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OverTheDogs

ポップであるという難行に挑む彼らのニュースタンダード

2010年にインディーズでリリースされた1stアルバム『A STAR LIGHT IN MY LIFE』は、OverTheDogsにとって大きな転機となる作品だったと言えるだろう。そこから彼らは一躍注目を集め、2011年10月にはアルバム『トケメグル』でメジャーデビューを果たす。新たなフィールドでも順調に支持を広げていく中で11/7に発表される、今回のニューアルバム『プレゼント』。その発売を機に、周囲から見れば急激にも思える環境変化の中で彼ら自身がどんな進化を遂げてきたのか、中心人物のVo./G.恒吉豊に久々のインタビューで迫った。

「なりたい自分には近付けている気がします。やっていることは変わらないんですけど、自分の中で変化は常にしているなっていうのはわかる。」

●JUNGLE☆LIFEでのインタビューはインディー時代の1stアルバム『A STAR LIGHT IN MY LIFE』(2010年6月)以来となりますが、この間にバンドを取り巻く状況は随分と変わったように思います。

恒吉:でも、やることは意外と変わっていないんですよね。普通に毎日、曲を書いたり、練習したり、良いCDを見つけたらみんなで聴いたりとか、本当に何も変わっていなくて。反響っていう意味では、僕らの音楽を聴いてくれて「良かったよ!」と言ってくれる人が増えたのはもちろん嬉しいんですけど、それがたとえば50人でも300人でも人数はあまり関係ないと思うから。そこで規模が大きくなったという実感はあまりないですね。

●メジャーデビューによっての意識的な変化もない?

恒吉:やっぱり、音楽で少しはご飯が食べられるようになるんだっていうことは嬉しかったですけどね。でも根本的な部分は変わっていないので、“昨日は昨日で、今日は今日”っていうくらいの違いです。“もっと色んな人に聴かれたい”っていう気持ちもずっとあるものだし、メジャーだからということで変わってはいないですね。

●改めて『A STAR LIGHT IN MY LIFE』の頃のPVを見てみると、服装も含めて今よりロック/ガレージっぽい匂いが強いんですよね。でも今はもっと柔らかい雰囲気になった気がします。

恒吉:確かにそうですね。昔のほうがわかりやすく、性格がトガっていたかもしれない。その当時より2年前だったら、たぶんもっとトガっていたんじゃないかな。でも今はトガッているものにヤスリをかけていきたいっていう気持ちに、だんだんなってきたんですよ。

●そう思うようになったのはなぜ?

恒吉:今、世間で流行っているような音楽を色々と聴いてみた時に、クセのあるものがすごく評価される時代だなと思って。その瞬間に、トガることが僕の中で何かアホらしくなったというか。“逆のことをしたほうがいいな”っていう感覚がちょっとあったんです。あからさまにトガっていたりするものよりも、もっとポップなほうに行きたいなと。ポップになることのほうが難しいと、僕は思っているんですよ。たとえば僕の内面がすごくロックなんだったらいいんですけど、そんな気もしない。だったら、難しいポップなほうに自分は行きたいなって。

●耳触りがいいポップな曲なのに流れていかず、ちゃんと心に突き刺さる感じって難しいですよね。

恒吉:“そこで突き刺せたヤツのほうがロックじゃないか”っていう気持ちがあって。何だかそんな感じがしたんですよね。『A STAR LIGHT IN MY LIFE』の頃からもう、それにどんどん近付いていっていたというか。以前よりもっと言葉を選ぶようになったのは、その頃からでしたね。

●言葉を選ぶようになったことで、音楽的にも変化があった?

恒吉:僕はメロディと歌詞を同時進行で書いていくことが多いので、言葉選びがちょっと変わるとアレンジも少しずつ変わっていきましたね。

●優しいタッチの歌が増えていったように思うんですが、それは歌詞の変化とも関係している?

