音楽メディア・フリーマガジン

NUBO

ライブを通して成長を遂げた5人の到達点

 結成以来、活動の軸をライブに置いて駆け抜けてきた生粋のライブバンド、NUBO。

日々の辛いことを忘れ、ライブハウスで最高の時間を心から楽しみたいという彼らの気持ちは、その音楽とステージをストイックに鍛えぬいてきた。

様々な音楽を昇華して最強のグルーヴを手に入れた唯一無二のバンドサウンドと、ツインヴォーカルから繰り出す表情豊な人間味のある歌。結成10年を前に、いよいよ彼らはタフに、そして頼もしく成長した。

ステージで最も輝きを放つ5人が作り出した2ndアルバム『Warmth』は、人間が持つ生命力と音楽の素晴らしさを教えてくれる。

Interview

「今までは頭ではわかっていたけど感覚がわからなかったというか…それが今回実際にわかって、その気持ちを次のライブに繋げようという考えになりました」

●前作『Paint Box』のツアーファイナル、代官山UNITでのワンマン(2011/6/18)はNUBOらしさがすごく出ていたという印象が強くて。

Wakai:自分たちらしさを出せる余裕が若干出てきたのかもしれないです。なんか「この辺だろうな俺ら」っていうのを去年なんとなく見つけた様な気がしないでもない。

tommy:緊張はしなかったんですよね。"少し緊張しないとヤバイだろう"と直前で思っていたくらいで。それが前のワンマン(2010/6/26@渋谷O-WEST)とは大きな違いでした。ツアーをまわっていく中でそうなれたというか。以前は、自分たちがちゃんと楽しむこととか、自分たちが楽しんだものをステージ上でやりたいという部分が少し薄くなっていたというか。そこに考えがあまり行かなくなっていたときがあって。

●"何かを伝えなきゃ"という気持ちが強かった?

tommy:そんな感じですね。それが、前回の『Paint Box』のツアーでそうじゃなくてもいいと思えたというか。もっと自分たち自身が楽しんだ上でのライブが絶対できると思ったし、その方がこの5人での表現が絶対よくなるっていう感覚があったんですね。だから、そういう意味で少しだけ余裕を持てる様になったのかもしれないです。ツアーをやっていく中で、「ライブではこうしなくちゃ」っていうことではなくて「こうやりたい」「こうしよう」ということを今までよりも多く考えられる様になったんです。それが結果的に緊張しなくなったことに繋がった。言葉にすると「楽しみだなあ」っていうそのままの感じでライブができたような気がします。

Wakai:去年との違いを考えてみると、自分たちがライブをして何か1個残るものがあるならば、それは"楽しいな"っていう感覚であってほしいと思ったこと。ライブの中に"何かを伝える"とか"真剣にやる"とか"かっこいい演奏をする"とか色んな要素があるとすれば、"楽しいな"っていう気持ちだけはなんとかしたいという考えが出てきたんです。「ライブはかっこよかったけど、でもそんなに楽しくなかった」という風に思われるのが一番嫌だなと。そこを中心としつつ、どうライブを面白くしていこうか? みたいな1本の軸があったような気がします。そこから新しいドアが開いたじゃないですけど、改めて新鮮に楽しめる様になった。
K-zoo:俺は『Paint Box』のツアーをひたすら楽しんでました(笑)。ライブ自体もそうだったんですけど、他のバンドと一緒にまわるというところも含めて本当に楽しめたんです。けっこう長く一緒にまわってたバンドも居たから、そういう人たちとやったときに"楽しんだ者勝ち"みたいなところがあって、それがすごく良かったなと。

●なるほど。
K-zoo:あとは、前回のツアーは「Colored」という曲を絶対最後に演ったことも大きかった。そこだけは崩さなかったというのが、自分たちの気持ちの表れかなってすごく思うんですよね。最後の「Colored」で本当に楽しんで振り切れるというのがあったから、大きかったなと思います。色んな曲でライブを終わらせてきたことがありますけど、あの曲で終われたツアーはすごく大きかった。

●サブくんはどうですか?

