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odd

炸裂するズバ抜けたセンスと独自のグルーヴが生むアンサンブルに心も身体も揺さぶられる

センスの塊のようなバンドアンサンブルと、全てがキラーチューンとも言うべき名曲揃いの1stフルアルバム『qualia』でインディーズシーンに衝撃をもたらした千葉県柏発3ピースバンド、odd(オド)。昨年12月の前作リリースより全国45ヶ所に及ぶツアーを経てバンドの結束を固めた3人は、作曲スキルとメロディセンスにもさらに磨きをかけて帰ってきた。約11ヶ月ぶりにリリースされる1stミニアルバム『biotop』にはブラックミュージックのグルーヴ感とロックの高揚感が同居しつつ、普遍的なメロディと心に残る歌声という全ての魅力が炸裂した名作だ。

「お客さんにも気持ちよく歌ってもらえるような、自分たちなりの“踊れるシンガロング”というものを盛り込めたかな」

●昨年12月に1stフルアルバム『qualia』をリリースしてからは、長期のツアーをまわっていたんですよね。

ryo:45ヶ所もまわって、本当に長いツアーでしたね。

masahiro:あんなに車の中で寝たことは、これまでなかったです(笑)。大変な部分もありましたけど、おかげでメンタル的に強くなった気がします。

●ツアーで得たものも大きかったのでは?

ryo:メンバーと寝食を共にして長い時間を一緒に過ごしたおかげで、人間的にグッと近付くことができて。それが今回の作品にも反映されていると思いますね。

●バンド内の結束が強まったことも、今作に良い影響を与えていると。

ryo:続けることの大切さというか、同じメンバーで長く一緒にいることがどれだけ身になるのかということを実感しました。それによって、曲をこれだけ具現化できるようになるんだなと。

●長く一緒にいる中でお互いへの理解が深まって、ニュアンスが伝わりやすくなったりもするのでは?

tetsu:フィーリングがわかるんですよね。最初の頃はryoに「こういうドラムを叩いて」と言われても、“何を言っているんだろう?”というところがあったんです。でも今回の『biotop』を作る時にはそういうニュアンスもすんなり入ってきたし、スムーズにいったと思います。

masahiro:ryoはアコギの弾き語りで曲を持ってくるので、感覚が合致している時はそのままのフレーズを弾くようにしていて。でも自分の色を出したいところではちゃんと出せているし、バランス良くできていますね。

●M-3「H.G.L」では、masahiroくんの変態的ギターリフが炸裂していますね(笑)。

masahiro:出ちゃいました(笑)。リフを乗せる時は考えてから作る部分もあるけど、後で聴くと最初に出てきたものがベストだったと思う場合が多くて。「H.G.L」の変態的なリフも、自然に出てきたものですね。

●masahiroくんの個性が自然と曲に反映された。

ryo:原曲は僕が大まかに作ってくるんですけど、最終的には三位一体になっていなきゃ意味がないので。一緒にツアーをまわったことで2人の良さがよりわかったし、その引き出し方もわかったんです。そういう意味で、今回の制作はすごくスムーズだったんじゃないかな。

tetsu:スムーズではあったんですけど、もう少し時間にゆとりを持ってやりたかったかな。でも限られた時間の中で各々にやらなきゃいけないことがあったので、集中してやれたことは確かですね。

masahiro:時間がない中で作ったことによって、考えすぎず自然に出てきたものが多いんですよね。でもそれがグッとくるものになっているので、“これは間違いないな”と思いました。

●時間がない中での制作だったんですね。

ryo:レコーディングが6月中旬に決まっていたんです。だから前回のツアー中にも、アコギでフレーズを作ったりはしていて。そうやって集めたネタをツアー後に組み立てて、3人でスタジオに入ったという流れですね。

●ツアーファイナルが5月だったわけですから、1ヶ月くらいしかなかったと。

ryo:その間で曲作りをしなきゃいけなかったんですけど、その間にもライブが入っていたので3人で「ヤバいね…」と。「この日までにこの曲は仕上げよう」とかスケジュールをちゃんと決めて作っていきました。でもその日程どおりにやらなきゃいけないとなったら、その方が体も動くし集中力も増して。時間がない中でも自分たちのやりたいことを表現して詰め込めたので、“これくらいはできるんだ”という自信にもなりましたね。

