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SuiseiNoboAz

真っ青なノイズに満ちた空に終わらないロックンロールの夢を見る

187_スイセイ_A今年4月に渋谷O-nestで行われたライブのMCでニューアルバムの発売とメジャーデビューを発表して衝撃を呼んだ、SuiseiNoboAz(スイセイノボアズ)。だが、前作から約2年の時を経て完成した今回の3rdアルバム『ubik』は、どこで活動しようがボアズはボアズであることを証明するような傑作となっている。ノイズに充満しながらも、澄み切った美しさを湛えるバンドサウンド。鋭利に研ぎ澄まされた言葉とメロディは、爆音の中でもなお一瞬で脳を突き刺す。10代の頃に初めて触れた衝撃を鮮やかに甦らせるような、真の意味でのロックンロールがここにある。

「“とんでもないものを作っているな”と思いながらやっているんです。そういうトキメキを今でも同じように感じているし、追いかけているのかな」

●前作の2ndアルバム『THE(OVERUSED)END OF THE WORLD and I MISS YOU MUH-FUH』が2011年7月リリースだったわけで、今回の新作発表までに時間が空きましたよね。

石原:2011年10月に前作のツアーファイナル@代官山UNITが終わったんですけど、その頃にはもう今作から3曲くらい演奏していたんですよ。真っ青なアルバムを作ろうということは、その当時から決まっていて。2012年の4〜5月くらいには曲もほとんど揃っていましたね。

●曲自体は1年以上前に出揃っていたと。

石原:曲数はあったんです。でもそれからライブをしていく内に新しい曲もできて、どんどん入れ替わっていって。結局、全体の1/3くらいは新しい曲に入れ替わったと思います。レコーディングに入ったのは今年の2月くらいで、途中に“SXSW 2013”を挟んで日本に帰ってきてから歌を入れてMixした感じでしたね。今回はレコーディングの期間を長めに取らせてもらったので、じっくり作れました。

●”真っ青なアルバム”とおっしゃいましたが、それが今作のテーマになっている?

石原:そうですね。“青”と“ノイズ”と“多幸感”、あと…“死”ですね。

●そういうテーマに至った経緯とは?

石原:2ndアルバムのツアーをまわっている時期だったと思うんですけど、夜中に高円寺から自転車で家に帰る途中の交差点で大コケして…顔面から道路に落ちたんです。それで脳震盪を起こして、動けなくなっちゃったんですよ。

●大事故じゃないですか!

石原:明け方に1人で動けないのでその場でしばらく寝ていたら、空がちょっとずつ朝になるにつれて青緑っぽい色になっていくんですよ。この青緑の感じは何だろうなと考えてみると、歌詞にも出てくる“コーラの瓶の色”だなと(M-11「elephant you」)。漁港で見かける大きなガラス玉(※浮き玉)も、ああいう色をしていて。ガラスって漂白しないとあの色になるんでしょうけど、たぶん汚れの色なんじゃないかと僕は勝手に推測したんです。つまり、あれはノイズの色なんじゃないかって。

●成分中の雑味や混ざりものというか。

石原:明け方の青緑っぽい空は、もしかしたら空気中のノイズの色なんじゃないかっていう。ノイズが青緑に発光して、きれいな色を生んでいるんじゃないか…というところが始まりでしたね。

●「elephant you」の1行目、“新宿区へ向かう道の途中でぶっ倒れたまま朝になった”は実話だったんですね…。

石原:そうです。基本的に僕は実話しか書かないので。ただ、歌詞に関してはあんまり“書いている”という意識がないというか、思いつきなんですよね。普段から単語をいっぱいコレクションしてあって、それをメンバーとジャムセッションしている時に大喜利みたいに出していくんです。だから、あんまり机に向かって歌詞を書くという感じではなくて。

●インパクトの強い、衝動的な言葉が多い気がしますね。“バイクに乗りたい”(M-10「I.O.U.」)とか…。

石原:そうですね。この前はバイクに乗っていたら、お弁当屋さんの軽トラックにハネられて大変でした。

●事故率が高いな(笑)。

石原:引きが強いんです(笑)。(歌詞に関しては)文章になると、立ち上がりが遅くなるような気がして。それはそれで良いところもあると思うんですけど、僕の場合は立ち上がりの速さのほうが重要なのかな。とにかく初速が速くないと嫌なんですよね。

●初速が速い言葉?

