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NUDGE’EM ALL

愛さずにはいられない不変の“ナッヂ節”が鳴り響いている

 数多くの人気アーティストに愛されるバンド、NUDGE'EM ALLがニューアルバム『SEE』をリリースする。通算4作目のフルアルバムとなる今作は、なんと前作の3rdアルバム『SUNN』から6年ぶりの作品だ。活動休止期間も乗り越えて、現メンバーになってから15年目のキャリアを迎えている彼ら。今やりたいことに取り組む姿勢で表現の幅を広げつつも、職人芸とも言える不変のグッドメロディは“ナッヂ節”と言うほかない。良い意味でのゆるさを持った独自のスタンスに磨きをかけて生み出された今作を聴けば、彼らが愛される理由がきっと見えてくるだろう。

Interview

「"2軍根性"みたいなものが、曲の中でも爆発していて。ダメな人がちょっと頑張ろうとしている感じは、どの曲にも出ているんじゃないかな」

●6年ぶりの新譜ですが、活動休止の期間も挟んだりと紆余曲折があったんですよね? ブログにも「6万回くらいは解散の危機があった」とありましたが…。

坂木:ブログは筆が滑っただけです…(笑)。

真田:6万回っていうことは、今もなお解散の危機が続いているくらいのレベルですからね(笑)。

●活動休止の時もそこまでの危機ではなかった?

坂木:その時は活動休止にするか解散するかという話もありましたね。でも"解散"としてしまうと大げさになるので、グレーゾーンにしておきました(笑)。

真田:"休止したまま二度と復活しない可能性もあるし、復活するかもしれない"というニュアンスで。別にメンバーの仲が悪くなったわけでもないですし、活動できる環境になれば復活したいなとは思っていたんです。

●バンド内の問題というよりは現実的な事情?

坂木:音楽的にどうこうとかいうカッコ良い理由じゃなくて、"ちょっと忙しいから休止しよっか?"みたいな感じでしたね(笑)。休止中にもライブのお誘いをちょこちょこ頂いたりして、2回くらい復活ライブをしているんですよ。そこで楽しかったので、"もう1回ゆるくやってみよっか?"ということで活動再開しました。

●ライブでも野沢(Ba./Cho.)さんが参加しない日があったり、アーティスト写真にもサポートの武正(G.:KEYTALK)くんが写っていたりと、良い意味での"ゆるさ"が活動スタンスの特徴なのかなと。

坂木:活動休止の時に解散するか迷ったように、結構ブレるんです(笑)。"楽しくやれればいいじゃん"っていう想いがあるので、メンバーも頑なに固定はしていなくて。ライブも今は普段着でやっているけど、コスプレしてやってもいいし、楽器を突然変えてもいい。とにかく楽しく遊べればいいし、楽しくないことはしたくないから。

真田:この歳になるまで売れないバンドをずっとやっていると、楽しいっていうところにしか拠りどころがないんですよ(笑)。

●(笑)。でもそれが長く活動が続いている理由でもあるんでしょうね。

真田:今のメンバーになって、もう15年ですからね。そんなに頑なじゃなかったから続いたのかもしれない。

坂木:売れなかったから続いたんだよ(笑)。売れたら売れたで、余計な欲が出てくるから続かなかったと思う。

●"売れない"を押し過ぎですから…。せっかく新譜を出すのに、レーベルに怒られますよ(笑)。

真田:逆に売れなさ過ぎても活動が続かないですからね。ライブに誘ってもらったり、レーベルに音源を出さないかと言ってもらえるギリギリのラインで何とか踏みとどまっていたんです(笑)。

●そうやって求められたから、今作『SEE』もリリースできるわけですよね。

坂木:2009年に活動再開を決めたんですけど、何となくやるのも嫌だなと思ったのでアルバムを作るという目標を立てたんです。

真田:ライブ活動を再開してからは曲もちょこちょこできていたんですけど、そこでKOGA RecordsのSさんが「アルバムを出しましょうよ」と熱心に言ってくれて。それをコガ社長も後押ししてくれたので、出せることになりました。

●曲作りは活動再開後から?

