音楽メディア・フリーマガジン

the loud function

10年という月日を共に刻んできた仲間との別れを経て ここからまた新たな始まりを導く光を求めて歩き始める

“the loud function 10ヶ月連続企画
ワールド オブ メランコリー FINAL ROUND VOL.10”
SPECIAL LIVE REPORT
2012/10/20@Shibuya O-WEST
W/カミヒカルス、秀吉、about tess、こころおと、Suck a stew dry(O.A)

10年という月日は、the loud functionというバンドに何をもたらしたのか? ドラムのメンバーチェンジは幾度かあれど編成を変えながら、この10年間で1ヶ月以上ライブを空けたことがないという彼ら。おそらく何度も訪れたであろう苦境を、メンバーで共に乗り越えてきたはずである。そして10周年を迎えた2012年、自主企画“ワールド オブ メランコリー”を10ヶ月連続で開催することが発表された。1月から始まった本イベントは、the loud functionが10年間で積み上げてきたものを証明する場でもあるのだ。自らが“勝負の1年”と位置づけて強い想いで挑んで来た結果が、この日のファイナルラウンド・渋谷O-WESTで試される。

「この企画が終わった後に解散してしまうのならそれでもいい」というほどの不退転の覚悟で挑戦してきた中で、8月のライブではそう話していた当人であるVo./G.ポセの脱退という衝撃的ニュースが告げられた。そのポセが自らのラストステージに選んだのが、この日のO-WESTだ。オープニングナンバーとして演奏された「Air」の哀愁漂う空気感は、そんな感傷も少しは含んでいたのかもしれない。だが、このミドルテンポの楽曲をタイトル曲としてリリースし、ライブの1曲目に演奏するという彼らにとっての新機軸もまた10年間の成果である。その曲からの開演は「このまま終わるわけにはいかない」という意志の現れでもあるようだ。

凄まじく高いテンションと突き刺さらんばかりの攻撃性も、彼らのライブが持つ大きな魅力である。「Just like yesterday」から「SAFARI」へとアッパーなナンバーが続く流れに、そのことを再認識せずにはいられない。相変わらず冴え渡るG./Cho.大月の変態的ギターに、縦横無尽に暴れまくるBa.キヨタケのベースライン、最後列から全体を見渡しながら常に安定したリズムを供給し続けるDr.noriji。そんなバンド隊が生み出す強力かつ重厚なバンドアンサンブルの上に、存在感のあるハスキーなポセの歌声が乗ることで“the loud function”という唯我独尊なバンドサウンドとなる。

尽きることのないような圧倒的なテンションのライブは、あっというまに時間が過ぎていく。「シュガー」で本編をしめるも、アンコールを呼ぶ声が沸き起こらないはずがない。再びステージにメンバーが登場し、ポセ自身の口から自らの脱退について語られると同時に、the loud functionとしてはこれからも活動を続けていくことが告げられる。そして最後はバンドの初期からライブのエンディングを飾ってきた代表曲「三次元メランコリック」で、想いを込めた演奏を聴かせて10ヶ月連続企画のファイナルラウンドを終幕させた。この4人での活動はいったん区切りとなるが、バンドとしての活動はここからがまた新たな始まりとなるのだろう。

本編で演奏された新曲「ハッピートラベラー」は、いまだかつてないほどに開けた楽曲だった。彼らが11年目をどう歩んでいくのかはまだわからない。だが、この楽曲が放っていた新しい光は、the loud functionが選ぶべき道の1つを照らし出すものだろう。再び彼らが戻ってきた時には、その光が強さを増していることに期待して待ちたい。

TEXT:IMAI

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