石原:マヘル・シャラル・ハシュ・バズの工藤冬里さんの言葉で、「言葉が音速を超えないとなれば、音は光の額縁になりたがる言葉だ。光の額縁になれなかったら言葉は絵の額縁になってしまう」というのがあって。言葉は音である以上、音速を超えないんですよね。でも音速を超えて光速に近付く言葉っていうか、実際は不可能なんですけど、それを夢見る言葉っていうことは常に思っているんです。脳に届くまでのスピードが速い言葉というものを心がけています。

●即効性のある言葉を求めている。

石原:そうすると、やっぱり話し慣れている言葉や聞き慣れている言葉、つまり生活の中の言葉に戻ってくるんですよね。というか、そこに戻ってこないといけないと思うんです。俗っぽくない表現者って、全員が嘘っぱちだと僕は思っていて。クソ野郎ですよ(笑)。

●ハハハ(笑)。

石原:僕はあまりにアートっぽいものが嫌いなんですよ。アート的な意識が強い人って変に敷居を高くするところがあって、それがすごく嫌ですね。ロックは悪ふざけの延長線上に美しいものがないと、本当に良いものとは言えないんじゃないかと思います。

●アートっぽい感じで、何を言っているのかよくわからない歌詞ってありますよね。

石原:“嘘でしょ?”って。“ピザ食うっしょ? ピザ美味いっしょ?”みたいな(笑)。

●M-9「T.D.B.B. PIRATES LANGUAGE」にも“ピザでも食ってろ、豚野郎。”という歌詞がありますが…。

石原:これはまた引きの強い話になるんですけど、夜に早稲田通りを自転車で走っている時にちょうどライトを盗まれたばかりで無灯火だったんですよ。そしたら本格的なロードバイクに乗った人がかなりアグレッシブな運転をしてきて、僕とぶつかりそうになって。その瞬間に「豚野郎!」って言われたんです。僕が無灯火だったのでしょうがないんですけど、初対面の人に対して言うことじゃないだろうと思って頭にきたので追いかけたんですけど、逃げられましたね…。

●追いかけたんだ(笑)。これも実話から出た言葉だし、別に奇をてらっているわけではないんでしょうね。

石原:変なことが言いたいとは、一切思わないですね。本当にスッと入ってきて、パッとわかる言葉というだけで。僕はアヴァンギャルドじゃなくても別にいいんですけど、発想は自由でいたいんですよね。ドキドキするものが好きだから。

●ドキドキするのが音楽の魅力ですよね。

石原:トキメキですね。僕がエレキギターを始めたのが14歳なんですけど、最初にギターをアンプに突っ込んで、自分が出したとは思えないとんでもない音が“バコン!”と出た瞬間がギタリストとしてのピークかもしれないなって。自分としては、その“14歳”の気分というものがすごく大事な気持ちとしてあるんです。

●だから、歌詞にもよく“14歳”と出てくると。

石原:そういう気分を歌いたい時はやっぱり14歳になるんですよね。最近は、ちょっと前の自分だったら考えつかないような無茶をなるべくするようにしているんですよ。“SXSW 2013”でアメリカに行ったこともそうだし、自分ができなかったことや今までやってこなかったことをあえてやるようにしていて。そういうことをやる度に、その時と似たような高揚感というか、タブーに触れちゃったようなドキドキ感が今でもあると思うんです。

●何が起こるのかわからないハラハラ感?

石原:何か想像もつかないようなことが起こっているというか。レコーディングをしている時も、“とんでもないものを作っているな”と自分で思いながらやっているんです。そういうトキメキを今でも同じように感じているし、追いかけているのかな。

●毎回レコーディングではトキメキがある?

