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Vibedred

京都のロックシーンを担う才能が開花! 数々の苦難を超えた最高傑作の誕生。

185_vd_A地元開催の“京都大作戦”出演でも存在感を示してきたVibedredが、約4年ぶりとなる3rdフルアルバム『Ark』をリリースする。メンバーチェンジや度重なる事故など数々の苦難に見舞われながらも、決して止まることなく活動を続けてきた彼ら。地元の先輩である10-FEETから、今注目のSiMやcoldrain、HEY-SMITHといった勢いのある仲間たちまで、ツアーに同行する中でライブバンドとしての進化も遂げてきた。普遍的なグッドメロディと独自のスケール感という軸を太くした上で、様々な要素や刺激を血肉化した今作は紛れもない最高傑作。その才能を見事に開花させた彼らの飛躍が、今ここから始まっていく。

「曲調が定まってきたというよりは、自分たちの気持ちが定まってきたから作れたという気がしていて。ライブでみんなと一緒に遊べるようになりたいという気持ちがあったから、そういう部分で13曲がまとまっているんじゃないかな」

●今回の『Ark』はアルバムとしては2ndアルバム『Endeavor』(2009年1月)以来となるわけですが、その間にメンバーチェンジがあったんですよね。

Joe:前ギターのJesusは2ndミニアルバム『Cross the Line』(2010年12月)のレコーディングまで参加して、そのツアー前に脱退したんです。そこからはサポートメンバーに入ってもらって、ツアーをまわって。でもやっぱり正式メンバーと一緒に同じ目標に向かっていきたいなというところで、声をかけたのが現ギターのCocoだったんですよ。

●以前から知っている人だったんですか?

Joe:Cocoは僕らとよく対バンしていたL.A.SQUASHというバンドの元メンバーだったんですよ。

TD:そこを脱退してからもセッションギタリストみたいなことはやりつつ、「バンドがやりたい」とはずっと思っていたらしくて。ちょうどタイミングも良かったので、一緒にやることになりました。Cocoは色んな人とセッションをしていたので、技術的にもすごく上手いんですよ。ライブやレコーディングだけに限らず曲作りの時もフレーズや曲の構成まで積極的に意見をくれるので、そういう面でもバンドとしては変わりましたね。

●新メンバーの加入がバンドにも変化をもたらした。

TD:Jesusがいた頃は4人とも大学時代からの同級生でお互いのことも大体わかっているし、「言ってもしょうがない」みたいな感じでコミュニケーションがルーティン化してしまっていて。そういうところに新しいメンバーが入ってきたことで、4人の間でのコミュニケーションも変わってきたんです。だからバンドの雰囲気も良い感じに、前向きになったのかな。

●ちなみに去年はメンバーの事故もあったそうで…。

TD:まず去年の春くらいに、ドラムのOckeyが盲腸になったんですよ。でもライブの予定は決まっていたので急遽アコースティックセットにしたり、サポートのドラムを入れたりしてライブは続けていて。そういう時に滋賀のライブでリハーサル後にいったん会場を出て、本番前に戻ってくる道で僕が車にハネられたんです。それで頭が割れて、救急車で運ばれるっていう…。

●頭が割れたって…!

Joe:オープン前に盲腸で入院中のOckeyからなぜか電話がかかってきて、「TDが事故にあったらしいから、すぐに電話してみて」と言われたんです。

TD:気がついたら救急車の中だったんですけど、救急隊の人からバキバキに割れた携帯を渡されて誰か知り合いに電話するように言われて。朦朧としていたので入院していることも忘れて、メンバーの中で一番上に番号が出てきたOckeyに電話した記憶はあります(笑)。

●命に別状はなかったんですか?

