音楽メディア・フリーマガジン

THE STARBEMS

現実をありのまま受け止め、前向きな一歩を踏み出すために彼らは集まった

187_STARBEMS数々のプロジェクトと平行してソロ活動を開始した日高央が、2012年12月にスタートさせた新バンド・THE STARBEMS。様々な要素を取り込んだラウドなサウンドと鋭いメッセージ性は、日高の胸に芽生えたひとつの想いをきっかけに、寺尾(元ワイルドマイルド)、高地(元SHENKY GUNS)、後藤(LOCAL SOUND STYLE)、菊池(Fed MUSIC)、そして越川(元毛皮のマリーズ)という歴戦の猛者たちが集って辿り着いたひとつの答えであり、彼らの挑戦でもある。今月号では、何も恐れることなく、何からも隠れることなく、強い意志と熱い想いで1stアルバム『SAD MARTHON WITH VOMITING BLOOD』を完成させた彼らに話を訊いた(※事情により菊池は欠席)。

THE STARBEMS・INTERVIEW #1
「オリジナルはメロコアみたいな曲しかなかったんです。そこにハードコアっぽいテイストを入れることで、やっとTHE STARBEMSらしさが始まった」

●まずはTHE STARBEMS結成のきっかけをお聞きしたいんですが。

日高:かいつまんで言うと、2008〜9年頃、BEAT CRUSADERSをラウド化したいと俺が思ったんですけど、メンバーの賛同を得られず…まあそれだけが原因ではないんですけど散開してしまって。なのでラウドな音楽はソロ名義で色々試そうと思っていたんですよ。そのときはMONOBRIGHTにも加入していたし、ヒダカトオルとフェッドミュージックもやっていて忙しかったので、ラウドな音楽をやるのはずっと先になるだろうな〜と思っていたんですが、そのときにベースの寺尾さん…通称ぺーやんがまず俺に電話をくれたところからこのバンドが始まるんです。

●そこでドラマがスタートすると。

日高:ではぺーやんに聞いてみましょう。

●ぺーやんお願いします。

寺尾:BEAT CRUSADERSが散開したけど、俺は“きっと日高さんはまたバンドをやるだろうな”と思っていたんです。だから次にバンドをやるときは是非俺を使ってほしいと思って電話して。「バンドやりましょう!」とまでは言えなかったんですけど「なんでもやります」と。そしたら「着ぐるみ着ろと言われたら着るのか?」と言われて。

日高:実際にそういう話があったわけではなくて、本気度を確かめたかったんです(笑)。

●なるほど。

寺尾:「とにかくなんでもやります!」と。で、最初は日高さんのプロデュースの仕事でベースを弾かせてもらったりして。それが2010年の秋だったんですけど、その年末のカウントダウンイベントでソロ名義のヒダカトオルBAND SETに参加したんです。日高さんと僕とTHE BEACHESのdijさん(Dr.)の3人で。

日高:ラウド化の第一歩として、まずはHi-STANDARDを気取ってみようと思って3ピースでやったんです。その結果、「3人であのクオリティのライブやってたなんてHi-STANDARDすげぇな! 俺には無理だ!」と気づいたんです(笑)。

●ハハハ(笑)。

日高:そこから千葉人脈を辿り、ソロ名義のときは千葉の後輩たちに手伝ってもらっていろんなことを試していったんです。

●千葉のヤンキー系縦社会ですね(笑)。

日高:その中でなぜかSHENKY GUNS(高地がもともと所属していたバンド)が引っかかってきたんです。

高地:当時はヒダカトオルBAND SETのドラムは山ちゃん(山崎 / 現HUSKING BEEのDr.)が叩いていたんですけど、ライブが重なっちゃって山ちゃんが出られないとなり、当時ヒダカトオルBAND SETのメンバーだったDOACOCKの7110さんに「お前やってみろよ」と言っていただいて、去年の4月から僕が叩かせてもらったんです。SHENKY GUNSはその1ヶ月前に解散して何もなかったので、“このチャンスをがんばろう!”と。言ってもあのSHENKY GUNSじゃないですか。“SHENKY GUNSの俺に日高さんのドラムが務まるのか?”と思ったんですけど、これは絶対がんばろうと。

日高:ツインペダルが欲しかったんです。

●あ、そういうことですか。

寺尾:7110が紹介したのもそこですね。ツインペダルを踏めるドラマーが欲しかったので、高地に白羽の矢が立ったんです。

高地:どうですか? 実際のところ俺のツインペダルは?

