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TheSpringSummer

失われた大切なものを呼び起こすメロディ

 人は成長していくに従ってたくさんの大切なものを失っていく。

生きていく中で生じる“喪失感”をつなぎ止め、大切なものの記憶が薄れないために鳴らされたTheSpringSummerのメロディ。

ハイトーンな佐々木のヴォーカルと煌びやかなギターが描く失われた心象風景は、疾走感のあるリズムに乗って鮮やかに動き出す。大阪発エモーショナルロックバンド・TheSpringSummerの記念すべきデビュー盤。

Interview

●TheSpringSummerは大雑把に言うとギターロックに分類されるサウンドですけど、結構湿度が高いと思うんですよね。音に込められた感情の湿度が高いというか。

佐々木:はい。

●結成して8年ということですが、最初からこういう音楽だったわけじゃないと思うんですよ。資料によるとGOING STEADYのライブを観たことがきっかけで結成したとのことですが、今現在はそのときとは音楽をやっている動機が変わってきているように想像するんですが。

佐々木:そうですね。結成した当時は"楽しいから"っていうのがいちばんでコピーから始まったんです。でもその後、色んな音楽を聴いて気づいたんですよね。憧れていたあの人たちが…例えば峯田くんが…かっこいいのは、そうやって生きてきたからなんやなって。でも僕はそうやって生きてない。心はパンクやったけど、パンクな生き様ではなかったんです。

●なるほど。

佐々木:だから僕がそういうパフォーマンスをやっても伝わらんやろって。そのことに気づいたのは19歳くらいなんですけど、"じゃあ自分がやりたい音楽って何やろう?"と考えていっぱい音楽を聴いて。そんな中で自分はこういう性格で、こういうことを思っているのか、っていうのがわかってきて、それを歌にしようと。さっき「湿度が高い」と言われましたけど、要するに僕は生きていく中で結構心が擦れてきたんです(笑)。

●年を取り、自分の弱い部分を知ることによって生じる焦燥感みたいなものは少なからず誰にでもありますよ。

佐々木:そういった自分の弱い部分も認めつつ、弱いながらも生きていけるでっていうことを歌にしているというか。そしたら自分的にしっくりきたというか、やりがいを感じることができたんです。いちばんのきっかけはフラれたこと…それは僕だけじゃなくてメンバーみんなそんなヤツなんですけど…で、"どうやって生きていけばええねん"っていうところまで落ち込んだりしていたんです。

●弱いな(笑)。

佐々木:当時はパンクとか聴いてるから自分が弱いことすら気づいてないんですよね。でもだんだん年を取っていくウチに、客観的に自分を振り返ってみて"俺は弱いんやな"と。だったらそういう部分を表現することが自分らしい音楽なんじゃないのかなって。でも弱さやネガティブな内面だけを吐き出すのはイヤなんです。そこで何とか希望を見出したい。

●それは感じます。「湿度が高い」とは言いましたけど、視界は晴れている。

佐々木:弱いところだけを伝えても別に何にもならんし。弱い部分を認めた上でどうするのか? …それが正しいのかどうかはまだ自分自身わからないですけど、現時点ではそういう感じです。

●そういった指向性は、歌詞だけじゃなくてサウンドからも強く感じるんです。特にギターは、"演奏している"という次元ではなくて"歌っている"という感覚に近いというか、感情を表現しようとしているような気がする。

佐々木:あっ、それはそうかもしれないです。曲はイチからバンドで合わせて作るんですけど、音楽的な会話はしないんですよ。僕はコードとかまったくわかんないので「そこはAで」とか言うんじゃなくて、「そこは海辺でユラユラしてる感じで…」とか「雨の日に高速で…」みたいに景色で抽象的に伝えるんです。そしたらみんなが「じゃあこういう感じ?」とか言って形にしていく。意識してそうしているわけじゃないですけど、曲作りの段階で景色があるから、その景色を音全体で表現しようとしていると思います。

●曲ができたとき、その"弱さ"や"ネガティブな感情"みたいなものは解消されるんですか?

佐々木:いや、解消されないです。ハッピーにはならない。じゃあなぜ曲を作っているか? というと、僕は生きていく上で基本的に"喪失感"が強いんですよ。人も想い出も悲しさも、全部残らないっていう感覚がすごくあって。高校のときにフラれて"もう死ぬ!"くらいに思っていたのに、今となれば笑って話せている。当時はすごく大事に思っていたのに、年を取ったら全然大事じゃなくなってしまう。誰でも少なからずそういうことはあると思うんですけど、僕は極力覚えておきたいんです。

●覚えておきたい?

佐々木:はい。楽しかったことも悲しかったことも覚えておきたい。でも忘れるから、忘れたくないことを忘れないように音楽を作っているという部分もあるんです。どうせなくなるけど、なくなる前提で歌ってるけど、なるべくなくならないようにもがく。大人になっていくにつれて誰もが社会に染まっていくのかもしれないですけど、自分が大事だと思っていることはずっと大事にしておきたいんです。

●"純粋性"とか特にそうですね。

佐々木:そうそう。忘れるというか、自分でも気づかないウチに失ってしまう。でもそういうことは忘れたくないんです。地元に公園があって、高校生のころはいつもそこに集まって他愛もない話をみんなでしてたんですよ。「フラれた~!」とか言って。そういうのって、やっぱり大切にせなあかんのちゃうんかなって。

interview:Takeshi.Yamanaka

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