坂木:前作の3rdアルバム『SUNN』(2005年)を作った後に、何曲かはプリプロしていて。そこに活動再開後の曲も足した感じですね。

真田:活動再開後に作った曲の方が割合的には多いかな。M-1「MAGIC」やM-3「PILOT」は2009年にはもうライブでやっていました。早い段階でできていた曲は2005年からあったんですけど、一番最後にできたM-10「トンネル」は今回のレコーディングが一度終わった後に作ったんです(笑)。

●一度、レコーディング終了したはずなのに(笑)。

真田:他の曲を全て録り終えた後にボーナストラック的な感じでもう1曲あってもいいんじゃないかという話になって、そこから坂木くんが曲を作りました(笑)。ミックス終了からマスタリングまでに1週間くらいあったので、その間にゼロから作ったんです。

坂木:期間が短かった割には、良い曲ができたと思います。

●M-2「オレンジ電車」や「PILOT」から特に感じるんですが、ちょっと懐かしい匂いのするアルバムだと思いました。

真田:それは曲から、僕らの加齢臭が漂っているんだと思います(笑)。

坂木:僕らにとっては懐かしくないんですよね。時代が先に行っているから、自分たちが懐かしい存在になっているんじゃないかなって(笑)。

●そういう意味じゃなくて(笑)、たとえば60年代の音楽から影響を受けていたりするルーツが曲に出ているのかなと。

真田:元々、最新の音楽をやっているバンドではないんですよ。その時代ごとに盛んなシーンに加わっていたわけでもなくて、少し外れたところでひっそりと活動していたバンドなのでそう感じるのかもしれないですね。

坂木:始めた当初はパンク系に分類されていて、HUSKING BEEとかとやったりもしていたんです。それ以外にも当時から色んなイベントに呼ばれてライブしていたんですけど、どこに行っても仲間に入れない感じが自分たちの中ではあって。

●音楽的にハマるシーンがなかった。

真田:どこでも仲間に入れてもらえるんだけど、どこに行ってもちょっと違う感じがあった。逆にそうだったから、ここまで続けてこられたのかもしれないけど。

坂木:もうちょっとモテそうな音楽をやっていれば良かったっていう後悔の念が、「オレンジ電車」とかには反映されているんじゃないかな(笑)。そこが懐かしい感じにもつながっているのかも。そもそもムーブメントの中に入るために音楽をやっているわけじゃなくて、一緒にやっていて"気持ち良い"っていうことが学生時代から活動の根底になっているから。そこは当時から崩さないようにしています。

●流行やシーンを意識したりはしない。

真田:そんなマーケティング的な能力は皆無だし(笑)、自分たちの中から出てきたものをやるっていうスタンスはずっと変わっていないんです。

坂木:何でもかんでもやるんじゃなくて、自分たちが得意なことをやった方が良いと思うんです。僕らが好きなことをやっている方がお客さんにも喜んでもらえると思うし…少数派でしたけど。

真田:スキマ産業みたいなものですよ(笑)。

●似たようなバンドもいないですよね。

坂木:どんなバンドをやっているのか訊かれても、説明に困るんですよ。聴いている音楽にも節操がないから。今作でM-11「SIR DUKE」をカバーしているStevie Wonderも聴けば、NOFXも聴くし、おニャン子クラブや松田聖子も聴いたりする。何か1つのジャンルを突き詰めるわけでもなく、良いと思ったものは聴く。そんな感じだから、こういう音楽になっているんでしょうね。

●そういうスタンスもメンバーで共通している?

