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VELTPUNCH

彼らの滑稽なファイティングポーズはとても眩しかった

 昨年、新メンバーにDr.浅間直紀(ex.キウイロール)を迎えたVELTPUNCHが待望の新作を完成させた。エモーショナルなサウンドと心憎いアレンジ、ウィットな視点で綴られる等身大の歌詞など今までのVELTPUNCHらしさは備えつつ、音的にもグルーヴ的にも更に変態度を増した7thアルバム『His strange fighting pose』は2011年を代表するであろう名盤。先月から長沼氏の連載も始まったJUNGLE★LIFEでは、長沼/ナカジマ/姫野の3人を迎え、そんなアルバムの内容にはほぼ触れずにひたすら余談を重ねるインタビューを行った。

Interview

「ライブに行くたびにバッと脱いで腹文字があったときに、最初は笑ってても、いつかたぶん泣くんじゃないかなと思うんです」

●いきなりちょっと余談になりますが、7/9からオフィシャルHPにて"全ての音楽ファン、全てのミュージシャン、全てのレコーディングエンジニアに捧ぐ....。"という大げさなキャッチコピーで、今回の7thアルバム『His strange fighting pose』に関するレコーディングドキュメンタリー映像を公開されていますよね(全4回のドキュメンタリー映像)。すごくシュールな映像でおもしろかったんですが、ああいう試みは長沼さんのアイディアなんですか?

長沼:そうですね。スタッフと飲みの席で今回のアルバムについて話していたときに"なんかおもしろいことしたいね"と話してて思いついたアイディアで。僕が元ネタを出して、あとはメンバーがその場のノリでボケはじめる、みたいな。ああいうのはメンバーも含めて結構好きかもしれないですね。ガッツリとそれをやっちゃうのはなんか違うんですけど、ややシュールな感じでちょっとだけふざけた感じのは好きかもしれないです。

●長沼さんがバナナマンとラーメンズが好きというのは有名な話ですけど、バナナマンやラーメンズはお笑いの中でもややシュールと言われていたりもするし、わかりやすい明確なオチがあるような作風ではないですよね。あのドキュメンタリー映像もそうですけど、そういう価値観はVELTPUNCHの音楽にも共通していると思います?

長沼:そういうものが好きなんですよね。すごく明確な答えみたいなものを用意して、万人が同じ解釈をするような作品作りはあまり好きじゃないかもしれないです。僕の中での答えは出しつつも、それを匂わせるようなヒントをチラつかせて、聴く人や解釈する人によって色んな捉え方ができる、というものが好きです。

●例えばバンドとして、そういう価値観をメンバーで共有することに苦労はなかったんですか?
姫野:特にないですね。俺はあまり考えてないので。

●考えてないんですか(笑)。

長沼:どっちかと言うと姫野さんは相当ぶっ飛んでる人なので(笑)。
姫野:でも長沼くんがどんな人間かわかっているので、歌詞の内容とかはパッと見たときにだいたいわかります。別に説明されなくても「ああ~、またきたか」みたいな。

長沼:歌詞の内容や意味をメンバーに説明したりしたことはないかもしれないです。
アイコ:普通は説明するんですか?

●バンドによると思います。でもVELTPUNCHの場合、サウンドに"哀愁感"や"エモーショナル"という大きな特徴があると思うんですが、サウンドで表現する"哀愁感"や"エモーショナル"と、歌詞で表現する"哀愁感"や"エモーショナル"とのリンクの仕方が普通のバンドとは違うような気がして。例えば今作にM-9「百人町」というエモーショナルな曲がありますけど、この曲では自分から離れていった女性に対して"I wanna be your sex friend"と歌っているじゃないですか(笑)。普通のバンドだったらもっと純粋なもので"哀愁感"を表現すると思うんですけど、それを良しとする他のメンバーもいいなと。

