音楽メディア・フリーマガジン

Rhycol.

4人が鳴らす音は、情景に込められたあなたの想い

シングル『24』を今年5月にリリースし、6月にはアルカラやwinnieといった先輩、KEYTALKやtricotという一緒にシーンを走り続けてきた盟友を始めとする同世代のバンド・計11組が出演したロックフェス“YANYA FESTA”を大成功させたRhycol.。そんな彼らが11/21に発表する新作は、聴く者の記憶や感情を呼び起こす叙情的な8曲が収録されたミニアルバム『situation』。同作は、音楽的には更に洗練され、表現としてより豊かになった彼らの真価を存分に味わうことができる。そしてリリース後は年明けにレコ発ツアーが決定。より深く、より鮮やかになったRhycol.が描き出す様々なシチュエーションを体感して欲しい。

「より綺麗な情景を描くから、あなたのそのときの心境でその絵に対して悲しい曲なのか嬉しい曲なのかを感じ取ってください」

●前作『24』を今年5月にリリースし、6月には主催フェス“YANYA FESTA”を開催されましたが、“YANYA FESTA”はチケットもソールドアウトして大盛況だったみたいですね。

4人:ありがとうございます!

●そもそも“YANYA FESTA”をやろうを思ったきっかけは?

金城:僕らは何かと自分たちのライブに“YANYA FESTA”と銘打ってきたんです。レコ発とかファイナルとか、企画イベントとか。でもあれだけ規模を大きくして開催したのは、僕らがツアーをまわっていて出会ったいいバンドを紹介したいっていう想いがいちばん大きいです。お客さんに尊敬する仲間を紹介したい。案の定、当日はめっちゃ楽しかったんですよ。めちゃくちゃ疲れましたけど。

FRICASSEE:僕はずっと焼きそばを焼いていました。

上田:ソールドアウトしたよね。

●チケットも焼きそばもソールドアウトして良かったですね。

金城:今後も出会いを大切にしながら続けていきたいと思ってます。

●次も楽しみにしています。そしてシングル2枚を経て、今回ミニアルバム『situation』がリリースとなるわけですが、どういうものにしたかったんですか?

金城:“situation”って直訳すると“局面”だとか“場面”という意味になると思うんですけど、そんな感じで、設定があって、誰でも経験したことがあるようなちょっとしたシチュエーションを切り取って、それをすごくロマンチックに膨らませたというか。

●ということは、コンセプチュアルな作品ということ?

金城:いや、そういう意味ではないんですけど、あまりそういうことを考えて曲を作っていなかったのに、Rhycol.が作る曲がそういう風になっていたんですよね。傾向として。

●ああ、なるほど。

金城:僕はあまり“こういう熱い想いを伝えたいぜ!”みたいな感じではなくて。自分が音楽に求めるものは、共感だったり綺麗な情景だったりするので、そういうものを自分の音楽で伝えたかったんです。リスナー目線でいうと、僕が心に残る音楽を聴いたときってそのときのことを思い出すんですよ。

●そういうのありますね。音楽とか情景とか匂いって記憶と結び付きやすいと思う。

金城:今日挨拶に行ったCDショップのコメントで同じこと書いてきました。

●何と書いたんですか?

金城:“記憶の曲です”と。僕はもともと吹奏楽だとかオーケストラがすごく好きだったんですよ。歌が無くても音楽に感動するような子供で、それはクラシックだけじゃなくて、サントラとかもそうで。だから歌詞の必要性以前に、曲で情景が浮かぶようなものを作って、それを歌詞で助長できたらいいかなと。

●ということは、『situation』は前作や前々作からコンセプトが変わったわけではなく、今までの延長線上でより濃く、深く世界観を出したと。

4人:そうですね。

金城:曲を作るときに世界観や情景をイメージするわけではなくて、オケを作ってから“この曲ってこういう感じっぽいな”と徐々に色を濃くしていく感じなんです。でも僕が書いているので、そのときの心情や日常の経験に近くなりますよね。

●そうでしょうね。

金城:だから作品としてのイメージはあまりなく作り始めたんですけど、出来上がってみたら“やっぱり俺はこういうことを思っていたのか”と思います。

●それにアレンジはバンドで作るわけですから、そのときのバンドが持つ雰囲気も自然と曲に出るんでしょうね。

金城:そうですね。昔と比べたら歌詞についてもメンバーに伝えるし。「こういうイメージがあって作った曲やから」って。

●『ニュクスとヘーメラー』と『24』を知った上で今作を聴くと、伝えようとしている度合い、曲ごとのキャラクターや色、もっと言うと感情が今まで以上に強くなっている気がするんです。特定のメッセージはあまりないのかもしれないけど、“何か想いがあってこういう曲ができたんだな”ということは明確に伝わってくる。

金城:主人公になりきって書いているというか。

●その主人公は自分とは別人なんですか?

金城:そうですね。歌っていることは、ほとんどは実際に経験したことではないんです。

●え? “苦しんだ分だけ優しくできればいい”(M-3「anyhow」の歌詞)と実生活で思ったわけではないんですか?

一同:ハハハ(笑)。

金城:実際の経験というわけではないですね。

●違うのか…。

金城:というか、僕が全く経験していないことというよりも、僕も含めてみんなが経験しているだろうなというような感情を膨らませている感じです。

●そうなんですね。歌詞に自分の気持ちや感情をストレートに出すのは恥ずかしい?

金城:どうなんでしょう、恥ずかしいのかな(笑)。もともと自分の感情をあまり表に出さない性格というのも確かにありますし、歌詞で自分のことを歌い過ぎると、歌詞に重きを置きすぎるバンドになっちゃうような気がして(笑)。

●でも3作を聴き比べると、歌詞に込める感情が増えているような傾向だと思ったんですけどね。

金城:…増えてますね(照)。

●あっ、自覚はあるんだ!