石原:トキメキますね。レコーディングで予想もつかないようなことが起こった時に“すげー、これ!”と素直に驚けることが一番大事で。自分がよくわからないことが起こっちゃった時に驚いて、楽しめるっていうモードにバンドがここ最近なってきているので楽しいですね。

溝渕:すぐに「これ、いけるでしょ」みたいな感じになるんです。「これ…、売れるんじゃないか?」って(笑)。

●そういう発想に行くんだ(笑)。

櫻井:常に言ってるよね(笑)。

石原:「バカ売れでしょ!」って。1曲できる度に5秒くらい沈黙して、「忙しくなるぞ〜」って小声で言ったりしています(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●“売れたい”という気持ちは強い?

石原:「売れたい売れたい」と、ずっと言っていますよ。逆に自分たちが“ストレンジなバンド”だとか“変テコ”だとか“オルタナ”だとか、本流でないようなことを言われるわけが本当に理解できないんです。僕からしたら世の中は変態だらけで、“なぜひとりとしてまともな奴がいねえんだ?”と思っていて。

●M-6「HELL」の歌詞でもそう歌っていますね。

石原:よくもこんなにまともじゃないものが世の中に蔓延して、それがあたかも王道かのように振舞っているよなっていう。そういう思いはもう10代の時からずっとあります。だから僕は自分たちが“ポストロック”とか“オルタナロック”とか呼ばれることが本当に頭にきていて…。僕らはロックの“ポスト(※次の〜)”でもないし、ロックの“オルタナ(※代用)”でも何でもない。ど真ん中のロックンロールなんですよ。でもポストだとかオルタナだとか標榜している奴らよりも、500倍くらい自由なんです。500倍くらい自由な発想で、500倍くらい楽しんでやっている。…それに尽きますね。

●個人的な意見ですが、先ほどおっしゃられた“悪ふざけの延長線上”にあるものが結局は一番楽しいんじゃないかと思うんです。

石原:そうですね。ロックは“表現”よりも“表出”だと思うから、“何をやるか”じゃなくて“どうやるか”なんだと思います。そうである以上、永遠にアマチュアじゃなきゃいけない。“ギターを買ったばかりで楽しい!”っていう、素人の音楽じゃないといけないんです。僕はTHE FLAMING LIPSが好きなんですけど、(彼らの音は)楽器を触って楽しかったり演奏するのがただ好きでああなった感じがする。ストレートというか、曲がっていない感じ。…魂が曲がったら、おしまいですからね。それは本当に思います。

●ピュアな衝動を失わないことが大事だと。

石原:だから“プロのミュージシャン”とか“大人のためのロック”とか、そういうものはないんです。クソです、クソを拭く紙です。ジョン・ライドンが「今聴けるものはみんなクソをふわふわに膨らませた、クソのスフレばっかりだ」と言いましたけど、俺たちの時代はさらにクソの上にクソを何層も塗り重ねたクソのミルフィーユなんですよ。みんな、自分があたかもたいした現代アーティストみたいなことを言いたがるじゃないですか? あれはクソのスフレです。

櫻井:ミルフィーユじゃないの?

石原:そうだった、クソのミルフィーユ…想像したくもない…(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●そういうクソのミルフィーユみたいな音楽に対して、自分たちの音楽は何なんですか?

石原:僕たちは…1本グソですね。

●ハハハ(笑)。潔いってこと?

石原:潔いクソです。シュッとした、硬いクソですね。だから全然流れてくれないんです(笑)。

櫻井:拭かなくてもいい奴だよね。

石原:拭かなくてもいい、後腐れのない奴だね。でもいつまでも流れないような…まさにこのアルバムのような。

●…本当にそのたとえで終わっていいんですか?

一同:ハハハハハ(爆笑)。

櫻井:自分でも聴きたいアルバムができたと思います。できあがってから何回も聴いているんですけど、やっぱり良いなって。

石原:自分の聴きたいものしか作らないからね。

溝渕:ホント聴いていますね。すごく満足できるものになりました。この2年くらいでやってきたことが詰まっているんじゃないかな。

Interview:IMAI

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