恒吉:王道をやっていても、どこかで違和感を残したいと思っているんです。だから「神様になれますように」(メジャーデビューアルバム『トケメグル』収録)でも神様にお願いするんじゃなくて、神様になっちゃおうと言うことでちょっとした違和感を残していて。そういう違和感とか、曲に対しての行間を残しておきたいっていう気持ちがあるんですよ。

●行間に隠された意味を読み取る余地がある歌詞。

恒吉:聴いてくれた人が少し考えられるというか、遊べる感じの歌詞ですね。M-4「プレゼントの降る街」というタイトルにしても、たとえば「ケーキが降る街」や「お金が降る街」だと具体的すぎて何も遊べない気がして。でもそこを“プレゼント”にしてしまえば、その中身はもう聴いてる人の自由だから。その発想って、自分の中でポップだなと思うんですよね。

●“プレゼント”という言葉にすることで、リスナーの想像の余地が増えるわけですね。

恒吉:自分の中にも行間を残すんです。自分の頭の中でも“どうなんだろう?”っていう感じで結論は出さないし、出せないんですよね。だからM-11「愛」でも“愛というものがあるなら僕は信じて生きよう”だし、“疑ってみよう”と歌っていて。結局、答えが出ないままなんですけど、僕はそれでいいかなと思うんですよ。

●無理に答えを出さないし、言い切らないというか。

恒吉:そっちのほうが自分の中では正直だから。実際に僕も成長するし、周りの人もみんな年を取ったりして価値観って変わっていくじゃないですか。だから逆に言えば、言い切っちゃうのは怖いんですよね。たとえば「愛は素晴らしい」と言ったところで、もし人に裏切り続けられたりした時にはやっぱり素晴らしいと思えなくなるかもしれない。そう考えたらやっぱり自分は愛を疑ってるなと思うし、それをそのまま書くしかなくて。

●時間が経てば、人の考えは当然変わっていくわけですからね。前の作品と言っていることが違っていても、「その時の俺はそうだったんだよ」と言ってしまえる人がロックっぽいのかもしれないですが。

恒吉:そういう意味で言えば僕、ロックです(笑)。辻褄が合ってないとか、不条理な感じがあっても関係ないですからね。それは、今日生きていても明日死ぬかもしれないっていうのと一緒で。たとえば小学生の頃、僕は茶碗蒸しがすごく好きだったんですよ。好きすぎて1日に10個くらい食べちゃったら、気持ち悪くなって次の日から逆に食べられなくなって…。

●10個は食べすぎでしょ(笑)。でもそういう経験はありますね。

恒吉:みんなも経験があると思うし、“そんなもんだな”って思うんですよ。言い切っちゃっても、意外と1年後には変わっていたりする。だから僕が言い切ったことによって、誰かに迷惑をかけちゃうかもしれないわけで。かといって他人の気持ちを考えすぎたら何も書けないんですけど、変に押し付けがましい感じにはしたくない。学校の先生が「夢というのはこういうものですよ」みたいなことを言っているのを聴くと、僕はイラッとしたんですよね。(答えは)1つに限らないことばかりだなと思っているから。基本的に言葉は曖昧な方が、実は人に伝わるのかなと思っています。

●でも答えは出なくても、考えていないわけじゃない。

恒吉:やっぱり結論が出ないことって、すごく考えちゃうんですよね。「昨日はこう考えていたけど、よく考えたらこうだよな」とか毎日考えていると、良い結論が出たりもするから。昔は(結論が)悪い方向にばかり行っていたんですけど、今は良い方向に行くようになったし、そのコツも覚えて。以前は「ああ、死ぬんだ…」っていうところで終わっていたものが、良い意味で「どうせ死ぬし」っていうところで落ち着いている。

●いつか死ぬという事実を前向きに捉えられるようになった。

恒吉:ハッピーエンドを皮肉る余裕ができたというか。昔はハッピーエンドまでも行けなかったんです。でも今は「これでいいじゃん」って思えるようになったから、逆に皮肉れる角度を持てたんですよね。だから何か今は、良い状態だなと思っていて。

●それが雰囲気にも出ていますよね。

恒吉:ちゃんと進化しているというか、なりたい自分には近付けている気がします。やっていることは変わらないんですけど、自分の中で変化は常にしているなっていうのはわかる。「あの時、俺はカッコ良かった」とか、歳をとって昔の自分を追っかけるのってすごくカッコ悪いなと思うんですよ。良い意味で余裕が出てきて、大人に近付いている感じはありますね。

●考え方も柔軟になってきていたりする?

