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Nothing’s Carved In Stone Vo./G.村松拓
続・たっきゅんのキングコングニー Vol.28:“By Your Side Tour”@Zepp Tokyo直前にたっきゅんの年末年始を訊いたよの巻

続・たっきゅんのキングコングニー Vol.28:“By Your Side Tour”@Zepp Tokyo直前にたっきゅんの年末年始を訊いたよの巻


 
 
10枚目のアルバム『By Your Side』のリリースツアー“By Your Side Tour”のワンマンシリーズがいよいよ始まったNothing's Carved In Stone。同バンドのVo./G.村松 拓を追い続けてきた当連載『続・たっきゅんのキングコングニー』は、もちろん2020年もずっぽり密着(癒着)して彼の成長と進化を追い続けるつもりである。そんなわけで新年号となる今月の連載は、たっきゅんが年末年始をどう過ごしたか、2020年を迎えた現在はどのような心境なのかを解明すべく、“By Your Side Tour”のZepp Tokyo公演前日にインタビューを敢行した。
 
 
 
 
 
 
拓さんあけましておめでとうございます!
 
 

あけましておめでとうございます!
 
 

早速ですが、昨年末はかなりライブが多かったですよね?
 
 

いや〜、結構多かったですね。ずーっと忙しかった。でもありがたかったです。
 
 

12月だけで何本ライブやったんですか?
 
 

えっと、弾き語りを入れて…13本(笑)。
 
 

えー! なかなかですね。
 
 

なかなかですね(笑)。
 
 

2019年はNothing's Carved In Stoneはもちろんのこと、弾き語りも積極的に活動していて、12月はその区切りみたいなライブが集中したんでしょうね。
 
 

そうですね。でも、忙しかったけど前よりも上手く歌えるようになったなという実感があって。
 
 

お。どういうことですか?
 
 

10月くらいからライブの本数が多くて、喉への負担が増えたんですよね。そうすると…俺は俺なりに自分の喉との付き合い方がわかっているんですけど…喉の使い方とか歌い方を工夫したんです。その結果、またちょっと歌が上手く歌えるようになったなと。
 
 

その“工夫”というのは、声の出し方ですか?
 
 

声の出し方、歌い方。あとは口の使い方や舌の使い方とか。どっちかと言うと、俺は「音楽を追求してきた」というより「歌い方を追求してきた」というタイプなんですよ。
 
 

それはなんとなくわかる気がする。
 
 

普通はボイトレに行って教えてもらうようなことを、俺はずーっと独自に勉強してきたんです。例えばですけど…「かきくけこ」。
 
 

かきくけこ?
 
 

喉の奥を使う「かきくけこ」は音程が無いんです。それに音程を付けた「かきくけこ」というのと、あとは濁音を入れた「がぎぐげご」に近い感じで鼻の奥で鳴らす「かきくけこ」。この3種類あるんですよ(※註:文字だとわかりませんが、声の鳴りが全然違います)。
 
 

すごい!
 
 

調子がいいときは喉の奥ばかり使ってていいんですけど、その歌い方は息を多く使うから喉にあまりよくないんです。要はウィスパーに近い感じ。そういう声の出し方を使い分けたりして。
 
 

えー! それを同じ歌で使い分けたりするんですか?
 
 

そうなんです。そういうことをちょっと最近追求していなかったなと思って、昨年後半に改めて色々と工夫して。それが改めて勉強になって、すごくよかった。
 
 

「独自に勉強してきた」とおっしゃいましたけど、自分で感触を色々と確かめながらやるんですか?
 
 

そうです。もちろん最初は「その“かきくけこ”って音程ないよね」みたいに指摘されて、そこで気づいたのがきっかけになっていたりするんですよ。
 
 

ある程度知識を入れて、後は自分で工夫する。
 
 

そうそう。お風呂場とか朝起きてすぐとか。“なんかしゃべり辛いな?”と感じるときは、だいたいウィスパーを多めに使ってしゃべっちゃってるとか。
 
 

すげー! 目からうろこー!
 
 

あるいは舌が硬くなっているとか。俺はそういうのを研究しながら生きてきたんです。やっぱりプロだよね。俺すごくない?
 
 

「すごい」は僕が言うので、自分で言わなくていいと思います。
 
 

ワハハハハ(笑)。
 
 

日本語と英語ではまた違いますよね?
 
