音楽メディア・フリーマガジン

NESS

自由奔放な奇才4人のアイデアが交錯して生まれる音。その行く先は誰にも予測できない…

187_NESS三浦俊一(G.:ケラ&ザ・シンセサイザーズ)、戸田宏武(Syn.:FLOPPY/新宿ゲバルト)、内田雄一郎(Ba.:筋肉少女帯)、河塚篤史(Dr.)という奇才4人が集まり結成されたバンド、NESSが2ndアルバム『NESS 2』をリリースした。ポストロック+プログレ+エレクトロという基本的な音楽性はそのままに、様々なアイデアが交錯して行き着く先が見えないようなスリリングさはより増している。音楽だけでなく日常からフリーダムなオーバーサーティ(〜アラフィフ)4人の奔放なインタビューは、その音楽性を体現しているのかもしれない…?

 

 「あらゆる意味でフリーダムな制作環境だから、なおさら完成形が見えにくいんですよ。でもそれによって、完成したものに新鮮さを覚える」

●前作(1stアルバム『NESS』)のインタビューでは、結成後はまずメンバー間の人間関係を作るところからのスタートだったと話されていましたね。そこから1年半ぶりの新作ということで、関係性はさらに深まったんでしょうか?

戸田:それはもう、ダダ深まりですよ。

三浦:僕以外のメンバーはマンガの貸し借りとかをしています。

●ドラクエ(『ドラゴンクエストX』)も一緒にやられているとか。

内田:オンライン上では交流していますね。先輩(戸田)と一緒にボスを倒したり…。

三浦:あと、ゴールドを頂いたりしています(笑)。

●オンライン上での交流が中心だと。

内田:この間、ミューちゃん(三浦)が「戸田が捕まらないんだよ」って言っていたんだけど、ドラクエに入ったらすぐ見つかったっていう(笑)。

三浦:5秒で捕まりました(笑)。バンド活動の中心がマンガの貸し借りとゲームっていう…。

●会話の内容だけだと、まるで子どもみたいな(笑)。そのくらい無邪気に音楽とも向き合っていたと…。

三浦:音楽とは向き合っていないかもしれないですけど、ゲームには向き合っていましたね(笑)。でも、ゲームってバカにできないなと思いました。内田と戸田の距離感がドラクエを通じて、ものすごく縮まっていて。

内田:かといって、ドラクエのチャットで色んな話をしているわけじゃないんですよ。オンライン上でも普段通りに2人とも言葉少なく、それで通じるところがある。オンライン上でのポーズの1つ1つで感じ合うんです。

戸田:魂のオンラインで…。

●バーチャルだけど、スピリチュアルな交流だと(笑)。河塚さんはやらないんですか?

河塚:僕もやりたいんですけど、まずWiiを持っていないという物理的な原因と、あとは個人的に人生が忙しすぎて時間がなかなか取れないという。周りの人から話を聴くと、もう完全に人生を横に置いてやっているような人たちばかりみたいなので、そこに手を出すには決意が必要な気がして…。

三浦:それは戸田とか内田がヘビーユーザーだからであって、僕はちゃんと1日1時間と決めたら、それ以上やらないよ。

内田:高橋名人の教え通りに…。

●そろそろ新作の話をお聞きしたいんですが(笑)、作るにあたって方向性を話し合ったりもした?

三浦:一応、僕と戸田の間では「歌モノをやろう」という薄っすらとしたコンセンサスは取った気がするんですけど、戸田の歌モノは歌がすごく小っちゃくて…。

●M-1「SneS」のことですね。

戸田:ちゃんと録ったんですけど、あんまり歌が前面に出過ぎているのもな…と思いまして。耳に悪いくらいのすごい音量で聴いてもらえれば、聴き取れるくらいにはしてあります。音量が極端に小さいわけじゃなくて、ハイ(高音域)のほうでぶつかり合わせている感じなので聴き取れはしないという…周波数の問題ですね。

●あえて聞こえないようにしている。

三浦:高音域、年寄りには聞こえないんですよ。

戸田:10代の方への熱いメッセージを歌っています。

●「盗んだバイクで走り出す」的な…。

戸田:社会への反抗のようなものを…、大人たちには聞こえないように(笑)。

三浦:僕とか内田にはもう聞こえない。

内田:残念だ…。

●メンバーにも聞こえないって(笑)。

戸田:作った本人にも聞こえない(笑)。

河塚:聞こえないんだ!?