サブ:一緒にツアーをまわらせてもらった先輩方を見ていると、もう体力とかすごいんですよ。打ち上げも最後までいるし。そういうのを含めて、全部楽しんで、楽しいことを探して、ライブもちゃんとやって…それで人間的な部分も成長していく、みたいな。今回は特に先輩方と絡むことが多かったので、そういうツアーを経てファイナルを迎えたからいい感じになったんじゃないかな。

●なるほど。一成くんはどうでした?

一成:今回のツアーは震災の影響で初日から3本延期になったんです。地震の直後というのもあったので東北に行っても西に行っても、色んな人と震災のことを話すことが多くて。俺たちは前から「毎日色々と辛いことがあるけどライブでは思いっきり楽しもうぜ」と言ってきたバンドですけど、前回のツアーではそういった気持ちというか感情が、ライブの後とかに色んな人と話すことで本当に実感できたんです。だから"何もかも忘れて思いっきり楽しむ"ということに、本当の意味で向き合えたツアーだったというか。今までは頭ではわかっていたけど感覚がわからなかったというか…それが今回実際にわかって、その気持ちを次のライブに繋げようという考えになりました。

一同:ざわ…ざ…ざわ…。

●まさか一成くんの口からそんなにいい発言が聞けるとは!

一同:アハハハハ(笑)。

tommy:いやあ、いいこと言ったわ。

●30歳になると違いますね。

tommy:さすが先輩。

サブ:ファイナルはガチガチだったけどね(笑)。

一成:いやあ…。

Wakai:一成はすぐ緊張するからね。

●ファイナルは緊張してたんですか?

一成:2回目のワンマンというのもあって大丈夫かなと思ったんですけど、パーカッションがあったので…。

●あ、そうか。CDでは一成くん叩いてないですもんね。前回のインタビューでバラしちゃいましたけど。

一成:だから"ライブではちゃんとやらなくちゃ"と思ったらテンション上がりすぎて、スティックがポーンと飛んでいっちゃって。左右違うサイズのスティックで叩かなくちゃいけなくなって…。

「日頃考えているようなことが自然にステージに出てくれば、それは本物だと思う。そういうライブに憧れるし、目標にしていたりもするんです」

●今回リリースとなった2ndアルバム『Warmth』ですが、歌っていることとか込められたメッセージは、実は昔からあまり変わってない気がするんです。音楽的にもNUBOは、昔から幅が広かったし。でも、説得力というか"NUBOらしさ"がすごく出ている作品になってると思うんです。歌詞の内容を見ると、自分の中の弱い部分をさらけ出しているというか、認めているという視点を感じるんですよね。いい意味で力が入っていなくて、自分を敢えて大きく見せようとしないというか。

サブ:やぱり前は背伸びをしていたんですよね。

一成:そうですね。

tommy:どうにかかっこよくしたいんだけど、どうしていいかわからない、みたいな。

Wakai:そういう意識がなくちゃ駄目なときももちろんあるし。でも、今は背伸びをしない方がいいものができると思ったんです。本当の意味で自然体に、自分たちの本当の良さを前よりは出せる様になったかなと思ってるし、そういう気持ちの方が楽しいことができるバンドなんじゃないかと改めて思ったというか。

●一成くんとか特にそうなんですけど、ステージの一成くんは必死になってぐちゃぐちゃになってすごくかっこ悪いんですけど、でもそれがかっこいいんですよね。

Wakai:ステージに立つ前に、どれだけ何を考えられるかということが大切なような気がするんです。それは"ライブでこう立ち振る舞いたい"とかじゃなくて、ライブでポロっとこぼしてしまうようなものの為に、日頃全然違うことを考えていたりとかする。

