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TRIPLANE

結成10年目に導き出した自らの存在証明的・最高傑作

 2011年、TRIPLANEは自分たちの原点である故郷“北海道”に改めて立ち返り、“自分たちが何者であるか”という命題に向き合ってきた。

そんな1年を経て結成10周年となる2012年、遂に完成させた5thアルバム『V』が2/1にリリース!

メッセージとメロディとデジタルエッセンスが鮮やかに融合した今作は、その問いへの1つの答えとも言える彼らだけの確かなオリジナリティに満ちた傑作だ。完全セルフプロデュースで制作された今作を、Vo./G.江畑 兵衛にスペシャル・セルフライナーノーツという形で語ってもらった。

Review

Vo./G.江畑 兵衛による5th Album『V』スペシャル・セルフライナーノーツ

01.「パノラマセカイ」
今作の中で一番遊べたし、それだけに一番悩んで一番時間の掛かった曲。ドラムのビートパターンや打ち込みのループの音色なんかは、いったい何パターン試し たんだってくらいに色々試行錯誤して今の状態に落ち着きました。間奏のギターソロみたいな音が実は声だったり、イントロ頭のシンセみたいな音が実はギター だったりするので、そんなところも聴いてみて欲しい。かなり実験的なことも出来たので、今後に繋がるんじゃないかと思っています。

02.「イチバンボシ」
ちょうど「イチバンボシ」を作る事になる直前に地元の後輩と飲む機会があり、「最近の兵衛さんの曲は、コード進行だったりアレンジだったり色々練ろうとし 過ぎていませんか? もっと昔みたいにシンプルでベタなものも、実はファンは求めていると思います」と言われ、少しはっとした自分が居たので、サビのコード進行はシンプルなも のにしてみました。折り返し前だけちょっと変則的にしましたが(笑)。結果、自分達にとって大切なものがまた少し見えた気がしてます。

03.「Darling」
少しシャッフルしている曲なのですが、そのハネ方がどれくらいかって事についてみんなで議論し合いながら探って行ったのが、すごく印象的だったし、今まで のレコーディング現場ではあまり見られなかった光景で、何だかすごく新鮮でした。「まだアルコールは残ってる」って歌詞からスタートしちゃうあたりが自 分っぽいなって思ってます(笑)。

04.「Greendays」
なんだかんだで、サウンドやアレンジに於いては引き算をする事が正攻法であり、出来るのが経験豊富でセンスの良い大人だ、みたいな発想が嫌で、とにかくや りたい事を全て詰め込んでみました(笑)。そしたらとんでもないトラック数になっちゃって(笑)。エンジニアは苦労したと思います。でも無くっても良い音 なんて一つも無いので、この曲には必要十分だったんじゃないかと信じています。

05.「麦色」
ほとんど小説を書いているような気分で歌詞を書いていました。そういうのって自分にはあまり無かったからすごく楽しくて、何パターンもストーリーが出て来 たりして選ぶのが大変だったりもした。メンバー発信で曲の展開やアレンジも変わったりして、その都度ピアノのアレンジも変えて弾き直すのも楽しかった。

06.「書き置き」
これはもう本当に自己満足の世界のようなものなのです。なので他のメンバーからするとあっても無くても良い曲だとは思いますが、僕の中ではこの曲がこの位置に無いとこのアルバムは成立しないんですよね。ま、たまにはそんなわがままも良いかなって(笑)。

07.「ヨワキモノタチ」
僕の中では、実はこの曲がアルバムの核なんです。こいつが主役で他の曲がそれをより引き立てるメンバーと言うか。僕らのこだわりとして、カップリング曲は アルバムに入れない主義だったのですが、遂にやっちゃいました(笑)。というのも、本当はA面にするつもりだったのが、色んな話し合いを経てB面にせざる を得なくなった経緯があったので、その押し殺しきれない想いを今作にぶつけたような感じです。

08.「優しい噓」
やっとこういう曲をアルバムに入れられたなって感じですかね。曲調もダークで、歌詞の世界観的にも前向きじゃないというか。言いたい事も言えたし、サウン ドも雰囲気も気に入ってるし、満足度は高いです。歌詞書いてて、歌にも収まり切らないくらいにこんなに色々不満とかあったんだって、自分発見にもなりまし た(笑)。

09.「つれづれのマイナーナイナー」
バンドらしい曲に仕上がったなと思います。最初は、何かいなたいだけで終わりそうな感じがして、それがすごく心配だったのですが、上手く回避出来たんじゃ ないかと。ドラムだけ打ち込みの状態の本チャンdemoみたいなのは作っていたのですが、ドラムが生に差し替わった事によって、特にラスサビ後半あたりか らのエネルギーの注入度合いが相当に変化し、それに合わせてベースやギターなんかも録り直し、歌メロもそれにつられて良い感じに行けたので、バンドならで はの連鎖というか共有感というか、そんなのを改めて感じました。

10.「友よ」
誰かを励まそうと曲を書いた事なんて今まで一度も無かったのですが、身近に悩んでたり挫けそうになってる奴が割と増えて来て、自分だって日々悩んで迷って の繰り返しで人の後押しなんてしてる暇はないんだけど、でもそんな愛おしい奴らを思って書く曲が一曲くらいあっても良いかなって思えたので、ホント珍しく ストレートに書いてみました。このアルバムの中でもバランスを取る意味で良い役割を果たしてくれていると思います。

11.「-mori-」
自分の中でも、未だに捕らえ所が無いと言うか、いったい何を表現したかったのか今いち上手く説明出来ない不思議な曲です。「こんな感じの曲をやってみたかったんだ!」と言う、ちょっと今までとは異質な感じは強く出ていると思うので、その辺を聴いてもらえれば(笑)。

12.「雪のアスタリスク」
サウンドだけで冬を表現しようという事にかなりこだわってやりました。それが一番のテーマだったし、エンジニアも北海道出身の奴なので、俺たちに出来なく ていったい誰がやるんだ! くらいの意気込みで、みんなでサウンドメイキングやアレンジしてましたよ(笑)。今後も長く歌い継いで行くだろうなと思える良い曲が出来たと思います。

13.「Hello」
ライブの最後にこんな曲やりたいなぁってイメージで作りました。「バイバイ」じゃなく「ハロー」でお別れするのって、なんか良いかもなって。完全にこんな 曲にしたいっていうはっきりとしたイメージがある中で作ったので、出来るのも早かった気がします。一回弾き語りしたくらいの時にはもうだいたい今のメロ ディーだったし、サビの「Hello, Hello…」の繰り返しもあったので。恐らくメンバーも一番アレンジしやすかったんじゃないかな。

14.「六畳リビング」
こいつが最後に居てくれて、というか最後に出て来てくれて本当に良かった。最後の最後の、もうレコーディングスケジュール的には延長サドンデスみたいな状 況で作ったので、かなりメンバーにも無茶振りしたし、よく完成したなという気持ちが強いです。このアルバムの女房役とでも言うのが一番しっくり来るかと思 います。なんか自分の素や、田舎者っぽさみたいなのも歌詞に滲み出ている気がして、そんな所も気に入っています。

Vo./G.江畑 兵衛

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