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恐るべき最高傑作を手に“無冠の帝王”が軟弱なギターロックに終止符を打つ

Vo./G.山本章人
Ba.冨田俊輔
Dr.河村雄二

pegmapが遂に、5年ぶりとなるニューアルバム『see you,again』をリリースする。昨年4月に『COME BACK ep』と共に再始動を果たし、ライブハウスシーンの最前線に帰ってきた彼ら。
リスナーだけでなく周囲のアーティストからも大きな喝采と期待を受けながら も、今作までの道程は決して平坦ではなかったようだ。
バンドとしての進化を希求するゆえに生まれたメンバー間の軋轢、ギタリストの脱退…。
だが、そんな解散の危機すらも乗り越えた3人には、いまだかつてない良好な関係と解放的なグルーヴがもたらされた。

“軟弱なギターロックに終止符を”というフレコミで 2006年に鮮烈なデビューを果たしてから、紆余曲折を経て辿り着いた通算3枚目のアルバムは恐ろしいほどの最高傑作となっている。
それは今作に寄せられた数々の盟友たちからのメッセージと、インタビューでの本人たちの言葉からも明確に伝わるだろう。

「理想があるからこそのもどかしさが、歌詞になっているんですよね。人生を諦めているわけではないし、ネガティブではない」

Interview Part 1

●昨年4月に『COME BACK ep』で再始動して、そのまま一気にアルバムまで行くのかと思いきや1年以上も空いてしまったわけですが、そこにはメンバー脱退の影響もあった?

河村:"COME BACK TOUR"のファイナル前にデンキ(G.沓掛靖)から辞めたいという意思表示があって、それはもう受け入れようとメンバーの中で決めたんですよ。そこで3 人になったことで、"ギターをどうするのか?"っていう物理的な問題がまずあって。あと、デンキが辞めたいと言ってきたのには、ツアーを続ける中でバンド の状態がそれだけ良くなかったということもあったんです。"これからバンドとしてどうしていくか"ということについて、残された3人もすごく悩んだ部分が あったし、そういったところでどうしても一呼吸置かざるを得なかった部分はありますね。

●ツアー中、バンドの状態が良くなかったんですね。

山本:良くなかったですねー。俺が横暴を働きすぎたんです(笑)。やる気が間違った方向に行きすぎてしまっていたというか。

冨田:Half-Lifeと一緒にまわった場所では何とか彼らの勢いに乗っかっていけたんですけど、俺らだけになると全く喋らない時すらあって。

●そんな状態になった原因は?

山本:俺の曲作りに対する考え方が、元々とは全然違うものになって。以前はみんなでああだこうだ言いながら作っていたんですけど、1人で曲を作るように なったんですよ。そこから俺の中で、音をもっと整理してパッケージされたものにしたいという志向が出てきたんです。それによってメンバーに対して「なんで そんなにわかりづらいことをするの?」っていうイラ立ちが湧いて、きついダメ出しをしたりして仲が険悪になっていった。

●他のメンバーとしても、急に作り方が変わったことへの不満があったんじゃないですか?

河村:不満より、戸惑いのほうが大きかったですね。ベクトルが180度違うような考え方だったから。それまでは衝動的に作っていたものを、急に理詰めで構 築的に音を捉えないといけなくなったんです。バンドとして向かおうとしている方向を頭ではわかりつつ、それに対応できない自分へのイラ立ちと「本当にそう いうことをしたいのか?」という葛藤が両方あって。でも「バンドは動かしていきたい」っていう気持ちはある中で、その葛藤と戦っていた感じですね。

●急な変化に追いつけない感じというか。

河村:たとえばフレーズそのものができていたとしても、それの細かいニュアンスや音色とかにまでこだわっているような次元だったんですよ。「前回と同じ音じゃないのはなぜだ?」とか言われても、「それはお前の耳のせいだろ?」っていう感じなんですけど(笑)。

山本:そういうことも言っていたね(笑)。でも音って、使うスタジオによっても違うし、その日の温度や湿度によっても変わるものだから。

●あ、今は冷静な判断ができているんだ?

山本:今はみんなに任せているから、そんな細かいところまで聴いていないんです。

●そこの意識は変わったんですね。

山本:変わったというか、元に戻りました。そもそも最初の頃は河村くんに全部任せて、俺は自分の好きなことだけをやっていたんです。だから今までの曲については、みんながどんなフレーズを弾いているかも知らなかったくらいで。そういうところに今は戻ってきていますね。

●戻ってきたキッカケは?