●うんうん。

Wakai:バンドをやりたくてバンドをやるのか、何かをやりたくてバンドをやるのか、みたいな話ですけど。ライブをやりたくてバンドをやるっていうのも初期衝動的で素晴らしくて好きですけど、それだけでずっと続けることはなかなか難しいと思うんです。そうなったときに、日頃考えているようなことが自然にステージに出てくれば、それは本物だと思う。そういうライブに憧れるし、目標にしていたりもするんです。"この曲のここでこうやって"とか"こういう動きを決めよう"とか、そういうのは自然と無くなりましたね。

●そういう変化はステージを観ていたらわかります。

Wakai:良かれと思って決めていたことも色々あるんです。でもそれが僕らにとっては背伸びだったんですよね。そうやってかっこよくできる人が居るから、僕らも真似してやってみようと思ったんだけど、僕らがそれをなぞったらかっこ悪いんだってことがわかった。違うやり方でいいライブをしたいなと思っています。

●PVにもなっているM-2「Such one」ですけど、NUBOらしいと言えばNUBOらしいですけど、アイリッシュ的な要素が溢れていて、かなり特徴的な曲だと思うんですよね。
Kawai:やっぱり"踊らせる力"だったりとか"聴いた人が楽しむ力"みたいなところから作った曲なんです。 僕らは少なくとも音圧とかギターの破壊力とかで勝負するバンドではないし。人間力と音とリズムで、どう楽しい破壊力を作るか? っていう中ですごくいいものを見つけたというか。別に爆音とかじゃないんだけど、伝わってくる力があるというか。

●それはここ最近の曲作りのテーマですよね。

Wakai:そうですね。その中でメンバーそれぞれが経験を積んで、現時点で1つの形になったというか。

●「Such one」だけじゃなくてどの曲からも感じることではあるんですけど、"音楽でどれだけ場を作るか"というアプローチがすごく強いと思うんです。今作はバラエティに富んでいますけど、曲調一発で"こうしたい"っていうバンドの意志が明確にわかるという印象がある。

Wakai:ああ~。

●それに歌のキャッチーさが歌詞の内容も含めて際立ってる作品だという印象もあって。前作『Paint Box』は即興的な雰囲気が強かったですけど、今作は景色や色や感情が残る曲が多いんですよね。

Wakai:さっき言ったみたいなことを研ぎ澄ませていくと、引き算というか、どんどん余分なものがそぎ落とされていくんじゃないかと思っていて。メンバーそれぞれがやりたいことをミックスして作っていたのを、もっと1つ1つ「これはここ!」みたいな風に厳選して、無駄をそぎ落として肩の力を程よく抜いて、「これがいちばん伝わりやすいんじゃないか?」っていう感覚を全員が共有したというか。

●なるほど。

Wakai:そういう中で、今回は改めてドラムが軸だと思ったんです。ビートがどう変わっていくのかっていうこととか、リズムが根本だと思ったんです。

●改めて気づいたということ?

Wakai:気づいたし、無意識にサブから気づかされた部分もあったんです。軸がしっかりとあれば、別に余分なことをしなくても自分たちのやりたいことの土台はできるんだろうなって。そういうことが、歌が際立つ印象にも繋がったんじゃないかな。

サブ:リズムパターンは曲をすごく左右するということは前から薄々気づいてたんですけど、言い出せないみたいなところがあって。"上手く伝えられるかな?"と思って。

●サブくんの性格的に「お前らあーだこーだとアレンジを色々考えてるけど、バンドでいちばん大切なのは俺やぞ」みたいなことは言えなかったと(笑)。

サブ:そうそう(笑)。でも今回は特に色々言って、1つの曲でも色んなパターンを試したんです。
K-zoo:頭の中だけじゃなくて、みんなで鳴らして考えよう、みたいなことも結構あったよね。

●なるほど。ところで、tommyがブログで曲解説を詳しくやっているので今回の取材では1曲1曲について詳しく触れるつもりはなかったんですけど、どうしても訊いておかなくてはと思った曲があって。サブくんが歌詞を書いたM-7「Yokohama blues gawa」なんですけど。

一同:来たー!

