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The Cheserasera

平凡な日常を輝かせるセンチメンタルギターロック

194_Cheserasera2013年10月にタワーレコード限定で発売した1stシングル『Drape』がインディーズ・デイリーチャートで1位を獲得するなど話題を呼んでいる3ピースバンド、The Cheseraseraが初の全国流通盤となる1stミニアルバムをリリースする。蒼い空気を漂わせた疾走感溢れるギターロックサウンドに乗せて、耳に飛び込んでくるエモーショナルなボーカルとフックのあるメロディ。そして時に辛辣な皮肉も孕みつつ、日常を精一杯生きる人々の姿を肯定的に捉えた歌詞に共感する人は少なくないだろう。さらなる広がりを感じさせる、新たな要注目バンドの登場だ。

 

 

 

「振り切った想いだけが勝つんじゃなくて、“普通の状態で自分も燃えているだろう?”っていうことをずっと伝えていきたいなと思っています」

●公式ブログのプロフィールを見ると、聴いてきた音楽はフォークやニューミュージックから民俗音楽やドローンといったマニアックなものまで多岐にわたっていますよね。

宍戸:そうなんですよ(笑)。外堀から埋めるというか、当初はビートルズとか王道的なものを全然聴いていなかったんです。高校時代に軽音楽部の先輩がすごく音楽を聴く人で、「おまえもこれを聴けよ」という感じで色んなCDを貸してもらっていました。元々はTVで流れていたような音楽しか知らなくて、J-POPを聴いていたんですけどね。

●当時やっていたバンドは、そういうマニアックな音楽の趣味を反映していたりしたんでしょうか?

宍戸:周りからはよく「変だね」と言われていましたね。「キング・クリムゾンとかが好きなの?」と訊かれたりもしたんですけど、当時は聴いたことがなくて。自分が作りたいように作っていたら、周りには“変なもの”と見られていた感じです(笑)。

●そこから今のギターロック的なサウンドに回帰してきたキッカケは?

宍戸:大学のサークルでそういうバンドの曲をみんながコピーしているのを聴いて、「やっぱり良いな」と思ったんです。実際Mr.Childrenとかもずっと聴いてはいたし、そういう歌もののほうが歌詞も日本語でグッとくるなという感覚があって。

●とはいえ、今のサウンドも単なる“ギターロック”という枠には収まらないものに思えます。

宍戸:僕は計算とかができないタイプなので、本当に自分が好きなように作っているだけなんですよ。でも周りからは「変わっている」とか「ひねくれている」と言われるので、「そうなんだ」と思うくらいですね(笑)。

●自覚はないと(笑)。The Cheseraseraより前に、2009年から前身バンドを始めているんですよね?

宍戸:そのバンドを結成してすぐに前のベーシストが辞めてしまって、Dr.美代くんの幼なじみだったBa.西田くんが加入したんです。本格的に活動を始めたのは、The Cheseraseraというバンド名になってからですね。

●バンド名の由来は“ケ・セラ・セラ(なるようになる)”だと思うんですが、好きな言葉なんですか?

宍戸:ネガティブにもポジティブにもどちらにも取れる言葉だと思うんですけど、そこが好きなんですよね。常にそういう気分で生きているから。

●M-4「Finale」での“あったり なかったりする”という歌詞にも、そんな部分が出ているかなと。

宍戸:そこを言い切ってしまうと、逆にリアルから遠ざかってしまうと思ったんですよ。あえてそういう言い方にしたほうがしっくりくるというか。僕は生活の中で出てくる言葉しか使いたくないなと思っていて。道を歩いている時の気持ちをそのまま書き起こしたくて、そういう表現になっています。

●日常で感じたことを歌詞にしている?

