かせるためのデモとしてあって、本当はちゃんとアレンジしてから出そうと思っていたんです。でも1stフルアルバムのタイトル曲「星の夜の脈の音の」みたいな語りっぽい感じのものが1曲あったらいいねとなった時に、この曲をあたしがいつも自分の部屋で弾き語りをしている雰囲気で録ったらどうだろうかという話になって。そこであえて“作りかけ”っぽい感じを出すために一発録りで、今回は収録しました。次のアルバムでは、バンドアレンジしたフルバージョンを入れるかもしれないですね。

●こういう曲を収録したのには、ここ最近アコースティックライブをやるようになった影響もあるのかなと。

きみコ:今年に入ってからアコースティックライブをやり始めて、自分たちでもアコースティックの良さに気付けたというのはありますね。1年前だったら、(アコースティックの曲をアルバムに入れるというのは)ありえないことだったと思います(笑)。

●そういうものも今は世に出せるというところに、この1年での進化を感じます。

きみコ:アコースティックもそうなんですけど、シングルにもなったM-10「リアルワールド」で“nano.RIPEはここからここまでじゃないといけない”と思っていた枠の外側にあるような曲をジュンが持ってきたというのも大きくて。

●「リアルワールド」は今までのnano.RIPEでは考えられないくらい、突き抜けてアッパーな曲ですよね。

きみコ:そういう曲がリスナーにも受け入れてもらえたので、“自分たちで枠を決めつけてしまっていたのはつまらないことだったんだな”と思ったりもして。だから今作にはM-11「サクゴエ」やM-13「グッバイ」みたいな、今までは“nano.RIPEっぽくない”という理由でやらなかったような曲も入れられたんだと思います。

●その2曲は特に、今までにない感じを象徴するものというか。

きみコ:「サクゴエ」は今回のレコーディングが始まった後に、アルバムとは別の目的でやっていたプリプロの中で出てきた曲なんです。実はもっと先の作品に向けて作っていた曲なんですけど、メンバーもスタッフもすごく気に入ったので急遽収録することになりました。そのあたりは勢いというか、今やりたいことをすぐに取り込もうという姿勢でやれたんじゃないかな。

●この曲では2ビートを取り入れていますが。

きみコ:2ビートの曲って、ライブでお客さんが盛り上がりやすい感じなんですよね。nano.RIPEのライブも以前はじっと観ている人が多かったんですけど、最近のツアーではダイブするお客さんもいたりとかして(笑)。

●最近のライブの盛り上がりは確かにすごい(笑)。

きみコ:でも“もっと盛り上がりたい!”と思っている人もいるだろうから、こういう曲があったら満足してもらえるんじゃないかなと思って。今からライブでやるのが楽しみな曲ですね。

●M-13「グッバイ」もイントロの手拍子からすごくライブが盛り上がりそうな曲ですよね。

きみコ:これは“ライブでみんながただただハッピーになれる曲があってもいいんじゃないか”ということで、ジュンが作ってきて。「歌詞もあまり暗いことは書かないでほしい」と言っていたので、前向きな“グッバイ”になっているんですよ。ライブではギターを置いて、あたしはタンバリンとか叩きながら歌っちゃおうかなと(笑)。

●ライブで盛り上がりそうな「サクゴエ」とこの曲の間に、落ち着いた感じの「かえりみち」を挟んでいる並びが面白いと思いました。

きみコ:シングル曲が多かったのもあって、今回の曲順に関してはすごく悩んだんですよ。「かえりみち」も当初考えていた曲順からは、変わっていて。ライブをイメージした時に、「サクゴエ」で1回ガッと盛り上げた後に「かえりみち」でしっとりさせてから、「グッバイ」とM-14「架空線」でフワッと広がるような流れを作りたいと思ったんです。

●確かに「架空線」はラストらしい、スケール感のある曲ですよね。

きみコ:これはジュンが曲を持ってきた時に、歌詞を今すぐ乗せたいと思うくらいのものだったんです。ジュンもすごく自信があったみたいで、ライブで関西へ移動中の車内で「新曲ができたんだけど、聴いてくれない?」と言ってきて。そこで聴いてみたら“これはヤバい!”と思ったので、その場でパソコンを開いて歌詞を書き始めて。関西へ着く頃にはもう書き終えていましたね。