●これは…印税が欲しかった?

サブ:ちょっとね、僕も将来のこと考えて。

一同:(爆笑)。

Wakai:嫁子供ができたときのためにね(笑)。

tommy:いつ何があるかわからないからね(笑)。

●なぜ歌詞を書こうと?

サブ:実は、前から書いていたりしていたんです。

Wakai:それにずっと書きたいとは言ってて。

●あっ、そうなんだ。

tommy:言葉にいちばん敏感なのはサブなんですよ。で、言葉にも詳しいし、本もすごく読んでいるし。

●言葉に対するアンテナが敏感だと。

tommy:たぶん僕なんかよりも全然敏感です。だからいつかのタイミングで曲にしたいっていうのは、僕的にもあったんですよね。サブの歌詞でNUBOの曲を作りたいっていう気持ちが。で、この曲のアレンジとかメロディラインがある程度できたときに、サブ自身に「歌詞を書こうかな」って言われたんです。雰囲気的に僕が書くよりサブが書いた方が面白いんじゃないかと直感で思ったので、じゃあやってみようと。

●さっきサブくんが「前から書いてた」と言ってましたけど、ポエム書いて公園で朗読とかしてたんですか?

サブ:してないです。

一同:アハハハハ(笑)。

サブ:僕はソウルフラワーユニオンや忌野清志郎さんとかが好きなんですけど、そういう歌詞ってNUBOには無いじゃないですか。で、そういうのをちょっと混ぜていったらバンド的には面白いかなっていうか、それで広げていくのもいいかなって思って。そういう中で、歌いたかったことのひとつが川のことなんです。

●川のことが歌いたかった?

サブ:歌いたかったんです。この曲では横浜を流れている大岡川のことを歌っているんですけど、その川がすごく好きで。武庫川(※兵庫県南東部を流れる河川)の次ぐらいに好きなんです。

●武庫川が第1位なのか…。

サブ:大岡川の周りはほんとに汚い街なんですよ。川はヘドロまみれだし。未だに昭和30年代からある都橋商店街っていうのがあって、スナックだけでできた2階建ての建物が川沿いにあったりするんです。色んなものを流してきたのかな? みたいな…好きでねえ。

●おっさんやな(笑)。

tommy:サブっぽいよね。選んだ場所も、歌詞の書き方も。僕的には、こういう曲は作り方によっては危うい感じになるなって思っていたんです。ただ「地元が好きだぜ!」ていうだけだと曲にしづらいというか。

●ああ~、そうですね。

tommy:そういうのもあって、僕はなかなか手を付けられないジャンルというか、内容だったんですよね。なのでサブがこういう歌詞を書いてくれたっていうのはすごく嬉しかった。

●味があって、とてもいい曲ですよね。あと、聴いていて演奏がめちゃくちゃ難しいだろうなと思った曲があったんです。M-11「Still I go」という曲なんですけど、この曲はすごくいい雰囲気なんですけど、歌うのも演奏するのも、何処に軸を置いてるんだろうっていう。

tommy:そういう曲なんだと思います。正直ライブでどうなるのか僕らにもまだわからない(笑)。最初はファンキーなものが作りたいと思っていて、Wakaiにそんなニュアンスを伝えたんですけど、それがぐちゃぐちゃになってこんな曲になったんです。

●そうだったのか。

tommy:でも雰囲気がいいからまあいいか、みたいな。アルバム制作の最後に作ったんですけど、歌詞も最後の最後に書いて。それは前作のツアー中で、北海道に行ってオフがあったときだったんですけど、レコーディングまで時間がないから僕は歌詞を書かなくちゃいけなくて。なのに他の4人はPANと牧場に遊びに行っているという…。