宍戸:僕は、夢みたいなことを言いたくなくて。夢は夢で終わってしまうから、現実の中で輝く瞬間を切り取っていきたいんです。どうしようない今からの現実逃避的なものを提供したいわけじゃなくて、「今この現状で良いことがあるぜ」っていうことを何とか伝えていきたいなという想いがありますね。

●現実から目を背けることなく、その中で良いところを見つけていくというか。

宍戸:特に僕は「自分なんかたいしたことない」と思いがちなんですよ。でも地味な服を着て電車に乗っている人とかを見かけた時も、「きっとこの人にもすごいドラマがあるんだろうな」と考えたりして。「みんな1人1人が色んなことを思って生きているんだな」と思うから、それを何とか伝えたいんですよね。

●そういう人の生活や気持ちを想像して、自分の歌にしている?

宍戸:町を歩いている時はずっと人を見ているんです。それを自分に還元しちゃうというか、弾き語りで曲を作る瞬間に自分の想いに変えて表現したい。なんだかんだで自分が思っていることって、結局は周りが醸しだす空気感が育てているんじゃないかなって。そこに共感して、言葉にしていくんじゃないかなと。何かすごい世界観を見せたいとかじゃなくて、自分が主人公になって輝けるような歌を歌いたいですね。

●現実離れした歌を作りたいわけではない。

宍戸:あんまり飛躍したことを言っても夢の話で終わってしまうので、地に足を着けて伝えたいなって。色んな人を見て、色んな人生を思い浮かべて「みんな頑張っているな」と思うから、そういう人たちを主人公にしたいっていうか。輝きまくっている人とかじゃなくて、自分たちを主人公にした歌を作りたいんですよ。だから輝きまくっている人の歌は1つもないですね。逆に「彼女が死んだ」みたいな歌もないし、「自分って地味だな」と思ってしまうような生活を取り上げて「それで良いんだぜ」っていうことを伝えたいんです。

●普通に生きていたら、そんな大事件なんか滅多に起こらないわけですからね。

宍戸:そういう日常の中でも、たとえばフラれたっていうことで三日三晩泣いたりするわけじゃないですか。でも大きな俯瞰の目で見た時には、それが何もなかったことになってしまうというか。よくあることだと思われるかもしれないけど、「それこそが大事件じゃないか」というふうに伝えたいんです。「そんなにちっぽけなものではないんだ」ということを届けたいんですよね。

●歌詞はフックのある言葉が多いと思うんですが、M-1「風に吹かれて」の“馬鹿に飼い慣らされた犬”というフレーズは特にインパクトがありました。

宍戸:普段がゆったりとした喋り方なので、急にそういう言葉を吐くと驚かれたりして。「意外と言うね」とか言われますけど、元々が皮肉屋なんだと思いますね(笑)。どうしても出てしまう“性(さが)”というか。本当に自然に出てくる言葉を書いているだけで、「これはやめておこう」みたいな判断はしていないんです。

●“馬鹿に飼い慣らされた犬”という言葉は単に誰かを非難しているというより、自分自身にも向けられている気がします。

宍戸:自分に限らず、働いている人全てがそうだなっていうか。頑張っているんだけど、どこかで制限を受けて挫折したりした時に「犬だな」と自分でも思ったりするんですよ。そういうことを伝えるために、ここはあえて言い放ちたいなって。

●苦しい状況がある中でも、何とか希望を見出して生きていこうとする姿勢がある。

宍戸:まさにそうですね。だから、この曲の歌詞でも“コンビニの角で祈る”と歌っていて。本当に地味な風景なんですけど、そういうところをピックアップすることでもっと感動していけるんじゃないかと思うから。

●M-3「Drape」の“冴えない町のドレープがとても好きだった”というのも、それに近い感覚でしょうか?

宍戸:ドレープってカーテンとかの“ひだ”の部分のことで、そういう布のたるんだ部分にゆとりとか優しさを僕は感じているんですよ。そこが地元の町のヌルい感じとかに、すごくハマるなと思って。両親の実家が福島なんですけど、そういうところの風景とかも思い浮かべたりしましたね。都心から離れた町の優しい感じを思い浮かべて書いています。

●この曲は、2013年10月にタワーレコード限定でシングルとしてもリリースしていますよね。

宍戸:リフの利いた曲なんですけど、そこから新たに始まった部分もあって。暗いという根本は変えられないから、そこをサウンドでどうにか明るくしたいということで派手なリフと明るい曲調を当てはめてみたんです。歌詞の面ではより多くの人に共感してもらいたいというところも意識しつつ、人に向けた作り方をできた曲ですね。

●それまでは、他者に向けて歌っていたわけではなかった?