山本:"ここ(山本と河村)の関係が悪くなるくらいだったら、バンドなんてやらなくていいや"っていうところに落ち着いたんです。自分が勝手に暴走していたことにも、気が付いて。

●それはいつ頃?

河村:デンキが辞めた少し後くらいですね。

冨田:「この状態で続けていくのか?」っていうことを河村と2人で話し合った後に、山本に会って「今のままじゃきつい」という話をして。そこから3人で話し合った結果、「もう1回フラットに戻して、昔みたいなやり方でやってみよう」ということになりましたね。

●ある意味、解散の危機だったわけですね…。

冨田:本当にギリギリのところまで行きましたね。

山本:その時は俺も辞めたかったんです。「この手法でやれないんだったら辞める!」っていうくらい、取り憑かれていたんですよ。一度はもう解散するという 話にまでなっていたんですけど、その後にも2人とはスタジオで会ったりして時間が経つ内に「一緒にいて楽しいし、こいつらと一緒に音を鳴らしたい」と思う ようになって。だんだん落ち着いてきたんでしょうね。そこで「こういう状態でもう1回やりたい」となりました。

●時間を置いたことで、憑きものが落ちたというか。今までもそんな精神状態になったことがあった?

山本:いや、初めてでしたね。今まではそんなに色んなことを考えて、音楽をやっていなかったから。ただ単に吐き出しているだけだったというか。でも曲を整 理して、人に届けられるものにするっていうことを考えたら、どうしても頭を使わなきゃいけなくなって。余計なことを考えすぎていたんだと思います。

●そこから抜けだして、今は楽しくやれている?

山本:今は本当にフラットな感じで、"ただの友だち"的な楽しさがあります。最近、河村くんとは本当によく飲みに行くし、今が一番仲が良いくらいですね。昔は河村くんが一番恐かったんですよ。ライブの後にヘラヘラしていたら、怒られたりもして。

河村:「気の抜けたライブしやがって!」とか怒鳴っていましたね(笑)。

●今とはメンバー間の関係性も違っていたんですね。

山本:俺は昔、河村くんに劣等感を感じていたんです。その後に俺が横暴な感じになっていた時に関係性が変わって、今が一番バランスは良い気がします。

冨田:俺は常にマイペースなので、そこは昔から変わらずですね。2人を見て、「なんか仲悪いな~」とか思っていました(笑)。

●山本くんと河村くんの関係が戻ったことで、バンドの状態も良くなっていった?

山本:この2人の関係性が悪いことが、pegmapにとって一番のネックになってしまうんです。だから逆に、今はバンドとしても一番良い状態ですね。

河村:フラットな状態に戻ってから、制作の残っていた部分を詰めていった感じで。それによって今作のM-1「タコ」は以前の衝動的な部分へ戻って、吐き出しているような感じも出せたと思うんです。

●昔と今、両方の良さが出せている。

冨田:今回のアルバムができるまでの5年間で、途中まで曲ができては壊しというのを繰り返していて。M-5「地獄」も元々はタイトル通り、もっと地獄っぽ い感じのおどろおどろしいアレンジでほぼできあがっていたんですよ。でも「もう一度フラットになろう」というところで、2ヶ月くらいかけて作ったそのバー ジョンを壊したりして。アレンジには本当にこだわった分、1曲1曲にすごく時間がかかってしまいましたね。

●最終形になるまでに時間がかかる。

山本:そうですね。自分が1人で作っている時点ではカッコ良いフレーズができたと思っていても、それを冨田や河村が演奏すると活きないということが多々あって。そこの調整は結構ありましたね。

河村:山本から「ニュアンスが違う」だとか「この音が入っていない」みたいな感じで細かく言われるので、そこを微調整しながら作っていった曲が今作は多い んです。でもフラットになってからは、それ以前に作った曲の中にも自分が好きなことを入れてみたりして。それが「タコ」やM-4「やや無情」ですね。

●時間がかかった分、構築的な手法と衝動的な手法の良さが両方取り入れられたというか。

河村:自分たちとしては嫌々ながらに苦しんでやってきたことが、結果として活きたというか。「これは伝わりづらいんじゃないか?」とか、自然と頭の片隅で考えられるようになったんですよね。そのことによって今作全体としても、開けた印象が残るんじゃないかな。

●確かに今作はこれまでにないくらい開けているし、聴きやすい印象があります。

山本:そういうふうに聴こえていたら、うれしいですね。フラットに戻った後も、わかりづらくなりすぎないようにということは常に意識していたから。

冨田:結局は元に戻ってきたんですけど、1周まわって良かったなと。その時は本気でそれをやろうとしていたので、頭の中へ自然と取り込まれたんだと思います。

●1周まわったことで、"自分たちのやり方はこれだ"というのも見えたのでは?

