音楽メディア・フリーマガジン

SAKANAMON

理性の向こう側で生み出された音と言葉の奇跡

 謎のマスコットキャラクター“サカなもん”を携えて突如シーンに現れた3ピースバンド、SAKANAMON。藤森元生という天才(もしくは奇才)が生み出すシュールかつポップな音楽は、高い中毒性と不思議なポピュラリティで聴く者を虜にする。2011年に出現した超新星はこれからの音楽シーンを揺るがす可能性と爆発力を秘めている。トリッキーな行動とその佇まいに騙されてはいけない。彼らは本物だ。

Interview

●"サカなもん"(アーティスト写真や今作のジャケットにも登場している謎のキャラクター)って何なんですか? もやしもんのパクリ? さかなクンのパクリ? ドラえもん?

森野:2007年の結成当時から、いきなり藤森がライブの当日にサカなもんの人形を持ってきたんです。「これ使うから」って。

●人形?

藤森:サカなもん君を立体化した人形です。紙で作ったんですけど。

●そうですか。

藤森:僕は地元の宮崎で前身となるバンドをやっていたんですけど、上京と同時に解散して。専門学校で森野と出会ってバンドに誘ったんです。僕の中には"SAKANAMON"というシュールでポップな全体のイメージがあって、そこを目指していこうと。

●その"シュールでポップ"というのはどういう感覚なんですか?

藤森:よくわかんないけどなんかいい…それがSAKA
NAMONであればいいなっていう気持ちでね、やってきたんだよ僕は。

森野:藤森は酒が大好きなんですけど、SAKANA
MONの"サカナ"も"酒の肴"からきていて。

藤森:もともと"生活のおつまみになる音楽をやろう"という考えがあったんです。結成した当初からお酒にハマっていて、お酒っぽいバンドがいいなって思ってました。

●何言ってるか全然わかんないです(笑)。"シュールでポップ"という藤森さんの感覚をもうちょっと具体的に理解したいんですけど、例えば岡本太郎の世界観とかシュールでポップだと思うんですよね。

藤森:おおっ、岡本太郎いいですね! 僕の場合、山村浩二さんっていうアニメーション作家がいるんですけど、その人が描くアニメーションとか絵がすごく好きですね。"シュールでポップ"という感覚はその雰囲気に近いかも。

●森野さんは藤森さんに誘われたんですよね? なぜ一緒にバンドをやろうと思ったんですか?

森野:最初、今作にも収録されている「妄想Driver」のデモテープをもらったんですけど、単純にそこにベースを入れたいと思ったんです。そしたらバンドに誘われたので「是非やります」って。藤森は1人でデモテープを作ってたんですけど、ジャケットも自分で描いたりしてある程度バンドのイメージを完成させていて、それに惹かれたというか。そのときに僕が感じた"いいな"っていう感覚を色んな人に知ってもらいたいなと思ってメンバーになったんです。

●今作の収録曲は2007年の結成以降に作ってきた曲の中から選んだんでしょうか?

森野:そうですね。持ち曲は20曲くらいあるんですけど、その中でも最近の自分たちが表現できているような曲を選びつつ、リード曲のM-1「ミュージックプランクトン」は今作のために作った新曲です。

●曲はどうやって作ってるんですか?

藤森:まずは僕がパソコンで全部作るんです。それを2人に渡して自由にアレンジしてもらうっていう感じですね。

森野:でもそこでガラッと変わることはあまりなくて、基本的には藤森の感性を尊重しています。

●「ミュージックプランクトン」は、さっき言っていた"シュールでポップ"がかなり明確な形になっている曲ですよね。で、この曲だけじゃなくて全体的に感じたんですけど、SAKANAMONの楽曲の指向性として、頭の中で理性が働いている状態とその向こう側…覚醒している状態というか…の2つが存在するとしたら、その覚醒している状態に憧れているような心境が見て取れたんです。

藤森:うんうん。

●もしかして藤森さんはその"覚醒している状態"で音楽を生み出したいという想いが強いんでしょうか?

藤森:素晴らしい。その通ーりです。

●言い方が気持ち悪い。

藤森:僕は作ろうとしたら作れないんです。作ろうとがんばったら絶対にいい方向に行かないということが自分でわかっているというか。だからいわゆる"降りてきた"で作っていて。なので曲を作るペースが遅くて。

●"降りてきた"という状態に到達するために自分で努力していることって何かあるんですか?

藤森:なんとなく考える。ちゃんと考えたらもうダメなんだよな~。でもなんとなく考えればストレスにならないんです。頭の中で考えてるんだけど、考えてないフリをするというか。如何にプレッシャーを感じない状態で作るかっていう。

●メンタル的に弱いんですか?

藤森:弱いです。

●アハハハ(笑)。もう1つ訊きたかったんですけど、M-5「公然と秘密の想像ヌードル」は今作の中でもすごく感情的な曲じゃないですか。サウンド的にもシリアスな雰囲気だし、すごく感情を爆発させながら歌うような楽曲で。

藤森:そうですね。

●でも歌詞の内容を見てみるとウルトラマンのことを歌っていて。なぜウルトラマンのことでこんなにエモーショナルに歌ってるのかな? と。

藤森:ウルトラマンのことを歌いたかったんです。ウルトラマンはたくさんシリーズがありますけど、体の色を変えられるようになったあたりから(※ウルトラマンティガからタイプチェンジという能力を持つようになった。タイプによって体色が変わる)なんか質が下がった気がするんですよ。それでなんか納得がいかなくて。

●ウルトラマンに対して本気で感情を爆発させていたのか…。

森野:こういう人なんです。

interview:Takeshi.Yamanaka

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