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NoGoD

聴く者を力強く後押しする音と言葉は、彼ら自身すらも次なる進化へ押し上げていく

NoGoDが昨年8月に発表したメジャー2ndアルバム『現実』以来、約1年ぶりのニューシングル『STAND UP!』をリリースする。自分たちにとっての“ライブとは何か?”という部分に向き合うべく、ツアーやイベントで膨大な数のライブを行なってきた彼ら。そこで得られた答えと経験値をダイレクトに表現したのが、今作の表題曲だと言えるだろう。ライブでオーディエンスと一体になるイメージが容易に浮かぶライブ感と、リスナーにハッパをかけるような力強いメッセージ。そして、ジャンルを横断するようなバラエティ豊かな楽曲は、次なる進化をも予感させる。

 

 

「ヴィジュアル系とかそういうジャンルに縛られない存在に、NoGoDというものが孵化しそうな感覚が今あるんですよ」

●昨年8月にメジャー2ndアルバム『現実』を発売してから、今回のニューシングル『STAND UP!』リリースまでの約1年はどんな時間だったんでしょうか?

Kyrie:『現実』はバンド感を前面に出した作品だったんですけど、実際にリリースツアーでやってみてもライブ向きなものにはなっていて。そのツアーが終わって、年も明けてから“次はどうしようか?”となった時に、もう1回ツアーをまわってみようということになったんですよ。“今のNoGoDのライブならでは”というものが何なのか、自分たちの中で突き詰めた1年でしたね。

団長:ここ1年のライブの本数は、尋常じゃなかったんです。バンドを始めた頃って、とにかくライブをひたすらやるじゃないですか。そういう初期のガムシャラさに近い感じで、ずっとやっていましたね。バンド的には、ライブっていうものを見つめ直す良い時間になりました。

●“ライブとは何か”といったことを考えた?

団長:我々がメイクしていたりするのは、そもそも観ている人たちに楽しんでもらいたいという気持ちから始まっているんですよ。ライブは楽しいものじゃないといけないと思うし、結成してからはその“楽しいもの”とは何なのかを自分たちの中でずっと模索していた7年間だった。その中でお客さんを置き去りにしてでもショーとして魅せようとしていた時期もあったんですけど、やっぱり巡り巡って普通に“お客さんと盛り上がれる”という根本的なものが我々のライブとしては正しいんだなという答えを見つけられた1年間だった気がしますね。

●この1年間で、自分たちが求めるライブ像に答えが出せたと。

Kyrie:ツアーをやってみて最終的に思ったのは、メンバーも含めてみんなが楽しそうにしていることが一番なのかなということで。もちろん僕らもオーディエンスも楽しんではいるんですけど、それが他の人にまで伝わるかどうかという部分はあって。少なくとも僕らはそれを伝えるべきなんだろうなとは思いましたね。

団長:我々がステージ上で楽しいと感じていることをお客さんとより共有できるようになってきたのが、ここ1年だと思うんですよ。俺たちが求めている“楽しいこと”とお客さんが求めている“楽しいこと”の隙間が徐々に埋まってきている感じはしています。

●ライブを重ねる中で、その隙間が埋まってきたことを実感できている。

団長:そのスタートラインに立てたのが『現実』というアルバムで、それまでは本当に暗中模索でしたね。お客さんとすれ違っていた時期もあったと思うけど、今はガッチリ手を組めている感じがするので、その感覚を作品としてパッケージングしたかったんです。

●タイトル曲のM-1「STAND UP!」は、まさにライブでみんなが盛り上がって楽しめる曲ですよね。

団長:今回のシングルに向けての選曲会議では満場一致でこの曲が選ばれたので、メンバー自体もそういう方向を向いていたということでしょうね。

Kyrie:元々は今年2月に出した会場限定シングル(『LOVE?』)用に書いた曲なんですよ。そこには入らなかったんですけど、今年の春先くらいに今作の制作に取り掛かった時にもう一度この曲をやってみようかという話になって。『現実』をリリースして2度のツアーを経た一連の流れの終着点を、僕としてはここに定めたかったんです。『現実』からずっと探し続けてきたものの答えというか、やろうとしていたことの完成形はこれでいいんじゃないかなと思っています。

●ツアーで得たものもここに集約されている?