山本:バンドのスタンスが今はすごく明確だと思います。仕事でも何でもそうだと思うんですけど、そこにいる人たちの関係が上手くまわるためには変なストレ スがないようなコミュニケーションを取るべきなんですよね。相手の人となりを受け入れて、「おまえはそういう考え方なんだ。じゃあ、それでいいんじゃな い」っていう感じになれたのかな。

●個性をちゃんと認めた上で、それぞれに合う役割を果たすというか。

河村:山本は自分に向かないことまで背負い込んでいましたね。「曲を作って発信していく立場の人間だから、それに付随するものなら今までやらなかったこと まで俺はやっている。なのに、お前らはなんで嫌なことから逃げるんだ!?」みたいな(笑)。「俺もやっているんだから、お前もやれ」っていう投げかけ方 だったんですよ。

山本:すいません! ご苦労をお掛けしました…。

一同:(爆笑)。

Interview Part 2

●"開けている"という意味では、M-3「鏡」が今作で最も象徴的な曲だと思います。

山本:2~3年前にずっと付き合っていた彼女にフラレて、すごく落ちてしまって。そんな時にものすごくスルッと、この曲が出てきたんです。限界まで落ちたことでもう変にヒネくれた考え方もしなくなって、自分が培ってきたものが自然に出たんでしょうね。

●ものすごく素直な曲ですよね。…pegmapにとって"素直"ということは最も珍しいと思うんですが。

山本:ハハハ(笑)。

河村:本当にそうだと思います。この曲を初めてアコースティックで聴かされた時に、「これに何を加えればいいんだろう?」と思ったんですよ。単純にすごく 良い曲だし、その時点でも曲としてはできあがっていたから。そこで考え込んでしまって、アレンジを詰めるのにすごく時間がかかった曲です。結局は何を加え ても邪魔に聴こえてしまうから、どうやって必要なものだけを残していくかというところにものすごく時間を費やしましたね。

●epに入っていたアコースティックバージョンは原曲のイメージに近い?

河村:アコースティックバージョンは"山本章人"が歌っているそのまんまなんですけど、そこに今回のアルバムではpegmapのプレイが加わったという か。アレンジとして歌を邪魔するのは当然アウトなんですけど、邪魔しないギリギリいっぱいのところまでは音を詰め込んで。凝ったこともしているし、ドラム もベースも一生懸命大きな音を出している。そういう"一筋縄ではいかないぜ"っていうヒネくれ感が自分たちの特徴だと思うんですよ。こんなに普通のポップ ソングをヒネくれたpegmapがやっているという感じにちゃんとなったと思います。

●この曲とM-8「肌色同盟」は恋愛の曲ですよね。

山本:これは男と女の関係を歌った曲というか。すごく女性らしい、セクシャルな魅力のある人が相手だと俺はいっぱいいっぱいになっちゃうんですよ。ツンと されたりするとすぐ惑わされちゃうんですけど、そういう関係が面白いなと思って作った曲ですね。1番の歌詞が女目線で2番の歌詞が男目線になっているんで すけど、「人間ってそんな感じでずっと続いているよね」っていう感じのことを歌っています。

●曲調もすごくポップだと思いました。

山本:自分ではポップだと思うし、聴いてくれた人もそう思ってくれるといいなと思います。メロディは前からあって最初はポストロック的なアプローチだった んですけど、途中でロックチューン的なアレンジになってから幅が広がって、そこから一気にできましたね。昔のアレンジはM-6「BORED!」に似た感じ で。

河村:何とも言えずイナた~い感じで、もっとスカスカなアレンジでしたね。

●「BORED!」はいつ頃に作った曲?

