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sleepy.ab

純粋な表現欲と蠢く個性、北の大地で育まれた繊細な感性 現代のシーンに生まれた稀有な存在、sleepy.abという芸術が加速する

PHOTO_sleepyabアルバム制作の途中でメンバー脱退という危機を乗り越え、メジャーからインディーズへとフィールドを移した2012年。北の大地で生まれ、その澄み切った空気のごとくきらびやかな感性を音にしてきたロックバンドsleepy.ab(スリーピー)が、2011年2月にリリースしたアルバム『Mother Goose』以来、約2年ぶりとなるアルバム『neuron』を完成させた。今作は純粋な表現欲から制作をスタートさせ、結成以来ふつふつと蠢く個性と、北の大地で育まれた繊細な感性を、過去の経験と未来への好奇心で紡いだ珠玉の14曲が収録。今回は、確かなものを手に入れたVo./G.成山 剛に話を訊いた。

 

「たまらないですね。そういうギラギラしたものに魅せられてきたし、やっぱり好きなんです。結局sleepy.abというバンドはそこなんだなって」

●2011年2月にリリースしたアルバム『Mother Goose』以来、約2年ぶりのアルバムリリースとなりますが、最近のトピックと言えば、昨年5月のDr.津波くんの脱退で。

成山:そうですね。ちょうど、2011年の年末ごろに話が出たんですよ。理由は色々とあるんでしょうけど、結局はモチベーションが下がったとしか言いようがないかな。でも他のメンバーはそのことをすぐには受け入れられなかったんですよ。それで“このままではバンドが続けられないな”と思いましたから。それで全体のモチベーションも下がって、そこから4ヶ月くらいは制作もストップして。

●そうだったんですか。

成山:津波の脱退は受け入れたんですけど、“果たして僕らはどうしていくんだろう?”というクエスチョンが残ったままで。12月にその話があって、1月に予定していたレコーディングも延期して。

●ピンチだ。

成山:ピンチでしたね。でも結局は曲だったんです。もう1度“sleepy.abというバンドは何がしたいのか?”という根本的なところを見つめなおしたというか、メンバー間で話し合ったんです。「何をしようか?」とか「何ができる?」とか。今から思い返したらですけど、そのころはちょっとマンネリというか、バンドがなあなあな雰囲気だったんですよ。でも津波の脱退が、キチンとバンドに向き合うきっかけになったというか。

●なるほど。

成山:例えばメジャーにいったときってすごく満足して作品を作っていたんですけど、勝手に自分で“メジャーっぽいものを”というのを考えていたんです。もちろん伸び伸びとやっているつもりなんですけど、リリースのスピードもあるし、周りの人たちからの期待とかを勝手に背負い込んでる感じもあったんです。山内もそうだし。

●あ、そうだったんですね。

成山:例えば「音をこれ以上汚してはいけない」って。田舎者の考え方というか、慣れてない場所に行ったから意識しすぎていたんですね(笑)。

●ハハハ(笑)。

成山:好きなものをやっている範囲の中でも、選ぶのは“メジャーっぽいもの”という。

●そういうところも含めて、バンドの在り方や自分たちがやりたいことをもう1度見つめなおしたと。

成山:そうですね。そこで考えたのは、sleepy.abというバンドは自分たちの世界観を出すしかないと思ったんです。絵を見せるというか。それがやっぱり得意なバンドなんじゃないかなって。

●うんうん。

成山:そこを追求していくことが、このバンドにとっていい在り方なのかなって。3人で話し合って、自分たちの原点を見つめなおしたんです。結局僕らは考えることが向いてないんだなって。メジャーでやらせてもらったのはすごくありがたいし、作ってきた作品に満足はしているんです。でも届ける場所を狙ったとしても、僕らのもともとの考え方が違うからそこには届かないっていう。それに気づいたというか。

