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sever black paranoia

真の衝撃と感動をもたらす比類なきサイバーコアサウンド

sever black paranoiaメタルやスクリーモなどの“ラウド”なロックをベースにしつつ、トランスやガバなどダンス/エレクトロ・ミュージックの要素を融合した新たな音楽ジャンル、“サイバーコア”。その海外からの潮流を受けて、日本語詞やクラシックの要素も取り入れた解釈で独自のサウンドをsever black paranoiaは作り上げている。彼らの2ndミニアルバム『East of Eden』は、旧約聖書の“カインとアベル”という兄弟の悲しき物語に着想を得たコンセプチュアルな作品だ。単なる目新しさだけにとどまらない、真の衝撃と感動をもたらすその音にまずは触れてみて欲しい。

 

●sever black paranoiaという独特なバンド名からは、メッセージ性や強い意志を感じるのですが。

Daisuke:バンド名は“妄想を切り離す”という意味で、“自分の頭の中で考えているだけで満足するんじゃなくて、その想像/妄想していることを現実にしてみよう”ということなんです。大きな意味で言えば、“夢を叶えたい”ということだったりもして。バンドとしての”活動理念”と言うのがふさわしいのかな。

●2009年に結成した当初は、映像と音楽を同時進行で演出するプロジェクトだったそうですね。

Daisuke:結成当初はメンバーにVJがいて、ステージ上のスクリーンに映像を映すパフォーマンスとバンドの演奏を同時進行でやっていたんです。そのプロジェクトを立ち上げた段階で、“映像と音楽をリンクしたらどうなるんだろう?”という妄想が自分の中にあって。それを実際に表現してみることで、まず頭の中にある“sever black paranoia像”を具現化してみた感じですね。

●サウンド的なイメージも当初からあったんですか?

Daisuke:アメリカのCelldwellerというバンドのCDを聴いた時に、“これはすごいな”と感動したんですよ。トランスとメタル〜ラウドロックをミックスしたような音だったんですけど、それを自分なりにやってみたいというところから曲作りを始めました。

●そこはメンバーのルーツとして共通している?

Kotaro:それぞれ細かい部分でバックボーンは違うんですけど、サウンド的に“ラウド”という大きな括りにあるものがみんな好きではありますね。

Jun:僕は最初にメロコアから入って、メタル〜ラウドと聴き進めていきました。もちろん、それ以外にも色んなジャンルの音楽を聴くんですけど。

Yosk:僕も雑食なんですけど、やかましい感じの音をたくさん聴いてきました。やっぱりみんな聴いていたものは、“ラウド”につながるんだと思います。

●前作の1stミニアルバム『Metasentiment』以上に今作『East of Eden』ではトランスとの融合が進みつつ、バンド感が増したように感じました。

Kotaro:単純に音が良くなったし、みんながちょっとずつ上手になったっていう…(笑)。でもサウンドメイク的な部分で前作とは全然違っているので、そのあたりは進化したと言えるんじゃないかな。今回はまずバンドのサウンドがあって、その上にシンセとか上モノがしっかり乗っている感じなんですよ。

Daisuke:前作はシンセをもっと前面に出していたんですけど、それがsever black paranoiaの音なんだという意識が当時の自分たちにはあって。でも今作はギターソロがあったりして、よりバンド的なものに近付いたというのはありますね。その上に打ち込みのトランシーな音が入っていたり、さらにクラシック的な要素まで含めた作品になっています。

●音楽性の幅も広がった。

Daisuke:今回はこれまでにやっていないことを実験的にやりたいなっていう、ミュージシャンとしての欲を出した部分もあって。同じような進行の曲ばかりで、聴き終わった時に“どれも似たような曲だったな”と思われるのは避けたかったんです。そこで色んなアプローチの仕方を取り入れようとして、こういう形になりました。

Kotaro:色んなものを聴くようになってリスナーの耳が進化しているのを、音楽をやる側も感じていると思うんです。ちょっと普通とは違うものを欲している感じがするので、こういうサウンドも受け入れられるんじゃないかなと。実際に今のJ-POPを聴いてみても複雑な構成の曲がいっぱいあるし、今回はそこにも絡んでいけるような作品が作れたんじゃないかと思います。

●メンバーの技術が高まったことで、やりたいことをより具現化できるようになった部分もあるのでは?

Yosk:みんな、進化した感じがします。

Daisuke:たとえば曲作り中に複雑なフレーズを思い付いたとしても、“それを果たしてプレイできるのか?”っていう不安が以前はあって。でも今は“絶対できる”って思えるから、完全に(メンバーに)委ねられますね。

●そこまで進化できたのは何故なんでしょう?

Jun:意識の面が一番大きいんじゃないかな。

Kotaro:“その音を出さなきゃいけないんだ”みたいな意識が出てきました。それだけ音楽に懸けているというか。単に好きなことをやっていたところから、“自分たちの音楽をやる”っていう考え方になったと思います。

Daisuke:今までは“自分が出したい音を出せばいいや”という感じがあって。それも自分たちの音楽ではあるんですけど、今回はちょっと感覚が違いますね。

●前作を作ったことで自分たちの現状が見えて、意識も変わったんじゃないですか?