TD:縫ったりはしたんですけど、後遺症はなかったですね。その日も結局、CocoとJoeの2人だけでライブはやったらしくて。どんどんステージ上から、メンバーが減っていくという…。順番で行くと、次はJoeに何か起きる番なんですけどね(笑)。

●怖いですね(笑)。

TD:実はJoeも去年の年末に道を歩いていたら電柱にぶつかって、大出血したことがあって。病院に行くほどではなかったので、それくらいで済んで良かったんですけど。Cocoが入ってからバンドの調子は良いんですけど、メンバーに不幸が続いているという…(笑)。

●原因はそこ!? (笑)。そんな中で2012年はリリースがなかったわけですが、新メンバーで音を固めていくのに時間がかかったんでしょうか?

TD:焦ってもしょうがないので、この4人でじっくり作ろうという気持ちはありましたね。

Joe:それと並行して、2012年はライブの組み立て方を一度考え直してみようとしていたんです。以前はスタジオに入っても曲を合わせるだけだったんですけど、去年からはライブを想定した練習をするようになって。ライブバンドになれるように、目標を立てながらやっていきましたね。リリースはなくても、バンドを再び作りあげる上では良い1年だったと思います。

●ライブを強化する意識があったんですね。

TD:SiMやcoldrain、HEY-SMITHみたいな僕らと仲が良かったり対バンしたりするバンドは、たくさんのライブキッズに支持されているんですよね。自分たちも同じシーンでやっていく上で、ステージ上の自分たちだけで完結するようなライブじゃなくて外に向けて発信していこうという意識はありました。

Joe:ちょうどCocoが入ったあたりから、地元の京都で自分たちの企画イベントを始めたんですよ。その1回目をやった時に、フロアがお客さんでグチャグチャになるようなライブができて。そのへんからバンドとしての方向性が見えてきた感じがします。

●今作に向けた曲作りもその頃から?

Joe:曲作りは常にやっていたんです。でも当初は方向性が定まっていないままに曲作りをしていたので、アルバムに向けた具体的なイメージが湧きづらくて。メインで曲を作っているTDが器用なので色んなタイプの曲を持ってくることもあって、どっちに進むのかまだ探り探りな感じでしたね。

●そこから次第に曲調が定まってきた?

Joe:曲調が定まってきたというよりは、自分たちの気持ちが定まってきたから作れたという気がしていて。ライブでみんなと一緒に遊べるようになりたいという気持ちがあったから、そういう部分で13曲がまとまっているんじゃないかな。

TD:ライブの方向性が自分たちの中で固まってきたというのも相まってなのかなと思います。作り始める前はもっとライブ映えのする激しい曲が多くなりそうだと思っていたら、意外にできあがってみると曲のバラエティやボリューム感は『Endeavor』に近い気がしていて。その中でもちゃんとライブ映えする曲もあって、色んなものが絡み合って良い感じになっているのかな。

●アルバムの全体像はイメージしていたんですか?

Joe:元々はロック寄りなものにしようと思っていたんですよ。『Endeavor』では終始ゆったりした曲もあって、全体的な割合ではガツンと激しくてギターが歪んでいるような曲は少なかった気がして。だからロック寄りな曲を集めた『Cross the Line』をリリースしたりもして、そういう方向を向いている時期もありましたね。

TD:最初はレゲエとパンク(の融合)みたいなところから始まったバンドなんですけど、だんだんスケール感のある曲が増えてきて。そういう曲には、レゲエ的な裏打ちがハマりづらくなってきたんですよ。そこで元々メンバーが好きだったハードロック的な色も出してみようということで、攻撃的な曲が増えたのが『Cross the Line』だった。そこで新たな武器を手に入れて、自分たちの本流に戻ってきたのが今作なのかな。

●Vibedredの本流というのは?