恒吉:プロデューサーの方とも意見が全部一緒になるわけじゃないから、正直「なんで自分の音楽なのに、他人にここまで言われなきゃいけないんだろう?」と思うこともあって。昔の自分だったら「触れんなよ」と怒って終わっていたんですけど、今は「まぁいっか」と思えるんですよね。本当にイヤなら、後で自分たちだけで録り直せばいいだけだから。

●一度は他人の意見を受け入れるのも、余裕が生まれたからこそでしょうね。

恒吉:それで実際にやってみたら、納得するものもあったりするんです。今ならそこで「しめしめ」と思うんですけど、昔は無理だったんですよ。そういう意味でズル賢くなれなかったし、変にピュアだったんでしょうね。譲れないところは今もちゃんとあるし、納得できなかったらもう1回やり直す。自分でも良い成長はしているかなと。

●今回のプロデュースは、江口亮さんですが。

恒吉:今回はプロデューサーが付いていながら、半分くらいの曲では「あまり口を出さないでくれ」と言ったんです。「江口さんと一緒にやりたい」と思う曲もあれば、「これは最後に意見を下さい」という曲もあったから。だから、すごく不器用な形がそのまま出ている曲もあるんですよ。江口さんに最初から相談していたら、もっと聴きやすいものになっただろうなとは思います。でもバンドの不器用な感じがそのまま出ているものは今しかできないから、それはそれとして収録したいなと。

●全部をきれいにまとめてしまわないというか。

恒吉:進歩していないところもありますからね。そこを変に修正して進歩しているように見せた結果、“何なんだろう?”って思う曲にもなっちゃうから。M-6「凡考性命紊(はんこうせいめいぶん)」なんてレコーディング中に、僕はめちゃくちゃ動きながらギターを弾いていて。「聴きづらくてもいいから、とにかくガンガンやっておこう」みたいな感じで、それが後から笑えるなと。そういうものが大事だという気がするんですよね。

●素の部分って、その時しか出せないものですからね。そういう意味でラストのM-12「カレーでおはよう」には、素の部分が一番出ている気がしました。

恒吉:この曲はスタジオにマイクを立てて、一発録りみたいな感じでやりました。「愛(album version)」は江口さんが中心になってアレンジしたんですけど、めちゃくちゃカッコ良くなっちゃったんです。そこに対してやっぱり悔しさもあったし、カッコ良いままでこのアルバムを終わってはいけないと思って。僕の中にあるイメージですけど、「愛」で終わったらアルバム4枚で終わってしまう気がしたんですよ。でも「カレーでおはよう」で終わることによって、これからアルバムを何十枚も出せる気がしたんです。

●どの曲も作りこまれたものだと疲れてしまうし、長続きしないというのはあるかもしれない。

恒吉:「カレーでおはよう」には、今後の自分をちょっと照らし合わせたようなところがあるんです。僕の歌はキーが高いんですけど、最近はそれが疲れるなと思う瞬間があって。だからこの曲はあえて低いキーで作って、声をあまり張らずに歌入れをしたんですよ。部屋で作った感じのままだし、それも新しい自分というか。

●素の部分も出していかないと、人前でイメージを保ち続けるのはしんどいですよね。

恒吉:しんどいですね。だから福山雅治さんが下ネタを言っても受け入れられてるのは、本当にうらやましいなと思うんです。僕だって、下ネタとか言いたいし(笑)。変にイメージを作ってもらうよりも、「そんなもんですよ、僕は」っていうか。

●下ネタを言ったりするんですか?

恒吉:下ネタ大好きですよ。もし下ネタがなかったら、もっと争いが絶えないんじゃないかな(笑)。それがあることによって、ライブの打ち上げとかも上手くまわっているわけで。ポップな下ネタは好きですね。

●そこにもポップさを求めていると。

恒吉:「下ネタにもポップさを求める」、これが今回の見出しですね!
一同:(爆笑)。

Interview:IMAI
Assistant:Kaori.T

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