●いいですね、そういう素の質問(笑)。

日高:思ったよりやる部分もあるけど、思ったより下手だよね。

一同:アハハハハ(爆笑)。

日高:そのうち千葉人脈にこだわらなくなって、元Yacht.のピロ(大日野 武則)に声をかけたり、ピロがLOCAL SOUND STYLEのゴスケ(G.後藤 裕亮)を連れてきてくれたりして。

後藤:俺はLOCAL SOUND STYLEが活動休止になっていて、ピロと飲んだときに「俺は暇だから」ってアピールしていたんですよ。そしたら7110さんがライブに出られないときに声がかかって。

日高:ゴスケは技術的には全然だけど、LOCAL SOUND STYLEが止まっちゃって可哀相だったから。

一同:ハハハハ(笑)。

日高:その頃、ちょうどDECKREC recordsっていうPOLYSICSとか毛皮のマリーズのインディー盤を出しているレーベルの主催者であるネモト・ド・ショボーレと下北でばったり会ったんですよ。そのときに「誰かいいギター居ない?」って相談したんです。ゴスケだとちょっと不安だったし。

後藤:え? 不安だったんすか?

日高:そしたら西くん(G.越川)を紹介してくれて。

越川:その頃、俺は毛皮のマリーズが解散した後でふらふらしていたんですけど、ネモトさんから電話がかかってきて「1回やってみなよ」って。それが初めての出会いですね。

日高:西くんとは完全に面識がなかったんです。

●そうなんですね。それはちょっと意外。

日高:何より西くんは「いちばん好きなバンドはSPREADだ」と言っていて、そこが信用できるなと思ったんです。当時はソロ名義とはいえ、被災地でライブをやってくれと言われることが多かったから、オリジナル曲も試してはいたんですけど、懐かしのBEAT CRUSADERSナンバーをやることが多かったんですよ。

●はい。

日高:だからみんなBEAT CRUSADERSをなぞる感じで演奏してくれていたんですけど、そこに西くんが入って、「それはアカン! 同じこと繰り返すんやったらBEAT CRUSADERSでええやん! 個性出そうやないか!」と激を飛ばしてくれたんです。それが大きかったですね。それからオリジナルの曲作りがグッと進んだんです。

●ギター3本というのはもともとの構想だったんですか?

日高:いや、最初はキーボードとギター2本だったんですよ。でもそれだとBEAT CRUSADERSからなかなか逸脱できないから「キーボード要らないね」と。そこでもう1人のギタリストである篤(G.菊池)を誘ったんです。

越川:最初の頃は“日高央さま”みたいな感じで、絶対的な存在としてバンドの中心に日高さんが居て、みんなビビってるんですよね。でも「そこはもういいじゃん」って。「日高さんはやったものが良かったら文句は言わないと思うよ」とみんなに言うところからスタートして。

高地:そこからBEAT CRUSADERSの曲もツーバスでやるようになったんです。

越川:ギターも、3人居る中で最初はみんなコードを弾いてたからゴチャッとしてしまっていたんですよ。だから「分けよう」と。篤は身体もデカいしイメージ的なところも含めて低音を出して、ゴスケは高音のシンセっぽい音を出して、俺は普通のギターで。あとベースは…「まあベースはなんでもいいや」という話になって。

高地:そうだったんですか(笑)。

越川:だからBEAT CRUSADERSの曲をやりつつ、自分たちのスタイルを作っていく感じだったんです。その中でキーとなったのは、シングル『FUTURE PRIMITIVE e.p.』にも入っているM-1「THE CRACKIN'」なんです。この曲でTHE STARBEMSのフォーマットみたいなものができたんですよ。日高さんも今までにはなかったシャウト系の歌い方をして。

日高:それまではどうしてもメロディックにこだわっちゃっていて、オリジナルはメロコアみたいな曲しかなかったんです。そこにハードコアっぽいテイストを入れることで、やっとTHE STARBEMSらしさが始まった。

●「THE CRACKIN'」が今に繋がっているということですが、曲作りはどうやって進めているんですか?