●もう1度見つめなおし、結局は自分たちの世界観を追求することだと。

成山:そうですね。曲もそうですし、アートワークも含めた作品作りとして。

●それはsleepy.abの原点ですよね。

成山:そうですね。ギラギラした部分を出していこうって。出しているつもりだったんですけど、それが届いていなかったなって。攻めているつもりなんですけど、もっと攻めないとダメだなと思って。山内も「もうこれが最後の1枚くらいの覚悟で作った」と言ってました。

●逆境がバンドにとってのカンフル剤になったんですね。

成山:本当にそうですね。去年の春くらいから各々が曲を出していって、夏にレコーディングをしたんです。音楽を作っているとき、グッとくることがあるんですよ。自分で泣くんです。メロディと歌詞がリンクしたときにブワッて。そういうことは本当に少なくてまさに奇跡の1曲で、「メロディ」(3rdアルバム『palett』収録)や「賛歌」(4thアルバム『fantasia』収録)がそうなんですけど、自分の琴線に触れるというか、メロディに言葉が触れたときのマジックみたいな感覚。それを目の当たりにしたときの感動というのは、本当に他にはないもので。

●ああ〜。

成山:泣くまではいかないとしても、ハマッたときの快感というか。今作のタイトル『neuron』…“脳内宇宙”というテーマもそうなんですけど、だんだん形になっていくことがたまらないんです。ジャケットのアートワークしかり。たまらないですね。そういうギラギラしたものに魅せられてきたし、やっぱり好きなんです。結局sleepy.abというバンドはそこなんだなって。

●なるほど。

成山:でも作っている段階は今までと同じで、“ギラギラしたものを出したい”っていうスタンスは変わってはいないんです。でもそのことが自分たちの意識として大きくなったというか、より純粋になったというか。

●いいことですね。今作の制作中に体制が変わったということですが、そのことによって作品のイメージというか、全体像は変わったんですか?

成山:そうですね。脱退の前に5曲録っていたんですけど、その後で作った曲は派手になったというか、好きなものを詰め込んだ感じがありますね。とことんまでやるという。でも「好きなことをやる」と言っても、ギタリストの山内は好きなことをやったかもしれないですけど、今回の山内はプロデューサーとして作品全体をまとめたところがあって。

●ここ最近の山内くんはそういう立ち位置でも作品に取り組んできましたが、今回もそうだったと。

成山:「好きなことをやる」と言っていても、やっぱりフレーズが多かったなって。M-2「euphoria」とかM-3「ハーメルン」やM-4「undo」がそうなんですけど、曲に入った瞬間「これだ」と思えるキャッチーさみたいなものを自然に出してきたんですけど、実は考えてるんだなと思いました。作品全体のテーマも「今回は“ゆらぎ”をテーマにする」と言ってて。最初はよくわかんなかったんですけどね(笑)。

●ハハハ(笑)。先ほどおっしゃっていましたが、今作のテーマというか世界観…“脳内宇宙”は、いつの段階で出来上がったんですか?

成山:M-11「アンドロメダ」ができたときにちょっとそういうイメージが湧いたんですけど、“宇宙”っていうのはモチーフとして使いやすいじゃないですか。

●うん。sleepy.abの音楽に合っていると思います。

成山:そう。だからもともと一貫してあったモチーフだったと思うんです。それをもうちょっと濃くやってみたいなと。去年の2月に生産限定ep『アンドロメダ/Lost』をリリースしましたけど、「アンドロメダ」ができた時点でそういう感触があったんです。だからさっき「津波の脱退でバンドのモチベーションが1度下がった」と言いましたけど、「アンドロメダ」があったからこそ繋げることができた感じもあって。テーマがあったというか、やりたいことがあるっていう。続きがあるなって思えたんです。俺は「アンドロメダ」という曲がすごく好きで。“こういう曲を作ることができる人は意外と居ないんじゃないか”という手応えがあったんです。