宍戸:元々は自分が歌いたくて歌っているだけだったんですけど、そういう曲に対して「良いよ」とか「そういうことってあるんだ」と言ってもらえるようになってきて。あと、東日本大震災が起きた時はちょうど2枚目のデモアルバム(『empty,empty,dream』)が完成していて、ライブも震災の1週間後くらいに予定されていたんですよ。「こういう時に音楽をやるのは不謹慎じゃないか?」みたいな議論があった時期で、その時に僕も自分の歌のことを考えたんですよね。でも歌詞を読んでみると現状にそぐわないどころか、まるで予言しているかのようにピッタリだったんです。

●震災よりも前に作った歌が偶然、そういう状況下で響く歌になっていた。

宍戸:それがM-5「ALL DAYS THROUGH OUT」なんです。元々は大きい事件が起きるだなんて思わずに作っていたんですけど、不思議とそこに全てが当てはまるような歌だったんですよ。そういう時に響く歌を作っていたんだなと、自分自身が気付かされたというか。「共感をしてもらいたい」と思うようになったのは、その時からですね。

●そこが1つの転換点だった。

宍戸:はい。それまでは愚痴みたいな歌ばかりで、自問自答みたいなものをひたすら曲にして出し続けていて。今も単純に僕の想いを伝えている歌ではあるんですけど、それを「良いよ」と言ってくれる人も出てきたことで共感を意識するようになりました。

●そこを経て今回は初の全国流通作品をリリースするということで、自分たちにとっても大きな意味を持つ作品になったんじゃないですか?

宍戸:でも“ずっと続けていく”という感覚なので、始まりも終わりもないんですよ。僕はとにかく歌を作って、出し続けるということだけなので。全国流通ということもすごく嬉しいんですけど、これで終わるわけでも始まるわけでもないですからね。自分たちの現状について、あんまり客観的な視点では見れていないのかもしれない。だから「言われてみれば、転換点だったのかもしれない」くらいの感じで(笑)。言い切りが嫌いなので、「…なのかもしれない」というところでずっとモヤモヤしながらやっていて。でも今やれることは全部やっているし、とにかくガムシャラにやってはいますね。

●今後の目標みたいなものはあったりする?

宍戸:より多くの人に聴いてもらえるんだったら、聴いてもらいたいというだけですね。もちろん「良いよ」と言ってもらえると嬉しいし、もっと広がって欲しいんですけど、この先どうなるかはわからないというか。今はとにかく良い歌を作り続けたいということしかないんです。「1人1人の普通の人というのが、実は“普通”じゃないんだよ」ということを真っ直ぐに届けるっていう、この方法を洗練させていくしかないというか。

●そこの根本は変わらないまま、バンドとしても進化していこうとしている。

宍戸:(宣伝用の紙資料で)“センチメンタルギターロックバンド”と言ってもらえて、本当にそのとおりだなと思ったんですよ。振り切った想いだけが勝つんじゃなくて、「普通の状態で自分も燃えているだろう?」っていうことをずっと伝えていきたいなと思っていますね。

●ライブでもそういう熱を伝えていく感じでしょうか?

宍戸:ライブはバッキバキですよ(笑)。音源だとすごく爽やかに聞こえるみたいなんですけど、ライブは汗だくでバシバシやっています。演奏力や表現力が向上したことで、そういう部分もだんだん表に出せるようになってきたのかな。特に自分以外の2人はストレートなリズム隊なので、今回の作品でもストレートな音楽を提供したいなという想いはあって。導かれるべくして、こういう形でやっているんでしょうね。

Interview:IMAI

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