●タイトなスケジュールが自信にもつながった。

ryo:作っている最中にも、手応えがあったんです。時間がない中でも楽しく、濃く、楽曲制作ができたという実感がありますね。

●8曲入りということは、最初から決まっていた?

tetsu:ミニアルバムにすることは決まっていたので、漠然と8曲くらいを目安に作っていこうかと話し合って。

●前作には過去のデモ音源からも数多く収録されていましたが、今回はどれも新曲?

ryo:M-5「withdrawaltz」とM-8「prayer」だけは、デモ音源に収録されていた曲です。でも「withdrawaltz」はバイオリンが入ってアレンジが変わっているし、「prayer」はBメロとサビ以外を全部変えちゃったりしているので、全て新曲と言ってもいい感じですね。

●「withdrawaltz」のバイオリンが印象的でした。

ryo:元々、今回はゲストミュージシャンを入れてみたいと考えていたんですよ。そこで「withdrawaltz」にストリングスを入れたら面白そうだというアイデアが出たので、バイオリンを弾ける方にお願いしてみました。

●元々、ゲストを入れようと考えていたんですね。

ryo:アルバムはライブと違って1つの作品として、その曲が良くなるならゲストを入れてやるのも楽しいなと思うんです。メンバー全員が抵抗感もなく、せっかくの機会だからやってみようということになりました。

masahiro:今回はバイオリンを入れたんですけど、今後はもっと色々やっていけたらいいなとも思っていて。

tetsu:1曲1曲の雰囲気を見た時に“こういうのがあってもいいんじゃない?”というものが浮かんで、それがマッチすると思ったらきっと管楽器やパーカッションも入れたりすると思う。今回挑戦してすごく良くなったので、また次も試みるだろうなと。

●今作を作ったことで、表現の幅も広がった。

tetsu:前作の『qualia』は過去音源からの曲が多かったんですけど、当時の自分が影響を受けていたドラマーと今好きなドラマーは違ったりするんですよ。今の自分がやりたいことを新しい曲たちには入れたかったし、メンバーも「いいんじゃないか」と言ってくれて。ちゃんと曲やメロディを引き立てる縁の下の力持ちとしての役割もできているので、すごく良いものになったんじゃないかと思っています。

●ドラムの志向が変わったことも、今作に良い影響をもたらしている。

tetsu:以前はハードコア系の音楽が好きで、そういうドラミングに憧れていたんです。でも最近はtoeやASPARAGUSとかthe HIATUSみたいに、8ビートをどれだけ渋く叩けるかというところにこだわっているんですよ。自分の憧れが変わったことで、oddで表現したいことも変わってきて。その変化が前作から『biotop』への流れで上手くマッチした感覚があります。

●好みの変化には、oddの活動も関係している?

tetsu:それは確実にあります。oddをやっていく内にもっと音楽が好きになって、聴く音楽や曲の聴き方とかが変わったんですよね。自分で言うのも何ですけど、進化があったからこそだと思います。

●前作からメンバー個々が進化していることも、ちゃんと作品に反映されているんですね。

ryo:前作は良い意味で初期衝動的だったんですけど、まだまだ至らない部分がたくさんあって。経験も含めて、色んな面で足りないことが多かったんです。でも前回のツアーをまわったことで、経験値が増えたんですよね。曲作りのスキルも上がったし、それが今回の楽曲にはガッツリと反映されていると思います。

●M-1「route6」でのコーラスの掛け合いやM-2「nina」に手拍子を導入したのも、ツアーの経験からかなと。

ryo:ライブを想定して、曲を作るようになりましたね。自分たちなりのシンガロングパートを作ることでお客さんも一緒に歌ってもらえたら、そのレスポンスがライブを作ると感じたので。お客さんにも気持ちよく歌ってもらえるような、自分たちなりの“踊れるシンガロング”というものを色んな曲に盛り込めたかなと思います。