一同:ハハハ(笑)。

●今作ではM-5「VVV」も戸田さんの作曲ですが、途中でブツッと途切れるような感じがありますよね?

三浦:オールミュートが入っているんです。

戸田:これは基本的にモールス符号を使った打ち込みなんです。それで曲名も「VVV」(※試験電波に使う調整符号)にしてあって。オールミュートの部分は大きくブツ切ってあるのですが、それ以外の部分では同時に80パートくらい鳴っています。

●実はそんなに多くのパートが…。

戸田:各パートは色々と途切れたりしているのですが、トータルでは真っ当に聴こえるようになっています。それら全部が、別々のモールス符号のトンツータイミングで切れている構造です。

河塚:その80パートを全部解読すれば言葉の意味が全てわかるような仕組みになっているんですよね?

戸田:そういうことです。

●それも10代に向けたメッセージ?

三浦:たぶん戦時中の人とかで、無線をやっていた人なら聴き取れるんじゃないですか(笑)。

戸田:団塊の世代に向けた応援歌ですね。「第二の人生を頑張れ!」っていうエールを、こう、嘘ですけど(笑)。

●ハハハ(笑)。戸田さんの曲はどういう手順で作っているんですか?

三浦:バンドが録ったものを戸田が編集する感じですね。「5分間、好きに叩いてくれ」とか、普通のレコーディングではありえないような指示がきます。

河塚:「適当なフィルをたくさん」とか。

●バンドの音を素材として使っている感じ?

戸田:そういう部分もあります。曲自体はほぼ作った状態でレコーディングに入るので、BPMが先に決まっていて。ドラムに関してはそこ以外は好きにやって頂いています。あとは「儚げに」とか言うだけですね。

河塚:ものすごく速いテンポなのに、「ジャジーに」とか言われるんですよ。ジャズがアップテンポになってロックのビートになったという歴史の流れに逆行するような、速いテンポのスイング感を求められたりします(笑)。

●そういう普通ではありえない指示がくるのも、新鮮だったりするのでは?

河塚:普段のレコーディングではおよそないような体験なので、全く別の面白みはありますね。あらゆる引き出しを開けて臨むんですけど、そんなに中身が入っていないから開けたり閉めたりを繰り返しています(笑)。

内田:戸田くんが作ったMIDIデータを見ながら弾くんですけど、とても自由奔放なベースラインが展開されているわけですよ。「ええっと…もう覚えられない〜!」とか叫びながら録っています(笑)。

●内田さんは、基本的に戸田さんの作ったMIDIデータに沿って弾いている?

内田:「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」というところだけは直しますけどね。録った後は全部渡して「好きにして」という感じです。

三浦:僕が弾いたギターは大体、同じフレーズで打ち込みに直されています。

戸田:いやいや、そんなことは…。滅相もないです(笑)。

河塚:戸田くんの曲はある程度の完成形として上がってくるので、録音に臨む時はそれを生で塗り替えるような作業になるんですよ。それがまた戸田くんのところに戻って、シェイクされる感じですね。だから最終的なものが上がってくると、「おお、こんなことに…」っていう感じで。戸田くんの曲に限らず、NESSにはよくありがちなことなんですけど(笑)。

●個々が別々に録ったものを最終的にミックスする感じでしょうか?

河塚:個別に録るといっても、フランク・ザッパ的な感じでAさんとBさんとCさんがそれぞれ録ったものを合体させるようなイメージとはちょっと違うんですよ。Aさんが録ったものをBさんにバトンタッチして、次にBさんが録った後にCさんにバトンタッチするような感じで、リレー方式に近いのかな。

三浦:その順番もいくつかあるんです。最初のAさんはだいたい河塚くんなんですけど、次のBさんが誰になるかで曲調が結構変わるという…。僕のところに来るとロックっぽくなったり、戸田のところに行くと複雑になったりとか。その順番が別に決まっているわけじゃなくて、空いている人に行く感じなんです。

●その順番によって、曲調も左右される。

河塚:あらゆる意味でフリーダムな制作環境だから、なおさら完成形が見えにくいんですよ。でもそれによって、完成したものに新鮮さを覚えるという。ある程度は「こういう形になるんだろうな」という予想を持って臨むんですが、必ずその上をいくのですごく面白いですね。

●M-6「Pavillon」は内田さんと河塚さんの共作になっていますが、これはどんな手順で?