●浮遊感があってぼんやりしているのにキャッチーで。聴いていてもなんか不思議な感覚なんですよね。

成山:“アンドロメダみたい”という歌詞はいちばん最初の仮歌の段階でもう入っていたんです。適当に歌っていた段階から。自分で“アンドロメダみたい”ってなんだろう? と思って。

●普通はそういう例えしませんもんね(笑)。

成山:そうそう(笑)。降ってきたみたいな言葉はなんだろう? って。その不思議さがすごく良かったというか。それ以外の言葉は当てはまらない強さもあるし、でもなんて不思議な言葉なんだろうって。

●うんうん。

成山:それが新しい感覚で。今まではあまりそういうことはなかったんですよ。歌詞は結構、イメージがあってその中で書いていくという感じで。でも「アンドロメダ」は言葉がポンと出てきて、その言葉をイメージで繋いでいくみたいな新しい感覚で、いいなって。

●「アンドロメダ」で感じた感動が、今作の大きなきっかけになっているんですね。

成山:そうですね。別に知識としての宇宙に興味があるとかそういう話ではないんですけど、モチーフとして好きだなと思ってて。でも「アンドロメダ」をきっかけに、アンドロメダ星雲とかの写真を見ていくとだんだんおもしろくなったんです。ずっと写真を見ていると、アンドロメダ星雲が人間の脳神経細胞とすごくそっくりなことを知って驚いたんです。

●はいはい。

成山:知識というより、漠然とおもしろいなって。ロマンを感じて、そっちの方向にイメージを膨らませたらグワッと盛り上がったんです。

●宇宙とか脳神経細胞が、自分の創作欲を刺激するスパイスになったと。

成山:そうですね。そことsleepy.abの音楽が自分の中でリンクしていったとか。

●なるほど。前作『Mother Goose』というアルバムは、sleepy.abの歴史の中でも“温かさ”や“柔らかさ”のイメージが強かったんです。

成山:そうですね。陽だまりみたいな。

●作品全体のイメージとして温度を感じるというか。対して今作は“冷たさ”を感じたんです。その“冷たさ”は初期のsleepy.abから感じていた感覚に近くて。でも表現の方法とかは比べ物にならないくらい広がっているから、戻ったという話ではないんですけど。

成山:そうですね。確かに『Mother Goose』は温かいですね。今から考えてみると、『Mother Goose』はそういうところを拡げようとしていた節はあるんです。sleepy.abの人懐っこい部分というか。

●はいはい。

成山:そういう部分を持ち合わせているという自覚もあるので、そういうところをピックアップしたところもあります。でも今作は、そういうことも考えずに、持ち合わせているものの中でいちばん心が動くものを出したというか。「好きにやった」と言えばそれまでなんですけどね。

●今作は、sleepy.abというバンドの歴史で考えると「メロディ」で手にしたキャッチーな部分…陰と陽で言えば“陽”のsleepy.ab…を採り込んでバンドの個性にした前提で、好きなことをやった作品だと思うんです。だからキャッチーな部分もあれば、初期のころに強く感じさせた歪さも同居している。だから、大きく変わったとは思わないし、バランスがフラットになったような感覚というか。

成山:そうかもしれないです。“そういえばsleepy.abこれだよね”って。

●そうそう。

成山:それと、今までと違う点でいえば、今回は山内がメロディまで作ってきたパターンの曲があるんです。いつもは俺がメロディを作って山内がオケを作ることが多いんですけど、今作の「euphoria」と「undo」は山内がメロディも全部作ったんです。

●「undo」は山内くんぽいなと思ったんですけど、「euphoria」のメロディも山内くんが作ったんですか。こっちはちょっと意外。

成山:そこでの新しい鳴り方というか、聴こえ方があるだろうなって。

●山内くんがメロディまで作ったのは何か理由があるんですか?