日高:シャウトとメロディを合体させたような曲を俺が作って、ギター弾くのめんどくさいから全部デスクトップ上でキーボードで弾いて、そのデモを西くんに送るんです。それを西くんがバンドアレンジしてくれて、俺抜きでスタジオに入ってプリプロをする、と。

越川:…。

●あっ! 西さんの目が怖い!

越川:おかしいでしょ? 「キーボード要らないね」とか言ってんのに、デモでは「ファ〜ン!」ってキーボードが鳴ってるんですよ。

一同:アハハハハハハ(笑)。

187_THESTARBEMS

THE STARBEMS・INTERVIEW #2
「ラウドな音楽をしたいと思い始めた頃から、当り障りのない優しいポップ・ミュージックに対する嫌悪が始まっていたんだなと思います。俺がやりたいのはそっちじゃないなって」

●日高さんはクレバーというイメージが強かったので、THE STARBEMSのラウド感だったりメンバー構成も、結構戦略的に進めてきたのかなと思っていたんですけど、話を聞いてみたら全然違うんですね。

日高:そういう戦略性はないですね。

●このメンバーが集まっていく中でTHE STARBEMSというバンドの輪郭ができ、西さんのアイディアや提案によって個性が形成されたと。

日高:そうですね。西くんが居なかったらまだアルバムは完成していないんじゃないかっていう。

越川:言い方を変えるならば、俺のバンドなんです。

一同:アハハハハハハハハハ(爆笑)。

日高:俺も西くんも、戦略めいたやり方はメジャーである程度試すことができたっていうのが大きいと思うんです。特に申し合わせたわけじゃないんですけど、THE STARBEMSではその真逆をやろうっていう。決め込んでカッチリやるよりは、バンドとして正直にやる方がいいんじゃないかっていう想いはありましたね。リリース予定とかツアーが先に決まっていて、そこを目がけて制作することにちょっと疲れていたというか、パンクバンドってそうじゃないだろう? っていう。バンドの原点に立ち返りたかった。だからやりながらバンドが形作られればいいんじゃないかなって。ゴツゴツしていないとバンドはおもしろくないし。そういう意味では未だに歪(いびつ)ですよね。

●さっきおっしゃっていたように、曲作りは原形となるものを日高さんが西さんに渡して、西さんがバンドアレンジに落とし込む、というパターンが多いんですか?

越川:そうですね。でも今は役割分担ができてきたから、みんなでデモを聴いて「ここはゴスケだな」みたいな感じで、結構スムーズになったんです。問題はリズム隊なんですよ。日高さんは結構手数とか足数を多く求めるんですけど、「もっと増やしてみたら」とか言ったら「できないです」とすぐ言うんです。

日高:(リズム隊の人選は)失敗だったね〜。

越川:そのくせ高地は「売れたい」とかすぐ言うんですよ。

●そんなこと言うんですか(笑)。

高地:YouTubeの再生回数とかCD何枚売れたとか気になります。あと、ライブのチケットの売れ行きとかすごく気になります。

●SHENKY GUNSのときはそんなこと気にしてなかったですよね?

越川:俺が思うに、高地は金も含めてこのバンドに入ったと睨んでるんです。急にSNSとか始めて、女とセックスしようとしてますからね。

一同:アハハハハハハハハハハ(爆笑)。

高地:俺が物販に立つのは、日高さんや西さんのファン目当てです。

●ひどいな(笑)。

越川:だから日高さんが求めるものに対していちばんリズムに時間がかかってます。BEAT CRUSADERSとまったく同じことはしたくないとなったとき、ドラムの手数や足数の多さが求められますからね。

日高:そこは戦略というより、リスナーとして俺も新しいラウドやパンクを聴きたいと思っているので、自分自身の曲を聴いて「これが新しいラウドか?」「これが新しいパンクか?」と自問自答しながら作るんです。デモのときは死ぬほどキック入ってるよね。