長沼:歌詞を書く方もサウンドにインスパイアされている部分がありますね。サウンドありきで歌詞が出てくるというか。僕らの場合、歌詞を乗せるのはいちばん最後なんですよ。

●あ、そうなんですね。

長沼:そこで姫野さんのギターが「グワァーッ!」ってすごく変態的なアプローチをしていたとしたら、そこに自然な言葉が乗っからなければいけないと思うんですよね。そういう感じで歌詞が過激な内容になっていることもあるというか。

●サウンドと歌詞がお互い影響し合っていると。
アイコ:私は個人的に、長沼くんの歌詞はわかりやすいと思っていて。抽象的なことを歌っているけど割と絵が浮かぶというか。だから「こういう気持ち」というのは言わないけど、実はみんながちょっと思っていたりするのかな? って。「歌詞がいい」と言ってくださるリスナーの方も多いので、それはそういうことかなって思います。

●うんうん。

長沼:メンバーはお互いの人間性を知ってるからっていうのもありますよね。僕は普段から割とこんな感じで(笑)、歌詞も等身大のことを書いているかもしれないです。自分以上の何かを演じるというよりは、すごく等身大な普段のまんまの言葉を使っているのかもしれません。

●ということは、要するに普段からド変態だと。

長沼:そうですね。

一同:(笑)。

●余談ですが、長沼さんはなぜバナナマンやラーメンズのライブを観に行くようになったんですか?

長沼:単純に好きっていうか…あ、でもコントっていうものに関しては、僕はそういうものが昔から大好きで子供の頃からネタ番組とかは欠かさず観てたんですけど、10年くらい前に初めてバナナマンのライブを観に行ったとき…それが2時間半くらいの単独公演で、たまたまいちばん前の席で観させてもらったんですけど…その緊張感だったり、2時間半の舞台の台詞を完璧に覚えて全力で演じて、汗ダラダラになりながら、2人だけがポンと舞台に立ってあらゆる世界観だったりあらゆる価値観みたいなものをどんどん作り上げていく様を観たとき、衝撃を受けたんです。

●衝撃というと?

長沼:ライブハウスで1日5バンドくらいで出て、下向いてポロンとギター弾きながらMCで次のライブ告知をぼそぼそしゃべって…バンドって特に売れてない頃はそんな感じじゃないですか。自分たちもその頃はそんなもんだったんですけど、チケット代は\1,500~\2,000くらいで。お笑いのライブとかの方が多少チケットは高いですけど、描き出している世界観や価値観のレベルがあまりにも違い過ぎて。

●ああ~、なるほど。

長沼:"音楽って何なんだ? 全然負けてるぞ!"ってすごい敗北感に襲われたんです。それこそ自分たちは楽器とか色んな武器を持ってステージに立ってますけど、コントとかだと人間が2人でポンと出てきて、そこで描き出している世界観とか価値観の量や質があまりにも違い過ぎて。結構ショックだったんですよね。

●1回の表現にかける熱量の差に衝撃を受けたと。

長沼:たぶん舞台に立つまでの練習量もものすごい差があると思うし。お笑いと音楽は違いますけど、やっぱり観に来る人たちは金払って来てるわけだから、それを満たすだけの何かを用意しないといけないし、それだけの気持ちでステージに立たないとダメだなって。お笑いのライブを観に行くたびに強く感じます。

●コントを観て笑っているだけではなかったんですね。

長沼:笑いながら鳥肌立たせて感動してますね。行く前とかも、向かう電車の中とかですごく緊張したりするんですよ。

●ハハハ(笑)。

長沼:前日から"明日のコントどんな感じだろう?"となって、行く前とかもすごい緊張したりして。いつも喉がカラカラになりながら観て、終わったら「ああ~、疲れた-!」みたいな(笑)。