TD:自分としてはメロディの良さと曲のスケール感ですね。そこも少しずつ変わってはいるんですけど、基本的にはその周りをぐるぐるまわっている感じがします。

Joe:この2年間で、人としても成長できたと思うんですよ。それによって、自分たちの曲に対しても自信が持てたところがあって。M-10「アルケミスト」はTDが作詞・作曲しているんですけど、2〜3年前にできた時点ではこの歌詞を僕は歌えなかったんです。めちゃくちゃストレートな歌詞なので、どうもこっ恥ずかしいというか。それが今では歌えるようになりましたからね。そういう意味では、世に出すまでに自分の中で消化しきれていない曲も昔はあったのかもしれない。

●バンドとしての軸がしっかりしたことで、表現できる幅も広がったんでしょうね。

Joe:「これしかダメ」みたいなものが、昔はあったと思うんです。そこから僕がもっと色んなものを受け入れられるようになったことで、そういう歌詞も歌えるようになったのかなと。

●歌詞の内容にも変化があった?

TD:今作までの間にはメンバーの事故や脱退もありつつ、個人的には肉親が亡くなったりして。あと、『Cross the Line』のツアー終盤で東日本大震災があって、ツアーも何本か中止になったんです。そういうネガティブなことが多かったけど、全部ちゃんと受け止めた上で前を向いて歩いていけるような言葉を今回は選んでいたかもしれないですね。つらいことや大変なことも自分の中で受け入れて、前に進めるようなメッセージを色んな曲に入れられたんじゃないかと思います。

●曲調の幅も広がりましたよね。M-12「Miss You」では女性ボーカルが入っていたりもして。

Joe:コーラスで入れたいフレーズがあったのでゲスト参加してもらったら、めちゃくちゃシックリきて。最初はもっと後ろに引いた形で入れるはずだったんですけど、結果的にはわりと前面に出したんです。曲の雰囲気と女性ボーカルがすごく合っているし、質感的にも僕の声とのハーモニーがすごく良かったと思います。

TD:Cocoの元バンドメンバーで、L.A.SQUASHのボーカルだったfuyukoに歌ってもらいました。実はM-1「fanfare」のキーボードも弾いてもらったんですよ。この曲はfuyukoのキーボードで始まって、Cocoのギターにつながるという流れで、僕ら3人は全く関与していないという…。

●L.A.SQUASHファンにはたまらない1曲だと(笑)。M-7「More than World」のようにストレートなメロディックパンク調の曲は、Vibedredにしては珍しいのでは?

TD:自分でもシンプルな曲だなと思ったんですけど、とりあえずメンバーに聴かせてみたんです。そしたらちょうどライブで映える曲を作ろうとしていた時期だったので、「良いんじゃない」と言われて。その時のバンドがこういう曲も受け入れやすい状態だったのかなと。

Joe:リリースがまだ決まっていない段階では、ライブでやれるかどうかという基準でバンドとして形にする曲を選んでいたんですよ。M-6「Epigram Song」も早い段階でできていたので、ライブでもやっていて。この2年間は曲ができたらライブでやるというスタンスで活動してきたから、リリースが決まった時も「今ある曲に何曲か加えて作ろう」という感じでした。だから新生Vibedredとして2年間活動してきたものが、今作には出ていると思うんですよ。

●そのアルバムのタイトルを『Ark』にした理由は?

TD:大洪水の中を方舟(Ark)に乗って脱出した人たちが新しい世界を築いたという聖書の逸話に、色んな苦難を乗り越えて新しいアルバムを出した自分たちを重ねた感じです。1stアルバム『Wicked World』(2006年7月)のジャケットは水の中にポチャッと落ちたようなイメージで、2ndアルバムの『Endeavor』は水の底に宇宙船が沈んでいるというジャケットなんですけど、今回のジャケットではようやく船が空に飛び立っているという流れになっているんです。

●苦難を超えて浮上してきた今を象徴している。

TD:やっと浮上してきました。やっと飛べたので、なるべく落ちないように高度を保ちながら進んでいきたいですね(笑)。思い入れもあるし、すごく大事な作品かな。

Joe:苦労しながら作ってきたので、達成感がすごく大きいんですよ。これを持って上昇していける、良い武器ができたと思います。

Interview:IMAI

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