金城:自覚はあります(笑)。

●恥ずかしがっている!

一同:ハハハハ(笑)。

金城:いや(笑)、『ニュクスとヘーメラー』は抽象的な表現が多かったんですよ。ふわっとしているというか。

●はい。ふわっとしてるなと思ってました。

金城:それはそれで良かったんですけど、今作でいうとさっき言われた「anyhow」だけは自分の経験というか、「こうしたらいいよ」っていう、あまり僕にはないメッセージがある曲なんです。

●やっぱり“苦しんだ分だけ優しくできればいい”と実生活で思ってたんじゃないか!

一同:ハハハハハ(笑)。

金城:そうですね(苦笑)。「こういうことあったでしょ? 大丈夫だよ」と言っている曲なんですけど、でも感情を出しているというより、以前に比べて情景を細かく作ってるんです。

●筆を細くして細いところまで描き込んだということ?

金城:そうそう。だから感情を強くしたというより、絵を綺麗に描いたという感じです。色を綺麗に塗ったという感じかな。

●なぜそう変化したんですか? 彼女が変わった?

金城:いやいや、彼女は『ニュクスとヘーメラー』のときから居ないです。

●あっ、ごめんなさい。失礼なこと訊いてすみません。

金城:前は、情景と感情の描写の量が半々じゃなかったんです。感情も情景も同じようにあったけど、どっちかと言うとぼんやりしていたのは情景の方だった。例えば『ニュクスとヘーメラー』に入っていた「Harsh line」は、僕にとってはあれは新幹線の中の話なんですけど、でもそんなことみんな知らないんですよ。

3人:知らなかった。

金城:そこを細かく描かなかったんです。だから今回はそこをより細かくしたんです。

●情景を細かく描写したことによって、そこに存在している感情も以前よりはっきりと浮かび上がってきたと。

金城:そうだと思います。「Harsh line」を作ったときは、“答えをぼやかす”というのが正解だと思っていたんですよ。今も“答えを出さない”とは思っていますけど、よりそれ以外の部分をクッキリと描いたような感じです。難しいところなんですけど、曲を聴いて明るい曲なのか暗い曲なのか、楽しいのか悲しいのかを決めるのは聴いた本人でいいと僕は思っているんです。

●はい。

金城:より綺麗な情景を描くから、あなたのそのときの心境でその絵に対して悲しい曲なのか嬉しい曲なのかを感じ取ってください、という作品にしたかったんです。

●なるほど。だから“situation”なんだ。

金城:そうそう。

●でもそれは歌詞だけの話じゃなくて、今作はアレンジでも情景をより明確に描いていますよね。

上田:そうなんですよ。情景を表現できるようにというか、思い浮かべて作ったというか。そういう感じでライブでも叩いているし、みんなも演奏していると思います。

金城:さっきも言いましたけど、歌詞の内容とかも詳しく伝えるようにしましたからね。最初にアレンジを詰めるとき「この曲にはこういう歌詞が合うと思う」とイメージを伝えて、次にまたスタジオに入ったときに「こういう歌詞を書いた」と見せて、またアレンジを詰め直して。

●なるほど。

金城:だから歌詞も変わったし、周りの曲も歌詞と同じくらい持ち上がったと思います。

松藤:M-4「流星群」はまさしくそうなったと思います。ギターのフレーズを最初に金城が持ってきて、みんなで曲を作っていたら「流れ星っぽいな」という話になって「流星群」というタイトルが決まって。そこから更にアレンジが具体的になった。

金城:僕が「流れ星っぽい音出してよ」とか言って(笑)。

上田:それはリズムもそうやし。

松藤:間奏も壮大にしようとか。今回は雰囲気を出す方向の作業が多かったよね。

●以前のインタビューで「音が少しでもズレていたら嫌だ」とか言っていて、音楽的なところをかなり重視しているバンドという印象があったんですけどね。

金城:そういうところは今でも余裕で細いんですよ(笑)。でもそういう音楽的な部分と、感覚的な部分をうまく駆け引きできるようになったというか。

●それによって表現がより瑞々しくなったのか。

金城:もともと僕以外はプレイヤー志向が強かったんです。それが、今回はもっと表現者に寄ったというか。

松藤:うんうん。

上田:だから楽しかったですね。今までも歌いながら曲を作ったりはしていたんですけど、メロディだけじゃなくて、歌詞や情景もそこに乗っけて作るようにしたんです。

●情景を細かく描写するということでいうと、歌と同列でギターもかなり重要な位置を占めると思うんですが、FRICASSEEはどうだったんですか?

FRICASSEE:いや…特に。

一同:(爆笑)。

FRICASSEE:僕は歌詞とか見ないし。

●ハハハ(笑)。すごいな(笑)。

金城:FRICASSEEだけは特別なんです。やっぱり日本語が通じないし(笑)、もともとプログレッシブとかがルーツの人間なので、そこは敢えて引っ張らずにやりました。

●ちなみにFRICASSEEはどういう感じでギターを考えるんですか?

FRICASSEE:基本は歌メロからですね。でもだいたいは思い付きです。

●思い付きなのか。

FRICASSEE:だから歌詞は別に…。

●彼に歌詞を理解させるのは難しいんでしょうね(笑)。

金城:そうですね。彼は人間的な感情がないので。

●感情がないんですか。

FRICASSEE:感動して泣いたりしないです。

●どういうときに気持ちが動くんですか?

FRICASSEE:美味いもの食べたら激アガります。

Interview:Takeshi.Yamanaka

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