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PLASTIC GIRL IN CLOSET

ノスタルジックなメロディーが、誰しもにあった幼き日々の記憶を蘇らせる 幸せな笑顔を呼び起こす輝きに満ちたニューアルバム

思春期の記憶をよみがえらせるような甘酸っぱいメロディに、ピュアな男女のハーモニー。

岩手県在住の4ピースバンドPLASTIC GIRL IN CLOSETが、勝負作となる3枚目のアルバム『ekubo』を完成させた。シューゲイザーやギターポップにルーツを持つ彼らだが、今作はとにかくキュートなポップネスに焦点を当てた一作。

シンセのキラキラした音色やリズムループを駆使したサウンドで、アルバムのタイトル通り、聴いているうちに自然と笑みが生まれるようなポップソングが詰まっている。

曲詞を手掛ける高橋祐二(Vo./G.)へのインタヴュー。「明るい、幸せなアルバムを作りたかった」――という、彼らが新作に込めた思いを解き明かす。

Interview

全力でポップなものを作っていく

●今回は相当の自信作だと思うんですけれど、どういう手応えがありますか?

高橋:そうですね。前に作ったアルバムには打ち込みの曲もあったんですけど、それをもう少し進歩させられたらなという気持ちがあったので。1曲1曲を、振り切って作った感じですね。

●聴いた印象で言うと、さらに"甘さ"が増した感じがするんですよ。単なるシューゲイザーというよりも、もっと広いポップスというフィールドに、バンドの方向性を思い切って変えてきた感じもします。

高橋:確かに、よりポップスとしてありたいという意識があったと思います。今回はギターポップとかシューゲイザーとか、そういう要素は意図的に出さなかった面もありますね。たとえばペイヴメントのような"ローファイ"と言われるバンドって、ローファイをやろうとして、下手にやろうとしてやってるわけじゃないですよね。それと同じで、サブカル的な位置にいたいとか、アングラなところにいようとしているというような意識は一切なくて。それよりも、全力でポップなものを作っていく。とにかく広い視野で、ポップスというものを作りたい感じだったんです。その結果として、シューゲイザーとかローファイと言われるのなら本望なんですよ。だから、あくまで日本のポップスのシーンの中にいる、シューゲイザーの要素もあるバンドだという。

●ただ、"ポップさ"にもいろいろなものがありますよね。それこそレディー・ガガだってK-POPだって、"ポップス"と言われるわけで。そうじゃなくて、プラガならではの「こういうのがポップである」というルーツはどういうところにあるんでしょう?

高橋:やっぱり、90年代のJ-POPは大きいですね。特にスピッツは大きな存在だと思います。スピッツって、「ロビンソン」とかをリリースしていた当時もちょっと古臭い感じがしていたと思うんですよ。ちょっと懐かしい感じがあるというか。聴く人たちが、そういうメロディだと自然に感じてしまう。そういうのが素敵だと思っていて。今回のアルバムでいろんな人にコメントを頂いているんですけれど、ウチらの曲って「懐かしい」って言われることが多いんですよ。それは単純に90年代にルーツがあるというだけじゃなくて、たとえばスピッツを聴いた時に無意識のうちに人が懐かしいと感じてしまうようなものと、同じものを僕らも求めているせいなのかなって思います。

●確かに、思春期の感じもありますよね。

高橋:そうなんですよ。90年代の音楽って、僕が中学生の頃にリアルタイムに体験してきたものだし、そういう空気感を詰め込んでやってるというのはあるかもしれないです。

晴れた日という感じのアルバムを作りたかった

●前作の『cocoro』をリリースして、その後どういうところから次作へのイメージを作り上げていったんでしょう?

高橋:最初に頭にあったのは、具体的に言うと、フリッパーズ・ギターの『ヘッド博士の世界塔』とか、プライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』とか、マンチェスターっぽいアルバムを作りたくて。1曲目の「LOVE IS FUN」も、最初はもっとゆっくりで。マンチェっぽいリズムの曲だったんですよ。10曲目の「Ballet」にもそういう感じが残っていて。最初はそういうアルバムを目指していたんですけれど、いろいろやっているうちに、前作でやった打ち込みのエッセンスをやりたい意識も出てきて。そこからこうなっていった感じですね。最初はサンプリングを多用したりもしたんですけど、だんだん四つ打ちとかエイトビートの曲が増えていったという。

●前のアルバムから男女ツインヴォーカルを導入しましたよね。そのハーモニーがバンドにとっての可能性を広げたという実感はありました?

高橋:実は今回、彩子(Vo./Ba.須貝彩子)のメイン・ヴォーカル曲は減ってるんですよ。前作では僕と彩子で6曲ずつメイン・ヴォーカルの曲があったんですけれど、今回は8曲と4曲になっているので。それは何故かというと、まず1曲目に「LOVE IS FUN」っていう女性ヴォーカルのポップ曲があって、その後に男性ヴォーカルが続くというアルバムの構成にしたかったんですよね。ただ、随所随所で彩子のハーモニーも入ってくるし、僕がAメロを歌って、サビを彩子が歌うような曲もあります。そういう歌い分けもできるようになってきたと思います。これは実現するかどうかわからないですけど、今後、ガールポップみたいな、女性ヴォーカルだけのアルバムをやってもいいかなって思います。僕が一切歌わないアルバムがあってもいいし。もっと、明るい可愛い曲が多いアルバムにしてもいいかなって。

