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ナスカ・カー feat ホカダナオミ 仕掛けられた膨大な音の罠が中毒性の底なし沼へと導く。

ナスカ・カー feat ホカダナオミ 仕掛けられた膨大な音の罠が中毒性の底なし沼へと導く。


ナスカ・カーが“構想20年、製作3年”の末に、元マドモアゼル・ショートヘアのホカダナオミをフィーチャーした新作『We Are Under Arrest』を完成させた。2016年に泯比沙子+ナスカ・カー名義でリリースした前作のアルバム『Love&War Now!』は関東在住のメンバーと共に製作したのとは対照的に、関西在住のメンバーのみで作り上げられた今作。いつもながらのジャンル縦断ぶりはもちろん、あちらこちらに異常なまでに詰め込まれた情報量は、聴けば聴くほどに新たな発見と中毒性をもたらすことだろう。
 
 
 


「50歳を超えて、なお進化しているとは思います。やりたいことはまだまだあるし、この歳になってもやれることはいっぱいあるから。色々とやり方はあるから、やりたいようにやってみたら良いんじゃないかという感じですね」


 
 
 
●今回のアルバム『We Are Under Arrest』は“構想20年、製作3年”ということですが…。
 
中屋:20年前から話はあって。ナスカ・カーが東京でライブをやることになった時に、なぜか僕らの車にVo./Cho.ホカダ(ナオミ)さんが同乗していたのが最初の出会いでしたね。新宿LIQUIDROOMであったトランソニック・レコードのイベント(※1998年8月21日)やったんですけど、そこにちょうどイノヤマランド(※ヒカシューの元メンバーである井上誠と山下康が結成したユニット。日本のアンビエントの先駆者的存在)が出ていたんですよ。その日のライブに感銘を受けて、自分の中でアンビエントがやりたいという欲求が湧いてきたので、帰り道でホカダさんに“一緒に何かやりませんか”という話をしたんです。
 
●そこが始まりだったと。
 
中屋:そこから準備をして。まず1999年にLD&Kから出たコンピレーション盤(『new electron』)に参加したのが、初共演と言えるかもしれない。とは言っても、ホカダさんにちょっと歌ってもらったものと、自分が宅録したトラックとスタジオで録音したトラックを無理やり組み合わせて1曲にした感じやったんですけどね。
 
●当時からライブを一緒にやっていたりもしたんでしょうか?
 
中屋:ちょこちょこ、やってはいましたね。ウチのバンドに参加して歌ってもらったこともあって。でもちょうどナスカ・カーが2ndアルバム『電子水母』(1999年)を出して上り調子になっていた時やったし、グラインドオーケストラも同時にやっていたのもあって自分のことで忙しくて、止まっていたんですよ。
 
●そこからしばらくは一緒に活動していなかった?
 
中屋:そうですね。でもそのまた10年後くらい(※2006年)に他のメンバーが抜けて、ナスカ・カーが自分1人だけになったことがあって。その時に大阪でメンバーを揃えて、ホカダさんも誘ってライブをやったんです。当時は“マッシヴ・アタックの2ndアルバム(『Protection』)みたいな感じをもっと突き詰めた形でやりたい”と言っていましたね。
 
●当時はそういう方向性で考えていたんですね。
 
中屋:それでライブを1回だけやったんですけど、色々と問題があってイライラしていたので自分が暴れすぎて失敗して…。ライブ中にサングラスを落として踏んで割ってしまって、暗〜い気持ちで帰るという…。
 
●そんな出来事が(笑)。2013年にリリースした4thアルバム『最新録音盤』には、ホカダさんもゲスト参加されていたわけですが。
 
中屋:メンバーの女子率が高くなって、ナスカ・カーがギャルバン化していた時代ですね。その後にまたホカダさんと一緒にやろうとなったのが、2016年末で。
 
●2016年8月には泯比沙子+ナスカ・カー名義でアルバム『Love&War Now!』も出していますよね。
 
中屋:それを出してから、また俺のテンションが落ちていって。なぜかホカダさんと組んで何かやろうという時は、だいたい俺のテンションがだだ下がりで、運勢も下降気味の時期なんですよ。その時期が終わるとまた上がっていくんですけど、そうなると(忙しくなってホカダさんとの活動が)やれなくなるという…。
 
●その繰り返しで、実現まで20年かかったと…。
 
中屋:でもメンバーも含めて歳を取ってきて、今後いつまで音楽をやっていられるか正直わからない状況に直面して。“今度という今度は本当に作ろう”ということで、製作開始したのが3年前なんです。そしてホカダさんをフィーチャーするなら、(彼女がやっていた)マドモアゼル・ショートヘアをリリースしたギューンカセットから出すのが筋だろうということで、社長の須原(敬三)くんにリリースをお願いして決まりました。
 