後藤:たまに「え?」と思うくらい入ってます(笑)。「ダダダダダーッ!」って。

●このバンドのスタートは日高さんが“ラウドな音楽をやりたい”と思ったのが発端ですけど、それは震災が大きく影響しているらしいですね。以前JUNGLE☆LIFEの別冊のインタビューで、「BEAT CRUSADERSのときは音楽業界の常識と闘っていたけど、THE STARBEMSでは社会的なものと闘いたい。その方法としてパンクロックやラウドな音楽が適しているんじゃないかと考えた」とおっしゃっていて。

日高:そうですね。その方が効果的だし、何より好きだし。俺は“お面のおもしろPOPおじさん”みたいなイメージが定着しちゃってましたけど、“東北ライブハウス大作戦”に関わらせてもらえるきっかけになったSPCというPAチームと今でも一緒に仕事をしているのは、そもそもBACK DROP BOMBのイベントに呼ばれたからなんですよ。BRAHMANやBACK DROP BOMBとやっていたし、HUSKING BEEも兄弟分みたいな感じで一緒にツアーをまわらせて貰ったりして。だからよく考えたら元々ラウド側に居たのに、なんでいつの間に“おもしろPOPおじさん”になっちゃったんだろうって。

●ああ〜。

日高:もちろんそれが嫌だったわけじゃないですけど、でもそれだけじゃないっていうことは言いたいし、たぶん西くんがやっていた毛皮のマリーズも同じだったと思うんです。バンドってある程度認知されたらそのイメージだけが先行しちゃって、リスナーにもそこだけを期待されちゃうんですよ。だけどこっちはその予想をおもしろく裏切っていかないとバンドとしては全然おもしろくないし、魅力的じゃないんですよね。自分がリスナーの立場になってもそう思うし。だからラウドの方にもう一度揺り返したいなっていうことはすごく思っていました。

●そういう想いはTHE STARBEMSの歌詞に表れてますね。BEAT CRUSADERS時代、後期になるにつれて日高さんは歌詞にパーソナリティを濃く入れるようになっていたと思うんですが、今作の歌詞を見ると以前の歌詞と比べものにならないくらいストレートというか。THE STARBEMSの歌詞からは“気持ち”や“意志”がすごく見える。

日高:BEAT CRUSADERSはあくまでもフィクションだったんですよ。そのフィクション感がおもしろいということで認知されたのであれば、今度は真逆のノンフィクションをおもしろく歌えなければミュージシャンとしての幅が狭くなっちゃうなと思って。

●なるほど。

日高:そういう意味では、震災があるとないとでは歌詞の内容や傾向も変わったのかもしれないですけど、想いとしては、ラウドな音楽をしたいと思うと同時に最初からノンフィクションをやりたいと思っていました。より嘘のない、現実に即したもの。“当たり障りのないことを歌っても癒されるわけがない”っていうのは、震災の現場に行って痛感したし。今から考えてみると、ラウドな音楽をしたいと思い始めた頃から、当り障りのない優しいポップ・ミュージックに対する嫌悪が始まっていたんだなと思います。優しい歌が信用できなかった。ダメとか嫌とかじゃなくて、俺がやりたいのはそっちじゃないなって。特に今は震災・復興という現実が目の前にあるので、そこを中心に歌いたいっていうのはすごくありますね。

 

THE STARBEMS・INTERVIEW #3
「ちゃんと人と人が正面向き合ってライブをやるっていうのが大事。THE STARBEMSはそれをやらなければならないなっていうのが今後のビジョンだし、希望ですね」

●ライブハウス界隈では、震災後はラウドだったりリアリティのある音楽がより求められているというか、人の気持ちを例え無理矢理にでも解放させるために必要とされているような気がするんです。そういうライブハウスの空気感とTHE STARBEMSの音楽がリンクするんですよね。

日高:やっぱりSLANGやBRAHMANがいちはやく動いていたのはそういうことだと思うんです。ざらざらゴツゴツしたリアリティを今歌わなかったら、これから歌っても嘘くさくなっちゃうなって。すごく象徴的だったのは、こないだ石巻で渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET)と一緒にやらせてもらって、そのときに対談をさせてもらったんですよ。今作の特典DVD用に。

