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Nothing’s Carved In Stone

更なる高みへの欲求は4人を大きく成長させた

“Silver Sun Tour”
2012/10/5@Zepp DiverCity Tokyo

その場でしか生み出せないアンサンブルの完成度とダイナミズムは、シーンを見渡しても彼らの右に並ぶものはいない。
Nothing's Carved In Stone(以下、NCIS)は、2008年の始動直後から高い完成度を誇っていたが、ライブを重ねるごとにその到達点を凄まじいスピードで更新してきた進行形のバンドだ。今から思えば、基礎体力を持ち合せた4人が集ったバンドだからこそ、当初のベクトルは音楽的志向性が強かったかもしれない。MCも少なく、一見すると客を突き放しているようにさえ思える佇まいで展開されるステージは、浸透力のある楽曲と瞬発力のある演奏によって(音楽で)オーディエンスを熱狂させてきた。そんな彼らが今年8月にリリースしたアルバム『Silver Sun』は、彼らの成長と進化と“欲”を感じさせる作品。これは筆者の勝手な思い込みかもしれないが、“バンドを更に進化させたい”という“欲”が生まれたことにより、アルバム『Silver Sun』を完成させたNCISは積極的に聴き手とコミュニケイトするようになったのではないのだろうか。
前置きが非常に長くなったが、“Silver Sun Tour”のNCISは大きく成長していた。高い音楽性とアンサンブルはもちろん進化を感じさせたのだが、何よりオーディエンスとの距離が近くなった。ライブを観た直後の感想を率直に言うと、彼らは無敵だった。
硬質なギターリフが鳴り響き、反射的にフロアから大きな歓声が起こって「Spirit Inspiration」「白昼」と続く。Aメロ〜Bメロでフロアをぐっちゃぐちゃに引っ掻き回し、サビで一気にテンションをMAXまで打ち上げるというNCISの真骨頂を目の当たりにする。決してライブでノリ易いビートとは言えない楽曲であったとしても、4人にかかればフロアから面白いようにダイバーが打ち上がる。相反する要素を同時に差し込んで唯一無二の瞬間を生み出していく。こんなバンド、他にはいない。
Dr.大喜多のスネアに3人が呼吸を合わせてスタートした「PUPA」では、本当に美しいメロディは人を幸せな気持ちにさせるということを痛感する。「Red Light」ではG.生形のギターによって威力の倍加したVo./G.村松の歌がグサグサと刺さってくる。4人が向き合い、凶暴に音をぶつけたかと思えば一気に会場を大きく包み込むメロディを放った「The Big Chill」。新曲が音源以上の威力でぶつかって来る快感に全身が打ち震える。
前回のツアーと比べ、バンドが一回りも二回りも大きくなっていた。何より村松の成長が目覚ましかった。時にギターから手を離し、両腕を大きく広げて歌う彼はとても頼もしく見えた。「心が折れそうになったときにこの曲を思い出して欲しい」「お前らの幸せ全部くれよ。俺たちも全部やるからさ。かかってこいよ!」と合間合間に挟んだ飾らない心情の吐露は、観ている者の心をグッと掴んでいった。
破壊的な音の積み重ねによって成り立つ凶悪な一体感に包まれた「Scarred Soul」、ダイバーが音の中に身を投げ続けた「Isolation」を経て、本編最後は村松がアコギを持ってスタートした「The Silver Sun Rise Up High」。そしてもう一度会場全体を揺さぶったアンコール、最後は“この瞬間を味わうためにここに来た”とさえ思ってしまうほどの「Around the Clock」。数多くのダイバーが宙を舞い、汗まみれで腕を振り上げて暴れるオーディエンスの向こう側、ステージの4人の笑顔が印象的だった。
このツアー後も間髪入れず、11月にシングル『Spirit Inspiration』をリリースするNCIS。彼らが次に進む高みから見えるのは、いったいどのような景色なのだろうか。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

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