●須原さんは今作にギターでも参加していますよね。
 
中屋:M-3「イントロダクション〜ハートに火をつけて」では今作がギューンカセットから出るということで、“ギューンっていうギターの音を入れて”と言って弾いてもらいました(笑)。
 
●ダジャレじゃないですか(笑)。
 
中屋:でもこの曲は、前に“マッシヴ・アタックの2ndアルバムみたいな感じをやりたい”と言っていたところにつながっていて。そのアルバムのラストに「ハートに火をつけて」(ザ・ドアーズ)のカバーが入っているんですよ。
 
●当初にやろうとしていたことをようやく具現化できたと。その次のM-4「ハローアイ・ラブ・ユー」も原曲は、ザ・ドアーズですよね。
 
中屋:でもこれはミッシング・パーソンズの(カバー・)バージョンなんですよ。
 
●ジム・モリスンはあんなにかわいく歌っていないですからね(笑)。ストロベリー・スウィッチブレイドをカバーしたM-16「ふたりのイエスタデイ」も、近い雰囲気を感じました。
 
中屋:これはマドモアゼル・ショートヘアの代表曲として捉えられている1曲で。そのカバーに、落とし前をつけてみた感じですね。アレンジはスクリッティ・ポリッティの「ザ・スウィーテスト・ガール」のシングル・バージョンを意識してみました。
 
●カバー曲でもハートのM-13「バラクーダ」は、また歌声の印象が違いますね。
 
中屋:ホカダさんは色んな声が出せるので、ハードロックも歌ってもらおうと思って。この曲がヒットしたのは俺がまだ高校に入ったくらいの時期で、ハードロックがほぼ全滅していた時代やったんです。キッスやエアロスミスはいたけれど、フュージョンやAORが全盛の時代で…。ハートはそんな時代に活躍していた女性ボーカルのハードロックバンドで、当時から好きやったんですよね。これとM-8「スイート・ドリームス」は、特にホカダさんの声に合うやろうなと思って選びました。
 
●「スイート・ドリームス」は、ユーリズミックスのカバーですよね。M-12「夢見るシャンソン人形」もフランス・ギャルのカバーですが、他は全てオリジナル曲でしょうか?
 
中屋:他は全部、オリジナル曲です。でも今回は1曲だけ、自分が作っていない曲も入っていて。M-1「神と民」はBa.821くんが“自分にも曲を作らせて欲しい”と言ってきたので、俺は一切口出しせずにお任せしました。それもあって全体を並べてみた時にこの曲だけ他とはちょっと違う感じがしたので、1曲目に持ってきたんですよ。
 
●そういう理由で1曲目になったと。ちなみにM-2「空へ」は、タイトルから勝手にカルメン・マキ&OZのカバーかと思っていました。
 
中屋:冒頭の部分だけは、意識していますね。
 
●あ、やっぱり最初の“空へ”と言っている部分は意識していたんですね。でも曲が始まったら、全然違うという…。
 
中屋:“あれ?”ってなると思います(笑)。あそこだけは意識していたので、“劇場で録ったような声にして欲しい”とお願いしました。
 
●細かい部分にも、そういったオマージュが潜まされている。
 
中屋:全部ありますよ。何かイメージがあったほうがレコーディングの時に、他のメンバーに伝えやすいというのもあるから。
 
●M-15「平成幻燈小路」は『怪奇大作戦・セカンドファイル』(NHK・円谷プロダクション製作のテレビドラマ)の“第2話 昭和幻燈小路”のタイトルが元ネタでしょうか?
 
中屋:そうです。タイトルは、後から付けたんですけどね。いつも曲を作り終えた後に“こんな感じかな”というので、さらさらっとタイトルを付けていて。
 
●最初からイメージして曲を作っているわけではない?
 
中屋:それはないですね。たとえばM-5「ありぢごく」も、最初からこのタイトルだったわけではなくて。須原くんがギターを弾いているから、「ありぢごく」と付けたかっただけなんです(笑)。
 
●須原さんが昔やっていたバンドの名前ですよね。これとM-6「まあ、いいんじゃないっすか。」を歌っているのは、中屋さんですか?
 
中屋:俺です。
 
●「まあ、いいんじゃないっすか。」の“ええか、ええのんか?”というのは、笑福亭鶴光師匠のオマージュ?
 
中屋:歌詞の元ネタはそこですね。曲はクエスチョンマーク&ザ・ミステリアンズの「96粒の涙」のイントロをちょっと変えたものを延々と繰り返している感じになっていて。だから“どこかで聞いたことがあるよな…”ってなると思うんだけど、ウチの曲は大体そういう感じやから(笑)。
 
●M-9「或る夜の出来事」もどこかで聞いたことがあるような…。
 
中屋:これはクインシー・ジョーンズっぽいと言われますね。でも自分では全く意識していなくて。元々はエアポートレゲエ(※空港でかかってそうなレゲエ)の曲を集めた架空のコンピレーション盤を配信リリースするというネットの企画用に作った曲なんです。そこからどんどん改作を繰り返していって、最終的にこうなったという。原曲は「クロスオーバー11PM」というタイトルで、俺のSoundCloudにアップされています。夜のイメージだけで作った曲ですね。
 
●「或る夜の出来事」というタイトルは、『探偵物語』(※松田優作主演のテレビドラマ)が元ネタでしょうか?
 