サブ:PANの川さんとtommyだけ歌詞を書く作業があって、他のメンバーで牧場行こうかって(笑)。

tommy:みんなでスーパーファミコンやったり牧場行ったりしてて…。そりゃ歌詞の内容も小難しくなりますよ(笑)。

●アハハハハハ(笑)。

tommy:僕的にはいちばん最後に作った曲なんで、あんまり計算も何もできなくなっていて。とにかく吐き出せるものを吐き出せる曲が1曲欲しいっていう気持ちで。

●確かにいっぱい吐き出してますね。

tommy:だからこの曲がいちばん弱い。

●弱いですよね。"失望したり苛立ったり悩んだり"という歌詞の部分とか。

Wakai:牧場に対して言ってるんでしょうね(笑)。

tommy:自分の弱いところが出てますね。でも僕はすごく好きなんです。このアルバムでいちばん聴いてるかもしれない。ただ、表現は難しいですよね。曲としてちょっと変わってると思うし、キャッチーなサビがドーン! とあるような曲じゃないから。

●思いっきり演奏してもいい表現にはならないような曲ですよね。歌も、"メロディ"というか"言葉"みたいな乗り方をしてるし。

サブ:この曲は難しかった。
K-zoo:難易度高かったねこれ。

Wakai:特にリズム隊は大変だったかもしれないですね。

サブ:練習もそんなにできてなくて。行くぞーっていう。

tommy:それでも行くという意味で「Still I go」(笑)。

●白でもない黒でもない、中間色的なニュアンスが出ていますよね。

tommy:そういう意味では、今回のアルバムをすごく象徴している曲というか。歌詞とかも白黒がハッキリしていない歌詞が多くなったと思うんです。自分の中で、色んなものに白も黒もなかなかつけられないけど、それでもまだ行く! まだ進む! っていうひと言で結び終えられたことが、自分と向き合って救われたというか。

●答えを自分で見つけることができたことによって、自分自身も救われた。

tommy:そうですね。最後の1行をどうしようかとすごく悩んで。何時間も何時間もかかったんですよね。どう終えよう? って。もともとの歌詞では全然希望は持てなくて、「こんな人嫌でしょ?」っていうような内容なんですけど、最後の"それでも愛おしい日々を"という一節を出すのがちょっと大変でした。最初は全然違う終わり方を考えてて、めちゃめちゃ暗い内容の歌詞だったんですよ。なんせ牧場に行けなかった身ですから(笑)。でも最後の一節を差し替えたんです。そしたらすごくスッキリした。

「もうやるしかないよなっていう。そういう覚悟というか、今までよりもそれは強く思います。だから楽しみですし、大事なツアーになると思います」

●さっき「歌のキャッチーさが歌詞の内容も含めてかなり際立ってる作品だと思う」と言いましたけど、メロディと言葉の合わせ方とか、ここに来ていよいよひとつの地点に到達した感があるんです。

サブ:tommyの歌詞の上手いところはすごくいっぱいありますよね。それはたぶんキャラクターもあると思うんです。tommyが持っている説得力っていうのは、その人間性と歌詞がすごく合っていると同時に、メロディとの兼ね合いも考えてる思う。

●tommyはライブで顔をくしゃくしゃにして、泣いてるのか笑ってるのかよくわからない表情をするじゃないですか。今作を聴いていると、その表情が生き生きと浮かんでくるんです。

tommy:そう言ってもらえると嬉しいですけど、今回も歌詞はいつも通り苦労しました。前作も、自分の中に残るひと言だったり単語だったりを基本的には形にするようにしたんですけど、今回はその延長線上で更に突き詰めて。伝えたいことがあって書く歌詞もたくさんありますけど、伝えたいことを表現する中で、言葉とか単語レベルが持つインパクトというか響きを重視しつつ、ちゃんと自分の意見や物語が作れる様にって。そこは今までと比べてちょっと違うかもしれないです。

