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THE SLUT BANKS

ロックンロールに取り憑かれた死霊たちの愛すべき生き様

 キャリアのあるミュージシャンが集って1996年に結成されたTHE SLUT BANKS。

ソリッドかつ激しいサウンドと哀愁感のあるメロディ、聴く者の記憶に突き刺さる歌を武器に、メジャーから5枚のシングルと4枚のアルバムをリリースして多くの支持を集めてきた彼らは2000年に解散するも、2007年に蘇生(再結成)。以来全国でライブを展開してきた死霊たちが、約12年ぶりとなる待望のフルアルバムを完成させた。

毒々しいまでの硬質な音とスピード感あふれるパワフルなサウンド、その中に時折垣間見せる人間味が魅力のアルバム『チクロ』は、ロックンロールに取り憑かれた死霊たちの愛すべき生き様だ。

Interview

「最近はキチッと整ったものを好む傾向があるけど、それだと本来持っている大切なものが失われる気がして。俺たちはワイワイガヤガヤしながらやるのが好きなんですよね」

●THE SLUT BANKSは1996年に結成して2000年に一度解散していますよね。その後、2007年の大晦日に"蘇生"…復活されたわけですが、どういう経緯で復活しようということになったんですか?

DUCK-LEE:いや、軽いノリですよ。もともとみんなプライベートでよく一緒に酒を飲んだり飯を食べたりしていたので、その流れでなんとなく。本当になんとなくですね。

●何か志を持ってとかいうわけではなく?

DUCK-LEE:まったくなく。「ちょっとライブやりたいな」という普通の欲求で。

●ということは、その2007年の時点ではアルバムをリリースするつもりとかはなかったんでしょうか?

DUCK-LEE:なかったですね。ライブも別に続けるビジョンもなく、だからといって1回こっきりというつもりでもなく。だから復活からアルバムリリースまでこんなに時間が経ってるんですけど(笑)。

●復活から3年以上経ってますね(笑)。

DUCK-LEE:かなり経ってますよね。3年といえば普通のバンドだったらデビューして解散していてもおかしくないくらいの時間ですよ。

STONE STMAC:若いバンドだったらね(笑)。

●すごく率直な疑問なんですけど、1度解散したバンドが復活するということは結構なことだと思うんですけど、話を聞いているとTHE SLUT BANKSにとっては解散も復活もそこまでシリアスな話ではないのかなという気がしてくるんですけど。

DUCK-LEE:まあ普通はそうですよね。でも(THE SLUT BANKSは)もともとが大したバンドではなかったから(笑)。復活には金の匂いもなければ、変な思惑とか何も入っていないという。

一同:ハハハ(笑)。

STONE STMAC:でも個人的に思うことですけど、何事にもタイミングってあると思うんですよ。1回解散してから2~3年で復活するのと、僕らみたいに7年も経ってから復活するのとではちょっと違うんじゃないかなと。

●ああ~、確かにそうでしょうね。

STONE STMAC:で、僕自身はその間に何か目立ったことをやっていたわけではないんですけど、TUSKやおいちゃんと久しぶりにやってみて、感慨深いものがありましたね。おそらく2年とか3年でやるのとは全然感覚が違うだろうなって。成長って言うのも変ですけど、おもしろかったです。以前にやっていたときと比べて新しいものがちゃんとあるっていうか。みんなの個性も再認識しましたし。7年っていう微妙な期間を寝かせたのが、頃合い的にもよかったのかなって(笑)。

●TUSKさんはどうですか?

TUSK:その通りでございます。

一同:(笑)。

DUCK-LEE:久しぶりにやってもこうやってなんとなく普通にできて。一般社会に溶け込んでいる奴が1人もいなかったっていうのが驚異的なことですよね(笑)。

●あ、7年の間で誰1人一般社会に溶け込んでいなかったんですか(笑)。

DUCK-LEE:そうそう(笑)。だからこのバンドで安易にツアーもまだできるっていう。もう年齢も年齢なのに…っていうか、そういう年齢も超えちゃったのかもしれないんだけどね。

●今回のフルアルバム『チクロ』は、どういう経緯で出そうということになったんですか?

DUCK-LEE:そろそろちゃんとやってもいいかなって。記念に。

一同:(笑)。

DUCK-LEE:いつまでもできるわけではないしっていうのもあるし、ちゃんとした音で録ってみたいということもあって、アルバムを作ってみてもいいかなと。2枚だしたライブ会場限定のミニアルバムは本当にちょこちょこっとやったというか、一発録音みたいなノリで作ったものだから、ちゃんとエンジニアも付けて、ちゃんとしたレコーディングスタジオで録り、世の中に流通させたいなと。流通盤としては12年ぶりのフルアルバムなんですけど、"12年はひとまわりだから丁度いいな"というのもあって。

●アルバムタイトルになっている"チクロ"という言葉なんですけど、これは昔あった人工甘味料の名前らしいですね。

DUCK-LEE:そうですね。僕らが子供の頃、赤や緑色みたいなどぎつい色のゼリーとかは「それチクロ入ってるんだぜ」とか言ってたんですよ。

STONE STMAC:親とかに「チクロが入っているものは食べちゃいけません」ってよく言われたんです。チクロは発癌性があるとかで使用が禁止されたんですよ。

●はいはい。

DUCK-LEE:"チクロ"という言葉にはそういうイメージが昔からあって、今回のアルバムは毒々しい物にしたかったからこのタイトルにしたんです。とりあえず有毒なものにしたかった。曲が揃ってからタイトルを付けたんですけど、アルバムだけじゃなくてバンド自体にもそういうイメージを持っていたというか、ロックは有毒なものじゃないといけないというか。