成山:山内の中でもやってみたいという想いがあったみたいで。去年の2月に出したepの「Lost」は初めての試みだったんですけど、2人で別々にメロディを作ってみたんですよ。そうしたら、Aメロは山内が作ったものの方がいいねという話になり、Bメロとサビは俺が作ったものの方がいいねと。

●あ、そういう経緯があったんですね。

成山:それがきっかけになり、今回自分でメロディを作ってきたんです。

●「euphoria」と「undo」を作ってきたときにメロディも乗っていたと。

成山:そうです。で、「なんだよちくしょー」と思って、俺もメロディを作ったんです。2曲とも。そしたら山内のメロディの方が良かった(笑)。

●ハハハ(笑)。

成山:それがバンドにとって新しかったんですよね。

●なるほど。僕は、特に「undo」とかから初期の匂いを感じたんですよね。何がどうなっているかわからない感じというか、すぐには理解ができない禍々しさというか。

成山:そうですね。悪い音(笑)。

●でもそれはsleepy.abのコアな個性であり大きな魅力の1つでもあって。山内くんが作ってきたメロディを歌うとき、感覚は違うんですか?

成山:違いますね。ブレスの位置もそうだし、いちばん低いところをサビに持ってくるというわけのわかんない感じとか(笑)。歌うのは楽しいんですよ。でも自分が作ったメロディとのいちばん大きな違いは、言葉の置き方というか。山内の方がメロディに対する音符の数が少ないんです。それが今までとは違っていて新鮮でした。

●なるほど。

成山:それと、山内がメロディを作るようになって変わったところは、歌に対するアレンジをするようになったことなんです。今まではまったくしなかったんですよ。

●確かに今までは歌のキャッチーさを壊すくらいの方向性でアレンジしていましたからね。

成山:Aメロでギターがいちばん入っている、みたいな(笑)。それも違うところかもしれないです。

●なるほど。あと、色んな曲に相変わらず“これは何の音だろう?”と感じる音が入っているじゃないですか。

成山:そうですね。

●今作の印象としては、その1つ1つがキャッチーなんです。ただ単に汚すために入っているわけじゃない。

成山:それは技術的な進歩も大きいと思います。『Mother Goose』も色んな音がいっぱい入ってるんですけど、それが潰し合っている部分もあったし。

●ああ〜。

成山:でも今回は音が立っている感じがありますよね。あまりごちゃごちゃにはしたくなかったというか、どれをメインにするかということがハッキリしているというか。

●うんうん。曲で伝えようとしていることが明確になったのかな。

成山:そうかもしれないですね。それは山内に依るところが大きいんですけど。

●山内くんがんばったんですね。

成山:でも最近はプロデューサーとしての割合が大きくなって、ギタリストとしておもしろくないなと俺と田中は感じたので、今回の制作では2人で山内に「ギタリストとしておもしろくないとsleepy.abとしての魅力は半減するよ」と言ったりしていたんです。

●山内くんかわいそうに(笑)。まあ当然の話ですけど。

成山:やっぱり山内のギターらしさがないと、sleepy.abがもともと持っているロックの要素が失われると思うんです。ロックというカテゴリーの中に自分たちを置きたいんですよ。そういう想いはずっとあって。

●そうなんですね。別にロックじゃないとは思いませんけど、そういう明確な自覚があるとは思っていなかった。

成山:そもそも俺たちはロックという意識の下でやってるんです。そう見えないかもしれないですけど(笑)。

●確かに(笑)。

成山:でもロックというイメージの中でずっと作ってきたので、やっぱりギターが持つ硬派的な部分は捨てたくないなって。もっと言うと、今の体制になって自分たちを見つめなおしたとき、“最近の俺たちは女々しかったんだな”と思ったんです。なんとなく在り続ける状態に陥ってて、それは女々しいことだなと。

●ああ〜。

成山:それはロックじゃないな、ダメだなと。

●心のベクトルを象徴するものとしての“ロック”。

成山:そうですね。やっぱりロックじゃないとダメなんです。だからかっこいいことをしようって。

Interview:Takeshi.Yamanaka

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