●しかも今回から日本語詞が増えたことで、お客さんも一緒に歌いやすくなったでしょうね。

ryo:自分の歌は、日本語のほうがメロディに乗りやすいことに気付いたんです。自分独自の節回しや、言葉のニュアンスを出しやすいのが日本語だったというか。だから今回は楽曲制作の中でまずメロディを作る時点から、日本語を意識して作ったんですよ。そうすると、必然的に日本語詞が多くなって。

●日本語詞が増えたことで、歌詞の内容も変わった?

ryo:ストーリー性が強くなったかもしれませんね。前作の歌詞は“生き方とは”とか“怒り”をテーマにしたものが多かったんですけど、今は歌詞も1つの作品として考えるようになって変わってきたんです。せっかく日本語詞でやるんだったら、日本語にしかない響きや節回しを含めていきたいなと思っていました。

●たとえば日本語詞の「route6」はどんな内容?

ryo:国道6号線(route6)が、僕の住む葛飾とホームの柏を結んでいるんです。この曲は地元愛をテーマに、ストーリーを作っていって。“どれだけ時が経っても、想いはこの曲に残って消えない”ということを歌っているんですけど、恋愛の要素も含みつつ色んな解釈ができるようにしています。

●「nina」は英語詞ですが、こちらにも“僕は下町生まれだけど”という地元愛を感じさせるフレーズが出てきますね。

ryo:そうですね。この曲は恋愛の歌で、主人公の自分がアプローチをしている女の子の前に立ったら…というイメージで書いています。この曲は、歌を意識して作りました。正直、これがリード曲になるとは僕自身は想定していなかったんですけど、一番客観的に見てくれるスタッフが「これが良い」と言ってくれたんですよ。本当にどれがリード曲になっても良いくらいだし、全てに対して愛情がグッと詰まっている作品ですね。

●全体的に歌がより前面に出てきた感じがあります。

masahiro:今作は1曲1曲が濃いし、メロディが以前よりも前面に押し出されている気がしました。

tetsu:“(ryoは)こういうメロディが好きなんだろうな”と思う部分は変わっていないんですけど、前作に比べると自由になったというか。歌いたいように歌って、作りたいように作っている感じがありますね。

●より解き放たれた感じというか。

ryo:実際、解き放たれた感じがあるんです。今回はメロディにこだわって作りつつ、色んなビートを取り入れたりもしていて。ある程度の縛りは設けた中で、すごく自由にできたというか。しっかりとテーマに沿って、自分たちの良さを出そうとした結果が今作ですね。そこのスキルが前作よりも上がった結果、前よりもオリジナリティが色濃く出ている作品になったんじゃないかと思います。作品を重ねるごとにもっと色んなことができそうな予感がしているし、次の作品を自分が心待ちにしちゃうような制作が今回はできたんですよね。

●今後の進化も予感させる作品になっている。

tetsu:作っている時に“こうなるんだろうな”って想像していたものが、ちゃんとできているんですよ。それは自分の進歩でもあるし、3人の進歩でもあって。そこには『qualia』のツアーが大きかったと思うし、ライブを重ねていく中で得た力だと思っていて。今やりたいことや今できることを最大限に入れられた作品だと思います。

●今作のツアーも楽しみなんじゃないですか?

ryo:『qualia』を聴いて僕らを知ってくれた人にも、全く聴いたことがない人にも、好きになってもらえる作品ができたんじゃないかと思っていて。色んな人と各地で音楽を共有できたらなと思っているので、みなさんに会えるのが楽しみです!

masahiro:今回のツアーは、前回のツアーでの出会いも含めてこれまでに知り合った人とのつながりで組めたんです。ファイナルのSHELTERワンマンは夢の舞台なのでドキドキしつつ、今年一番の楽しみというくらいに考えていて。各地でのツアーを重ねた上で進化した僕らの姿を観に来てほしいですね。

tetsu:ファイナルは初のワンマンということで僕らにとっては挑戦でもあるから、きちんと成功させて来年に向かっていけたらいいなと思います。

Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M

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