Daisuke:まさにそうですね。前作を作るまでは曲数も少なくて、自分たちでもまだ“sever black paranoia”というものの全貌を探っている段階だったのかな。前作を作ったことで自分たちの全貌が見えてきて、“さらにそこから”というのが今作だったんです。自分たちのことをわかって、より向き合うべき部分が見えてきたという点で意識が変わったというのはありますね。

Yosk:前作を作ったことで自分に足りないものが見えてきて、今回の作品にも打ち込むことができました。

●今作『East of Eden』はタイトルからして、すごくコンセプチュアルな感じがしますが。

Daisuke:正直、前作を作り終えた時点では“次はどうしよう?”という感じだったんですよ(笑)。ただ、作品ごとに1つテーマがあったら面白いんじゃないかということは考えていて。“地球最初の人間”と言われるアダムとイブの物語をテーマに、映画や文学を作る人は多いと思うんです。そこで僕らはその息子2人をテーマにして、今作を作ってみようと思ったんですよ。

●それがカインとアベルのお話ですよね。

Daisuke:カインが兄でアベルが弟なんですけど、旧約聖書の中にある兄が弟を殺してしまうという物語なんですよ。この話はその時代だけにとどまらず、現代社会にもリンクするんじゃないかと思って。昔から殺人はあったし、愛おしい人同士で憎しみ合ったりするような、時代が変わっても変わらない部分が人間にはある。何十年も何千年も前に起きたことでも現代に起きたことでも問題の本質は変わらなくて、結局は“愛の欠如”という問題点がずっとあるんです。今回はそこに着想を得たものをさらに突き詰めて、曲の世界観で表現してみようというコンセプトで作った作品ですね。

●実際にM-2「Abel」とM-3「Cain」は、その2人の兄弟を象徴している?

Daisuke:「Abel」は殺されてしまった弟のほうなので優しい部分を描いていて、歌もメロディアスな感じにしているんです。逆に「Cain」はすごく利己的で我欲に走る傾向があって凶暴な兄の人格を表すために、メロディを一切省いてスクリームのみにしましたね。

●優しさと凶暴さという相反する性格が、曲調にも反映されていると。

Kotaro:「Cain」はギターの弦を思いっきり唸らせて弾くイメージでしたね。そういう気持ちの面から、変化を付けたつもりです。

Jun:「Abel」は優しくて「Cain」は凶暴だというイメージを最初に聞かせてもらっているので、自然とそう弾いちゃうところもあって。

Yosk:曲の背景にある物語を先に聞くことで、音の意味を意識してプレイするようになりました。そうすることで、こういう作品ができたという感じですね。

●みんなでイメージを共有したことで、バンド感が増したというのもあるんじゃないですか?

Daisuke:それはありますね。やっぱりみんなで共有したいという気持ちがあるし、それがバンドの醍醐味でもあるから。みんなが意識を共有しながら表現できたので、今回の制作はすごく楽しかったです。

●ちなみにM-5「Sever Your Memories」がボーナストラックなのは、今作のコンセプトと外れるから?

Daisuke:コンセプトに沿った一連の流れとしては、1曲目から4曲目までで終わりなんですよ。この曲はsever black paranoiaというバンドを結成して最初にできた楽曲で、以前から音源化したい気持ちはあって。僕らの凶暴性が前面に出た曲でもあるので、作品に入れたいとは思っていたんです。

Kotaro:単に、出すタイミングがなかったというのが大きいですね。自分たちでも、ちゃんと録ってみて初めて“こういう曲だったんだ!”というのがハッキリして。ライブで頻繁にやっていたわけでもないので、“隠しキャラ”的な感じです(笑)。

●隠しキャラって(笑)。

Daisuke:sever black paranoiaの音楽性を確立するために、試験的に作ってみた曲という部分はあるのかな。トランスの特性である4つ打ちのビートとメタルの要素を初めて融合できた曲ではありますね。

●自分たちの原点的な曲も入れられて、トータルで満足のいく作品になったのでは?

Kotaro:自分たちの好きなことをうまく形にできた作品だと思いますね。やりたいことを表現するというのが、僕らにとってはすごく大事なので。“これだ!”っていうものをやりたいし、それを形にできた作品と言えるかもしれない。

Jun:前作に比べると、技術面も楽曲のクオリティもまた1段階上がっている気がしていて。“進化したsever black paranoia”という感じで僕は捉えています。

Yosk:原曲のデモをDaisukeが持ってきた段階から、“これはヤバいな”っていうことにみんな気付いていて。録音し終わった作品を聴いてみても、やっぱりヤバかったんです。そこが変わらなかったので、本当に最初から最後まで楽しかったですね。

Daisuke:まず曲を作っている段階で自分が“ヤバい”と思うものしか、メンバーには聴かせないんですよ。メンバーがその楽曲に驚いて感化されるくらいじゃなければ、表現する意味もないと思うから。そこの土台がないと、技術や知識だけがあっても何も生まれない。やっぱり常に感動していたいし、そういう意味で今回は感動的な作品に仕上がりましたね。

Interview:IMAI

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