●なるほど。それにヴォーカルの表現の幅も着実に広がってますよね。

一成:色んなことを試しました。綺麗に歌えないので。

Wakai:悪い意味じゃなくて、どう頑張っても綺麗な歌は歌えないっていうことがわかったというか。

一成:色んな方法を試しながら徐々に広げていこうと思っています。それが…まだまだですけど…前回よりは出せたかなって。

tommy:一成は意外と自分の良さに気付けないタイプの人間なので、周りがジャッジをしてあげた方が良い部分が出てきたりするんですよね。おだててみたりとか、たまにすごい怒ってみたりとか。

一同:(爆笑)。

tommy:喜怒哀楽を注入すると光る。

●1人だけ年上ですけどね。

tommy:今回は一成も自分の幅の中での引き算を覚えたというか。ガットギターが入っているM-5「4:00 A.M. (午前四時)」の一成が僕はすごく好きなんですよ。特にどや声(※ラガっぽい一成のヴォーカルのこと)を駆使してるわけでもなくて、サラッと歌ってる感じで。昔は、嫌な言い方をすると誰が歌っても成り立つような聴こえ方をしちゃうときがあって、それがすごく僕の中で反省点だったんです。

●ああ~。

tommy:でも、じゃあ激しい曲じゃないと一成を活かせないのかと言うと、実はそんなことも無くて。そういうことに、色んな歌い方を試してみて気付いたんです。こいつは色んなことをガムシャラにやってきたので、結果それが素の状態まで近づいても染み付いてるんだなって。この曲の一成の歌は、何も武器を持たない素の状態なんですけど、今までよりも「これは一成じゃないと良くないな」って思えたんですよね。

●うんうん。今まで、僕はtommyの歌には"エモーショナル"な印象を持っていて、対して一成くんの歌には"アグレッシブ"な印象を持っていたんです。でも今回、この「4:00 A.M.」だけじゃないんですけど、一成くんの歌からも"エモーショナル"を感じたりもしたんですよね。それが新鮮だった。

一同:お~。
K-zoo:30歳にもなると味も出てくるんでしょうね。

●人生自体がエモくなってきたんでしょうか?

一成:エモいですよ。

●この号が出るころには既にツアーも始まっていますが、今回のファイナルも代官山UNITでワンマンですね。UNITでは2回目、自身ワンマンは3回目。今回はどのように考えていますか?

tommy:すげー頑張って練習します。

●新曲は全部やる?
K-zoo:時間の問題的に出来ないと思うんですけど…。昔の曲もやりたいし。

●今作は12曲で30分ちょっとだから全部やったらええやん。

一同:(爆笑)。

tommy:でも昔の曲もやりたいんですよ。もちろんレコ発なんですけど、自分たちができるいちばんいいライブを毎日やるだけの話なので。昔の曲ももちろんやるし、当然ツアーをやっていく中でライブも変わっていくだろうし。

●うんうん。

tommy:さっき一成が言っていた「"楽しむ"ということが頭ではわかってたけど実際に痛感した」という部分…今年は震災があったし、ツアーを延期する場所が出てきてしまったりとかもあって…言葉にすると当たり前なんですけど、ツアーをまわれることやライブができることは当たり前じゃないし、いつまで続けられるかもわからないことじゃないですか。

●そうですね。

tommy:そういうことを今までと違う感覚で痛感したんです。そんなことを考えるのは嫌だけど、その場所に行けるのはもう最後になるかもしれない…だとしたら、もうやるしかないよなっていう。そういう覚悟というか、今までよりもそれは強く思います。だから楽しみですし、大事なツアーになると思います。

●楽しみですね。では最後に、UNITに向けての意気込みを一成くんお願いします。

一成:はい…。それでもやります! やり込みます!

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:HiGUMA

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