音楽メディア・フリーマガジン

NIKIIE

冷たくて温かくて透き通っていてどこか切なくて、“歪さ”をも愛おしいと感じさせるアルバム

PHOTO_NIKIIE

作品とツアーを重ねるごとに様々なことを感じて歌にしてきたシンガーソングライター・NIKIIE。2011年7月の1stアルバム『*(NOTES)』を、彼女がそれまで独りで貯めてきた内包性を詰め込んだアルバムだったとすれば、2012年4月にリリースしたミニアルバム『hachimitsu e.p.』では自分の枠内から1歩踏み出して繋がりを求め、そして2012年9月のミニアルバム『CHROMATOGRAPHY』は自らが前に進むために本音や孤独を肯定的に吐露した作品だった。作品を重ねる毎に、いや、人生という道のりで経験したり感じたことを“成長の記録”として音楽にしてきた彼女は、次のアルバムでいったいどのような表情と精神性、そして音楽で魅せてくれるのだろうか。NIKIIEが1/30にリリースする2ndアルバム『Equal』について、来月号のインタビューに先立って少しだけその内容を紹介する。
既発曲4曲「カナリア」「涙星」(『hachimitsu e.p.』収録)、「Duty Friend」「Everytime」(『CHROMATOGRAPHY』収録)を含む全13曲。美しいメロディと歌声、そして自らの強さも弱さも受け入れてきた歌詞が特徴のNIKIIE、2枚目となるアルバム『Equal』は、彼女が今まで歩いてきた道のり、そしてこれから進もうとしている先を感じさせる、とても人間らしくてNIKIIEらしさが溢れる、冷たくて温かくて透き通っていてどこか切なくて、その“歪さ”をも愛おしいと感じさせる名盤だ。
誤解を恐れずに言うと、強烈な彼女の個性が核となったアルバムでもある。音楽性、メロディ、歌詞、アレンジ、世界観、そのどれもが振り切れていて非常にバラエティ豊か。更にそういった音楽の要素1つ1つに対して一切の妥協がなく、音楽に対する欲張りな彼女の創作欲も伺えるし、ロック感溢れるライブを意識した表現欲も同時に感じさせる。
サウンドとメロディが持つ力で一気にリスナーを楽曲の世界に放り込むM-2「Morning in the dark」、今までよりも少し大人になった“女性”を感じさせるM-3「Darlin'」、振り切れた世界観で彼女の感性が爆発しているM-4「Un Deux Trois!」、“歌”と“言葉”の力を最大限信じたM-6「LIGHT」、パーソナルな心情を綴ることで高い純度を生み出したM-7「Mother's cry」、衝撃的とも言えるほどの心情を切り取ったM-9「mannequin」、秀逸なアレンジメントが楽曲の持つエネルギーを倍増させているM-10「Hero:」。どれも“表現”に対して妥協がなく、そして既存の枠組みにハマることよりも、自らの感覚を信じて昇華させたと思わせる高い完成度の楽曲たち。
プレイヤーの再生ボタンを押した途端、目の前でくるくると表情を変えていくNIKIIEに翻弄されるのはもちろんのことだが、何よりもライブを楽しみにさせるアルバムだ。そもそも彼女のライブスタイルは、お行儀よくピアノの前で歌うわけではなく、時にはステージ全部を使いながら、時には鍵盤を肘でガシガシと叩きながらステージで感情を爆発させる。かと思えば、ケロッとした顔で笑っていたりする。NIKIIEの2ndアルバム『Equal』は、そんな彼女のライブを今まで以上に表情豊かに、きらびやかに(そしてダークに)彩るはず。3月には札幌・仙台・福岡のアコースティックツアー、そして東名阪ではオールスタンディングのライブハウスツアーが控えているが、そのステージではよりみずみずしく、より自由に音楽を表現する彼女の姿を観ることができるだろう。
TEXT:Takeshi.Yamanaka

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