中屋:そうそう。これも曲ができてから、タイトルを付けましたね。
 
●この曲はストーリー性を感じさせる内容になっていますが。
 
中屋:これは綾ちゃん(Cho./Narration 田嶋綾)に書いてもらったものなので、たぶん彼女の中では何かあったんじゃないかな。自分としてはノータッチなので、あとは聴いてくれた人たちに投げたいと思っています。逆に俺の書いた歌詞なんかは、意味がないのがまるわかりですからね(笑)。
 
●自分で歌詞を書いているものに関しては、深い意味がない?
 
中屋:全く意味がないです(笑)。自分の中にないものは書けないから。前々作(『最新録音盤』)は完璧に近いものができたけど、自分の作った曲の中で歌詞がダメすぎるものがあったのは気になっていて。結局、その曲は(後から)完全に歌詞やタイトルが変わっちゃったんですよ。
 
●その時の反省を今作に活かしたわけですね。
 
中屋:やっぱり自分でやっているのに覚えられないような歌詞はおかしいわけで。自分の中にないような幻想的な部分とか詩的な部分は“本当に要るのか?”と思ったんです。それ以降、歌詞に関しては自分の中にないものは歌わないようにしています。
 
●自分の中にないものを表現しようとしても、不自然になるというか。
 
中屋:それは演奏に関しても同じで。レコーディングでは自分を全てさらけ出す形になるから、その時だけ良くなるということはありえないんですよ。テイクを重ねてもどんどん悪くなるだけで。“やればできる”じゃなくて、自分のそのまましか出ないんです。だから、自分の中では“7割できれば上出来”みたいな気持ちで録っているところがありますね。
 
●そういう意識でレコーディングに臨んでいると。
 
中屋:あと、レコーディングしていた当時、メンバーに“心なんか込めんでいいから。重いし。まずは形を決めたとおりにちゃんとして”とよく言っていて。ウチの場合は基本的に、俺が家で全部作ってきているんですよ。ギターまで自分で弾いたものもあって、それを元にして“これを超えるものを作ってきて下さい”と言ってメンバーに渡しているんです。そこから各自が持ち寄ったものを、スタジオで組み合わせていく作業になるんですよね。
 
●メンバーには相当プレッシャーがかかりそうな気も…。
 
中屋:基本的に俺は口出しが小姑なみに小うるさいので、最近はそこまで言わないようにしていて。“ここはもう任せるから、良いようにして下さい”という感じなんですよね。トンチンカンなことをやったら言いますけど、単純に(自分が渡したものを)超えるものができれば良いだけですからね。“俺でもできたんやからできるやろう?”っていう。
 
●とはいえ、結成からもう25年経つ中で中屋さん自身のクオリティも当然上がっているわけですよね…?
 
中屋:やっぱり2ndや3rd(アルバム『Nasca car - Maximum Speed』/2002年)の頃に比べると、作曲のクオリティはどんどん上がってきている気はしますね。それまでは理屈もへったくれもわからないまま、“大体このへんやろう?”みたいな感じで弾いていたのが、今ではメンバーに“音程が違っているで”みたいなことも言うようになって。50歳を超えて、なお進化しているとは思います。
 
●今作は構想20年だったわけですが、イメージしていたものをちゃんと形にできた感覚はある?
 
中屋:イメージどおりですね。ホカダさんの歌を活かしつつ、メンバー全員の意見も取り入れて、作れたという気がしていて。今回は良くできたほうやと思います。
 
●もう次の作品のことも考えてはいるんでしょうか?
 
中屋:考えています。やりたいことはまだまだあるし、この歳になってもやれることはいっぱいあるから。たとえば全部スタジオに入らなくても、レコーディングして作品を作ることはできるわけで。色々とやり方はあるから、やりたいようにやってみたら良いんじゃないかという感じですね。
 
Interview:IMAI

Member
中屋浩市(Vo./Prog./Electronics)
須原敬三(G.)
821(Ba.)
Emmy Kunocovic(Dr.)
ホカダナオミ(Vo./Cho.)
Guest:田嶋綾(Cho./Narration)
吉田光寛(Dr.※M-13)

リリース情報
New Album
『We Are Under Arrest』

ギューンカセット
CD95-78
¥2,500+税
2019/4/24 Release

ライブ情報
CD発売記念ライブ
11/23(土) 秋葉原CLUB GOODMAN

Event Info.
4/25(木) なんばベアーズ

more info→
https://nascacar.wixsite.com/nascacar