 

そうですね。だから英語の口になっていると、日本語の発音がおかしくなったりする。でも歌の場合はそれがよかったりするじゃないですか。だからそこはあまり気にしてないんです。俺は英語を習得することにも時間をかけたので、そういうことも影響しているのかもしれないですね。研究癖があるんです。
 
 

おもしろい話。
 
 

だから俺、別にボイトレに行かなくてもいいと思っていて。
 
 

それはなぜですか?
 
 

ボイトレに行かなくても、歌が好きだったら上手くなるから。
 
 

好きこそものの上手なれ。
 
 

そうそう。極論かもしれないですけど、歌はいちばん簡単なんですよ。自分の身体だから。
 
 

そうか。
 
 

あと、俺はスポーツトレーナーの勉強をしたから、そういう考え方になったのかもしれないです。身体の使い方を学んだ。
 
 

身体の仕組みを理解しているから。
 
 

うん。その経験でいちばん大きかったなと思うのは、トレーニングの仕方を学んだこと。鍛え方とかストレッチとか。
 
 

うんうん。
 
 

トレーニングの仕方って…ものすごく簡単に言うと…「意識すること」なんです。“ここの筋肉を使ってるんですよ”と自分自身に意識させるのが重要で。
 
 

あっ! そういえば以前、なぜか拓さんの前で腹筋してるとき、腹をボコボコに殴られた!
 
 

そうそう(笑)。でも本当にあれが重要なんです。そういうことを2年くらいかけて勉強したから、自分の身体の感じ方やフィーリングを察知する力がついてるんですよね。だからリハーサルで歌いながら“いまは肩に力が入ってたな”とか、“今日は舌が硬くなってて上にせり上がってきてるな”とか考えてる。
 
 

へぇ〜。
 
 

他の人から見たら「こいつずーっと鏡で自分の顔を見ながら歌ってるな」と思われるかもしれないけど、俺はずっと自分の口の空洞を見ながら歌ってるんです。
 
 

どういう形で口が動いているかとか?
 
 

そう。歌が上手い人って、舌が落ちてて喉がキュッと開いてるんですよ。だから歌っているときの口の中が暗い。赤じゃなくて黒。なので俺は、自分の口の空洞がちゃんと暗くなっているか、鏡でじーっと見ながら歌っているんです。
 
 

へぇ〜。
 
 

そういうことを自分で習得して、研究に研究を重ねてみんな歌が上手くなる。だからボイトレに行かなくても自分でできる。人生の半分以上の期間、俺は歌が好きで歌ってるから。
 
 

例えば朝起きてなぜか肩が痛いという日があったとして、僕はなぜ肩が痛いのかがわからないんですよね。
 
 

あ、俺はそれわかります。骨が折れてるかどうかとかも。「これたぶん肋骨折れてるな」とか(笑)。わかるから安心ですよね、「これはちょっとヒビが入ってる程度だからまあいいか」みたいな。
 
 

豪快か!
 
 

フフフ(笑)。
 
 

昨年の後半は、その追求を改めてしたから更に発見があったと。
 
 

うん。それがよかったですね。
 
 

「歌が上手い」ということについて、目標としているところはあるんですか?
 
 

いや、俺には自分の歌があるじゃないですか。どうやってもその歌になるから、そこからちょっと逸脱する場合って、やっぱり他人の真似なんですよね。
 
 

なるほど。
 
 

歌の幅を拡げるために他人の真似をすることももちろんあるんです。例えば料理しながら黒人の歌の真似をしてみたりとか。俺、ちゃんと歌ったら実はあまりしゃがれないタイプなんですよ。しゃがれの度合いが違うっていうか。でも喉歌いにするとめっちゃしゃがれた歌い方になる。だから弾き語りのときは喉歌いにして歌ったりするんです。
 
 

「Stand By Me」とか?
 