Kyrie:ツアーをまわっている間にバンドとしての自分たちとも向き合えたし、ステージ上からお客さんたちとも向き合って。そういう中で今の自分たちが何をしたいのか、どこへ向かおうとしているのかというのが見えてきたところもあったんです。ツアーを通して自分たちが求めていたものは、こういう曲だったんだなと思えるものにはなったかな。

●歌詞はどんなテーマで書かれたんですか?

団長:自分の中では、去年3月に起きた東日本大震災をずっと引きずっている部分があるんです。震災が起きた当初はみんな「一人じゃない」とか「手を取り合おう」ということを歌ったりしていたのに、1年経った今となってはすっかりなくなったなと思っていて。

●震災を風化させたくないという想いがある。

団長:もちろんみんな忘れたわけじゃないんでしょうけど、やっぱり言い続けることが大事なのかなと思って。震災が起きた当初って、被災者の方々はまだ落ち着いて物事を判断できる状態じゃなかったと思うんですよ。でも時間が経った今、やっと現実が目の前に降りかかってきているというか。仮設住宅を出なきゃいけなかったり、仕事を探さなきゃいけなかったりという現実が迫ってくる、今からが一番つらい時じゃないかなと。

●時間が経って冷静になって初めて、現実的な問題がのしかかってくるわけですよね。

団長:現実って、色んなものを受け止めてから初めて訪れるものだから。そういう時こそ“まだまだこれからだ”っていうものを、メッセージとして込めていきたいなと。自分たちも含めて、色んな人にハッパをかけたいという意味合いもある曲ですね。ここ1年で悲しい出来事が本当に色々あったなと思うんですよ。

●震災以外にも最近はいじめの問題だったり、暗いニュースが本当に多い。

団長:今って正直、悪い時代だと思うんです。でも夢を持てない時代にしたのも、生きているのがつらいと感じるような時代にしたのも色々含めて、みんなの責任だと思っていて。そこをわかった上で自分たちが1つの道標として、どう立ち振る舞うかが大事だなと思うんです。それはNoGoDのスタンスとしてずっと提示しているものなんですけど、世相が年々暗くなっていくので逆に俺たちはどんどん強いメッセージを発するしかなくなったという…。傷をなめ合う歌よりは、傷に塩を塗りこんで痛みで目を覚まさせるくらいの歌じゃないといけないなというところで、メッセージ性が年々強くなっていますね。

●団長の歌も今まで以上に力強さを感じます。

団長:曲のイメージはデモの段階から見えていたので、あとはどれだけ力強くメッセージを伝えられるかというところだけだったんですよ。だから、歌い方も今回はかなり力強い感じにしました。今までレコーディングでそういう歌い方をすることはなかったんですけど、今回はかなり攻めましたね。

●ある意味で、新たな挑戦でもある?

団長:いつもの歌い上げる感じじゃなくて、本当にライブに近い歌い方なのでそういう意味でチャレンジではありましたね。元々、ライブでしかやらないようなことを今回は作品としてパッケージングしたので、これがリスナーにどう捉えられるかが楽しみです。NoGoDとしても、かなり新しいことに挑戦していて。曲が短いというのが一番なんですけど、短すぎて自分でも不安になりますもん…(笑)。

●あえて短くしたんですか?

Kyrie:僕たちの曲は構成美というか、構築していくスタンスのものが多いんですよ。そういう形だから聴かせられるものも当然あるんですけど、今回の曲に関してはそういったものを求めていなかったんです。だったら長くする必要性はないというだけでしたね。

団長:昔から曲は短めに作ろうとみんなで意識はしていたんですけど、どうしても長くなってしまう癖があって。でも今回は最初から“とにかく直球で”というのが、大前提にあったから。歌としては、短い中でいかにヒネるかというのが大変でしたけどね。この曲に関しては、この形がベストかなと思います。