●はい。

日高:そのときに俊美さんが「震災当時もそうだし、震災から2年経った今もそうだけど、そのときに何を歌っていたのかが僕はすごく気になるし、後々の自分にとってすごく大事になってくる」とおっしゃっていて。それで思ったのが、言い方は悪いですけど安い感動を呼ぶことはたぶんそんなに難しくはないんですよ。綺麗事だけ並べていけば感動してくれる人もきっと居ると思うんですけど、ちゃんと汚いところや狡いところ、良くないところを言いながらでも感動をシェアできないと残らない気がしたんです。そういう意味で、今作は結構辛辣なことを歌っていますけど、それは嫌味とかではないし、誰かが嫌いだとディスっているわけでもなくて、“そういう現実があった”ということを忘れちゃいけないと思ったからです。それを受け止めた上で進まなきゃいけないし、前向きにやっていかなきゃいけない。今書いている歌詞はそういう決意表明ですよね。

●うんうん。

日高:ラウドを意識する前からずっと嫌だったんですけど、誰彼かまわず中指を立てることがパンクじゃないしロックじゃないと思っていて。フェスとかではそういう人が多いんですよね。合言葉になっている感じというか。…と言っても、BEAT CRUSADERSも“おまんコール”をやっていたのであまり文句は言えないんですけど(苦笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

日高:でも10年以上前のインディーズ時代は、「Fuck Off!」と言うことの方が逆に嘘くさかったんです。“おまんコール”をした方が逆にリアリティがあったというか。

●ああ〜、なるほど。

日高:やっぱりみんな、いい意味での嫌悪感を抱いていたと思うんです。俺はそれで良かったんですよ。パンクって一定の人に嫌われなきゃいけないっていうか、嫌われたり嫌悪感を抱いてもらってこそ、自分たちの立ち位置や自分たちが言いたいメッセージが浮き彫りになってくるというか。その後、メンバーが変わってメジャーに行ってBEAT CRUSADERSが認知されるようになったら、それがおもしろいキーワードになっちゃった。引き続き嫌悪感を抱いていた人も居たとは思うんですけど、その嫌悪感が全然聞こえなくなってきたんです。やっている本人たちも「え? 本当にいいの? おまんコールだよ?」って。敢えて違和感や異物感を感じてもらうためにやっていたのに、いつの間にか楽しい行事になっちゃってて。そうすると本来持っていたパンク的なメッセージからどんどん離れちゃうんですよね。

●確かに。おまんコールは深いな。

日高:そういう疑問は当時からあったんですよ。それがだんだん大きくなって、“やっぱりラウドに戻さないとダメなんだな”って。ラウド界隈で真剣にやっている人たちの中でも、ちゃんとおまんコールしないと。そう考えたら、ニューロティカがそうだったと思うんです。ハードコア界隈の人たちと居てもあっちゃんはあっちゃんだし、誰もあっちゃんを怒ったり叱ったりしない。でも観る人が観れば本当に気持ち悪いバンドに映るだろうし。ニューロティカの立ち位置はすごくはっきりしているんですよ。ラウド界隈の信用はずーっとあるし。だから俺は1つ下の世代のニューロティカになんなきゃダメだなって。あんまり褒めたくないんですけど…あっちゃんをお手本にさせてもらってます。

●おおっ、あっちゃんがこの記事を読んだら感動しますよ。

日高:仲がいいだけにあまり言いたくないですけどね…あ、でも夜の生活はお手本にするつもりはないです(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

日高:リアリティのあることを言うには、ざらざらしてなきゃいけないなって。そういうことはすごく意識していますね。

●そこにビジネス的な計算はないと。

日高:ないですね。それが売れなくてもしょうがないです。逆に言えば、やりたくないことをやって売れてもしょうがない。BEAT CRUSADERSも「ラウドをやりたくない」と言う人が居たからやらなかったんです。それはやっぱり表現者としての最低限のマナーですよね。

高地:うーん…。

●高地さんどうしたんですか?

高地:同じメンバーですけど、聞き入ってしまいますよね。いい話だなって。

●え? 初めて聞く話なんですか?