●すごいですね(笑)。

長沼:でもたぶん、VELTPUNCHのライブを観に来てくれる人の中でもそういう感じの人がいると思うんです。遠くの地方から大金と時間を掛けて来てくれる人も最近はすごく多いですし。そういう人たちからしたら、自分らがオナニー的な感じで「ギャーン!」と音出して「あ~、気持ちよかった。じゃあバイバイ」ではあまりにも無責任だと思うんです。だから楽しんでもらいたいし、自分たちもすごく出し切って終わりたい、という想いはバンドを続けるに従って徐々に強く持つようになりましたね。

●ちなみに余談ですが、長沼さんはラジオ番組にもよく投稿していたらしいですね(※註:長沼はTBSラジオ『雨上がり決死隊べしゃりブリンッ!』(2010年3月で終了)の「ブリブリ川柳」という下ネタ中心のコーナーによく投稿し、よく採用されていた)。

一同:(笑)。

長沼:ラジオの"ハガキ職人"とか言われている人たちってすごいじゃないですか。ものすごい情熱でものすごい量のハガキを送り続けて。でもそのコーナーにハガキ職人の人たちが投稿したエロ川柳とかを聴いて、"自分のエロさだったら確実にこの人たちにも負けない!"という感覚があったんですよ。

●エロの世界標準じゃないですけど、自分のエロさに自信があったと。

長沼:はい。"これだったら闘える"っていう。その感覚を確かめる上で送ったらキチンと送った分だけ採用されたので、"やっぱり俺のエロは間違ってなかったな"と。

一同:ハハハ(笑)。

長沼:ただ、エロ川柳を思いついたら携帯で番組にメールを打ったりしてたんですけど、そのせいで僕の携帯の予測変換が全部エロになっちゃったんです。

●アハハハハ(笑)。

長沼:それこそ仕事のメールとかで"ま"とか打つとすぐ"まんこ"と出てきたり。さすがにこれは生活に支障が出るなと思っていた頃に番組が終わったのでちょうどよかったです。

●よかったですね。ところで音楽とは直接関係のない話かもしれないですけど、今作のM-4「酷い悪臭を放つ黒のダウンコートとコーデュロイのパンツを身につけ、お前はただただ自己嫌悪の無駄遣いをしているだけの事だ」は曲名がめちゃめちゃ長いじゃないですか。過去の作品にも必ず1曲長いタイトルの曲はありましたけど、今まででいちばん長いですよね。

長沼:ちょっとお約束になってきた感じは自分的につまらないんですけど(笑)、やっぱり貫きたいし続けたいというか。姫野さんもライブのときに腹に文字を書いて上半身裸になったりしていますけど、それも是非やめてほしくないんです。そういうのやり通すのがかっこいいのかなと思って。
姫野:最初は軽い気持ちだったんですよ。ツアーをまわっていく中で"ちょっとアゲたいな"と思って腹に"VELTPUNCH"と書いてライブで裸になったら好評で、長沼くんに「次もやってください」と言われて。で、それから「次もやってくれ」「次もやってくれ」の繰り返しで、今は自分で率先して腹文字準備してます(笑)。

長沼:やっぱりやり通すのはかっこいいですよね。それこそ、肌が垂れてきてもやり続けて欲しいです。しょうもないことでも、ライブに行くたびにバッと脱いで腹文字があったときに、最初は「なんだあれ」「なんだあれ」って笑ってても、いつかたぶん泣くんじゃないかなと僕は思うんです。

●それすごくわかります。今作のタイトル『His strange fighting pose』にも通じる美学ですよね。ところで浅間さんが加入されて1年くらいになりますけど、浅間さんのブログを見てびっくりして。グルメ評論家のブログかと思いました。
姫野:直紀は食に関するこだわりがすごいんですよ(笑)。

●しかも写真がすごく上手いという。

長沼:メンバーでライブ後に吉野家食いに行ったときも、一人だけ必死に写真撮っていたんでビックリしました。なるべく他人のフリしたり…。

interview:Takeshi.Yamanaka