STONE STMAC:でも舐めると甘いんだよね(笑)。だからとても危険だという。

TUSK:俺の解釈では、"チクロ"というのはヒロポンですね。

一同:(爆笑)。

●ヒロポンかどうかはさておき笑)、中毒性のあるものはだいたい身体に悪いですからね(。

DUCK-LEE:そうそう。そういうもんだよね。

●今作は今おっしゃったような毒々しさも節々から感じますけど(笑)、バラエティに富んでいるということもあって、アルバム全体を通してメンバーの人となりが見えてくる感じがあって。それがすごくいいなと思ったんです。毒々しくてロック色が強いけど、温かい人間味も感じられるというか。

DUCK-LEE:そこが辛いとこなんだよな~。悪い人でいたいのに。

一同:(爆笑)。

●いやいや(笑)、そういう人間性が見え隠れするところが音楽のいいところじゃないですか。

DUCK-LEE:ハハハ(笑)、まあそうですね(笑)。

●曲はDUCK-LEEさんが作ってるんですよね?

DUCK-LEE:そうですね。作り方は様々なんですけど、なんちゃってデモみたいなものを作ってきてみんなに渡して。でもセッションしているとどんどん変わってくるんです。バンドで合わせたときに俺が思っていたものと全然違うものになったりもするし、俺が思っていたことを全然やってくれないときもあるけど(笑)、そのときはみんなの個性が出せるようなアレンジにして。バンドで合わせると曲がどんどん変わっていくんです。もちろんいい感じに変わっていくんですけど。

●それとTUSKさんが書く歌詞なんですが、すごく詩的な感じがして。PVにもなっているM-6「Pandemic Dance」とか特にそう感じたんですが、直接的ではなくて隠喩のような表現というか。

TUSK:でも意識して書いているわけではなくて、だいたい響き重視ですよ。基本的にTHE SLUT BANKSの歌詞は自由に書いてるんですけど、特に悩んだりすることもなく、結構サラサラッと。

●あ、そうなんですね。さっき「人間味を感じる」と言いましたけど、それは歌詞から受けた印象が強かったんです。生きていく中で感じる"怒り"とか"痛み"みたいなものが背景にあるというか。

TUSK:それがTHE SLUT BANKSだと思っているんです。やっぱりこういう歌詞は、ソロでやるとしたら書けないですもん。

●ああ~、なるほど。

TUSK:自分の中にモードみたいなものがあるのかもしれないですね。THE SLUT BANKSはすごく自由だし、だからこそ"こんなことも歌ってやろう"と思うこともあるんです。

DUCK-LEE:キャッチーでいいよね。メロディがキャッチーというのはみんな感じるところだと思うけど、歌詞がキャッチーというところがいい。

●そこなんですけど、THE SLUT BANKSの場合は俗に言う"綺麗な言葉"ではないのに、メロディと合わさったときにキャッチーになる感じがあって。

DUCK-LEE:そうだよね。時期が時期だけに、"愛"とか"絆"とか"希望"とか"感謝"とか言われたら困っちゃうもんね(笑)。

一同:(笑)。

●M-9「2011年のコト」の歌詞もすごく説得力があるというか。この曲はアルバムの中でもいちばんストレートな歌詞だと思うんですけど、この歌詞はまさに震災がきっかけになっているんでしょうか?

TUSK:そうですね。やっぱりTHE SLUT BANKSとしても震災のことに関して向き合う曲が必要だなと思ったんです。最初はエグいことを書いてやろうと思っていたんですけど…素直な感じになってしまいましたね。

●でもこういう曲がありつつ、M-1「METAL MIND」やM-11「弾道」のようなゴリゴリな曲もある。それがTHE SLUT BANKSというバンドなんでしょうね。

DUCK-LEE:俺が作る曲は、最初は意外とテンポが遅いんですよ。でもバンドで合わせたときに「このままじゃあつまんねえな」となって、どんどん速く、どんどんうるさくなっていく。例えば「弾道」だと、サビのところでAマイナーの次に普通はDといくところを、俺なりのこだわりとしてDメジャーセブンスコードにしてちょっとオシャレなコード進行にしてるんですよ。でもうるさすぎてわかんない(笑)。

一同:アハハハハ(笑)。

●そういうところが、THE SLUT BANKSの音楽が持つエネルギーや強さになっているんでしょうね。それはすごい武器だと思うし、聴く人に力を与えていると思います。

TUSK:そこは「うるさくしよう」と意識的にやっているわけではなくて、このメンバーが集まったらそういうベクトルに自然となるんですよ。

●おもしろいですね。

DUCK-LEE:昔からのアナログなミュージシャンばかりが集まってるからこそ、こういう音になるような気がします。最近の若いミュージシャンたちはキチッと整ったものを好む傾向があるけど、それだと本来持っている大切なものが失われる気がして。そういうのが好きな人ももちろんいると思うけど、俺たちはあまり好きじゃないんです。メンバーが集まってワイワイガヤガヤしながらやるのが好きなんですよね。

interview:Takeshi.Yamanaka