●力強いメッセージの「STAND UP!」に対して、カップリングのM-2「ハレルヤ」では“だましだまし乗り越えて”という全然違う視点なのが面白いと思いました。

団長:キャラが真逆というか、だいぶ違う人になっていますよね(笑)。これはまず曲ありきというか、わかりやすく言うと曲調がVAN HALENの「PANAMA」っぽい感じだったので…。

●モロにアメリカンハードロックな感じですよね(笑)。

団長:そういう曲って、陽気な感じじゃないですか。「PANAMA」の歌詞なんて地名をただ並べている感じなんですけど、そういうメッセージ性とかじゃなく単に“楽しく行こうぜ!”みたいなチャラい感覚がこの曲には必要だったんです。1曲目はチャラさが全くなかったので、2曲目は逆にチャラくしたいなって(笑)。

●バランスを取ったと。歌詞はどんなイメージで?

団長:この曲に関してはまずコーラスパート(“マタハレルヤ”)があったので、そこで言いたい言葉を探してから広げていった感じですね。この歌詞には、自分の宗教観が込められていると思います。

●“ハレルヤ”ってキリスト教の言葉で“幸あれ”みたいな意味ですよね。

団長:そうなんですけど、この曲に関してはそういうことは一言も言っていなくて。ただの言葉遊びですね。

●“ハレルヤ”と“晴れるや”をかけていたりする。

団長:でも似たようなことだと思うんですよ。天気が良ければ、気持ちが良いものじゃないですか。それくらいの感じで、宗教というものを重く考え過ぎないでほしいという意味も込めているんです。俺の中で宗教に求める役割というのは、それによって人の心がスッと軽くなれるかどうかだけだから。そういうものをラフに表現したというか。

Kyrie:サウンドに関しても、良い意味でのラフさが全開な曲ですね。レコーディングでも決めるところはちゃんと決めつつ、あまり細かいところまではこだわらなかったんです。

●この2曲に加えて、通常盤にはM-3「奈落」が入っているわけですが、すごくヘヴィで…。

団長:この曲が今回のシングルで一番の飛び道具じゃないかな(笑)。でもNoGoDのヘヴィな部分を愛してくれている人は、この曲が好きだと思います。

●この曲の歌詞が一番、ヴィジュアル系っぽい気がします(笑)。

団長:そうですね。自分の中の“中2”な部分を全開にしていこうと思って。昔はこういう感じが得意だったんですけど、年々やらなくなっていたところで久しぶりに中2の扉を開けたのでちょっと恥ずかしかったです(笑)。

●ある意味、ちょっと痛々しい感覚というか(笑)。

団長:でもこういう痛々しい歌詞って、嫌いじゃないんですよね。人の欲望みたいな精神的にドロドロした部分を書いたんですけど、他の2曲でポジティブなメッセージを使ってしまったので、1曲くらいはすごく陰なメッセージにしてやろうということは最初から決めていて。この曲に関しては完全にサウンドありきで、肉付けしていった感じですね。伝えたいメッセージも、サウンドからもらったインスパイアで決めたというか。

●それぞれに全然違う個性の3曲が集まったシングルですよね。

団長:NoGoDって、人によって捉え方が本当に変わるバンドなんですよ。ウチらのことをポップスバンドと言う人もいれば、ヴィジュアル系と言う人もメタルバンドと言う人もいて。そのどれでも我々はNoGoDとして発信できるから、何でも良いんですよね。ただ1つのジャンルや方向性だけをやっているようなアルバムは飽きるし、そういうものは作りたくないという人間が集まっているバンドなので、我々はたぶん今後もこういう作品を出し続けるんだと思います。

●だからこそ、自分たちでも楽しめる作品になっているんじゃないですか?

団長:それは絶対条件ですね。「やっぱりNoGoDは何をやってもカッコ良い」ということを見せつける作品になったと思います。ヴィジュアル系とかそういうジャンルに縛られない存在に、NoGoDというものが孵化しそうな感覚が今あるんですよ。ロックファンもJ-POPファンもヴィジュアル系のファンもひっくるめて、全ジャンルのファンに届けたいシングルです。

Interview:IMAI

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