●いや、でも今回のアルバムも、相当明るい可愛い曲が多いアルバムだと思うんですよね。

高橋:本当ですか? そう思ってもらえるとかなり本望ですね。前作(2ndアルバム『cocoro』)は震災のさなかに作っていたこともあって、マイナー調の曲が多かったり、明るい曲が少なかったんですよ。だから今回は、それこそセカンド・サマー・オブ・ラブじゃないですけど、幸せな感じのアルバムにしたかったんです。みんなで夏に踊る感じというか、晴れた日の感じのアルバムを作りたくて。

●でも、聴いた感触でいうと、夏っぽいというよりも、すごく春っぽい一枚になったと思うんですよ。

高橋:そうなんですよね。僕らの曲って、明るい曲でも切ないメロが乗ってたりするのが特徴なので。泣きメロを入れると、春っぽくなるんですよね。単にみんなで遊んで盛り上がるような夏の感じじゃなくて。春って、新しい環境を迎える季節でもあるじゃないですか。だから、いろんな感情があるんですよね。冬が終わって、希望に満ちているんだけど、ちょっと切なさもあるような。

●春にリリースをするということは意識してました?

高橋:それはありましたね。今回、春の歌詞が多いんですよ。どちらかと言うと、春にリリースすることが決まってから歌詞を書いていったので。春に聴いていただくということを意識した部分は大きいですね。明るいアルバムを作りたいと思ったという。

人の心の中にある懐かしさを思い起こさせるような曲を書きたい

●アルバム制作でキーになった曲は?

高橋:9曲目の「September Drive」が最初にできたんですよ。これを作った時に、シンセのループがいい感じだという手応えがあって、その次に「LOVE IS FUN」を作った。方向性としては、これが影響を与えた感じはありますね。本当はシンセのループとか四つ打ちの感じで一枚作ってもいいかなって思ったんですけれど、ギターポップ感がもっとあってもいいかなって思って。それで12曲目の「ekubo」を作ったんです。これはスピッツを意識して書いたような曲で。シンプルな4ピースの演奏と、エヴァーグリーンな、ずっと聴いてもらえるようなメロディを意識したんです。僕、合唱曲とかフォークソングがすごく好きで。そういうところから、マンチェとエレクトロニックとギターポップという3つの要素がアルバムの中にできた感じです。

●たとえば「Magic Word」のメロディは、童謡や子守唄に近いような旋律だと思うんですよ。ループするピアノ、ノイズギターとこういう優しいメロディを合わせるところに、プラガらしさがあると思うんですけれど。

高橋:確かにそうかもしれないですね。この曲って、歌詞では子供の頃の思い出を言ってるんですよ。バンド名もそうだし、小さい頃を思い返してる目線の歌詞が多いんですよね。「Magic Word」も、女の子の子供の頃の気持ちを歌っていて。1stアルバムの『TOY』は幼稚園の頃の記憶をテーマにしていたので、楽曲的な面でいうと、『TOY』の頃から持っている幼少期へのノスタルジーと繋がっている感じです。

●バンド名にも子供の頃への思いが詰まっているというのは?

高橋:PLASTIC GIRL IN CLOSETって、小さい頃に遊んでたオモチャがクローゼットから出てきたっていう、そういう言葉なんですよね。10代とか、幼少の頃とか、そういう気持ちを表していて。人の心の中にある懐かしさを思い起こさせるような曲を書きたい。そういうことは、いつも思っているので。やっぱり、それがバンドのテーマになっていますね。

音楽で少しでも前向きな気持ちになれたら

●『ekubo』というタイトルをつけた理由は?

高橋:2枚目はちょっと暗かったので、それよりも、もっと開けた感じにしたかったんですね。『cocoro』って、いろんな感情があるじゃないですか。そこから明るい方に踏み出したら、笑顔がある。幸せの象徴って、笑顔だと思うんです。僕が描きたいのは青春とか幼い頃の記憶というもので。その頃見ていた女の子の笑顔には、エクボがあった気がするんです。漠然と、エクボのある女の子が素敵だなって思っていて。僕らの音楽って、そこまでメッセージは込めていないんですよ。基本的には、自分の思い出を淡々と語っているもので。でも、音楽で少しでも前向きな気持ちになれたらというのがありましたね。"頑張れ"というよりも、ちょっと幸せな気持ちになったら、微笑んでくれたらなっていう。

●ジャケットのイメージもそういうところと繋がってる?

高橋:そうですね。笑顔になる、一瞬手前の表情を表したくて。キラキラした、涙が弾けて乾くようなイメージを持ってもらえてもいいかもしれないし。

●アー写も思いっきり笑ってますからね。

高橋:そうなんですよ。これくらい笑顔になれるくらい、明るい曲を作れたという自信もあったので。それを自分達で現したというのもありましたね。クールに構えてる写真よりも、今回はそういうふうなところからも、伝えたいものが伝わればいいなという。

●そういえば、ビデオの撮影も自分たちでやってるんですよね?

高橋:1枚のアルバムで5~6本のビデオを作るんですけれど、その中で1~2本は作ってもらって、4本くらいは自分たちで作ってますね。「LOVE IS FUN」のビデオも、8畳くらいの僕の部屋で録ってるんですよ。赤い幕を買ってきて、その前で演奏してるんです。あと、こないだ「ekubo」のビデオを録ったんですけれど、それは近くの公園にある古い列車の中にみんなで行ったり。かなりDIYでやってますね。いつも、どういうビデオにしようか相談して、みんなで買い物に行くところから始まるんですよ(笑)。

Interview:柴那典

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