真田:長い付き合いなので、音楽的な好みが形成される時期も一緒にいたんですよ。同じ環境にいたから、好きなものや嫌いなものの感覚を自然と共有しているのかな。

坂木:元々お互いに聴いていたものは近くないんですけど、長く一緒にやる内に"このポイントでやると、音楽って楽しいね"って思う部分が重なってきたんだと思います。

●「MAGIC」の歌詞は、そういう音楽の楽しさみたいなものが表れていますね。

坂木:今までの歌詞は内面の暗い部分を織り込んでいるものが多かったんですけど、この曲はダンサブルな曲調だったので自然とこういう歌詞になった感じです。

真田:僕が書いている歌詞は、今回も暗い内容が多いですね。

●ドラマーが歌詞を書くバンドも珍しいのでは?

真田:今回も半分くらいは僕が書いているんですけど、これは2ndアルバム『GET ENOUGH』あたりから始まったことで。レコーディング直前になっても歌詞があがってこないので、野沢も入れた3人で手分けして書くようになったんです。今回はM-4「MY LITTLE LOVER」とM-12「コレでサヨナラ」をスタジオでやった時に坂木くんが歌いやすいということだったので、僕は日本語の歌詞を結構書いてみました。

坂木:僕は昔から真田くんが書く文章が好きだったので、今回の日本語詞も書いてもらったんです。そしたらやっぱり良いものがあがってきたし、今後の可能性もふくらんだかなと思います。

●今回、野沢さんは1曲だけしか歌詞を書いていないですが。

坂木:彼はちょっと忙しかったんです(笑)。レコーディング自体には全曲参加していますけどね。

●武正くんもレコーディングから参加しているんですよね。

坂木:ギターソロはほとんど彼が弾いています。そこは前のサポートメンバーの時から同じなんですけど、完全に任せていましたね。せっかく一緒にやっているのでサポートだろうが正式メンバーだろうが関係なく、友だちと遊んでいる感覚なんですよ。

真田:彼をライブで観た時にすごく楽しそうにギターを弾いていたので、今回は参加してもらったんです。それに上手いですからね。

●武正くんはギターも上手いし、ライブでのインパクトもすごく強い。

真田:ウチらはただでさえ消えそうなライブパフォーマンスなので、1人くらいは印象に残る人がいてもいいんじゃないかなって。

坂木:ギターのサポートというよりも、ライブではパフォーマンスのサポートという感じですね(笑)。

●パフォーマー要員なんだ(笑)。彼が加わったことで、バンドに新しい色も加わったのでは?

真田:今回はこの4人でレコーディングもしたので、武正が弾いたギターも含めての"NUDGE'EM ALL"だと思うんです。

坂木:そもそも"NUDGE'EM ALLらしさとは何か?"みたいなものも、自分たちの中では特にないので。この4人のセッションで作ったものだから4人の名前を羅列するだけでも別にいいんですけど、商品としてわかりやすくするために"NUDGE'EM ALL"というバンド名を記号的に使っているだけですね。

●バンドとしての進化も感じている?

坂木:進化なのか退化なのかはわからないですけど、変化はしていると思います(笑)。ライブでも変化は感じていて、前ほど緊張しなくなったんですよ。もっと若い頃は緊張してMCで喋れなくなったりもしたんですけど…人前に出るのが苦手なんです。

真田:じゃあ、なんでバンドをやっているんだよ!?

一同:(笑)。

●そういうちょっと頼りない感じも、良い意味で音に出ている気がします。

坂木:"2軍根性"みたいなものが、曲の中でも爆発していて。昔から学校の教室でも前の方で騒いでいる感じじゃなくて、片隅でひっそりと盛り上がっている方なんです。冬の校庭で好きな子に雪玉を投げたいんだけど、躊躇している内に1軍の連中が出てきて先にやられちゃう感じ(笑)。

真田:手の中で雪が溶けていくんだよね…。

●切ない! (笑)。

坂木:その切なさが曲にも出ていると思います(笑)。そういう青春を経験した人は結構いると思うんですよ。ダメな人がちょっと頑張ろうとしている感じはどの曲にも出ているんじゃないかな。今後はそっちの仲間を増やしていきたいですね。

Interview:IMAI