内田:確か去年の夏頃に、スタジオで作りましたね。

河塚:「来るべきアルバムに向けて作曲しようぜ」ということで、2人でスタジオに入って作った中の1曲です。打ち込み的なリズムパターンを人力でやって、曲にしてみようというのが基本的な発想にあって。それを内田さんに形にして頂いて、メンバーで揉むと「こんなことになるんだ」という驚きがあった曲ですね。

●内田さん作曲の「Nesso」は、今までになくヘヴィな感じですね。

内田:「Nesso」はNESSがやるヘヴィミュージックというアイデアだけがあったところから、10分くらいで原形ができた曲なんです。NESSの4人のことを考えて、綿密に作りました…10分間で(笑)。

●メンバーの音をイメージして作った曲だと。

内田:(河塚)篤史はこういうドラムを叩くだろうなっていうイメージがあったし、ミューちゃんは“ヴァン・ヘイレン”モデルのエフェクターを持っていたのでそれで汚い音を出してもらおうと。そして戸田くんには「ここでグワーッとくる“ゴォォォ!”を」とお願いしたら、予想通りの“ゴォォォ!”が来て(笑)。わりと当初のイメージ通りにできたので満足ですね。

●三浦さんの曲はわりとキャッチーな気がしました。

三浦:他の人がこういう曲を出してきたら、しょうがないですよ(笑)。さすがに「Nesso」を聴いた後では、「ちょっと軽くしておこうかな」と思ったところがあって。実はM-4「Tree of Papers」は20代の頃に作った曲なんですけど、今回はあまりメロディアスな曲がなかったので引っ張り出して来ました。

河塚:デモをもらった時に曲自体が若い感じだったので、「どうしたんだ、三浦さん?」と思いました(笑)。でもよくよく聞いてみたら20代の時の曲ということで、「なるほど」と納得しましたね。

●今だから形にできたというのもあるのでは?

三浦:このメンバーならちゃんと演奏してくれるだろうなと思って、出してきた部分はあります。今回は「この人はこういう風に演奏するだろうな」というのが見えてきて初めて作った作品だと思うんですよ。前は手探りで作っていた部分があるので。戸田とは前から一緒にやっていましたけど、内田とちゃんと一緒にやるのはNESSが初めてだし、河塚くんと知り合ったのも2年前ですからね。だから、そういう部分が見えるようになったのは大きいのかな。

内田:「Nesso」は僕の思惑通りにみんなの音が録れたんですけど、きっと次は裏切られると思っていて。それでまた面白くなるんじゃないかなと。

●今作に満足しつつも、次はまた変わっていく。

河塚:今回は“ハード”な作品だと僕は感じていて。それは別にハードロックに寄ったというわけじゃなくて、音としてのハードさが増したという意味なんです。それが僕の中で新鮮な驚きだったというか。僕はもうちょっと同期ものが多いという勝手なイメージでNESSというものを捉えていた部分があったので、こういうフリーな方向に進むとは思っていなくて。でもまた違う方向に進むかもしれないし、次もすごく面白みの増した作品になるはずなので、期待してもらえればなと思います。

●戸田さんは予想を裏切られたりは?

戸田:僕は特に予想もしていなくて、フタを開けてみるまでは何を作るのかもわかっておらず…。作り始めてすぐにフタを閉めて、ずっと何ヶ月も置いておいて。フタをパカッと開けたら、「わー、できてる!」っていう(笑)。

三浦:ドラクエ風に言えば、錬金だね。

●結局、ドラクエなんだ…。

内田:ドラクエの中で音源を渡せたらいいよね。

河塚:そしたらいよいよ僕もドラクエを始めないと、ハブられてしまう(笑)。

戸田:ドラクエの中で音源を渡せたら、もっとスムーズにレコーディングも終わっただろうに。

三浦:終わっただろうね。(戸田は)オンライン上には必ずいるから。

一同:ハハハ(笑)。

Interview:IMAI

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