越川:いや、何度も聞いてるんですけど、たぶんバカなので覚えてないんです。

●そうですか(笑)。

日高:自分がやることに関しては、パンクが持っていた本来のイメージに揺り戻したいんです。それが結果、リスナーから「パンクじゃないね」「ハードコアじゃないね」と言われても全然いいし。それは覚悟の上でやっているので。だから素顔を出して名前の表記も本名にしたし、逃げも隠れもせずにこっちは言いたいことを言うから、そっちも言いたいことを言って下さいっていうことですね。綺麗事だけで肩を組んで「がんばろうぜ!」っていうのは、今は本当に信用できない。JUNGLE☆LIFEの読者のみなさんは、THE STARBEMSはメジャーからCD出していいお金をもらっていると思ってるでしょうけど、基本的に俺と西くん以外はバイトしてますからね。そういう意味では、我々もこの段階では素人だしリスナーなんです。

●やりたいことをとことんやろうと。

日高:そうですね。もちろん売れる方が嬉しいし、売りたいなと思ってるからメジャーから出すんですけど、それも、メジャーの悪いところを否定するわけじゃなくて、自分たちがやりたいことを探りながらやる。その途中で失敗しても全然いいんです。失敗を叩かれても別にいいというか、そこは別に怖くないっていうか。

●今おっしゃったことは全部、今作の歌詞にそのまま出ていますよね。以前の日高さんの歌詞を知っているので、今作の歌詞を見てすごくびっくりしたんですよ。今作のほとんどの曲はメッセージというか、「俺はこうする」という宣言ですよね。

日高:1stなので挨拶状というか、名刺代わりの1枚としては「俺はこういう風に思っている人ですよ」ということを全部説明した方がいいと思ったんです。だからM-5「ARE U SURE?」とかM-11「HUMAN RIGHTS」みたいな辛辣なものは、敢えてそういう歌詞にしてます。

●そしてサウンド的には、シャウトもあれば日高さんらしいメロディもあり、はたまたロックのルーツを感じさせるものあり、アルバム全体でも1曲の中でもいろんな要素がミックスされていると感じるんですが、共通しているのはライブ感。今作を聴いていると、お客さんも含めたライブハウスの光景が見えてくるんです。

高地:曲を作ってて「この先どうしよう?」とメンバーで考えるときに、日高さんが「お客さんがここでどうなったら楽しい?」と言ったりして。曲を作っているときからライブを想定していたんです。

越川:ライブをやりながらリハに入ったりもしていたので、ライブの雰囲気をそのままパッケージングしているという部分もあると思います。新曲を録ってからライブでやるというのがよくあるパターンじゃないですか。でも今作はライブをやりつつ作っていたから、ライブに寄っているのかもしれないですね。

日高:バンドにこだわる理由はライブが好きだからなんですよね。特に俺と西くんはそうで、そこが共通していたことがすごくラッキーだったんです。ライブでできないことを音源に残しても嬉しくないし。ギミックとしては全然いいんですけど、“ライブで聴いたらきっと楽しいだろうな”と思うものを自分も聴きたいですし。ライブバンドでありたいと思います。

越川:俺が思うのは、盤ももちろん大事ですけど、ライブでどれだけの人を呼んでどれだけ楽しませることができるかがバンドとして大事だなって。そもそもバンドはそうだったと思うんです。90年代とかの音楽バブルの時期は特に“盤がある上でライブがある”という印象なんですよ。でももっと遡れば、そもそもライブがあって、それを観た人が“家でも聴きたいな”と思ってレコードを買っていたはずなんです。それが逆転しちゃっているような気がしていて。

●うんうん。

越川:バンドのあるべき形って、人の前で演奏して、それをみんなが聴いて楽しむっていうものだったと思うんです。だから自分たちもそうありたい。ライブじゃないと体感できないこともいっぱいあるし、ちゃんと人と人が正面向き合ってライブをやるっていうのが大事。THE STARBEMSはそれをやらなければならないなっていうのが今後のビジョンだし、希望ですね。

日高:“東北ライブハウス大作戦”でもそれはすごく感じました。ネット上で言われていることと現実は全然違う。だから原始的なバンドで全然いいと思うんです。その覚悟はあります。

interview:Takeshi.Yamanaka
LIVE PHOTO:青木カズロー

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