●そんなすぐに書けたんですね。

きみコ:本当にスルスルと歌詞が出てきたので、過去最速で書けました。やっぱりライブに向かう途中だったのもあってか、ステージから見た景色やライブで伝えたいことが歌詞にも出ていて。あたしが歌う理由をすごく素直に書いたので、これはもう絶対にラストだというのは決めていましたね。

●ちなみに「架空線」って、電線のことなんですよね…。

きみコ:あたしも初めて見かけた時にきれいな言葉だと思ったので調べてみたら、“電線”っていう意味で(笑)。でもこの曲に関してはステージと客席だったり、ぼくらの曲を聴いてくれている人たちとnano.RIPEとの間に、目には見えないけど何かつながりがあってほしいなという想いから“架空の線”という意味で付けたんですよ。だから、“電線”という意味ではないです(笑)。

●最初は造語かと思いました(笑)。そういえば過去の作品では造語的なタイトルが多かったですが、今作ではほとんどないですよね。

きみコ:インディーズ時代は“そういう言葉じゃなきゃいけない”みたいなのが自分の中であったんですけど、最近はそんなにヒネる必要もないのかなと思っていて。M-9「ページの中で」は仮タイトルとして付けていたもので、あたしの中ではこの曲は造語っぽいタイトルがいいかなと思っていたんですよ。でもメンバーが「ページの中で」が良いと言ってくれたので、じゃあそのままにしようということになりました。

●歌詞の部分でも、自分の中にある枠が取れてきた?

きみコ:“きみコはこうでなきゃいけない”みたいなものが、自分の中にずっとあったんですよ。でも前回のツアー終盤に、ステージ上で今までかけていたリミッターが1つ外れるような感覚があって。“こうでなきゃいけない”というところが取れて、“もっと自由にやって良かったんだな”と思うようになったというのはあるかな。

●“らしさ”を意識しなくても、自然にやれば今はnano.RIPEらしいものになる。

きみコ:この1年間ではメンバーチェンジもあったりして色んなことがあったんですけど、「3人になってもnano.RIPEはnano.RIPEだ」と言って好きでいてくれる人たちがいることにすごく自信をもらったというか。“これでいいんだな”ということはすごく感じました。

●時間とともに必然的に変わっていく部分はあるけど、それを今は受け入れられるようになったというか。

きみコ:頭が柔らかくなったという感じはすごくありますね。

●それによるものなのか、メンバー間の雰囲気も今までより柔らかい感じがします。

きみコ:それはすごくありますね。サポートドラムを入れるようになってから、その方との距離を縮める意味もあって、リハーサル後にみんなで食事に行ったりすることが増えたんです。以前はそういうことがほとんどなかったんですけど、最近はよく行くようになって。ツアー先でオフの日も自然とみんなでごはんを食べに行ったりとか、音を出している以外の時間で話をすることがすごく増えましたね。nano.RIPEとしては、過去最高にメンバーの仲が良いかもしれないです(笑)。

●それが作品の雰囲気にも出ている気がします。

きみコ:音の面でも、今まで以上に話し合うようになって。そういうことがキッカケになって、今まで言えなかったことが言えるようになったのかなって。…あたしはずっと言いたいことを言っているから、よくわからないんですけど(笑)。

●きみコさんはあだ名の通り、“大王”だと(笑)。「ページの中で」ではイントロがノブくんのベースで始まっていたりと、メンバーの個性もより前面に出ている気がします。

きみコ:ジュンが曲を持ってきた時点で「この曲はベースから始まってほしい」と言っていたので、フレーズとかは全部ノブに任せたんです。最初は苦戦していたみたいだけど、「どうせならバンドキッズがコピーしたくなるくらいのフレーズを弾いてやる」と頑張った結果、このフレーズが出てきて。こういう部分も新しい挑戦でしたね。

●新たな挑戦もしているし、前作を超えるアルバムになったという自信があるんじゃないですか?

きみコ:前作はインディーズ時代の代表曲を再録したりもしていたので、ベストアルバム的なイメージがあって。それを超えるのはなかなか難しいんじゃないかと、今作を作る前は思っていたんですよ。でも前作はそこまでのnano.RIPEの集大成的な作品であって、今回のアルバムにはここ1年くらいのnano.RIPEをギュッと詰め込んでいるんです。さらに今のnano.RIPEでありつつ、ここから先のnano.RIPEを予感させるような新しいことも取り入れている。1年前では絶対に作れなかったものだし、今だから作れるアルバムになったなと思います。

Interview:IMAI

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