 

そうそう。普段から他人の歌い方を真似して研究することで、歌に幅を持たせる。でも歌の完成形はわかんないですね。どこまでいったら完成なのかもわからないし、これからもずっとやるんだと思う。
 
 

その追求は、一般的な「歌が上手くなる」じゃなくて、「Nothing’s Carved In Stoneの歌が上手くなる」とか「村松拓の歌を追求する」ということなんでしょうね。誰しもに当てはまる話ではないというか。
 
 

そうそう。歌が上手い/下手という話は難しいですよね。でもよく言うことですけど、ギターが上手い人やドラムアレンジが上手い人…要するに音楽的なIQが高い人はいっぱい居るんですよ。でもオリジナリティがある人っていうのはそんなに居ないと思うんです。
 
 

うんうん。
 
 

「上手い」というより「いい歌」というニュアンスかな。「いい歌」っていうのは“上手さ”じゃないんです。ど真ん中にすっと入ってくるような歌があるっていうか。そういう歌を歌えるようになりたいなと思います。
 
 

例えば美空ひばりとか。
 
 

ああ〜、美空ひばりはすごいですよね。自分の声を知っていると思う。音程が合っていて、ビブラートが上手くて、息が長く続いて、発音がいい…というある程度のラインはもちろんクリアしないといけないと思うんです。じゃないと音楽にならないから。
 
 

はい。
 
 

それもあると思うけど、だからといって絶対音感がある=上手いとはならないと思いますね。息遣いとか、リズム感とか、その人が持っているものがあって、それがちゃんと個性として歌に出ているかどうかがいちばん大事ですよね。量産型は必要ない。
 
 

興味深い話ですね。
 
 

なにをするにしてもそうだと思うんです。インタビューもきっとそうで、最初はとっつき難い人の方がインタビューしてもらったことが記憶に残る。山中さんとか「なにこの気持ち悪いおじさん」と思ってたもん。
 
 

気持ち悪いって…。
 
 

それくらい癖がある人の方が記憶に残るし、記事もおもしろい。なにをするにしても、そういう個性がある方が俺は好きですね。俺の周りにはそういう癖が強い人たちばかり居る。すっげぇ扱いづらいけど(笑)。なんでかな? 俺は超ノーマルなのに。
 
 

は?
 
 

俺の周りに居る変態は際立った変態だけど、俺は本当に普通。
 
 

そこはちょっと反論しますけど、拓さんは常識を理解しているし、周りが見えているという意味では普通に見えるかもしれないけど、根っこにはドロドロでトゲトゲしててめちゃくちゃ硬い“塊”がある。その“塊”は酔っ払っておしっこしたときに見せるくらいで、普段は見せていないですけど。
 
 

フハハハハハハハ(笑)。そういえばさ、昨日O-Eastで荒井さんやホリエさんが出るイベントがあって(※Okayu Biyori / 出演:the band apart 荒井岳史、cinema staff 飯田瑞規、アルカラ 稲村太佑、佐藤千亜妃、片平里菜、ストレイテナー ホリエアツシ)、Keishi(Keishi Tanaka)と2人で観に行ったんです。
 
 

はい。
 
 

それで打ち上げに出て、そのあとKeishiに誘われてCHABEさん(松田"CHABE"岳二)がDJやっているクラブで楽しく飲んだんですよ。で、どうやって家に帰ったかは全然覚えてないんだけど、朝起きたら家ですごく気持ちよく布団にくるまっていて。
 
 

うんうん。
 
 

俺、引っ越したばかりだからめちゃくちゃ部屋を綺麗に使ってるんですけど、部屋は全然乱れてなくて安心して。と思ったら、脱衣所の床がびっちょびちょになってて。
 
 

あ。
 
 

心なしかちょっと黄色いし…。俺、立ちションしてました(笑)。
 
 

ワハハハハハ(笑)。タイでも、僕の部屋でいつの間にか2人で寝てて、朝起きたら拓さんが寝ていたベッドの横の床がびっちょびちょでしたよね(笑)。
 
 

20代前半の頃にABSTRACT MASHの雄太(Dr.榊巻雄太)の実家でよく年越しパーティーをやってたんですけど、そのときにも雄太の部屋で立ちションしたことあるし(笑)、俺の実家で水浸しの中で目覚めたこともあるし(笑)。俺、やばくない?
 
 

やばいですね(笑)。そういう意味では、すごく村松拓らしく新年を迎えたんですね。
 
 

はい。2020年も突っ走ります。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
当連載へのメッセージや感想はyamanaka@hirax.co.jpまで!!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
『続・たっきゅんのキングコングニー』まとめページ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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