河村:メロディ自体は相当古くからありましたね。まだ一番最初のギターがいた頃から、メロディはあったと思います。

山本:昔のアレンジはアルペジオがメインですごく暗い曲だったんですけど、一郎さん(吉田一郎/ZAZEN BOYS)にも「暗いわ」って言われて(笑)。何か面白いことができないかなと考えて、イントロのギターリフを思い付いたところからこういう形になりました。

●あのリフのせいか、ファニーな感じにも聞こえます。

山本:でも元々は全然違って。M-7「リセットボタン」の空気感に近いくらいだったんです。「わかりやすくしよう」というところを取っ掛かりにして、その中でもダウナーになりすぎないように、楽曲に面白みが出るようなことを考えるようになりましたね。

●面白みがある曲だから、自分でもやっていて楽しめるのでは?

山本:"やっていて楽しい"というのは昔の感じで、今は"曲を作っているのが楽しい"というか。みんなの音が合わさって1つの曲になるということが今は面白いので、昔とは違う楽しさがありますね。

河村:結果的に1人1人のフレーズをバラバラにしてみたら、1st~2ndアルバムの頃よりも圧倒的にシンプルになっていると思うんです。それが、曲がポップに聴こえるというところにもつながっているんじゃないかな。

●個々としてはシンプルなことをやっているんだけど、1つの曲として聴いた時にはちゃんとヒネくれた部分も残っている。

河村:そこはすごく意識しています。シンプルなことをやっているからといって普通に聴こえるのは嫌だし、やっぱりどこかヒネくれていないと嫌だから。"そのためにどうしようか?"っていう意識が、"pegmap"というバンドの根底にはずっとあり続けると思います。

●そこがpegmapをpegmapたらしめているものというか。

河村:エグさだけでも、普通のポップさだけでもつまらないなと思うんです。

冨田:今回のアルバムを聴いた人は「明るくなったな」とか「変わっちゃったな」という印象を受けると思うんですけど、自分たちからするとやっていることの 幅が広がっているだけで本質的なものは何も変わっていないんです。1曲1曲をちゃんと聴いてもらえば、「変わっていないじゃん」って気付いてもらえると思 いますね。

●一聴した感じだと聴きやすくはなっているけど、バンドの本質は全く変わっていない。

河村:エグさやインパクトという意味では、山本の歌い方が何よりも一番変わったと思うんですよ。前ほどガナってはいないし、言葉やメロディをちゃんと歌う というところに重点が置かれている。だからパッと聴いた時に「パンチがなくなったんじゃないか」と言う人もいると思うんですけど、歌詞の世界観も含めて中 毒性はそこにもちゃんと残っているから「よく聴いて下さい」と言いたいですね(笑)。

●歌詞の言葉や表現として、心をエグるような部分は変わっていないですよね。

山本:聴いている人をそんなに安心させたくないということは、元から思っているんですよ。やっぱり聴く人に嫌がらせしたいなと思っているので(笑)。そこはあまりブレていないです。

●「地獄」が顕著だと思うんですけど、自分へのもどかしさやネガティブな感情を歌いつつも、最終的にはポジティブな方向へと向かう光がpegmapの歌詞には見えます。

山本:「俺はダメだダメだ」と言っている感じなんですけど、理想があるからこそのもどかしさが歌詞になっているんですよね。人生を諦めているわけではない し、ネガティブではないんです。どこかしら救いがあるというか。自分が触れてきた作品はそういうものが多かったので、自然と影響されているんだと思いま す。

●自分が通ってきたものの影響を素直に出せるようになったのも進化かなと。

山本:最近は今まで変に否定していたものを、普通にスッと聴けるようになったりもして。色んな音楽を聴く幅は広がりましたね。

●意識的かどうかは別として、人間的な成長が作品に還元されている気がします。

河村:還元されていくと思います。"pegmap"って、そういうバンドな気がするから。

●結局はメンバーの人間関係ありきなところに戻ってきたわけですからね。時間をかけただけのことはあったというか、ちゃんと意味のある5年間だったのでは?

河村:それをこれからツアーを経ていく中でアウトプットして、みんなに聴いてもらえたらいいなと思います。

●ライブも変わってきていたりする?

山本:最近はすごくノビノビやれていて。昔はすごく神経質だったので、自分が気持ちよくなかったら一気にテンションが落ちてライブを変な空気にしてしまう こともあったんです。でも今はそういう変なマイナスオーラが自分の中にないので、基本的にライブは良い空気になっていると思います。…なっているよね?

冨田:…うん。

山本:大丈夫だよね? きっとなっているよね? …それも俺の思い込みだったら、すごく悲しいんだけど(笑)。

一同:(爆笑)。

Interview:IMAI